キャンプ場のキャンプファイヤー
篠山キャンプ場 区画Cー4
平日の深夜2時いつもは新卒の頃から一緒にキャンプをしている同僚のサクラと共にキャンプ歴2年の山口ハルカ(仮名)はこの日は残念な事にサクラとは予定が合わずなし崩し的に初めてのソロキャンプをする事になった。
ハルカは寝静まった深夜。パチパチパチパチと木が燃えるような音がすぐそばから聞こえ、目が覚めた。
ハルカは昼間に建てたテントのファスナーを開け、外を覗き込み左右を見渡すがどこにも火がついているような痕跡はない。
一度テントに戻ったハルカは寝ようと寝袋に入っが何故かその音が頭から離れない。寝袋から出たハルカは靴を履き、引っ張られるように中ぐらいの赤い懐中電灯と携帯を持ちテントの外に出た。
空は雲ひとつなく、満月が鬱蒼とした森を照らす。
狭いテントから外に出て、周りを見渡しても、平日の夜のせいか、それとも深夜だから他ののキャンパー達は寝ているのか、人の気配は一切感じない。
ハルカは気のせいか、と誰にも聞こえないほど小さな声で呟くと『違うよ』と背後から声がした。
ハルカは驚きバッと振り返ると、そこにはまだ7歳ぐらいの赤い服を着た女の子が立っていた。
ハルカは一歩二歩後退りをするがすぐに背後の木にぶつかる。
女の子は手を伸ばしゆっくりと近づいてくる。
「お姉ちゃん、1人?」
「え……」
1メートルほど手前で立ち止まった女の子ははるかを覗き込むように問いかけてきた。女の子の左胸に血の跡があったがハルカは気づかなかった。
「1人なの? 私も同じ。知らないおじさんに車で連れてこられて………そのあと覚えてない。でもねこの間お友達がたくさん出来たの!」
最初は暗い顔をしていた女の子は友達ができたの! と飛び跳ねるように喜ぶ
「お、お友達」
「うん! もふもふのたぬきさんに、あったかいこぐまさん おかぁさんくまにしかさんもそれにね、お姉ちゃんみたいな人も沢山いるよ! みんなお友達。お姉ちゃんも1人なんでしょみんなで遊ぼうよ!」
指を折り、友達の数を数えていく女の子。その子が友達の数を数えて終えるとハルカは意を決して問いかける。
「……わ、私みたいな?」
「うん!」
女の子は大きく頷いた。
「ど、どこに?」
「あっち!」
女の子が指を指した方向を見ると、そこにはキャンプファイヤー用の木材があり、今この瞬間にハルカと同じような年頃の女性3人がキャーキャー言いながら楽しそうに着火剤に火をつけ、木材を燃やし始めると煙が立ち上る。
「っ!………」
その3人の首には紐が巻かれ、服はビリビリに破れ、胸やお尻が大きく露出し、臀部付近には赤い血が流れている。
ハルカの息遣いが聞こえたのか3人は手を振りハルカを招くような仕草を見せた。
「お姉ちゃん達も呼ん出るよ! 行こう!」
女の子はハルカの手を取り、3人のところに連れて行こうとする、その時ハルカは気づいた、手を触っているはずの女の子の体温が全く感じられないことに。そして左胸にまっすぐ入った一本の赤い筋に………
「お姉ちゃん」
ついてこないハルカのことを不思議に思った女の子は首を傾げた。
「くまさんたちもいるよ」
振り返った女の子が見ている方を見るとどこからとも無く、かなり大きい熊と子熊。熊の親子がどしどしと音を立て、火の方に近寄ってきた、その後ろにはたぬきが2頭、そそくさと続き、最後に森の奥から鹿が2頭、大地を踏み締めるように駆けてくる。
「早く行かないと乗り遅れちゃう」
「乗り遅れるって………何に?」
「今からみんなで空を渡るの!」
そう楽しそうに笑った女の子は空を見上げた。
「そ、空を」
「うん」
にっこりと笑う女の子にハルカは言葉が出てこない。
「お姉ちゃん? お空、いきたくないの?」
「………お姉さん、やる事があるの」
「そうなの?」
女の子は悲しそうに俯いてしまった。
「ごめんね……」
「わかった!」
ハルカは素直を謝ると女の子は特大の笑顔を見せ「じゃあね!」と泣きそうな顔に無理やり笑顔を浮かべみんなが集まっているキャンプファイヤーの火の方に走って行き、女の子と女性3人組が何か言葉を交わすと急に風が吹き、反射で目を閉じる。2、3秒して風が止み、ゆっくりと目を開くとキャンプファイヤーの火は無く、女の子と女性3人組、そして女の子が言っていたくまさんもしかさんもたぬきさんも姿を消していた。
もし、彼女が女の子について行ったら………