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ダークエルフと暮らす異世界間違い転生  作者: 三沢 七生


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50.2人暮らし

8人でワイワイ暮らしていた広場はあっと今にイツキとララミーティアだけになってしまい、ララミーティアはしばらくイツキにくっついて広場で過ごしていた。


「不思議ね。ついこの前まで一人ぼっちだったのに。急に寂しくなっちゃったわ。」

「そんなもんだよ。俺だって一人ぼっちみたいなもんだったのに。前にいた世界では、こういうのを『祭りの後』って言うんだ。」

「『祭りの後』?」


イツキの小屋に戻った2人は、流石にちょっと寒いねとお互いの手を握って暖めあい、やがてイツキはララミーティアを急に横抱きにしてソファーに沈み込む。


「ああ、賑やかだったお祭りの後の物悲しさっていうか静けさっていうか、興奮から醒めた後の虚脱感っていうのかな…。」

「なるほどね。とても的確な表現ね。でも正直、そこまで寂しくって本気で思ってないわ。」


そう言うとララミーティアはイツキの頬にチュッと口付けを一つする。

イツキもいたずらっ子のような表情になったかと思ったら、ララミーティアのおでこに負けじと唇を落とす。


「そうだね。2人きりっていうのも悪くないかなー、…なんて帰ったみんなに悪いかな、はは。」

「ふふ、私達悪い子ね。」

「ははは、言えてる。」


そう言うと2人はクスクス笑いあい、やがて何度も唇を求め合った。




昼になり、どちらからともなく流石に一旦やるべき事をやろうと言って、ララミーティアは畑の手入れを、イツキは短剣術の練習を始めた。

何時もと違うのは、イツキは畑のすぐ近くで練習を行い、作業を進めながら他愛もない話を続けているところだった。

この広場が世界の全てである2人だったが、会話が途切れる事はなく、時々休憩の時にギターを演奏したり、ララミーティアに鍵盤ハーモニカを教えたりもしていた。


「ほらほら!私も教えてもらった曲が弾けるようになったわ!」

「よっしゃ!じゃあ一緒にやってみようか!」


簡単な曲をララミーティアに教え込んで、ギターと鍵盤ハーモニカでセッションすると、ララミーティアは益々目を輝かせてますます楽器にのめり込んでいった。


そして最後には必ず最初に弾いてみせた曲を弾いてちょうだいとせがむのだった。

ララミーティアはうっとりとしてイツキの肩に寄りかかり、イツキもララミーティアを思い浮かべながら弾き語りをする。

2人はこの上なく満たされた生活を満喫していた。




魔境の森にも雪が降り始めた頃にはもっぱらイツキの方の小屋に引きこもる事が多くなっていた。

あっちも小屋、こっちも小屋、少し呼びにくいという話になり、あれこれ案を出し合った結果、イツキの小屋を本邸、ララミーティアの小屋を離れと呼ぶことにした。

本邸は一年中通して室温に変化がなく、冬が本格的にやってきた頃にはすっかり離れに行くことも無くなっていた。


「離れの方は放っておいていいの?」

「ちゃんと魔法で保護してあるから、ちょっとやそっとの雪程度じゃ壊れないわ。いくら暖炉に灯をともしても本邸の快適さには勝てないわ。」


そう言うとイツキにしがみついて丸くなるララミーティアだった。




冬が徐々に本気を出し始めた頃になると、離れにはいよいよ本当に寄りつかなくなっていた。

イツキとララミーティアとで久し振りに離れを訪れ、中にある調理関係の物だけは全てアイテムボックスへ仕舞い、「雪が解けるまで封印ね」と言ってララミーティアはパタンと扉を閉めた。


「これ本当に離れ自体はアイテムボックスに仕舞わなくて大丈夫?」

「んー、隠蔽もしているし、保護の魔法もかかっているから全く問題ないわ。」


イツキの感覚では山小屋のような佇まいだから、人が住まなくなるとあっという間に朽ち果てる気がしていたが、剣と魔法の世界では魔法チートのお陰で全然そんな事はないらしい。


「まぁいつか大陸中を旅するようなことがあったら離れくらいのサイズがちょうど良いかもね。」

「そうねえ。いつかテッシンやキキョウみたいにして放浪するのも悪くないかもしれないわね。」

「あの2人今頃何してるのかなぁ。」

「もうあれからどれくらい経ったかしらねえ。」


季節はすっかり冬になり、大勢でわいわい暮らしていた頃がまるでつい先日の事のように感じる。


「さあ、俺の大切なお姫様がお風邪を召されたら大変だ!さっさと本邸に入ろう!」

「ふふ、それもそうね。さすがに寒いわ。」


2人は肩を寄せ合ってそそくさと本邸へ入っていった。




たまには俺が何か作ると豪語して、イツキはカレーライスを作った。


楽しみにしていてと言われてキッチンから追い出されたララミーティアはアイテムボックスの中身の整理をしていた。

ハーブティーの葉の仕込みや一本一本の鏃の手入れなど、暇を潰そうと思えばやることはいくらでもあった。

イツキはなかなかの手際でさっさか料理を進めていた。

やがていったん火を止めて、市販のカレールーをひとかけらずつ投入して溶かしてゆく。


「あら、なんか不思議な匂いがしてきたわ。スパイス…かしら?」

「正確!さすがティア、料理好きは勘が鋭いなぁ。まぁ実物は楽しみにしてて!」

「ふふ、はーい。」


鍋をおたまでぐるぐるとかき混ぜる姿をウットリと見ていたララミーティアだったが、やがて自分の元の作業へと戻っていった。


暫くしてイツキから「出来たー!」と声がかかり、テーブルに座るララミーティア。

テーブルも大きすぎて寂しいとイツキが言って、2人座ってちょうど良い2人用のダイニングテーブルを召喚していた。


「お待たせー。」

「わぁ、スープ?トロトロしてるわね。お米もよそってある。今まで見たことない料理だわ。」

「これはカレーライスと言って、うーむ、伝統的ってほど昔からあるわけじゃ無かったんだけれど、まあ家庭料理みたいなもんかなぁ。」


ララミーティアがクンクン匂いを嗅ぐ。


「とってもいい匂いがするけれど、これスパイスを使ってるってことは結構辛いんじゃないのかしら?」

「あまり辛くないやつにしてるから多分大丈夫だよ。これは出来合いの物を召喚じゃなくて、作った物をティアに食べさせたかったんだ。ほら、ささ!食べよう食べよう!」

「ふふ、嬉しいわ。じゃあ頂きましょう。」


そう言って2人は手のひらを合わせて「いただきます」と声を合わせて挨拶をする。

ララミーティアが恐る恐るカレーライスを口に運ぶ。


「わぁ!美味しいわ、これ!」

「良かったぁ、おかわりいっぱいあるからね。」

「これがうちの家庭の味になるのね。これが食べたい時は『お父さん』が作ってくれるのかしら。」

「はは、そうだね。『お母さん』が喜んでくれるならいつでも作るよ。」


ララミーティアがカレールーを見てふと気がつく。


「そういえば今度使った野菜とか肉を料理する前に見せてちょうだい。私も召喚出来るようにすれば料理の幅も広がるわ!」

「そうだね、確かにどれもこの森だとあんまり見かけないかもしれないなぁ。」


基本魔境の森で採集出来る物は安定的に収穫出来るわけでもなく、割とトマリスの実のような実っているものや葉物系が殆どだった。


「このオレンジ色じゃない方のヤツはジャガイモって言って根菜なんだけれど、暫く放置して芋から芽が出たら、そのまま畑に埋めて栽培できるから、春になったら埋めてみるのもいいかもしれないなぁ。」

「あら、楽しみね。春が来たらイツキがいた世界の野菜を畑で育ててみるのもいいかもしれないわ。」


そんなこんなで2人の夕餉は賑やかに過ぎていくのであった。


今日の18時に本編とあまり関係ない閑話を挿入しました。

よろしければ是非見て下さい。

面白かったという方はブックマークや☆を頂けますと幸いです。

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