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ダークエルフと暮らす異世界間違い転生  作者: 三沢 七生


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閑話.狂気の昼食

ガレスとルーチェが転がり込んできて間もない頃の昼食時の出来事です。

子ども達がやってきてご飯のバリエーションに少し気を使うようになった。 


これまでは大人しか登場しない生活だったので、いつも通りの渋い定食ではなく、ガレスやルーチェがもっと喜ぶような物を食べさせたいと考えていたイツキ。

とは言えこれまでの境遇からか、ガレスとルーチェは出すもの全てを喜んで食べていた訳だが、そんな中でイツキは子供が大好きな物を想像しているうちに、大事な物を思い出した。

寿司だ。


イツキにとってすればララミーティアもガレスもルーチェも立派な外国人だ。

やっぱり意外性のあるもので驚きを提供したい。

そうなるとやっぱりスシ・テンプーラ・スキヤキだ。


その御三家の中で一番衝撃のあるパンチの効いたやつは寿司だ。

何となく避けていたが、やっぱりこの世界は生魚を食べる習慣はなさそうだ。

ララミーティアもそもそも魚を食べる機会も少なかったようだし、大陸中をあちこち放浪しているテッシンやキキョウと食べ物の話をしても生魚についての話が出たことはない。


驚いてからの美味しさに感動のいうベタベタな流れを想像すると思わずにやけてしまうイツキ。

おもてなし大好きな如何にも日本人らしい事を前世ではやらなかっただけに、転生してから食べ物でサプライズを仕掛けるのが楽しくて仕方ないイツキ。

ミーハーでも何でも構わない。

昼食の時間になり我慢できずに口を開くイツキ。


「今日の昼は新しい物を召喚します。子供が大好きな鉄板。寿司です!」

「スシ?それ私も初めて聞くわ。」

「俺も聞いたことがないです。」

「るちぇ、しらない。」


イツキはそんな3人の反応を見てふふんと胸を張る。


「まずは食べて判断してくれ、よし!召喚、スーパーのパック寿司!」


胸を張った割に出てきたのは色々なネタが12貫程入っているものだ。

それを見た3人はぽかんとして寿司を眺める。


「これ…、えーと…。」


ララミーティアが困惑してイツキに尋ねようとするが、言葉が続かない。

ガレスはなるほどなと納得したように声を上げる。


「分かりました!これは魔法の鍛練も兼ねているんですね!?火魔法でこの生の魚に火を通して食べろと言いたいのですね?」

「ガレス、すごい!」

「あぁ、成る程ね。そうでないと生の魚を食べるなんて狂気の沙汰をするわけがないものね。イツキは面白い発想をするわね。」


勝手に納得して盛り上がる3人を慌てて窘めるイツキ。


「いやいやいや!これそのまま食べるやつだから!火で炙らないから!酢を混ぜたご飯に生魚をこんな風に切って乗せて食べるんだよ。こういう料理を『寿司』って言うんだ。」

「えぇ…。だって…。」

「本当に大丈夫ですか…?お腹壊しそうです…。」

「おなか、こわす…?」


完全にドン引きした3人の空気を打ち破ろうとイツキは慌てて説明を始める。

ちなみにガレスやルーチェにはイツキが転生者であるという事は明確に説明はしていなかったが、ガレスは文化の全く異なる遠い異国に住んでいた人なんだと何となく頭の中で処理しているようだった。


基本的にガレスもルーチェも自分達が暮らしている大陸の全貌を殆ど知らないようだったが、奴隷や平民の理解はその程度らしい。

なのでイツキは遙か遠い異国から来た人なんだとあっさり理解し、特に疑う様子もなく受け入れていた。


「この辺りでは生の魚は食べないだろうけれど、俺が居たところでは普通に食べられたの!徹底して管理されている魚だから絶対にお腹は壊さないから!絶対だ!ほら!ほら!醤油は知ってるでしょ?」


そう言うとイツキはアイテムボックスから出した小皿4皿に、同じくアイテムボックスから出した醤油を垂らす。

そしてマグロを手に取ると醤油につけてヒョイと食べた。


「こうやって醤油にちょんちょーんと漬けてさ…、いざ口の中へ!あー旨い!これマジうめー!絶対安心!」


大袈裟に誉めるイツキに、ララミーティアは寿司をじっと見つめる。


「2人とも大丈夫よ。鑑定結果でも安全って書いてる。私が人柱になるわ。」

「ひ、人柱って!人聞き悪いな!平気だよ!」


ガレスとルーチェにそういうとララミーティアはサーモンを手に取る。

イツキが用意してくれた小皿の醤油にちょんちょんとつけ、思い切って口に放り込んだ。


物騒な事を言うララミーティアに抗議の声をあげたイツキだが、こういう時のララミーティアの思い切りは凄いことをイツキは知っている。


「…わぁ…、これ美味しいわ!ああ!美味しい!何というか、もう美味しい!」


ララミーティアは目を輝かせて次から次に食べ始める。

あまりの美味しさに語彙力を失っているララミーティアを見て、漸く子ども達も徐にララミーティアが最初に手に取ったサーモンを醤油に漬けて食べてみる。

するとガレスもルーチェもカッと目を見開く。


「これ美味しい!うわっ!なんだこれ!凄い美味しい!」

「るちぇ、これすき!おいしい!」

「カッカッカ!そうであろう!そうであろう!」


イツキは気分を良くしてニコニコしながら3人の様子を眺めていた。


ララミーティアもだが、ガレスやルーチェも基本的に好き嫌いをしたりお残し等は決してしない。

境遇的な物から来るのかもしれないが、あっと言う間に完食してしまった。


地球の感覚で言えばタコやイカなどは子供にはあんまり人気はないだろうなと何となく思っていたイツキだったが、ガレスとルーチェはどれも美味しい美味しいと目を輝かせながらペロリと平らげてしまった。

年配者がどんどん食え食えとあれやこれややたら勧めてくる気持ちが理解出来たイツキだった。


何でも出せば目を輝かせながらワッと食べてしまうのだ。


3人とも少し足りなかったようでイツキはもう1セット同じ物を召喚して気に入った物はどれかとヒアリングする事にした。


「そうね…。私はこれとこれかしら。」


ララミーティアが選んだ物はえんがわとイカだった。


「俺はこれとこれが好きですね。」

「あ!るちぇも!るちぇも!」


ガレスとルーチェが指さしたのはマグロとサーモンだった。


イツキは腕を組みながらうんうんと頷き、アイテムボックスから出した適当な大皿に個別でイカとえんがわ、マグロとサーモンをいくつか召喚した。


更に回転寿司の店に置いてある粉末の抹茶を召喚し、イツキは粉末をカップに入れて魔法で熱湯を出して緑茶を堪能した。

ララミーティアもイツキの飲むお茶に反応し、同じ物を欲しがったので用意して渡したら気に入ったようで粉ごと貰って喜んでいた。


昼食も終わり、ガレスはお腹をさすりながら満足そうに感想を述べる。


「いやぁ、生の魚があんなに美味しいなんて想像がつかなかったです。もっと生の魚って生臭かったり泥臭いのかと思ってました。」

「そうね。多分この大陸で同じ物は再現できないと思うわ。生肉を食べないのと一緒で魚を生で食べようなんて思う人は絶対居ないもの。」


ララミーティアも粉末の緑茶をずずっと飲みながらうんうんと頷く。


「俺が元居た場所でも、最近でこそあちこちの国で食べられるようになったけれど、元々は俺の生まれた国くらいしかやってなかった文化だと思う。魚を生で食べる為には運搬技術、冷凍技術、魚を人工的に育てたりとか、兎に角並々ならぬ苦労があるんだ。魔法がない環境だからね、先人達の苦労は半端じゃなかったと思うよ。」


イツキの言葉にララミーティアは唸る。


「そうなのよね。イツキの居た世界は魔法がないのよね。想像がつかないわ。」

「そうですね。魔法がない世界ですか…。本当にそんな場所があるんですね…。と言うことは魔核も無いんですもんね。さぞ不便でしょうね。」


ララミーティアの意見にガレスも同意する。

ルーチェは分かっているのか分かっていないのか、とりあえず真面目な顔をしてうんうんと頷いている。


「魔法がない世界なのに、この世界よりも遥かに進んだ文明だったんでしょ?例えばみんな火なんかはどうやって起こすのかしら。」

「あー、えーとね、ガスを使うんだよ。知ってる?ガス。」


イツキの発するガスという単語に首を傾げる一同。


「何かしら。全く聞いたことがない言葉ね。ガス、ガス?」

「るちぇ、しらない。」

「がす?うーん、そうですね…。」


イツキは腕を組みながらなんと説明したら良いのか思案する。


「えーとね…。ガスは気体なんだけどね、気体も分かんないか…。あっ!身近なガスがあるな、汚い話だけどオナラもガスっちゃガスかな?」


イツキの言葉にお茶を飲んでいたララミーティアは思いっきりお茶を吹き出してしまいゴホゴホと咽せる。


「ゴホッ!ゴホッ!イツキの居た世界ではオナラを集めてみんなで使っていたの!?」

「ええっ!?そんなまさか…。」

「あはは!おなら!おなら!」


たとえ話に失敗したイツキが慌てて否定する。


「違う違う!ややこしい事を言っちゃったな!ごめんごめん!オナラは忘れて!もうあれだな…、召喚!カセットコンロとカセットガスボンベ!」


そうしてテーブルの上にカセットコンロと三個パックのカセットガスボンベが出てくる。

それでもララミーティアとガレスは疑いの眼差しをイツキにむける。


「このカセットガスボンベにガスっていう空気が入ってるんだよ!それを燃やすの!」


イツキがパックになってるカセットガスボンベを1つ強引に抜き出して3人に見せながら紹介する。


「へぇ…、これにオナラが…。」

「その金属の筒は触っても臭くなりませんか…?」

「くさそう!」

「オナラから離れて!一旦オナラは置いておこうか!?」


そう言いながらイツキがカセットコンロをセットしてつまみを捻ると青い炎が勢いよく出てくる。


「これ火?青い火なんて初めて見るわ…。」

「普通の焚き火なんかの倍くらい熱いんだったかなぁ。これは持ち運び用なんだけど、家とかでは各家庭までこれが使えるように管をそこら中の地下に張り巡らせたり、巨大なこのカセットガスボンベを設置して使ったりとかするんだよ。」


イツキの説明に漸く納得したララミーティアが息をのむ。


「イツキの居た世界は物凄い数の人が住んでいたんでしょ?その凄い数の人達の家全てに…、本当に途方もない話ね。でもこの青い火を明かりに使うには暗くないかしら?」

「あー明かりは別で、電気を使うよ。ほら、天気が悪いときに雷がピカピカ光でしょ?あれの力。」


ララミーティアがへぇと唸る。


「あれって人の手で制御できる物なのね…。魔法でも雷属性なんて無いわ。無詠唱魔法なら再現できるかもしれないけど、あまり使っている人は見たことがないわね。」

「へぇ、そうなんだ。後で再現してみようと思ったけど、強力過ぎてオーバーキルになっちゃうよ多分。兎に角詳しい仕組みは俺も良く分かんないけど、雷の力を人工的に起こして、それをあちこちに金属の線を通して送ってるんだよ。その力で色々な物を動かしてるから魔法が無くても便利な世界になっているんだよ。」


3人は結局殆ど理解出来なかったが、とりあえずイツキからはまともな情報は出てきそうもないなと思い、それ以上詮索することは無かった。


そうして狂気の昼食は『寿司美味しい』というイツキも思わずニンマリする結果に終わった。


面白かったという方はブックマークや☆を頂けますと幸いです。

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