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ダークエルフと暮らす異世界間違い転生  作者: 三沢 七生


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78.鍛練の夏

ララハイディが居候になってから、ララハイディとララミーティアは毎日魔力とMP向上の為にひたすら鍛練という名のお茶会をしていた。


2人で上空に上級相当の無詠唱の風魔法を展開し続け、レジャーシートの上ではハーブティー等を飲みながら仲良くお喋りに興じていた。

そんなエルフ系種族の戯れを眺めるのがイツキの楽しみになっていた。


ミーティア集落へは引き続きマメに顔を出していたが、夕方から夜にかけて顔を出すのが習慣になっていた。

近頃では壁の建造はほぼ完成。

後は門や壁の上の柵や壁の装飾などの作業が中心になっていた。

もはや外見だけ見ればミールの町に匹敵する程立派な城郭都市のようになっていた。


ただ中身は元の集落のままなので、アンバランス極まる中々の見掛け倒しだった。


ガレスとルーチェもついに上級のウィンドウ魔法が使えるようになり、いよいよ人間離れした子供になっていた。


かなりしんどいララアルディフルー式の鍛錬を自発的に毎日欠かさずにやっている形になるので当然の結果ではある。

ララミーティアは待ってましたと言わんばかりにアイテムボックスに大量に作り置きしてある手作りの料理をガレスとルーチェに渡した。

人族やルーチェのようなゴブリンと人族のハーフのような種族で上級ウィンドウ魔法を使える者は相当珍しいらしく、ララハイディは「人族屈指の強さになっている」と半ば呆れたように呟いていた。

ガレスとルーチェだけで人族の国家の魔法師団数個分に匹敵するかもしれないとララハイディが言っていたのを聞いて、イツキもララミーティアも後の祭と言わんばかりにそれ以上は深く考えることを辞めた。


本邸と離れがある広場の畑については早朝と、あとはミーティア集落に行かない日の夕方などにララミーティアとイツキが手入れをしていた。

ララハイディは畑いじりを今までやったことがないようで、やってみたいと言って畑の世話をするようになっていた。

畑に植えている野菜は基本的にイツキが召喚した野菜から取った種や、ジャガイモのように芽だしをして植えてから育てた野菜が中心。

普段肉ばかり食べたがるララハイディも自分で収穫した野菜が気になるのか、珍しく野菜をふんだんに使った料理を作って欲しいとララミーティアにリクエストしていた。




ララハイディは無表情で平坦なので無口で冷たい印象を与えるが、実は本当によく喋るし冗談も良く言っておちゃらける。

同じエルフ系の同性という事でララミーティアはここぞとばかりにエルフ系種族に関するあれこれをララハイディから聞いていた。

ララハイディも珍しくお姉さん風を吹かせられるララミーティアが可愛くて仕方ないらしく、自らあれやこれや自身が持っている知識をララミーティアに教えていた。




ある日の事。


いつも通り2人が鍛練していたとき、いつもはララミーティアとララハイディが楽しそうにお喋りしている様子をニコニコして眺めていたイツキが「たまには身体を動かしたい」と言い、珍しく森で一人で採集に出掛けて広場を不在にした事があった。

イツキが居ない機会を伺っていた訳ではないが、ララミーティアは同性だけでないと聞きにくい事をここぞとばかりにララハイディに聞いてみる事にした。


「あのねハイジ。ちょっとエルフ系の事で聞きたいことがあるんだけれど…。」

「可愛い可愛いティアの為なら、このお姉さんララハイディが分かることは何でも答える。」


2人は最近は広場にレジャーシートを広げて、イツキが召喚したお菓子やジュースを楽しみながら魔法の鍛練という名のお茶会をしていた。

魔法に長けている上に無詠唱魔法に慣れている2人からすればこんな事はお手の物のようで、暇なときはイツキが召喚した楽器やリバーシなんかを楽しみながら鍛練している事すらあった。

端から見れば森エルフとダークエルフのうら若き乙女が広場でレジャーシートに座り戯れているようにしか見えない。

しかし彼女達が戯れている場所の遥か上空では物凄い風魔法が蠢いていて、最近では鳥を見かけなくなった気がするとイツキが言っていた。


「あのね、…エルフ系種族の妊娠しやすいタイミングってわかる?」


ララミーティアが耳をピコピコさせながら怖ず怖ずとそう尋ねると、ジンジャーエールを飲んでいたララハイディが耳をピコピコさせながらゴホゴホと盛大に咽せる。


「ににに、妊娠?わ、私は子供の頃に里を飛び出しているから分からない…。子供にそこまで踏み込んだ性教育を進んでするような教育熱心な森エルフはいない…。みんな呑気。」

「まぁそれもそうよね…。何となくそんな気はしてたわ。」


ララミーティアがララハイディの背中をさすりながら苦笑いを浮かべる。

ララハイディは少しだけ深刻そうな表情をしながら呟く。


「でも…確かに由々しき問題…かもしれない。私もいつかそういう知識が必要になるかもしれない…。理想の男を見つけて捕まえるのがゴールでは無かった…。うっかりしていた。これは新たな問題。誰に聞けばいいのか…。」

「人族みたいな短命種と違って、私達って月の物の期間が長いでしょ?集落で聞いたけれど、人族はひと月くらいの周期みたいじゃない?私達は周期が長いせいか、種族的に出来にくいのか、タイミングが悪いのか、あの…ま、毎日イツキとね?その…。」

「交尾?」


ララハイディが遠慮なくそう言うと、ララミーティアは耳が痙攣しているのではないかというくらいにピコピコさせてララハイディに抗議する。


「こ、交尾って!まぁ…間違っては居ないかしら…。とにかく!毎日あんなにしてるのにさっぱり子供が出来ないから、何で出来ないんだろうって理由が全然分からないの。まぁイツキと知りあって一年だからまだ全然情報がないんだけれどね…。」


ララハイディは耳を激しいピコピコさせたまま俯いてしまう。


「わ、私はやたら人族からモテる…、人族は差別が酷いくせに森エルフだけは…、話が逸れた。ティアに逆に聞きたい。」

「あら、何かしら?」


ララハイディがしどろもどろになって顔を真っ赤にしながらララミーティアに尋ねる。

ララハイディの耳はとんでもない早さで、もはや痙攣しているかのようにピコピコ動いている。


「その…、男と女の…、その、そういう、…交尾は全く経験がない…。した事は勿論の事、見たことも聞いたことも無い…。いざという時しっかりまぐわいあえるだろうか…。痛いとは聞いた事がある。ティアはどうやって学んだの?」

「えっ、わ、私っ!?私も誰からもそういうのは学んでないわ…。」


ララハイディが顔を上げて怖ず怖ずと質問を続ける。

ララミーティアも顔を真っ赤にして耳をピコピコさせてしまう。

しかしふと優しい微笑みを浮かべて遠い目をする。


「それでは、…ど、どうやって?その…。」

「…ふふ、お互い初めてだったから夢中だったの。心がね、求めるまま素直に欲望に身を任せて居れば何とでもなるわ。したい事、して欲しい事、難しく考えないで心が求めるままに動くの…。恥ずかしいけれど大切な思い出よ。」


ララハイディはしばらくぼんやりとララミーティアを見つめる。


「なるほど…。習うより慣れよ、という事。あまり気負いして臆病になっても仕方のないことなのかもしれない。心が求めるまま…。心が求めるまま…。」

「そうね。…それにしてもやっぱりエルフと人族とでは子供が出来ないのかしら。」

「とにかく安心してほしい。町中にはシティエルフが居る。彼らは人族の中で産まれるけれど、遥か昔に森エルフの血が混じっているからこそ、先祖返りして産まれると言われている。つまり人族と森エルフ族は子が成せるという事。」

「そうよね…。シティエルフの親は片方必ず森エルフって訳じゃないものね…。」

「ただいまー。どうしたの?何だか2人揃って耳をピコピコピコピコ、随分照れているようだけど、何かあった?」


背後から突然イツキの声がして思わず身を屈めてしまうララミーティアとララハイディ。


「ビックリした!ふふ、内緒。」

「そう、内緒。女同士の内緒。」


そう言うとララミーティアとララハイディは見つめ合う。

イツキはよく分からないといった表情で肩をすくめるのだった。




夏真っ盛りになったが、魔境の森は案外涼しく、特に夜は離れでもそこまで寝苦しい夜は無かったようで、ララハイディには暑かったらいつでも本邸で寝て良いと言ってはいたが、冗談なのか本気かのかよく分からない「2人の交尾の気配を感じたくない」と言う理由で本邸で寝ることはしようとしなかった。


イツキとララミーティアは恥ずかしくなり、ムキになって「ハイジが居るときくらい我慢する」と出来そうもない事を言ったが、何よりそんな茹だるような熱帯夜が来ること魔境の森にはなく、ララハイディが本邸で寝る事はなかった。


ララハイディは洗浄魔法で身体を綺麗にするのが当たり前だったが、居候生活が始まってからは風呂がとても気に入ったようで、最近はララミーティアと一緒に入ることもしばしばあった。

そんな打診をララハイディから受けた時はイツキも快くララミーティアを譲るのだった。

明日はどっちが一緒にララミーティアと風呂に入るかイツキとララハイディとで相談していると「私は人気者ね」といってララミーティアはクスクス笑うのだった。


ある夜、ララハイディがララミーティアと一緒に風呂に入った時に、湯船に浸かっていたララハイディが舐めるようにしてシャワーを浴びていたララミーティアの身体を見回し、無表情ながら多少深刻そうな口調で呟いた。


「ティアは凄くスタイルがいい。出るとこは出ているし引っ込んでいるところは引っ込んでいる。森エルフでは見かけない悩ましげなスタイル。胸が草原のように平らな私としてはとても羨ましい。記念にまさぐらせて欲しい。どれどれ…。」

「ち、ちょっと!急に何を言い出すの!」


ララミーティアは驚いてララハイディを見る。

ララハイディは手をいやらしく動かしながら湯船からララミーティアを狙っている。


「同じエルフ系の種族でも違いがあるのだろうか。何か特別な謎の実を食べて育っただとか、特別な体操をしているだとか、秘訣があるのだろうか。今後の為にも凄く知りたい。胸が大きいと男は喜ぶと聞く。」


真剣なララハイディに困り果ててしまうララミーティア。


「誰からそんな事を聞くの!?私は物心ついた頃から奴隷で、本当に幼いうちに逃げ出して、暫く大陸中のあちこちを転々としてたわ。だから特別な物を食べたり、何か特別な事をしていたりとかは無い…かしら。多分ね。ふふ、そもそも謎の実って何よ。」


ララハイディは湯船の中で腕を組んだまま考え込んでしまう。


「特別な事はない…。その生活であれば何か気を使う余裕がある訳ない。やっぱり種族的な違い…?親譲り…?森エルフでティアみたいなスタイルの人は見たことがない。」

「そんなに心配しなくていいと思うけれどね。私から言うと嫌みに聞こえるかもしれないけれど、最初知りあった頃、イツキはそんな胸がどうとかお尻がどうとか全然見ていなかったと思うわ。いつも私の顔や唇を見てたわ。ふふ。」


思い出すように遠くを見ていたララミーティアがシャワーを終えて湯船に浸かる。


「そ、そうなの?男の人は胸や尻やそういう所しか見ないと思ってた…!」

「まぁ大抵はそうかもしれないけれど、本当に好きになったらそんな事は些細な問題だと思うわ。そんな胸やお尻ばかり見る男なんてこちらからお断りでしょ?胸が大きいからあなたがいいって選ばれて嬉しい?嬉しくないでしょ。」

「…確かに…。」


ララハイディがしばらく考えこむ。

そのうち2人とものぼせそうになって風呂から上がることにした。



風呂上がりにイツキは2人にアイスクリームを用意してくれていた。

ララハイディは風呂上がりのアイスクリームが大のお気に入りのようで、いつも少しだけテンションが上がっている様子がイツキでも段々感じ取れるようになっていた。


「イツキ。イツキに聞きたい。」

「ん?何?」


何時もなら無言でアイスクリームに飛びつくララハイディが予想外の行動をとったので、少し驚くイツキ。


ララハイディは無表情のまま平坦な声で質問を続ける。


「イツキはティアと付き合い始めた時のキッカケの中に胸やお尻は含まれなかった?ティアは胸もお尻も出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいる。女の私から見ても神秘的で悩ましい肉体をしている。それに比べて私は胸もお尻も出ていないから段々不安になってきた。」


イツキは飲んでいた麦茶を吹き出してしまい、咽せてしまってゴホゴホと咳き込む。

ララミーティアが耳をピコピコさせながら風呂場から出てきて慌てイツキにかけよる。


「わーっ!何て質問してるの!ちょっとイツキ大丈夫?」

「ゴホッ!ゴホッ!だ、大丈夫…!」


ララミーティアから背中をさすられてイツキは漸く持ち直す。


「ふー、急にビックリしたよ…。そうだなぁ、真面目に答えれば、その辺は後から気がついた感じかなぁ。キッカケはそんな見た目なんかじゃないよ、内面的なところだよ、内面的な。」

「内面的?」


ララハイディが首を傾げる。

イツキは手に持っていたコップを弄びながら話を続けた。


「ティアのこれまでのつらい過去を知って、そんなティアが俺と知りあって幸せだって言ってくれて、でもそんな幸せがなくなってしまうのが怖い、独りに戻るのが怖いって泣いてさ…。でもさ?幸せだって言ったけど、もっと幸せにしたいなって思ったし、ずっと傍にいたいなと思ってさ…。だからティアがどんな見た目かなんて全然関係なかったよ。」


ララハイディもララミーティアもダイニングテーブルの席についてイツキの話を聞いていた。


「なるほど…。その話を聞くと確かに見た目は関係なさそうではある。とても参考になった。勇気が湧いた。」

「それなら良かったわ。付き合っていく上で一番大切だなと思うのは心と心だと私は思う。心と心が繋がって絡まり合う時が一番心が満たされるの。」


ララミーティアが耳をゆっくりとピコピコさせながら幸せそうに言う。

イツキも「確かに」と言って頷いている。


「ま、まぁ神秘的で悩ましい肉体ってのは同意ではあるかな…。」

「もうっ!イツキったら!」


こっそりララハイディに同意するイツキだったが、ララミーティアに腕を抓り上げられてしまう。


「いててててっ!仕方ないでしょ、本当にそう思うんだから!」

「そうだそうだ。思ってしまう物は仕方がない。」


イツキの苦しい言い訳にララハイディは援護する。

ララミーティアは思わず笑い出してしまった。


ララハイディも少しだけ微笑みながら笑い、3人で笑い合っていた。



そんなのんびりもした3人の生活が続き、やがて季節はイツキとララミーティアが知りあった秋の始まりの季節に差し掛かった。


面白かったという方はブックマークや☆を頂けますと幸いです。

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