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MIDNIGHT MUTANT HOUR  作者: 朝倉春彦
Cecil's Weekend 2.イージータスクとバッドラック

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14/50

-7-

 裏路地を出た俺達は、再び夜の街へと繰り出した。今は深夜2時、日の出まで時間はたっぷりある。


「一回時間潰すか」

「はい」

「店の希望は?」

「特にありませんね」


 人が疎らに見える表通りを歩く俺達。セシルは緊張を和らげるためか、煙草を手に取るペースが早まっていた。今も吸い終えた煙草を道端に捨てて、新たな煙草を一本取ろうとして、手を止める。


「あ、煙草切れた」

「コンビニ寄ってくか?」

「そうします」


 夜の街角に男女2人。別に、おかしな組み合わせでもないだろう。周囲からはただのカップルにでも見られているはずだ。そう思っても、道行く人々が相手方に見えるのは、仕方が無いと思うが。


 俺とセシルはコンビニに立ち寄ると、適当に買い物をして再び夜の街へ。セシルはラッキーストライク1カートン、俺は缶コーヒー。それらを持って、再び当ても無い散歩に戻った。


「適当な喫茶店か、レストランか、スナックか」

「表から見えないお店が良いですね」

「そうすっか。しっかし、明日のニュースは見たくないな」

「怪我人、出たんでしょうか」

「さぁ。ただ、あの男連中が昼まで目を覚まさなきゃ、捕まるだろ」

「さっきの、どれくらいの強さだったんですか?」

「3日は目が覚めないだろうな。最後のオッサンだけ、1日で済ませたが」

「あれだけ減刑を匂わせておいて1日ですか」

「良いだろうよ、強めの睡眠導入剤を飲まされたみたいな感じで落ちたんだから」


 俺はそう言って缶コーヒーのプルタブを開けて、中身を一気に飲み干し、近場のゴミ箱に捨てる。当ても無い散歩、とりあえず汐留駅の方に歩いているのだが、時間を潰す案は全く思い浮かばない。もうホテルでも取って籠っていれば良いのだが…今は、数時間を潰して安全かどうかを確かめたかった。


「駐車場からも離れたくないな」


 そう言って、汐留駅が遠くに見えた辺りの交差点で立ち止まる。セシルは来た道を振り返り、ほんの少し口を開いて僅かに驚いた様な顔を浮かべると、徐に煙草を1本取り出して、咥えた。


「この辺りまででしょうか。まぁ、無茶すれば走れない距離じゃありませんし」

「路地裏ダッシュ2本でバテた奴がいうと説得力ないな。大分遠いぜ?」

「マラソンペースならちょっとは良いでしょう。多分、持ちますって」

「追いかけられたとしたら、ダッシュしか選択肢無いぜ」

「その時は、ヨウさんを信じてますから」

「俺だって万能な訳じゃない。目立つのはごめんだ」

「その割にさっきは楽しそうでしたけど」

「勘違いするなよ、あんな三下連中には遅れを取ることは無いってだけさ」


 やれやれと肩を竦めて、俺は来た道を引き返す。ここまでで見つけた店は数軒。その中で、俺達の条件に合う店は、そんなに多くなかった。


「スナックともなれば、雑談だのなんだの振られたら面倒だ。レストランで良いか?」

「はい。ヨウさんがそれで良ければ、ワタシは何でも良いです」

「なら、そこのレストランにしようぜ。ハンバーガー食った後だけど」


 適当に目についたレストランを指す。その店は4時位まで開いていそうな、ハンバーグレストランだった。


「ドリンクバーとスープバーで粘るやつですね」

「フライドポテト食いそびれたからなぁ…あればリベンジだ」

「…案外、根に持つタイプですか?」

「まさか、フライドポテトが好きなだけだよ」

「…そうですか」


 適当に雑談を交わしながら、俺達は店の扉を開けて中に入る。入った途端、ハンバーグレストラン特有の香りが鼻をくすぐった。暇を持て余していた店員に案内された席に座り、とりあえずお冷で喉を潤す。そして、何となくメニューを見ていると、妙に腹が減ってきた。


「ハンバーガー1つと考えれば、ありゃ3時のおやつだったわな」

「…無理に言い訳しなくても良いんですよ?」

「お前は何かいらないのか?」

「ワタシはスープバーとサラダバーで」

「健康的…なのか?」

「こんな時間に起きてブラついてる事にさえ目を瞑れば、健康的でしょうね」

「言えてる。お、やっぱりポテトは付き物だよな…じゃ、決まりだ」


 そう言って店員を呼んで注文を終え…数分後、ワゴンに乗って料理が運ばれてくる。こういう時間の注文は、中の人間ですら暇を潰すのに丁度良いのだろう。昼間の時間を生きていた頃に比べて、出て来るのも早ければ、ちょっと量も多めになっていた。その頃には、セシルもスープバーとサラダバーから取って来たコーンポタージュとサラダをテーブルに並べ、ここに深夜とは思えない光景を広げていた。


「最近、1日3食、ちゃんと食べてますか?」


 料理に手を付けだした俺に、カップを手にしたセシルが尋ねてくる。俺は彼女の方に目を向けると、ほんの少し目を泳がせてから、首を横に振った。


「2食で終わることが多いな」

「ダメですよ、ちゃんと3食食べないと」

「そうは言ってもな。活動限界が早いんだ。18時-6時だぜ」

「せめて18時-11時にしたいですよね」

「何度か試してるんだがな、こればっかりは時間がかかるな」


 そう言いつつ、箸でハンバーグを千切って口に入れていく。何の変哲もないレギュラーの300g…こういう、何の捻りも無い物が良い。


 そのまま数分、ちょっと遅い2度目の昼食を済ませ、俺は食後のコーヒーを飲みながらダラけていた。打つ手が無い状況。待つしかないというのは、出来なくはないが苦手だ。


 出来れば自分から動いて一暴れしてやりたい位だが…そんなことをしてたら、俺はここに立てていない。だから、ジッと時間が過ぎるのを待つ。セシルと、今の状況に全く関係の無い雑談を交わしながら、時計の針が過ぎるのをジッと待っていた。


「何時までいるんです?」

「閉店手前まで粘ろう。それが終われば…宿を決めないとな。どこか、あるだろうさ」


 完全に普段の空気が戻った俺達の間。その空気を更に元に戻したのは、ラストオーダー5分前に現れた客だった。


「珍しい…ん?」


 何気なく呟いて、やって来た連中の顔がこちらに向けられた途端…俺は顔を引きつらせて、こう言った。


「なるほど、あの顔は、流石の俺でも見覚えがあるな…」


お読み頂きありがとうございます!

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