56.本当の家族
天啓ウィンドウが閉じて、イツキとララミーティアは並んで座っていたソファーの背もたれにドサッともたれ掛かり、漸くホッとため息をつく。
しかしガレスとルーチェは目を輝かせてソファーに座ったままで前のめりになってイツキとララミーティアに次から次へと質問を繰り出す。
「凄い!凄いよ!イツキはこの世界の人族じゃなかったの!?遠くから来た人だから珍しい物ばかり持ってるのかと思ってたけど、違う世界から来たなんて!凄いよ!」
「ティアもルーチェと同じでみんなから虐められてたんだね。ルーチェもティアみたいに強くなれるかな!?」
「2人とも凄いなぁ!俺達も2人みたいになりたいな!」
「ルーチェ、ワクワクしてる!」
イツキとララミーティアはもたれ掛かったままの姿勢で目を合わせて苦笑いを浮かべる。
「そうだなぁ。2人とも本当によく頑張ってくれるから教え甲斐もあるしね。大人になる頃が今から楽しみで仕方ないなー。」
「ルーチェもガレスもきっと強くなれるわ。なんせ私達の大切な子供たちなんですもの。私達の手に掛かればお手の物よ?」
ガレスとルーチェはキョトンとして2人を見つめる。
「ん?どうした?」
「俺達、2人の子供?」
「本当に?いいの?」
イツキは横に座っていたララミーティアの肩を抱いて、優しい笑顔を浮かべてガレスとルーチェに言い聞かせるようにゆっくりと喋る。
「ああ、俺達の大切な子供だと思っているよ。だから何も心配するなよ。ルーチェを守るのはガレスだけじゃない。最強の俺達がガレスとルーチェを1人前の大人になるまで守ってやるさ。」
「そうね。親としては初心者だけれど、あなたたちさえ良ければあなたたちの両親でありたいと思うわ。」
ガレスは大きく見開いた目からポロポロと涙を流し始める。
ルーチェは無邪気な笑顔をパァッと顔中に咲かせる。
「こんな押し掛けるようにやってきて、寝床から食事まで、さらに一日中鍛錬に付き合ってくれて…、何から何まで…、本当に何から何まで、ありがとう…。ありがとう…。」
「ルーチェお父さんとお母さんが出来た!イツキ!ティア!大好き!」
イツキはソファーから腰を上げてガレスとルーチェの後ろへ回り、そっと2人の頭に手を置いてポンポンと優しく叩く。
「だからさ、急いで強くなろうとするなよ。もっとゆっくり大人になりなよ。もっと俺達に世話を焼かせてくれよ、な?」
「そうよ、あんまり早く巣立たれては寂しいわ。着せる服を選んだり、みんなの事を考えてご飯を作ったり、一緒にご飯を食べて口を拭いてあげたり、寝かしつけた後に寝顔を見たり、私も家族ってこんな感じなんだろうなって幸せなの。こちらこそありがとうよ。」
後ろに立っていたイツキとララミーティアにギュッと抱き付くガレス。
ルーチェも横から抱き付いてニコニコしている。
「そうだそうだ、2人とも加護が与えられたみたいだからステータス見てみる?」
イツキが思い出したようにして指をパチンと鳴らしてガレスとルーチェに問いかける。
ガレスとルーチェはイツキとララミーティアからパッと離れると、お互い顔を見合わせてクスクス笑う。
「実はウィンドウ魔法の初級が使えるようになったんだよ。」
「そうなの!自分で見れるの!」
そう言うと2人とも詠唱もせずにウィンドウを出してみせる。
イツキは「おー!頑張ったなぁ」と感心して2人の頭を撫でる。
ちなみにウィンドウ魔法が使えるようになると、初期では主に自身のステータスとスキルが閲覧でき、中級は時間経過するアイテムボックスと周辺のマップ、上級になると時間の経過しないアイテムボックスが、と言った具合で生活が圧倒的に便利になる。
「最近魔法の鍛錬をしてるときに少し練習してたのよ。後はアイテムボックスは出せるようにしたいわね。」
ララミーティアがそう言いながら得意げにしている2人のステータスウィンドウを覗き込む。
「あら、2人とも家名が増えてるわ。ガレス・モグサにルーチェ・モグサ。立派に私達の家族ね。」
「本当だ…!家族か…、嬉しいよ!」
「えへへ、お父さん!お母さん!うーん、なんか呼びにくい!」
ルーチェが照れ臭そうにして笑う。
イツキとララミーティアはニコニコしながら2人に提案する。
「我が家は呼び方は自由!そういう仕組みです!」
「そうね、呼びたいように呼べばいいわ。」
ガレスはステータスウィンドウを見ながらウィンドウ画面を指してイツキとララミーティアに話し掛ける。
「ほら、これ加護が増えてる。『デーメ・テーヌの加護』『テュケーナの加護』だってさ。おお!それに少しステータスも上がってる。すげー!」
「わ、本当だ!2個もある!」
ワイワイと喜んでいる2人にララミーティアが優しい表情で微笑んだ。
「もうちょっと大きくなったら、ここへ来る行商人について行って大陸を回るのもいいかもしれないわね。『テュケーナの加護』は商売人向けの加護よ。色々大陸を回っているうちにきっとこれからの2人の生き方も見つかるかもしれないわ。」
「そうだなぁ、『デーメ・テーヌの加護』は確か農業とかにも向いてた筈だから、割とどこでも生きていけるんじゃないかなー。」
ガレスは2人の意見を聞いて「なるほどな」とあれこれ思案しているようだった。
しかしルーチェがふと不思議そうな表情を浮かべる。
「あ、そういえば家族は結婚していいの?前、ガレスが「親とか兄妹とは結婚しない」って言ってたよ?」
「あら、ふふふ。2人の場合は問題ないと思うわ。」
「そうだね、別にガレスとは結婚しても大丈夫だよ。」
「えっ!ちょ、ちょっと!…そ、そうだなルーチェ。俺達は本当に兄妹って訳じゃないだろ?」
思考の世界から半ば強制的に戻ってきたガレスは、顔を真っ赤にしつつ努めて冷静そうに喋る。
ルーチェは安心したような表情で「良かったー!」とガレスに抱き付いてはしゃぐ。
「じゃあ結婚しよ!ガレス!」
「ああ、…えーと、大人になったらな?」
慌ててそっぽを向くガレスに、ルーチェは眉を八の字にしてガレスへ詰め寄る。
「なんで?なんですぐはダメなの?イツキとティアはすぐ結婚したって神様たち言ってたよ!」
急にルーチェから無邪気なキラーパスが来てギクッとするイツキとララミーティア。
イツキは頬をポリポリと掻き、ララミーティアは耳をピコピコさせている。
「あー、…あれだ。俺達の場合はほら!お、大人だったからだ。大人は別にすぐ結婚しても大丈夫だ。」
「そ、そうね…。2人が大人になったらすぐにでも結婚すればいいと思うわ。」
「なんで大人じゃないとダメなの?なんで?」
その後ルーチェの「なんで?」攻撃が始まり、タジタジになったイツキは高級アイスクリームを召喚してどうにか誤魔化す事に成功するのだった。
今日の18時に本編とあまり関係ない閑話を挿入しました。
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