また会える?
差し出された手を握りレイと共にお城の庭を歩く。
庭園を抜けて少し歩くと衛兵達のいる場所に出ることが出来た。
レイの後ろから着いてきていた男の人が衛兵に何か伝えるとその衛兵はすぐにその場を去る。
「ここで少し待っていようか」
そう言ってレイが微笑んだ。
「ルイーズ!」
「おとうさま!」
少しするとお父様が衛兵と共に向こうの方から急いでやって来た。
そしてお父様は立ち止まりレイに向かって胸に手を当てお辞儀をした。
「ベルゲン公爵、ルイーズ嬢で間違いないね?」
「第一王子殿下におかれましてはご健勝のことと存じます。確かに私の娘ルイーズです。ご迷惑をお掛けしまして申し訳ありません」
お父様は青い顔をしながらレイに挨拶をし、丁寧に謝った。
お父様は第一王子殿下と言った?
「レイはおうじさまなの?」
「そうだね、王子だね。」
「すごいね!ほんもののおうじさま!」
お父様がものすごく慌てた顔をしている。
「こら、リズ!殿下とお呼びしなさい!」
いつもは私に甘いお父様に怒られてしまった。
「良いんだよ。私がレイと呼ぶように言ったんだ」
ショックを受けている私を見てレイが優しく言ってくれる。
「しかし殿下・・・」
「私が良いと言っているんだ」
「・・・承知しました」
渋々といった感じだけれどお父様は納得してくれたみたいだ。
「レイってよんでいいんだよね?」
「うん。ルイーズだから私もリズって呼んで良いかな?」
「うん!もちろん」
なんだかすごく仲良くなれたみたいで嬉しくなる。
レイとの間にほわほわした空気が漂っている気がする。
そこにお父様の咳払いが聞こえた。
「んんっ。リズ、そろそろ帰らないと」
「わかったわ。おとうさま」
レイと手を離そうとするがグッと握られたまま離れない。
「レイ?」
少し俯いたレイの顔を下から覗き込む。
するとパッと顔をあげて綺麗な笑顔を浮かべ手を離してくれた。
「ごめんね。名残惜しくて」
「ううん、わたしもさみしいな。またあえる?」
レイは王子様だ。きっとたくさん会うことは出来ない。せっかくお友達になれたのに。
しょんぼりしていると頭にポンと何かが置かれた。顔をあげるとレイが私の頭を撫でてくれていた。
「大丈夫。すぐにまた会えるよ」
笑顔でそう言ってくれるレイ。私が悲しんでいたから言ってくれただけなのかもしれないけどその優しさで心が軽くなった。
「わかった!じゃあ、またね」
私はとびきりの笑顔で答えた。レイも笑顔を返してくれる。
レイが帰りの馬車の乗り場まで送ってくれたけどいつもなら、にこにこしているお父様はずっと真面目なお顔のままだった。
今日は王城に来れただけでなく素敵な出会いまであった最高の日だ。帰りの馬車の中で迷子になったお父様を叱ろうと思ったけれど逆に色々聞かれて質問攻めにされ疲れてしまった。
きっと今日はよく眠れる。