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ダークエルフと暮らす異世界間違い転生  作者: 三沢 七生


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48.新しい事

「はいはいはい、そんな訳で今日はティアちゃんにはミクラノミタマ様の加護を貰ってその練習と農業でも教えて貰って。イツキはね、アテーナイユ様に剣術でも短剣術でもいいからご教示頂きなさいね。あとちょっと検証したいから、夜にでも思いつく範囲で地球の楽器を召喚して欲しいの、よろしくね!」


町へ行った翌朝の事。


みんなでイツキがいつぞやに召喚した大きいテーブルにて朝食を食べていた時に、ベルヴィアが立ち上がって手を叩きながら急に仕切り出す。


「お、おう…。いいけど、急に真面目にどうしたの?」

「何か朝からベルヴィアが真面目だと心配にすらなるわ…。」


ベルヴィアが唐突に仕切り出して訝しむ2人。


「いいの!食べたら始めるわよ!ほら!」


ベルヴィアは誤魔化すように目の前のサンドイッチにかぶりつく。

キキョウはクスクス笑いながらイツキとララミーティアに囁く。


「ふふふ、あれでも2人を心配してるのよお。私達もだけど責任を感じてるの。」

「そんな、責任だなんて…。でも何か新しい事を始めるのも悪くないわね。加護も早く身に付けないといけないし。ねえ?」

「ま、そうだね。いい気分転換になるかな。」




食後、広場にはララミーティアとミクラノミタマが向かい合って立っていた。


「では行きますよ。どうぞ肩の力を抜いて下さい。」

「ええ。」


ミクラノミタマの手元に光の粒子が集まり、やがて木の棒の先端に白い紙が沢山ついたものが現れた。

白い紙はよく見ると途中で何度も折れているようで、風になびいてカサカサと音を立てている。


「この大麻をララミーティア・モグサ・リャムロシカに授ける。」


大麻を受け取って不思議そうに眺めるララミーティア。


「オーヌサ?これは…武器ではなさそうね。何か儀式に使うものなのかしら。」

「ほっほっほ、そうですね。武器ではないです。それを振ることで神様の恵みを伝えるとされているものですよ。その白い紙は紙垂しでと言って、汚れや穢れを集めるっていう願いが込められています。」


ララミーティアは紙垂を撫でながらじっくりと大麻を眺める。


「へぇ、ただの棒と紙の束が何だか素敵な物に見えてくるわね。」

「それをこうして左右に振ってみるのですが、まずはこの辺を適当な大きさに耕しましょうか。そうですね、手始めにここからあそこですかね。」


そういうとミクラノミタマは大体で耕す場所を指示する。

ララミーティアはふんふんと頷きながらも申し訳なさそうに口を開く。


「でも私、畑を作ったことはないから何も道具を持っていないわ。」

「魔法がありますよ、魔法が。土魔法でここら一帯の土や石を細かく砕きながら掻き回すイメージで大地を耕してみて下さい。」

「それなら出来そう。」


そう言ってララミーティアが手に魔力を集中させて土魔法を発動する。

すると地面がボコボコと沸き立つように蠢く。

地面が大人しくなってミクラノミタマが土をサラサラと触ってみる。


「うんうん、合格ですね。本来畑を作る上で一番厄介なのが石なんです。畑として使っていない場所は大小様々な石全てを深さ50センチくらいまで全てを取り除く必要があるんですね。」

「そんなの一々取り除いていたら本当に終わるの!?」

「ひたすらふるいにかけます。畑の規模によりますが何十日は覚悟する必要がありますね。しかしそこで土魔法です。それがあれば一瞬で面倒な工程が終わるわけですね。とは言え本当は砕いた石なんてのは畑の土に向かないんです。」


ララミーティアはぽかんとしてしまう。


「だって、もう混ざりきってしまっているわ。」

「そこで私の加護『豊穣の大地』の出番です。これがあれば土壌が最高品質になるので、どんな酷い土壌でも豊作という訳です。言わばズルです。」


ミクラノミタマはウインクをしてペロッと舌を出す。

お茶目な好々爺にララミーティアは思わずクスクス笑ってしまう。


「ふふ、凄く便利ね!ワクワクしてきたわ!」

「ええ、先ほどの大麻を畑に向かって振ってみて下さい。ご安心下さい、私の加護はかつて多くの子らに配っていたものなので、『聖女の力』のような加護の記憶体験みたいなものはございません。」

「少し安心したわ。それじゃあやってみるわ。」


そういうとララミーティアは見様見真似で大麻を左右に振ってみる。

すると畑全体に魔力が集まってくるのがわかった。

やがて魔力が畑に馴染んでいく。


「はい。終わりです。後はこんな風に畝を魔法で作ってみて下さい。畝というのは畑の水捌けを良くするために作ります。見たことありませんか?畑でよく見るあれです。本当は育てたい物によって畝幅が変わるのですが、まあ多少大きめに作っておきましょう。土地はいくらでもありますしね。因みに日が昇って沈む東西にぐーんと延ばすように作って下さい。そうすると作物が一日中よく日を浴びられます。」

「ウネ?確かに畑ってこんな感じになってるかもしれないわ。あれにも名前があったのね…。とにかくこのデコボコを作ればいいのね。やってみるわ。」


そう言ってララミーティアは再び手に魔力を集中させて土魔法を発動する。

すると地面が縦にボコボコと凹凸を描いて畝を作っていく。

ミクラノミタマは満足そうにうんうんと頷いている。


「いやー、魔法に精通している方が作る畑は、いつ見ても迅速で鮮やかです。魔法が使えない子らはこの工程全てを人力でやるのです。畑の栄養もそうです。自分達の経験と勘で土を調整するんです。それらを簡略化出来るのは魔法使いと加護持ちの特権ですね。」

「これを全て人の手だけでやるなんて想像がつかないわ。魔法が使えることに感謝しないと罰があたるわね。」


ララミーティアは腰に手を当てて畑をしげしげと眺める。

ミクラノミタマが手のひらをポンと拳で叩いて、思い出したようにララミーティアに聞く。


「そうだ、何か種は持っていますか?」

「さすがに何も持っていないわ…。」

「それはそうですよね…。テッシンくんとキキョウちゃんから買いましょうか…。」


もはや植える気満々だった2人は苦笑いを浮かべながらテッシンとキキョウのもとへと向かうのだった。




その頃アテーナイユとイツキは向かい合って木で出来た短剣を持っていた。

イツキが短剣をメインで使うので、とりあえず短剣術を伸ばそうと言うことでアテーナイユが適当に木を加工して突貫で用意した木刀だ。


「この身体は依り代だが、訓練につき合うくらいなら問題なくできる。但し魔法で思考を加速させたり身体強化させたり、あの魔剣はダメだ。私がどうこう以前に、下駄を履かせた力を訓練に使う事は、成長を阻害する原因になる。」

「なるほど…。確かにそうかもしれないです。理解しました。」

「よし、偉いぞ。では手始めに思うままにかかってくるといい。」


アテーナイユは特に構えずに片手に短剣の木刀を持ったまま立っている。

依り代は必要以上の力は持っていないとベルヴィアから説明を聞いていたので、流石に不安になるイツキ。


「依り代は最低限の力しか持っていないと聞きました。本当に大丈夫ですか?」


アテーナイユは豪快に笑い出す。


「ははは!人の心配をする前に自分の心配をするんだな!安心しろ、私は強い。なんせ軍神アテーナイユだぞ。かかってこい!」

「そうでしたね、失礼しました。それでは胸を借ります!」


そう言ってイツキはアテーナイユに短剣を打ち込む。

アテーナイユは短剣を左手に持ち替えたかと思うと、最小限の動きでイツキの短剣をくるりと受け流してしまう。

そのまま右手でイツキの身体をトンと押す。

一瞬よろけたイツキの首元に短剣を静かに当てるアテーナイユ。


「ふふ、勝負あり。だな。」

「…凄い。無駄な動きが一切無かった…。凄い…、凄い!」


放心状態だったイツキは徐々に気持ちが高ぶり、興奮した様子でアテーナイユを賞賛する。


「凄すぎます!最低限の力しかない依り代だとは到底思えないです!これ本物のアテーナイユ様って想像を絶するほど強いじゃないですか!いやー、凄い!」

「真に強い者というのは力ばかりに頼らない、力も大切だが重要なのは技だ。毎日練習していればイツキもやがて同じところまで来れるぞ。だから趣味だと思ってコツコツ練習するといい。いつでも相手になるぞ。」


誉められて満更でもないアテーナイユは、その後ひたすらイツキの攻撃をあの手この手で交わしてイツキの絶賛を浴び続けていた。

その間アテーナイユは最小限の動きだけでイツキをあしらい続け、汗一つかかずにニコニコしていた。


途中からその姿を見ていたベルヴィアは呆然とその様子を見ていた。


「依り代って扱う人によってはあそこまで出来るのね…。軍神は伊達じゃないわ…。私、食っちゃ寝してる場合じゃないのかな…。」


依り代とはいえ、自身の腹の肉を摘まんでみるベルヴィアだった。


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