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「あー、つっかれたぁ…。」

いつも通りくたくたになった足をなんとか動かして帰ってきた。


家のドアを開けようとするとスムーズすぎて二の足を踏んでしまった。

うちの蝶番はサビサビで頑固そのものな感じで、ぐっと踏まなきゃ開かないハズ。

一瞬家を間違えたのかと焦ってキョロキョロしても、やっぱりここはうちだ。


とんっと押すだけでするーっと開いてしまうドアを一歩入ると、床がぴかぴかしている。

何ごとかと狭い家の隅々までチェックする。


ドアは素直になっただけじゃなくて歪みがなくなっているし、がったがたの窓も直されている。

この古い借り家で全然寒気が入ってこないなんて、初めてのことだ。


床も壁も家具もピカピカだけれど、引き出しの中は変わっていない。

キッチンには足りなくなってきていた調味料が足されている上に凹んだ鍋がピッカピカの綺麗な鍋になってる。


「意味わかんない…」

ベッドも元々の肌触りの布だけれど、どうみても新品に張り替えられている。

何より、ずーっと干す暇も無くてぼんやりぺったりだった布団が、ふかふかでお日様の匂いがする。


「ここ…うち…か?」

新しい他人の家みたいにうちっぽさがないけれど、家具も荷物の配置も何もかも変わっていないから、なんとなく落ち着ける。

でも今までにない状態に落ち着けない。落ち着けるのに落ち着けないなんておかしい。


とりあえず明日も朝から仕事だからさっさと着替えてベッドに潜り込むけれど、変な感じ。

ざわざわするのにほっとするとか意味がわからなすぎる。

とにかく混乱する。


「これがシューさんの言ってた、『なんとかする』…?はぁ??」


勝手に…いや、触ってほしくない変えてほしくないものをほどほどに空気読んで、こんなにあったかくて気持ちの良い寝る前の時間、この家で初めてだ。

文句を言いたいけど感謝したいくらいベッドが心地良い、ずるい。

いつもなら寒い外から寒い布団の中に入って、眠れるだけのぬくもりを自分で生み出さないといけなかったのに。


気持ちよすぎて寝坊しないようにしないと…。


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