木の上のリズ(レイモンド視点)
本来幼い婚約者とのお茶会なんて半年に1度あれば良い方だがリズとのお茶会は頻繁に行いたい。
本当なら1週間に1度は会いたいところだが忙しさもあってなかなかそれは叶わない。
それでも毎回リズにケーキを食べさせ他愛の無い話をするのは私にとって欠かせない癒しの時間になっていた。
4回目のお茶会の日だ。
今日もリズは妖精のように可愛い。小柄な方なのだろう。とてとてと歩く姿はなんとも言えない可愛らしさがある。
お茶会の席で隣に座る。最近は私が何も言わなくても隣に席が設けられている。
リズの右隣に座りゆっくりお菓子を食べさせる。
その間に最近のリズの話を聞くのが楽しい。乳母の話をする時は本当に楽しそうに話す。
そんなリズだが今日は会った時からソワソワと落ち着きが無かった。
リズが婚約者候補の座を降りたがっているのは感じている。その話をするつもりなのだろうか。それでも離せない。知れば知るほど好きになっているのに。
するとお茶会の終わり頃に園庭を散歩したいと言い出した。
これを言いたくてソワソワしていたのだろうか。
そんなことならいつでも叶えられる。
城の薔薇園を案内した。ここは美しさに自信がある。リズも感動したようでキラキラした瞳をしていたが、しばらくすると遠くに見える林に行きたいと言って来た。今の時期は林に行っても何も無いとは思うがリズが言うなら行かないという選択肢は無い。
歩いて行くというのは驚いたが護衛達と共に林まで歩いた。
リズは何か探しているのかキョロキョロとしながら奥に進んで行く。
すると急に木登りをすると言い出しあっという間に木に登り始めた。
私は呆気に取られ、なかなかに間抜けな顔をしていたと思う。
そして枝に座ったリズの得意満面の顔を見た瞬間私は笑い出してしまった。
だってあの、どうだ!と言わんばかりの顔!
こんなに大笑いしたのは産まれて初めてだ。
しかも公爵家の令嬢が木登り。ドレスも気にせず登って行った。
お茶会の席を設けることになって以降リズの行動はどこかチグハグだった。マナーについても変なところで出来ていなかったり。
婚約者候補を降りることが狙いだろう。
何か不安があるのか、婚約者候補を嫌がっている節がある。
それでも普段の様子を話す時の自然な表情、ケーキを食べて瞳を輝かせる瞬間。それらは本物だと感じる。
そんな中での木登り。恐らくこれも彼女なりに考えた結果なのだろう。
だがこの為に必死に練習したのかと思うと愛おしさが込み上げて来る。
ひとしきり笑った後戻ってくるように言うと大人しく降りて来た。
少ししょんぼりとした姿も可愛らしい。
ごめんね。リズ。こんなことじゃ離してあげられないよ。いや、もっと好きになってしまった。愛おしいリズ。次は何を見せてくれるんだろう。
遅くなってすみません。




