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ダークエルフと暮らす異世界間違い転生  作者: 三沢 七生


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67.恥ずかしい朝

乳白色の夜明けが朝を告げる。


窓の木製扉の隙間から朝日が射し込んでいる。

ララミーティアはふと目を覚まし、ララアルディフルーから譲り受けた自分の小屋のベッドでぐっすりと寝ていたことに気がついた。


むくりと上半身を起こしてふと隣を見ると、横にはあどけない寝顔ですうすうと眠っているイツキが居た。

イツキは無防備にララミーティアが居た方を向いて眠っており、時折むにゃむにゃと幸せそうに表情を変えたりしていた。


(ふふ、いつもカッコいいイツキも寝顔はまだまだあどけないのね…)


ララミーティアはイツキを起こさないようにイツキの頭を撫でる。

手の平からイツキの体温が伝わってきて、ララミーティアの心は幸せで満たされる。


(そういえば…、お酒を飲んでからの記憶が全然ないわ…、イツキがわざわざここまで運んでくれたのかしら…)


ララミーティアは窓の木製扉を静かに開ける。

窓の外に何気なく目をやり、想定外の光景を見て驚愕する。


「えっ!あれっ…、なにこれ…。ここはどこ?私の小屋だらけ…?」

「んっ…、おはよう。ティア。」


イツキが目をこすりながらむくりと上半身を起こす。

大きなあくびを一つして、目から溢れてきた涙をゴシゴシと手でこする。


「大変よ!ここどこ?いつもの広場じゃないわ…!」

「あー、はは…。そうかそうか。んー、まぁ大変っちゃ大変…かな?でもそんなシリアスなやつじゃないよ。」


イツキが頬をポリポリとかいて苦笑いをする。

ララミーティアは昨日ミーティア集落に居たことを思い出し、イツキにあれこれ質問責めをする。


とりあえずイツキは朝食を適当に召喚し、テーブルに朝食を並べながら順番にララミーティアに説明をしていく。

話を聞いてララミーティアは顔を真っ赤にして耳をピコピコさせながら俯いてしまった。


「私、もうここには来れない…!恥ずかしい…!」

「はは、平気だよ。みんな暖かい目で見てたから、多分平気。」

「だって…!」


するとトントンと扉を叩く音が聞こえてくる。


「お腹減ったよー。朝ご飯頂戴ー。」

「ルーチェもお腹ペコペコだよ。」


小屋の中にガレスとルーチェが入ってくる。

後ろにはニコニコしている聖フィルデスと、げっそりしたベルヴィアが佇んでいる。


「おはようございます。天気も良いですし、折角ですので外で食べませんか?」

「頭痛いわ…、ティアちゃん、助けて…。聖女の力で二日酔いを治して…!」


そうしてとりあえずイツキは並べた朝食は全てアイテムボックスに仕舞い込み、ララミーティアを促して外へ出た。


朝の凛とした空気を胸一杯に吸い込んだイツキはレジャーシートをアイテムボックスから取り出して適当な場所に敷き、全員分のサンドイッチを召喚して改めて朝食を取ることにした。

ララミーティアはベルヴィアの二日酔いを治し、ベルヴィアはいつも通りの元気をすぐに取り戻して「お腹が減った」と騒ぎ出した。


集落は朝が始まったばかりなのか、水くみに出てくる人や薪を取りに来る人等が外に出てくる程度で、人はまちまちだった。

皆、ララミーティア達と視線が合うと「おはよう」と軽く挨拶をするだけで、何となく気を使われている気がしたララミーティアは終始耳をピコピコさせていた。


朝食が始まるとイツキはじとっとした視線をベルヴィアに送り、わざとらしく丁寧に喋り出す。


「そういやそういやベルヴィアさん?あなたね、ティアの小屋の召喚を許可してたのはいいんですが、小屋の中のレイピアとロングソード。あれも召喚しちゃっていましたよ。武器ですけど?武器。」

「げっ、マジ?酔ってたから見落としてた…!ち、ちょっと!今のうち全部回収してしてよ!イツキー…!」


慌ててイツキに縋るベルヴィア。

イツキは苦笑いを浮かべつつ何十軒ものララミーティアの小屋を片っ端から回って武器を回収してまわった。



イツキがレジャーシートまで戻るとララミーティアの周りにはそっとしておく事が我慢できないと言った人々が既に何人かララミーティアに集まっており、ララミーティアは顔を真っ赤にしながら俯いてしまっていた。


「ティアちゃんおはよう!」

「旦那さんと仲が良さそうで、幸せをお裾分けしてもらっちゃったよ。」

「ティアちゃんも普通の女の子なんだねぇ。」

「ああ、私も情熱的に愛されてみたいわ…。」


集落の女たちが集まってきて、早速もてはやされてモジモジして照れ笑いを浮かべているララミーティア。

イツキはとりあえずレジャーシートに座り、ベルヴィアに回収完了の報告をする。


「とりあえず回収完了完了したよ。これどうするの?」

「えー…、どうしよう。イツキにあげる!そうよ!イツキにあげる!ね?一番丸く収まるでしょ?」

「適当だなぁ、本当。まぁ確かに俺達で持っているのが一番無難かな…。しかしこれどっちもミスリル製だったよ。俺もただのインテリアかと思っていたけれど、魔力を流したらちゃんと新品同様になったよ…。」


イツキが両手にレイピアとロングソードを持ってベルヴィアに見せてみる。

ベルヴィアがしげしげと武器を見つめてふんふん言っている横でガレスとルーチェがじっと武器を見つめている。

イツキがその視線に気がついてガレスに声をかける。


「お、これ2人にやろうか?どうせいっぱいあるし。」

「え?いいの?なんかマズいんじゃないの?」


ガレスの心配そうな声にイツキがベルヴィアに声をかける。


「いいでしょ?ベルヴィア。」

「そうよ、貰っときなよ!2人とも貰ってもどうせ悪用なんてしないでしょ?こんな剣一本くらいで儲けることも出来ないし。イツキとティアちゃんの子供の証としてもっておけば?」

「凄く欲しいけど、そんな軽い感じで貰っちゃっていいのかな…?」

「貰えるならルーチェも貰いたいかなー。」


ガレスがロングソード、ルーチェがレイピアをそれぞれ貰った。2人はさっさと朝食を済ませて剣を振ってみたいと集落の外へ行ってしまった。


集落の子供たちも枝を持ってガレス達について行った。

ガレス達が普通の子供のように遊んでいるのを微笑ましく眺めるイツキだった。


その後ベルヴィアがどうせバレたんだからと言って、ララミーティアに小屋を召喚しても良いと御墨付きを出し、早速シモンと相談しながらララミーティアが小屋を規則的に量産していった。


既に召喚してしまったものについてはそのままでも良いとのことだったので、すべての小屋をそのまま集落に差し上げることになった。

ついでに昨日召喚したテーブルや椅子も全て集落に寄付し、逆に足りない物についてはイツキが追加で召喚して希望者に配って回った。




「本当にイツキとティアちゃんったら遠慮深いの!2人とも『みんな忙しいのにお祭りなんて迷惑だ』とか遠慮しちゃってさ!」

「はは、ここまでして貰って忙しいなんて有り得ないです!夜の見張りも必要なくなったし、畑を広げる計画も全部終わりました。冬を越えて足りなくなっていた集落の備蓄も潤沢になりましたし、畑の作物も成長が驚くほど早いです。住居不足の問題もたちまち解決して下さいましたし、忙しい訳がないですよ!」


ベルヴィアが早速シモンと仲良くなってあれやこれやベラベラと喋っている。


「そうよねー、忙しい訳あるかっつーの!ガレスですら絶対忙しい訳ないよって分かるのに!しかしあれね、やっぱりみんなでパーッと騒ぐのって楽しいわねー!何か欲しい物があったら遠慮なくバンバン言ってよね!ね?イツキ!ティアちゃん!」


ベルヴィアが自慢げにイツキやララミーティアに促す。

イツキとララミーティアは当たり障り無い事を言って誤魔化そうとする。


「はは、まぁそうだね。ちょくちょく来るので、困っていることとかあったら言って下さい。」

「そうね。加護の性質上、儲けようとかそういうのには使えないようになっているけれど、自分達で消費したり使う程度であれば対応できるわ。」


イツキとララミーティアの答えにポカンとするベルヴィア。


「へ?儲けるのに使え…ぐえっ!」

「はは、本当にベルヴィアは何言ってるんだろうなぁ。」

「そ、そうよ!ほらほら、二日酔いだったんだからちょっとあっちで横になりましょう。」


そういうとララミーティアは肘鉄をお見舞いしたベルヴィアを引きずってレジャーシートまで連行する。

心配そうにベルヴィアを見るシモンを適当な話題でつなぎ止めるイツキだった。

ベルヴィアを連行したララミーティアによる説教が始まる。


「ちょっと…!ペラペラペラペラ!儲けるのに使えるって思われて、ここの集落の人達が楽ばっかりするようになったらどうするの…!本当に要らない事ばかり言う悪い口ね!このっ!」


ララミーティアがベルヴィアの口をつねりあげる。


「いでででででーっ!!!いだい!!さ、最初に『わらし、いいことおもいついた!!』って言ってゲラゲラ笑いながら小屋を召喚しまくったのは誰よっ…!それが無かったらぁ?召喚がバレる事なんてぇ?無かったのではなかろうかっ?んっ?んっ?んーっ?違いますかねぇ?今回ね、他に何か原因あります?何か違うってソースあります?んーっ??」


ベルヴィアの物真似による反撃に耳をピコピコさせて俯いてしまうララミーティア。

ベルヴィアはしたり顔でララミーティアに迫る。


「うっ…、悔しい…!イツキー!」

「ふっ、勝ったわね!論破よ論破!はい論破ーっ!はーやれやれ、負けを知りたいわ私!」


イツキは困り果てたような表情でララミーティアを抱きしめて「よしよし可哀想に」と背中を撫でる。

聖フィルデスがたまりかねてベルヴィアの背後から音もなく近寄り、ベルヴィア耳を引っ張る。


「ろんってあいたたたたたたたーっ!ちょっと誰よ!!痛いじゃな…あっ、聖フィルデス様!!」

「こらっ…!女神たるベルヴィアクローネが見守るべき子ら相手にムキになって言い負かして、一体何を考えてるの…!あんな揚げ足取りで何が論破ですか!」

「ひえぇぇ、すいませーん…。」


小声で聖フィルデスから懇々と説教を受けるベルヴィア。

ベルヴィアは正座して身を丸くしてジッと説教を聞いている。

その様子を見てイツキはニヤリとしながらララミーティアの肩をたたいてベルヴィアを指差す。

涙目になっていたララミーティアは、ベルヴィアの情けない姿を見てクスクス笑い始める。


「お酒飲むとティアがああなるのを言わなかったのは悪かったけどさ、ティアの包み隠さない本音が聞けてよかったと俺は思っているよ。」

「イツキ…、私恥ずかしいわ…。」


ララミーティアがイツキに寄りかかる。

イツキはララミーティアの肩を抱き寄せて話をつづける。


「ティアの好きだって気持ちは伝わっているし、俺だって言葉では表せなくてもどかしい時くらいあるよ。」

「…本当?」


ララミーティアは抱き寄せられたままポツリと呟いた。

イツキは困った表情をしてララミーティアの髪に唇を一つ落としてから話を続ける。


「おいおい、こんな場面で嘘はつかないよ。言葉ってのは万能じゃないから、伝えたい事がいつも全て伝えられる訳じゃないよ。そう言うときは言葉だけじゃなくて他にも色々手段ってあるでしょ?」

「色々?」


ララミーティアがイツキの顔を見る。

イツキはララミーティアをジッと見つめる。

イツキの真剣で熱い視線にララミーティアは顔を赤くしてはにかみ出す。


「ふふ、急にそんなじっと見て…、どうしたの?」

「ね?視線という手段もある。後は触れ合ったり、抱き合ったり、もっとほら、その後っていうか先というか…、ね?色々まだあるでしょ…。と、とにかく伝え方って他にもあってさ、口に出すだけが表現じゃないよ。」


イツキがしどろもどろになりつつララミーティアに必死に伝える。

ララミーティアは自分を必死に励まそうとしているイツキが堪らなく愛おしくなり、横からギュッとイツキに抱き付く。


「ふふ、早速伝わった。私を一生懸命励まそうとしているのが。私、気持ちが少し楽になったわ。だから私もあの手この手で気持ちを伝えるわ。」

「ああ、今でも十分伝わっているんだけどなぁ。とは言え凄く楽しみにしてる。」

「ダメよ。私自身が伝えてる気になってないんだもの。口で説明できない分、もっと色々!ね?」


ララミーティアが妖艶なほほえみを浮かべてイツキを見つめる。


「あー、しかし昨晩は嬉しかったなぁ。ティアがみんなに自慢して回りたいくらい俺のことが好きなんて泣き出すからなぁ~。」

「もうっ!悪い口ね!ほら、こうよ!」


ララミーティアが抱きついたままイツキの脇をくすぐり出す。

しっかり抱き付いて離れないララミーティアに必死で抵抗するイツキ。


「はは、やめて!ははは!ちょ、あはは!」

「ふふふ、もう離さない!こちょこちょよ!」



この集落で慕われている聖女様が気さくで普通の女の子な一面、夫のイツキとの仲睦まじく寄り添い合っている姿に、集落での信仰心は一段と高くなるのだった。


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