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ダークエルフと暮らす異世界間違い転生  作者: 三沢 七生


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閑話.冬の過ごし方

真冬のとある1日の出来事です。

冬が本格的にやってきて、膝の辺りまで雪が降り積もって2人を本邸の中へと頑なに塞いでいた頃。


辺りは一面雪で本邸の中は何となく仄暗く、憂鬱な気分にさせられそうな様相だったが、イツキとララミーティアには全く関係のない事柄だった。


最近ではイツキが定番のリバーシやトランプを召喚してララミーティアに教え込んでいたので、暇どころか案外楽しく健全に過ごせていた。


リバーシについては最初の頃こそイツキの圧勝だったが、ララミーティアも慣れてくるとイツキでは到底太刀打ちできない程にマスターしてしまった。

ララミーティアは元々地頭が良いようで、トランプの神経衰弱についてもイツキではまるで相手にならなくなってしまっていた。

しかし得意気にふんすと鼻を鳴らすララミーティアが無性に可愛らしく、イツキは懲りもせずに今朝も果敢に強敵ララミーティアに挑んでは儚く散ってゆくのだった。


「ま、負けた…。」

「ふふ、リバーシって楽しいわね。頭の運動になるわ。」


ララミーティアが最後の一枚を白くひっくり返しながら微笑む。

大差でイツキがボロ負けという形で勝負がついた。


「最初の頃は俺の方が強かったハズなのになぁ。ティアは地頭が良いんだろうなぁ。俺みたいに出たとこ勝負の突撃兵じゃないもんなぁ。」

「ふふん、何手も先を読んでいるもの。悪いけれどイツキには負ける気はしないわ。」


ふんすと得意気なララミーティアをニヤニヤしながら見るイツキ。

そんなイツキの妙な視線に気が付いて耳をピコピコ動かすララミーティア。


「何?そんな顔してどうしたの?」

「いやー、ティアの得意気な顔が可愛くてさ、負けるのを分かっていてもつい挑んじゃうんだ。可愛いよティア、可愛いなぁ本当に!堪らん!」


そう言ってイツキはララミーティアの後ろに回り、後ろから抱き締めた。

ララミーティアは頬をぷくっと膨らませる。


「もうっ!そうやって…。もう…。」

「可愛いよ。ティア…。」


イツキがララミーティアの膨れた頬を人差し指でプスッと萎めさせる。


「…。」


ララミーティアは目眩にも似た恍惚感に耐えきれず、身をゆだねるようにしてイツキの方を向いて抱きしめ返す。

そうして2人は互いを求め合い、うっとりとしてしまうような幸福感を飽きるまで味わうまでがよくある1日のパターンだった。

お互い堕落しているなと自覚こそあったが、どうせ時間はいくらでもあると思うと、心の奥底から湧き上がりさざ波のように広がる官能に身を任せてしまうのだった。




やがて夜になり、流石に腹が減った2人はダイニングテーブルに座って何を食べるか相談を始める。

用意する手間が面倒になった時はイツキが召喚して済ませるのが2人の生活パターンになっていた。


晩御飯くらいは自分で用意したいと当初言っていたララミーティアだったが、流石に時間も遅くなった時は遠慮せずイツキに任せることにしていた。


「何か食べたいものはある?無かったら俺の方で適当に見繕うけれど…。」

「うーん、そうねえ。まだ食べたことがない物がいいかしら。何かある?」


ララミーティアの提案に腕を組んで暫く考え込むイツキ。


「そうだなぁ、味噌カツ定食かな…。」

「ミソカツ?」


ララミーティアは首を傾げる。


「トンカツは知ってるでしょ?あれに味噌を基軸にした甘いソースをかけたもので、これがなかなか旨いんだ。あぁ、考えただけで涎が溢れてきた…。」

「ふふ、それは楽しみね!」


イツキは辛抱たまらんと言わんばかりに早速味噌カツ定食を召喚した。

お盆の上にご飯と赤出汁の味噌汁、ちょっとした漬け物とメインの味噌カツは千切りキャベツが添えられている。

そして白くて四角い容器。


「わあっ、美味しそう!これが味噌カツね。ところでこの白いやつは何かしら?追加のソース?」

「おっと、これも初めてだったね。これは納豆っていう発酵食品だよ。これはちょっと独特な物だからダメそうだったら無理しなくていいからね。ちょっと見てて。」


そう言うとイツキは納豆のパックを開けて、蓋を切り離す。

タレとからしを取り出した納豆に掛かっているビニールをビヨーンと引っ張って蓋の上に乗せる。

箸で納豆をぐるぐるとかき混ぜ、からしとタレを投入して更にぐるぐるとかき混ぜ、やがてご飯の上に乗せる。


ララミーティアは完全にドン引きしていた。


「イツキ…。それ腐ってるわ…。その豆、臭いし糸を引いているじゃない。そんな豆食べたらお腹壊すわ…。」

「どっこいこれはそういう食べ物なんだ。これがまた旨いんだ…。とは言え元の世界でも日本人くらいしか好き好んで食べなかったから、無理そうなら無理で良いよー。」


イツキは納豆の匂いを嗅いで「うーむ」と言って満足そうな顔をする。

ララミーティアは引きつった顔のままだ。


「それを出されたら私、そっちの白い容器を食べると思うわ。」

「えー?容器の方が食ったら腹こわすよ!試しに一口食べてみる?健康にも良い!美容効果も高い!日本人が編み出した最強の発酵食品だよー?」


イツキが納豆をかけたご飯をララミーティアに差し出す。

ララミーティアは恐る恐る茶碗を受け取る。


「害のある食べものでは無さそうね。鑑定結果もイツキと同じようなことを言ってるわ…。よしっ!」


そう言うとララミーティアは思いきって納豆ご飯を口にした。

あまりの潔さにイツキが一瞬驚いてしまう。


「あっ!ティア!大丈夫…?」

「んっ、んーっ!えっ!?えっ!?これ…、これ美味しい!何これ!臭いのに何でこんなに美味しいの!何で!?」


ララミーティアはカッと目を開いてそのままあっと言う間にかき込んでしまった。

イツキは納豆がすっかり気に入ったララミーティアに思わず破顔してニコニコしながら見つめる。


「ごめんなさい、つい全部食べてしまったわ。今まで食べた中でも屈指の美味しさよこれ。意外性が凄いのかしらね。この匂いも慣れてくると臭く感じないわね。」

「良かった良かった!思わぬ形でティアを満足させられて良かったよ!納豆俺も好きだよ。こんな見た目だからちょっと引け目を感じてたけど、これからは普通に召喚しても良さそうだね。」


イツキは別途ご飯と納豆を召喚し、改めて味噌カツを食べることにした。


「で、味噌カツはどう?」

「うん、まぁ美味しいわね。トンカツだものね。」

「そ、そうだね。美味しくて当たり前だもんな。納豆のインパクトには絶対勝てないなぁ。」


そうして2人は見つめ合ってクスクス笑い合った。

その時天啓ウインドウがダイニングテーブルのお誕生日席に開いた。


『イツキ…、何これ…。なんでご飯の時に腐ってる物が出てくるの…?』

『イツキちゃん酷いよぉ。これ何?って開けたら腐った豆が出てきてびっくりしたよぉ。』


デーメ・テーヌとテュケーナがゲッソリしながらイツキにクレームをつける。

イツキ達が召喚する物の中でも食べ物や服についてはベルヴィアが自動的に二柱の手元にも出てくるよう囁かな賄賂が召喚されるようだ。

今回も恐らく二柱の前に全く同じ味噌カツ定食が出てきたのだろうが、どうやら何も知らずに納豆のパックを開けて絶句したらしい。


イツキとララミーティアは笑いながら納豆について説明した。

結果デーメ・テーヌとテュケーナも納豆を気に入ったようで、終始ララミーティア同様に興奮しながら納豆の意外性について述べていた。




夜も更けて湯船にお湯を張った。

イツキは以前ドラッグストアで試供品として貰った入浴剤を召喚して湯船の中にサラサラと入れる。


手でぐるぐるとかき混ぜると木の湯船の中は白濁色のお湯に変わる。


「おーい、ティアー。お風呂入ったよー。入ろうー。」

「はーい、今行くわ!」


脱衣所で既に服を脱いでいたイツキがララミーティアに声をかける。

ララミーティアは返事とともに脱衣所にやってきて、ワンピースを脱ぐと洗浄魔法をかけて綺麗に畳んだらそのままアイテムボックスの中に仕舞い込んだ。


ララミーティアは普段ワンピースを好んで着るのだが、その下に下着は特に着用しない。

狩りに行くときは胸にさらしのような物を巻くが、日頃は胸が苦しくて好き好んで巻かないといつぞや言っていたように、日頃は本当に下着という下着は何も着用していない。

そんな艶めかしいララミーティアを何度見てもイツキは心の奥の方からもぞもぞと何か熱いものが沸き上がってくるような感覚を覚え、思わずララミーティアを抱き寄せてしまうのだった。


「ふふ、でもダメ。まずはお風呂が先よ。」

「そうだね。中々慣れないもんだよ本当。ティアが欲しくて溜まらなくなるんだ。魅力的過ぎるよ、ズルいな。美人だよ、本気の美人。絶世の!」

「もうっ!我慢出来なくなるわ!行きましょ。」


名残惜しそうに身体を離すイツキにララミーティアはまるで煽るようにして妖艶な微笑みを浮かべる。


いざ浴槽を目の前にしてララミーティアは驚いたと言わんばかりに声を上げる。


「わぁ!何だかいい香り!お湯が白く濁っているわ!」

「前にちらっと言った入浴剤ってのを入れてみたんだ。説明文を読んだけど、ちょっとシュワシュワしているやつで、肌がツルツルになるのと、後は疲れ、肩こり、冷え症に効くみたいだよ。」


浴槽に手を入れながらイツキの説明を聞くララミーティア。その目は爛々と輝いている。


「早く身体を流して入りましょう!」


そう言ってララミーティアは蛇口を捻ってシャワーを出し、お互いに手早く身体を流したら早速湯船に浸かった。


「「ああああああああ…。」」


2人とも天を仰いで同時に声を上げる。

ララミーティアはお湯を両手で掬って自身の顔にバシャバシャとかける。


「あー、これ凄くいいわ。とてもいい香りがするし、確かに肌に良さそうね。スベスベする。」

「ああ、確かにいいなこれ。いやぁ、こんな事ならもっと風呂関係にお金をかけておくべきだったなぁ。入浴剤ってもっと色々あったんだよ。食べ物といい、俺って本当損な人生送ってたなー。」


イツキも顔にバシャバシャとお湯をかけながら半分独り言のようにして呟く。

ララミーティアはイツキに微笑みかける。


「あら、私はこれで十分よ。イツキと出会うまでお風呂に入ろうなんて微塵も思わなかったけど、今じゃ欠かせない大切な習慣になってるわ。普通のお湯でも有り難いのに、こんな良い香りのお風呂に入れて本当幸せよ。」

「ティアは嬉しい事を言ってくれるなぁ本当。こんな出来た妻が居て俺は幸せ者でございます、だよ。」


イツキとララミーティアは暫く目を閉じてお風呂を堪能していた。

やがてイツキが思いだしたようにして水魔法を使って一口大の氷を出した。


「そういやこれ口の中に入れてごらん。確かお風呂入ってる時に冷たい物を口に含んでいると、身体のポカポカが長く続くって聞いたことがあるんだ。湯冷めしにくくなるんだね。」

「へぇ、そうなの。何でかしらね?」


ララミーティアは大人しくあーんと口を開きイツキが差し出した氷を口の中に入れる。

イツキも自分用に氷を魔法でだして自身の口の中に入れる。


「確かね、口の中が冷たいから身体が勘違いをして身体をもっと温めよう!ってなるらしいんだ。その結果風呂上がりに湯冷めすることもなくなるとかそんな理由だったかな。」

「ふふ、寝るときが楽しみね。」


そうして2人の入浴タイムは暫く続くのだった。




就寝の時間になり、2人はベッドに潜り込む。

お互いに足と足をくっつけると、いつもと違って暖かいままだ。


「確かに全然冷えてないわ。」

「本当だね。ポカポカするよ。」


やがて結局着ていた服を脱ぎ、本能のままに求め合ってしまう2人。


「昼間あんなにしたのに、私たちってダメね。求められたいと思うと溜まらなくなるわ。その事ばかり考えちゃう。」

「ダメな夫婦だねーきっと。でもダメで結構!幸せだもん。その事ばかり考えてるのはお互い様だよ、でもいいんだよ別に。2人しか居ないのに取り繕う必要なんてないよ。」


イツキとララミーティアはクスクス笑い合い、やがて吸い寄せられるようにして唇を重ね合う。

そうして2人の一日は終わりを迎えた。

面白かったという方はブックマークや☆を頂けますと幸いです。

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