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ダークエルフと暮らす異世界間違い転生  作者: 三沢 七生


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77.謝罪

お陰様で20000PV突破しました!

いつも読んで下さっている皆様、ブックマーク登録や評価、それにお気に入りを入れて下さる皆様、本当にありがとうございます。


気持ち的には一人一人握手をしてお礼の言葉を言ってまわりたいくらいです。


イツキとララミーティアが本邸に帰ると、辺りはすっかり夜になってしまっていた。


夕食についてこれから作るという選択肢は既に2人には無く、イツキが定食を召喚してパパッと済ませようという事ですんなり意見はまとまった。

イツキもララミーティアもどうせ人生は果てしなく長いのだから、手を抜くときは思いっきり手を抜こうというのが2人の合い言葉になっていた。


ララミーティアは離れにいるララハイディに声をかけに向かい、やがてララハイディを伴って本邸に戻ってきた。

ララハイディは相変わらず無表情で、耳が動いていないと何を考えているのかさっぱり分からないイツキだった。


3人で本邸のダイニングテーブルに座る。

イツキがまずはゲストでもあるララハイディに質問を投げかけた。


「さてさて、肉と魚と野菜、食べるなら何がいい?好きなやつを選んでいいよ。」

「肉。間違いなく肉を選択する。私は肉が食べたい。肉大好き。」


かぶせ気味に即答くるララハイディにクスクス笑うララミーティア。

イツキは「じゃあアレだな!」と息巻いてハンバーグ定食を人数分召喚した。


「この丸い肉は何?何の肉?」

「これは牛や豚の肉を細かくして捏ねて丸めて焼いた物だよ。フワフワしてジューシーで美味しいんだこれが。」


初めて見るハンバーグをじっと見つめるララハイディにハンバーグについての説明をするイツキ。

ララミーティアはパンと手を叩く。


「食べてみれば分かるわ。さ、食べましょう。」

「うちでは食べるときに『いただきます』って挨拶をしてから食べるんだけど、ハイジもいいかな。」


ララハイディは「ん」と言ってコクッと小さく頷く。


何度か発音の練習をしてからイツキのかけ声で3人でいただきますをして夕食が始まった。

『いただきます』についての説明をしたり、ララハイディが興奮気味に耳を激しくピコピコさせながらハンバーグについての感想を述べたりと、ララハイディはあくまで無表情なだけで、特に無口という訳ではないようだった。


これまで食べてきた物の中でとびきり美味しかった物や、食うに困ってやむを得ず食べた変な模様の蛇が不味かった上に身体中に紫色のブツブツが出来てすぐに治癒魔法で治したけれど気持ち悪かった等、長年放浪しているせいかエピソードを豊富に持っているララハイディの話にイツキやララミーティアはすっかり夢中になってしまった。


食べ終わって食器に洗浄魔法をかけてイツキが自身のアイテムボックスに食器を仕舞ったとき、黙り込んでいたララハイディが意を決したようにララミーティアをジッと見つめながら口を開いた。


「ティア。私はティアに謝らなければならない事がある。」

「あら、どうしたの?」


ララミーティアはなんて事無いようにしてララハイディに返事をするが、既になにを言わんとしてるのか薄々気づいているようで、少しだけぎこちない堅い表情をしていた。

ララハイディは耳を少しだけ下へ向けてしゅんとしたような態度で話しを続ける。


「ティアが居ないとき、イツキに抜け駆けのように卑怯な事をした。黙っているのはフェアではないから言う事にした。もう諦めたなんて言ったのに嘘を付いた…。私は愚か…。」

「うん…。何となくそんな感じはしてたわ。」


ララミーティアが切なそうな表情を浮かべる。

ララハイディはララミーティアをジッと見据えて口を開く。


「でもイツキには本当にティアしか見えていなかった。私の無茶な要求にもとても誠実に対応してくれた。私はもう本当にこれっきり諦めることにした。平和な2人の間を嵐のように掻き回してしまって申し訳なかった。この通り。」


ララハイディ終始無表情で平坦な口調のままで謝罪を述べ、話し終わると深々と頭を下げた。


「頭を上げてちょうだい!今回の一件でね?お互いの気持ちをより深く知れたの。だから今更全然なんとも思ってないわ。」

「そうだね。誰かを好きになることは別に悪い事って訳ではないよ。そんなに自分を責めないでよ。俺達のことはさ、本当に気にしないで良いから。ね?」


2人の様子を見守っていたイツキが穏やかな表情を浮かべてララハイディを励ます。

ララハイディは頭を上げて無表情のまま言葉を続ける。


「ありがとう。明日から気持ちを切り替えて鍛練に集中したい。そういう訳で改めてよろしく。」




それからララハイディを鍛える日々が始まった。


ララハイディは既にかなりの強さではあったが、それでもやはり魔力を回復できるズルい手段が無いと、ある程度からはいくら戦えどステータスが伸び悩んでしまうらしい。

元々森エルフは高速詠唱で威力の低めの詠唱魔法を連発するスタイルが得意で、例え魔力が高くて高威力の魔法が使えたとしても案外MPの伸びがそこまで良くないのも森エルフの特徴らしく、高威力の魔法を乱射するような事は難しいと言っていた。


あくまで比較的高い敏捷性や技量を生かして弓で戦うのが森エルフの本懐らしい。


今もララハイディは早速魔法を使ったままの状態で広場に敷いたレジャーシートに座り、平然と会話をしている。

ガレスやルーチェも近頃は魔法を使いながら2人で会話をしていたりする。

無詠唱魔法に慣れると詠唱に気を取られる事がない分、使い勝手が飛躍的に向上する。


ララミーティアも何だかんだララハイディに対抗心を抱いたのか、久し振りに魔法の鍛錬をするといってララハイディと一緒に魔法を使ってMPを消費していた。

2人とも遥か上空で上級相当の風魔法を使い続けているらしいが、いくら空の上を見てもイツキには何も分からなかった。

いつまでも口を半開きにして空をジッと見上げているイツキを見て、ララミーティアは吹き出してクスクス笑っていた。


「ハイジは森エルフの秘薬だっけ?それは作れないの?」


イツキがふと思ったことをララハイディに尋ねてみる。

ララハイディは「ん。」と言ってイツキの顔を見る。


「あれを作れる者は里でも極わずかしか居ない。あれは先天的に覚えるスキルで、後天的に覚えることは出来ない、と思う。なぜ『思う』と言うかと言うと、後から覚えた人が居ると聞いたことがないから出来ないと言ってるだけだけ。兎に角私が里を飛び出した時点でも作れる者は年寄りばかりで、たまに若い森エルフの中にも作れる者がいる程度だった。ひょっとすると今頃作れる者は居なくなっていても可笑しくない。居るかもしれないし居ないかもしれない。」


強さを追い求めているララハイディがララアルディフルー式のスパルタ鍛錬を日頃やっていなさそうな理由がわかった。 


ララハイディは先天的に手に入れるその秘薬を作るスキルを覚えられなかったのだ。

スキルと言うものは得手不得手はあっても、そんな先天的とか後天的だとかという要素もあるんだとイツキは初めて知った。


種族特性はともかく、何となくだが、後から習得出来ないスキルなんてクソゲー要素があるのかとも考えたが、スキルや種族特性に引っ張られているだけで、ここはゲームの世界ではないのでイツキは頭を左右にブンブン振って思考を振り払った。


「アリーも確か森エルフなら誰でも作れるってわけじゃないって言ってたかしら。知らなかったからか私にもそれ以上は教えてくれなかったけど先天的だとか後天的だとかは初耳ね。どおりで私に秘薬の作り方を教えてくれなかった訳ね。」

「森エルフなら誰でも作れるという類の物であったら、今頃森エルフは奴隷狩りやどこぞの人族の国の手によって里を滅ぼされているかもしれない。私自身も作れないことを悔やんだこともあったけれど、作れないからこそあちこち放浪の旅が出来ているのかもしれないと思うと作れなくて良かったかもしれない。」


ララハイディの言うとおり、森エルフなら作れるという物であれば、国や貴族のような存在は確実に森エルフを抱え込みたいだろうし、それは盗賊やテロリストのようなアウトローな存在も同様だろう。


「でも森エルフなら作れる可能性がある以上、奴隷狩りみたいな連中から狙われそうな気がするけどね。」


イツキが眉を八の字にしながら肩をすくめる。

ララハイディは右手の人差し指をピンと立ててイツキとララミーティアを順番に見つめる。


「イツキやティアには注意して貰いたいところだけれど、案外世間一般では森エルフの秘薬は全然認知されていない。それこそ国や高位の貴族、高名な魔術師とかでないと存在を知らない。他の里でもそうなんだろうけれど、私のようにあちこち放浪の旅をしているような森エルフは少ない。私自身ブラブラしてても森エルフには中々会わない。町中に居る髪の色や眼の色や肌の色がバラバラなシティエルフならともかく、精々他の種族に嫁いだという森エルフに会ったことが一度あった程度。だから秘薬の存在は広まらない。」


森エルフ達も森エルフの秘薬の存在が自分達の存続に深く関わることを理解しているのだろう。魔法に長けた者が森の中で暮らす分には過剰な儲けは不要というはイツキもララミーティアもよく理解している。


「森の中で暮らす分には儲ける必要はないものね。自分達の種族を危険に曝してまで人族の国のお金をいっぱい欲しがる必要もないわ。」

「そう。それでも国や高位の貴族のような連中が秘薬の存在を知っている理由としては、遥か千年ほど前に森エルフが大陸中の様々な種族の集団に提供していたらしいから。森エルフの残念な性格なんだけど、どうしてそんな事をいちいちしていたのかについては全然言い伝えられていないし、文章としても残っていない。寿命が長いから人族みたいにマメに何かしら残そうとする習性が泣けるほどない。だから、何となく千年前くらいまでは提供していたらしいとしか知らない。何ともあやふやな話なので本当かどうか怪しい。」

「…ふぅん。」


ララミーティアは相槌を打つと空を見上げて考え事を始めた。


「うーん…。んー?」


イツキも腕を組んでしばらく思考の海に漂う。


「あら、イツキも今の話でおかしな点に気がついたかしら。あ、そろそろ魔力が尽きるわ…。」

「私もそろそろ。」


ララミーティアが自身のアイテムボックスからイツキの出す水を取り出して飲む用意を始める。

イツキも組んでいた腕を元に戻し、水を自身のアイテムボックスから取り出してララハイディに手渡しつつも口を開く。


「うーん。記録を残さないながらも、世代交代の回数が人族とは全く違うからさ、話の信憑性は人族なんかよりも圧倒的に高いと思うよ。そこは森エルフの良い点だね。」

「なるほど…。過去の話なんかが経由する世代の数が森エルフ族は限り無く少ないから、余計な着色や書き写し間違えがなく、極めて正確に伝わりやすい。とイツキは言いたい?」


ララハイディの答えにニッコリして頷くイツキ。

ララミーティアが少し嫉妬心を抱いてイツキの腕をグイッと引っ張る。イツキはララミーティアの頭を撫でてララミーティアの膨れ面に微笑み返す。


「ハイジの推察通り、人族や獣人系種族なんかの短命種はいくらマメに記録を残したとしてもさ、世代交代を重ねるうちに余計な着色や写本を作るときの書き間違い、火事や戦争、紛失や盗難、兎に角色々な邪魔なんかが入っちゃって、千年も経つと「こんなの作り話だろう」とか「実際は大した事はなかったんだろう」としか思えないようなデタラメな話になっている事が多いんだ。本として残っていたとしても「当時の文字が解読出来ない」とか「色んなパターンがあって、一体どれが元祖なんだろう」とか、多分俺の居た世界だけじゃなくて、この世界も同じだと思う。」


ララミーティアとララハイディはうんうんと頷く。


イツキは喋り終わった後ら暫く考え事をしているような難しい顔をして腕を組んでいた。


「不思議な点…。ハイジの言うことが本当の話だとすると不思議でならないね、解せないんだよ。森エルフのさ、巨大な王国!とか、過去は栄華を極めたとんでもない一大勢力だった!とか、そういう話や証拠が残っていたのなら兎も角、そんな事はないでしょ?」


イツキの問いにこくっと頷くララハイディ。


「ない。ずっとリャムロシカの里はリャムロシカの里。」

「でしょ?じゃあ何でそんな死の商人の真似事みたいな事をいちいちしていたんだろう。森エルフの秘薬を大陸中にバラまく利点って何だ…?そんなのは面倒だし、大儲けした形跡もない…。儲け以外でそんな面倒な事をして得する事って何だ?自分達以外に提供したら、下手すれば力を付けた多種族に里を攻め込まれて、占領される危険だってあったんだよ?」


イツキは腕を組んで再び考え込む。


「ララアルディフルーが何か日記とかを遺していてくれているのなら兎も角、千年程生きた森エルフがそんな事をするとは思えない。真相は歴史の中に埋もれてしまった。イツキの言うとおり、言われてみれば可笑しな話。森エルフの里はずっと変わらないから、提供せざるを得ない何か、提供された他種族も森エルフをどうにかしようと企まない程に切羽詰まった何か事情があった。うーん、わからない。」

「そうね。当事者が居ない以上難しそうな問題ね。当時の大陸が一丸となって何かと戦っていたのかしら。それこそ御伽噺のようね。」


ララミーティアがフラフラになりながら水を一気に呷る。

ララハイディも見様見真似で水を呷ってみて、無表情が少しだけ崩れる。


「冷たくて美味しい…!私にとってはこの水が冷たくて美味しい方が重要。」

「ふふ、確かにその通りね。考えたって答えが出てくる話ではないわ。美味しいものの事を考える方が有意義そうね。」

「その通り。当事者はもう誰も生きていない。そんな事よりも私達はこの後のお昼ご飯について議論すべき。」

「ふふ、そうね。ハイジは何が食べたい?」

「肉。肉。肉。」

「えぇ…?また肉?朝もカツサンド食べてたし、昨日の夜もハンバーグ食べたじゃないの。」

「同じ肉でもステーキ部門はまだ食べてない。」

「まぁ!ふふ、ハイジったら!」


森エルフとダークエルフがこうして仲良くピーチクパーチクお喋りに花を咲かせながら鍛練している姿の方が、よく分からない千年前のことよりよっぽど重要だなと腕を組ながらしみじみ思うイツキだった。


「お昼はそうだなぁ…。牛の肉のステーキにするかね。ニンニク醤油風味のすっげー美味い奴…。やば、涎垂れそう。」

「むむ!少し早い昼食にしよう!直ちに!」

「ちょっと!お日様はまだ天辺ではないわ!さっき食べたばかりでしょ!でもニンニクショウユって美味しいのよね…。あぁ…。」


ララミーティアも遠い眼をしながらウットリとした表情を浮かべる。

ララハイディは珍しく顔を赤くしながら耳を激しくピコピコさせてララミーティアにすがりつく。


「ずずずするい!私も早急に食べたい!私だけニンニクショウユという物を知らない!!お日様の動きが今日は何だかおかしい!何時もより遅くなっている!」

「ははは、何か腹減ってきたな!じゃあもう食べちゃうか!まぁ長い人生のうちにそんな日があってもいいでしょ。」


ララハイディがリャムロシカの里に五千年前から伝わる伝統的な喜びの舞だと言って、デタラメにクネクネ動き回る。

イツキとララミーティアは腹が捩れるほど笑い転げ、いつの間にか3人とも空腹状態が進行していて、再び笑い出した。

ララハイディも更に珍しい事に控え目な笑顔で笑っていた。


広場は今日も平和だ。

今日の18時に本編とあまり関係ない閑話を挿入しました。

よろしければ是非見て下さい。

面白かったという方はブックマークや☆を頂けますと幸いです。


ちなみにリャムロシカの里に伝統的な舞いなどはなく、そもそも五千年もリャムロシカの里が続いているのかすら誰も知りません。

ララハイディのテンションが上がったときに飛び出す森エルフジョークとなります。

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