42.兵器
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「それではイツキまで討伐対象になる可能性があるわ…。いくら負けないとしても、街中で鼻つまみ者になるのは決して気分の良い事ではないわ。」
ララミーティアは俯いてどこか寂しそうな表情を浮かべた。
イツキはそんなララミーティアの姿を見てキッパリと告げる。
「俺はティアさえ居れればそれでいいと本気で思っている。何よりさ、どこの世界に自分の愛する人を討伐しようとする輩と仲良くしておこうなんて思う奴が居るんだ?鼻つまみ者、上等じゃないか。こっちから願い下げだよ。あんなクズみたいなヤツらが俺のティアを平気で傷つけ、虐げたかと思うと、俺悔しくてさ。」
「…イツキ。」
イツキはララミーティアの両手をギュッと掴んで、顔を見つめながら呟く。
イツキの顔は悔しさがにじみ出ていて、どこか悲壮さを感じさせる表情を浮かべていた。
「俺はさ、ティアを害そうとする輩からティアを完全に引き離したいんだよ。日々暮らしている中で、そんな輩にティアの笑顔を曇らせて欲しくないんだよ。俺はティアだけが傍にいればいい。ティアの笑顔の為なら俺…。」
「2人とも、よろしいでしょうか?」
テッシンがイツキとララミーティアに声をかける。
「荒技ですが、2人で今来ていた冒険者が居たと思われるミールの町へ行って、いっそのこと冒険者登録してしまうのはいかがでしょうか?」
「テッシンさん…!それではティアが!」
テッシンは口を真一文字にして考え込むようにしていたが、ゆっくりと口を開く。
「このまま冒険者を遠ざけて生活するのも悪くないでしょう。しかしいつまでそんな生活を続けますか?2人に悪意のある冒険者から横槍が入りつつ幸せに暮らせそうですか?」
「それは確かにそうですが…。」
キキョウがテッシンの横から口を挟む。
「正体不明の『月夜の聖女』が冒険者の妻だったらどうかしら?ミーちゃんの話題で盛り上がっている今、呪いが解けたミーちゃんが姿を表して、さらにその夫がとてつもなく強くて、そんな話題の聖女の夫が冒険者登録をしたら、住人たちはどう思うかしら?」
「キキョウの言うとおりです。実は今このタイミングは2人にとってチャンスなんです。町の住人をこっそり守っていた『月夜の聖女』がやってききた。何だか思ったよりも怖くないぞ。その夫が冒険者登録するらしいぞ。しかも滅法強いらしいぞ。やや、ひょっとするとこの町は安泰なのではないか?」
「その通りよお。もし悪い方向に向かってもあなた達なら町に関わらない、ある程度関わらせない事も出来るでしょう?あの町の冒険者から町中で狙われたとして、あの程度の実力の人達から害される事なんてあるかしら?ねえあなた。」
「キキョウの言うとおりです。」
イツキがふとララミーティアを見てみると、ララミーティアは考え込んでいるようだった。
「ティア。何かあれば俺が守るし、行ってみようか?」
「…それも悪くないわね…。」
「ティアにとってはあまり行きたくない場所だろうけれど、ティアを狙う輩を根絶させる根本的な策になるかもしれないんだ。ダメだったらこの森で2人でのんびり過ごそう?」
「ええ、そうね。私もイツキさえ居ればそれでいいわ。」
ララミーティアは嬉しそうに首を縦に振った。
ベルヴィアはフライドポテトを摘みながらあっけらかんと言う。
「じゃあ今から行ってきなさいよ、明日になったら気が変わっちゃうかも知れないし。」
「え、今から?そんなすぐそこにおつかいに行く訳じゃないんだから、帰りが遅くなっちゃうよ!」
「慣れてる人なら半日以上、慣れてなかったら休憩の回数にもよるけれど、まあ早くても1日以上は間違い無くかかるわね。」
「うーむ、明日の早朝出発かなぁ。アイテムボックスでティアの小屋でも持って行くか?」
イツキは眉を八の字に寄せて考え込んでいると、テッシンが口を開いた。
「それなら私達が空からお送りしますよ。それならすぐ着きますよ?」
「ええ、それがいいわあ。」
「ほっほっほ、空の旅も中々乙なものですよ。一度体験してみるのもいいのでは?」
テッシンとキキョウの提案に、ミクラノミタマも同調する。
それを聞いてベルヴィアの表情がパアッと明るくなる。
「イツキ!ティアちゃん!行きましょう行きましょう!私も空の旅したいわ!」
「ああ、行ってくるといい。私達はのんびりしているさ。」
「どうぞ行ってきて下さい。」
「ほっほっほ、ゆっくり留守番でもしています。」
ぴょんぴょん飛び跳ねるベルヴィアに、他の3柱も留守番をすると言うので、イツキとララミーティアは顔を見合わせ頷き合う。
「それじゃあテッシンさん、キキョウさん、お願いします。」
「ごめんなさいね、2人とも。よろしくお願いするわ。」
「わーい!やったー!」
そうして急遽ミールの町へ行くことになり、帰りも何時になるか分からなかった為、イツキはある程度の食料をアテーナイユへ手渡すことにした。
ベルヴィアも何故か受け取ろうとしていたので、イツキとララミーティアはジト目でベルヴィアを見つめた。
ベルヴィアは「ついね、つい…はは」と誤魔化していた。
念の為イツキは久し振りにこの世界に来たときのフル装備をした。
ララミーティアは少しでも聖女らしくという事で最初に召喚した白いワンピースを着ている。
軽装で本当に問題ないかやきもきしていたイツキだったが、ララミーティアは「全然問題ないわ」とケロッと言ってのけたので、とりあえず信じてみることにした。
2人がララミーティアの小屋の前で全身を整えていたら、ララミーティアがふとイツキに質問してきた。
「ねえイツキ。そういえば背負っているのとその腰にぶら下げている木はなに?」
「ああ、これは多分周囲の魔力を使うタイプだと思うけど、とりあえず魔法を飛ばす武器だよ。こっちの腰の奴はあたると対象が岩でもドロドロに溶ける。」
「あら…、物騒なのね。」
ララミーティアが若干引いているが、いざ使うときに何も知らないよりはいいかと思い説明を続ける。
「そういやこっちの長い方は俺も使ったこと無いな…、俺がもといた地球ではマスケット銃って呼ばれる骨董品だったんだけど、まぁこれも腰の奴とそんな変わんないと思うよ?ちょっと打ってみようか。」
「へぇ、とりあえず向こうの木を標的にしてみましょう。」
そういってイツキが魔境の森の南側の方へ向き、マスケット銃を適当な木に向けて構えて引き金に指をかける。
軽い気持ちで引き金を引くと、銃口の周囲に直径3メートルはあろうかと言うくらいの巨大な魔法陣が浮かび上がった。
銃口に向けて周囲の魔力が光の粒子となってゆっくりと集まってゆく。
まるでサーバを起動したようなファンの音がけたたましく鳴り響く。
「凄い魔力が集まってくるわ。ねえ、これ本当に平気なの?」
「あ、あれ…。なんかこれ…、ヤバいのかな。」
『携帯式魔導重火器砲、起動。魔力充填開始します。充填中…充填完了しました。システムグリーン。次のフェーズに移行します。第一安全性保護機能解除します。システムグリーン。成功しました。第二安全性保護機能解除します。システムグリーン。成功しました。次のフェーズに移行します。』
「ね、ねぇ…!それ、何かペラペラしゃべり出したけど大丈夫なの?それ、物凄い魔力を集めてるわ…!」
「随分大袈裟な武器だなぁ…、これどうやったら止まるんだ…?あれ、あらら、なんかマズいのかな…。」
『サリンジャー・エンハンスド・システム、起動シーケンス開始。システムグリーン。成功しました。次のフェーズに移行します。ショックアブソーバー動作チェック開始。システムグリーン。成功しました。』
「な、なんかこの武器、どんどん盛大な事を言い始めたぞ…、ど、どうしよう!」
「さっきから『グリーングリーン』って言ってるわ!と、止めないとマズいんじゃない…?」
イツキとララミーティアがなす統べなく慌てふためく。
『システムオールグリーン。最終フェーズに移行します。警告。周囲の人員は強い閃光と衝撃に備えて下さい。カウンドダウン開始。5・4…』
「どわーーー!ちょちょちょ!!ちょっと何してるの!!!上上!!上向けて!上!」
ベルヴィアが血相を変えてイツキの元へ全力疾走しながら絶叫している。
『3・2・1・発射。』
イツキが慌てて銃を上に向けた直後、目を開けていられないような光りが弾けて、直径3メートルはある巨大なレーザーが上空遙か彼方へ轟音とともに延びていった。
「あ、危なかったぁ…。」
ベルヴィアがその場にへなへなと座り込む。
イツキ腰が抜けたようにその場にどすんと座る。
「おいおい…。ま、まるで、…波動砲じゃないか…こんなもの、個人が持ち歩いて…ホイホイ撃つ物なのか…?」
「魔導砲といって、正式名称は携帯式魔導重火器砲よ。ほら、なんかさ!撃つまでが、かっ…格好いいでしょ?ロマン溢れるというか…。」
ベルヴィアが取り繕うように顔をひきつらせながら喋る。
ララミーティアはイツキにしがみつきながら震えた声で声を絞り出す。
「下手したら発射した方に一直線に街道が出来るところだったわ…。山脈に穴が空くんじゃないの…?」
「…おいベルヴィア。どこの世界に行けばこんな物を個人が使う用事があるんだ…?溢れたロマンで危うく大量殺戮だぞ…。」
ベルヴィアは誤魔化すようにイツキの肩をバシバシと叩いて作り笑いを浮かべる。
「いやー、あはは。格好良かったけど、ちょっと実用的じゃなかったわね…。イツキ、そう言うわけだからアイテムボックスに仕舞っておきなさいね。ね?」
「お、おう。これいらないな…。手の震えが止まらないよ…。俺、こんなものを気軽に背負って森をウロウロしてたのか…。怖っ…。」
試しておいて良かったと胸をなで下ろしたのだった。
ララミーティアはしばらくイツキにしがみついたまま呆然としていた。
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今日の18時に閑話を挿入しました。
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