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虚崇世界  作者: 塵埃
6/12

ページ5「エスキス」

彼は幼いころから絵が好きだった――らしい。

一番古い記憶にいるのは、僅かな金貨を握り締めて画材店でしかめっ面をしていた彼だ。

あの頃からも親から絵描きなどではなく“まとも”な職に就けと口酸っぱく言われていたそうだ。

それでも趣味で細々とやっていこうとは思っていたそうだが。

二足の草鞋など、容量の悪い彼ではいずれ破綻する、それを介したうえで両親は画材金を渡したようだ。

約数十分が過ぎ、一刻が過ぎて行った。

大きな溜息を吐き帰っていった。


再び戻ってきたとき、彼は随分成長していた。

――だが相変わらず優柔不断な所は変わらなかったようで、またしかめっ面で数十分ほど睨みつけていた。

結局、友人が来るまで店内をただうろついていた。


最初のページに絵が完成する頃、彼は立派な青年になっていた。

美大に行っていただけあって風景の写実は得意なようで、よくいろんな場所を描いていた。

本人は人を描きたいようだったが……致命的なまでに”あたり”が滅茶苦茶だ。

ページの半分が埋まる頃遠くの国で戦争が起きた。

彼は何処か他人事の様に呟いていたのを覚えている。

「きっとあの国は悪辣な政治家だけが生き残ったんだ」

そう言って比率のおかしい人間の顔を描いていた。


炎はかの国まで届き彼も外国へ向かうことになったらしい。

ペンを持っていた手には似合わない銃が握られ、いつもの草臥れたシャツではなくおろしたての制服に身を包んでいた。

「いつかこの悪夢が覚めるように」

殴り書きの一文を最後のページに書き記す。

扉から出ていった彼の後ろ姿をいつまでも待っていた。

~~~

黒色で塗りつぶされた画用紙に淡い白色の星が彩っている。

同じ風景でも僅かに違う風景を画用紙に写していた、一つの作品を完成させては床に飾ってまた新たに描き始める。

遠くから誰かの会話が聞こえてきた。


”また”誰かが落ちてきたようだ。

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