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MIDNIGHT MUTANT HOUR  作者: 朝倉春彦
Cecil's Weekend 8.セシルの夏休み

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49/50

-4-

 セシルを取り巻く家族の問題を解決して2日後。これまで通りの夜の生活 に戻った俺は、重たい段ボール箱を抱えて07メガタワーの3階までやってきていた。


 今は夜の8時半過ぎ。フロアの中央付近を通り過ぎ、人が疎らになった商店街通りへ向かって…その中央にある時計店へ。目的地は、アキさんの店だ。


「やぁ、ミナミ。随分と大荷物を抱えて来たな」


 小さな時計店に入ってすぐ、カウンター越しの椅子から立ち上がったアキさんは、奥へ繋がる扉の鍵を開けながらそう言った。


「どうも、アキさん。ようやく問題が片付いてさ。土産があってな」


 俺はそう言いながら、段ボールを抱えたまま店の奥に歩いて行き…奥の事務所の中へ誘われるまま、その中へ。飲料水メーカーのロゴが入った、何の変哲もない段ボール箱を応接セットのテーブルに置いた俺は、閉じられていたガムテープ部分を車の鍵で切り開いて開けて見せる。


「どうだ?イタリアの名産品」


 そう言いながら、M1934と92を1丁づつ取り出して見せると、アキさんは目を丸くして段ボール箱の中に目を向けた。中身は銃本体に、弾薬に…取り付けられていたサイレンサーやら弾倉やら…兎に角裏に流れたら高くつきそうな 品々。


「おいおいおい。これどこから手に入れた?」

「襲撃犯を片っ端から眠らせてくすねてきた。弾もある」

「バラバラに入れてきやがって…」


 アキさんはそう言いながらも、興奮冷めやらぬ様子で中に詰め込まれた拳銃を取り出していく。92が5丁、M1934が8丁、珍しい銃かと言われればそうでも無いと答えるだろうが…

 それでも、ガンマニアの血が騒ぐというものだろう。黒く、少々ボロいM1934は興味なさげに扱われていたが、92…それもシルバーカラーのモデルを見た時は、珍しくアキさんの目が輝いていた。


「凄いな。1934は程度が悪いが…92は基本的なメンテで行けるぞ」

「だよな。残念なのは初期型って所か」

「スライドが吹き飛ぶ問題か?それは対策出来る。部品は…取ってくるのが手間だからワンオフ加工になるがな」

「ふーん…価値ねぇかって思ったけど、そうじゃないのか」

「全然!残念なのは、シルバーカラーの2丁だな。イノックスなら更に良かったものを」

「ステンレス製か。確かに、コイツは色を塗っただけみたいだしな」


 そう言いながら、アキさんの手に握られた磯崎の銃に目を向ける。そして、もう一丁あった銀色の92を手に取ると、各部を動かした。アキさんの言った通り、ステンレスの感触ではなく…この色は塗装によるものだと言う事は、各部についた傷や塗り切れなかった部分を眺めれば分かる。


「ミナミの持ってるソイツは別に良いが…こっちのはそれなりに銃を使ってた奴のカスタム品だな」

「あぁ、磯崎って。言ったろ?セシルの母親の会社にちょっかい掛けた除隊された元米兵」

「なるほど。急造だろうが…何となく意図が分かる弄り方だ。だがなぁ…ちょっと弄り方が雑だな」


 アキさんはそう言って、簡単に銃を分解していって部品を並べ…その後で、黒い素の92を分解して、磯崎の部品の隣に部品を並べていく。それを眺めてみれば、磯崎の銃が特殊な改造品だと言う事は、一目瞭然だった。


「多分、素の92しか手に入らず、少しでも92Fに近づけようとしたんだろう。改造の結果よく似た部品が幾つかある。が…加工が雑だな。これならやらない方がマシだったと思うぜ」

「素人仕事か。まぁ、アイツの手でやったんだろうぜ」

「恐らくな。これは部品取りに回すしか無いか…ちょっと時間をかけてじっくりやるかだ」

「勿体ないと思うが…日本にあった所で…だよな」

「そりゃそうだ。ある程度整備して、海外に戻すさ。ま、これだけ92があるなら、1丁は手元に置いておいても良いか」


 そう言って笑うアキさんにつられて、俺も思わず笑みを零す。アキさんは、もう一度段ボールの中を覗き込んで、入っている品や弾薬を確かめると、電卓を叩き始めた。


「しっかし良く持ってこれたな。後始末の時に無いと不自然じゃないか?」

「そこはホラ、銃があったらあったで問題があるだろ?」

「確かにそれもそうか。撃ち合ったのか?」

「少しな。ビルの窓を貫通したりして、通報されてないのは奇跡さ」

「次はこうは行かねぇって思っておくべきだろうな」


 忠告を一つ入れてから、電卓を俺の方に見せてくる。その額を見た俺は、目を丸くしてアキさんの方を見上げた。


「相場、幾らなんだ?高すぎる」

「こういう裏のつかないベレッタは取り合いになるだろう。流す場所にもよるが」

「にしても、申し訳ない位に高いんだが」

「そう言うな。流す時はこの倍で流すんだぜ」

「分かった。有難く貰っとこう。それで決まりだ」

「そう来なくちゃ」


 アキさんはそう言って電卓を手にすると、事務所の奥の方へと消えていく。俺は手にした銀色の92を眺めながら、コイツがどれ程の額で売られるのかを想像し、少し身震いをした後で、テーブルの上に戻した。


「ほらよ。確認してくれ」


 すぐにアキさんが金を持ってやって来る。トレイの上に置かれた、《《滅多に見ない札束》》。それを見て、少々緊張しながら数を数える俺。問題なく電卓に書かれた金額があることを確認した俺は、その束を上着のポケットに入れると、段ボールの一切をスーさんの方へと滑らせた。


「そう言えば、ミナミから珍しく煙草の匂いがするんだが、また吸いだしたのか?」


 取引が終われば、雑談の時間。俺はアキさんに問われてから、自らの上着を嗅いでみると、確かに煙草の香りがした。


「たまに欲しくなってきたんだが…慣れねぇんだよな。同じラッキーストライクなのに」

「せっかく禁煙出来たってのに。それなら吸うなよ…ま、体調が元に戻ってきてる証拠か」

「そう思ってるよ」


 俺はそう言いながら、スイングトップのポケットから《《自分で買った》》煙草の箱を取り出し、そこから出した煙草を1本咥えながらこう言った。


「体調が戻り切った所で、夜生活は変わらないだろうけどもな」

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