37.登場
いつも読んでいただきありがとうございます。
昨日総合PV5000を突破してました。
とても嬉しいです。これからも精進いたします。
翌朝、ララミーティアの小屋のベッドで寝ていた2人が外から聞こえてくる賑やかな声で目を覚まし、ララミーティアが窓の木製扉を少し開ける。
薄暗い部屋の中に眩しい光が差し込む。
広場には既にテッシンとキキョウ、ベルヴィアと後は見覚えのない男女3人が布の上に腰を下ろしてワイワイ朝食を食べていた。
「あら、誰か来ているわ。」
イツキも起き上がり外を見ると、確かに大人数でワイワイ朝食を楽しんでいるようだった。
「ん…、ありゃ。ひょっとして早速神様たちが来たのかな…。とりあえず服着て俺達も行こうか。」
「そうね。急ぎましょう。」
2人は慌てて服を着て広場に向かう。
イツキは転生してきた頃の服装を、ララミーティアはいつぞやに召喚したクリーム色のニット地のワンピースをすっぽり着込む。
ララミーティアはあれから色々召喚したワンピースシリーズがすっかりお気に入りのようで、もっぱらワンピースを色々と着回すようになった。
しかしララミーティアは元々胸にさらしを巻く程度で下着を身に付ける習慣がなく、いつまでもドキドキしてしまうイツキだった。
そんな熱の籠もった視線を感じたララミーティアは悪戯っぽくイツキのおでこを指でつんと押して妖艶な微笑みを浮かべる。
「そんな顔してもダメよ、夜ね。」
「わ、分かってるよ…。見るだけはタダだろ?」
赤くなるイツキに「ふふ」と微笑むララミーティア。
イツキも肩アーマーを始めとした各装備こそアイテムボックスに仕舞ったままだが、ジャケットやスラックスについては割と気に入っていて、かなりの頻度で着るようなっていた。
「来た来た、2人ともおはよう!早速だけど今日から加護の練習をするわよ。一柱ずつ紹介するわ。」
昨晩の事など無かったかのように明るい表情でイツキとララミーティアを手招きするベルヴィア。
イツキとララミーティアが初対面の男女に向かって姿勢を正して立つ。
「まずは聖フィルデス様よ。」
「初めまして。聖フィルデスと申します。よろしくお願いしますね。」
ブラウンの長い髪を後ろで一つにまとめて、おっとりと優しそうな微笑みを浮かべている。
聖女の加護に相応しく、その垂れ目は慈愛に満ちているように見えて、その黒い瞳からは芯が強そうな印象も与える、そんな印象の女神様だった。
「「よろしくお願いします。」」
「よろしくお願いしますね、ティアちゃん。イツキくん。」
聖フィルデスがゆっくりと頭を下げる。
すっと後ろに下がると次にボブヘアーでワインレッドの髪色をした女性が一歩前に出てきた。
「次がアテーナイユ様よ。」
「私がアテーナイユだ。何卒よろしく頼む。」
真っ赤な瞳と切れ長の目、鼻筋の通った凛々しい表情から、とても高潔な印象を与える女神様だ。
立ち姿も凛々しく、城塞の守護者に相応しいなりであった。
「「よろしくお願いします。」」
「イツキと呼ばせて貰う。この後早速練習しよう。」
「はい、よろしくお願いします。」
最後に好々爺と呼ぶに相応しい笑い皺が印象的な老人がゆっくりと前に出た。
「最後にミクラノミタマ様よ。」
「ベルヴィアちゃんありがとうな。私はミクラノミタマという農業に向いた加護を持って神様をやっている者です。今回、久し振りに子らの役に立てる機会に恵まれて光栄です。ティアちゃん、よろしく頼むね。」
「はい。よろしくお願いします。」
「気楽に接して下さいね。」
ベルヴィアがパンと手をたたく。
「とりあえず2人も朝食を食べましょう!テッシンとキキョウが用意してくれたのよ!なかなか美味しいから食べて食べて!」
そう言って再び車座になって赤トマリスのスープと固めの丸いパンを食べる。
イツキにとってはこの世界に来て初めて食べるこっちの世界のパンだった。
そのまま食べるには少々堅すぎるようだったが、千切ったパンをスープに浸して食べるとなかなかの絶品だった。
「へぇ、こんな風にパンを浸して食べると美味しいんだなぁ。」
「そういえばパンのストックは無かったものね。かまどもチラッと見ただけで構造がよくわからないの。」
「うーん、確かレンガがあればできた気がするけど、俺もよくわかんないな。パンは食べたかったら召喚でいいかな。」
「そうね。いつか気が向いたらパンづくりもやってみればいいわ。」
2人がパンについて話していると、ベルヴィアが賺さず割り込んでくる。
「イツキ!パンのお店が作った方のパンを出してよ!いっぱい!」
「おいおい、昨晩怒られたばかりじゃないか…。いいの?」
イツキの指摘にベルヴィアがぶすっとしながら不貞腐れたように呟く。
「今ここで食べるだけよ…。こっそり大量に召喚して天界に横流しはもうやらないわ…。デーメ・テーヌ様とテュケーナ様の分だけ。」
「あら、そんな事してたの?魔力消費の計画に支障はないの?」
「そんな食べ物を多く出したからって計画にそこまで影響はないわよ…。ただね!召喚するものによる魔力消費の傾向は見えてきたの!」
ベルヴィアがぱあっと明るい表情になる。
「へぇ、どんなのを召喚するといいのさ。」
イツキがスープに浸したパンを食べながらベルヴィアに質問すると、待ってましたと言わんばかりにベルヴィアが語り始める。
「この世界の物ではない、ある特定の物の再現に凄ーく魔力を使う傾向があるって事が見えてきたの!」
「えー何だろ?この世界の環境も大抵地球とそんな変わらなそうだけどなぁ。」
ベルヴィアが人差し指を左右に振り「チッチッチッ」と古臭い反応をする。
「石油よ。」
「石油?この世界のものではないって、採掘はされてないだろうけど、存在してないの?」
「ティアちゃんが召喚するこの世界の物は微々たる魔力しか消費してないわ。逆にイツキが召喚する物の中で、出したものに直接石油が絡むと極端に魔力消費が激しいの。製造工程で燃料として使われてるとかはダメ。まぁ存在してるかどうかは分からないけど、全く存在していないものだからかもしれないわ。まぁ、何でそんな事になるのかサッパリだけどね。」
ベルヴィアは眉を八の字にしてやれやれと肩をすくめてみせる。
一応は理解したイツキだったが、これまで石油なんて召喚した記憶はなく首を傾げてしまう。
「へぇ、まあ理屈は良いとして石油が絡むったってさ、石油が使われている物なんて出したっけ?ガソリンでも召喚しろってか?いらないよ、さすがに…。」
「化学繊維、合成ゴム、プラスチック、染料とかシャンプーとか洗剤とか地球は石油めっちゃ使ってるじゃん!素朴な食べ物とかほいほい出すだけだと殆ど魔力を使わないのよ。いまのところ石油しか発見してないけど、逆にそこを気をつけてればずっと召喚も使えるわ。」
話のキリが良いところでララミーティアがおずおずと質問する。
「さっきから2人が言ってるセキユって何?」
ベルヴィアとイツキが目を合わせる?
「えーと、燃料?とか、色んな製品に出来たりとか?ベルヴィア詳しく説明できる?」
「そ、そうね…。地中に埋まってるのを採掘して…。んー、地球で魔法の代わりに…うーん。」
歯切れの悪い2人の回答に首を傾げるララミーティア。
「んー…?」
イツキは苦し紛れに回答を捻り出そうとする。
「よくわかんなくても身近にあるもの…かな?物に加工できる魔力みたいな?」
「でも魔力は採掘しないわ。何から出来ているものなの?」
既にお手上げのベルヴィアはイツキに丸投げしようとする。
「イツキ、あれよ、ほら。何から出来てるのか答えなさいよ。」
「えっ、えーと。化石だっけ?生き物の死体から…?」
ララミーティアは想像だにしなかった予想外の答えに目を白黒させて驚く。
「えっ!イツキの居た地球って所では死体を集めてそのセキユっていうのを作るの?本当に?何だか怖いわね…。怨念がこもってそうよ。」
「いやいや!そうではなくて…!えーと、ベルヴィア?」
慌てて否定するイツキ。
ベルヴィアはもはや取り繕いもせずに開き直る。
「私も正直わかんないわ!」
「…?……?」
「ほ、ほらっ!そんな事よりパン召喚してよ!」
「あぁ、そうだったな!」
結局最後までまともな説明が出来ないイツキとベルヴィアだった。
ララミーティアもこれ以上はまともな説明は出て来ないなと思い、イツキが召喚したガーリックトーストを齧るのだった。
「そういえばイツキに加護を与えるのは私だけだが、ララミーティア嬢はどちらから始めるのだ?」
アテーナイユが両手にチョコレートドーナツを持ったまま誰にともなく質問を投げかける。
ミクラノミタマが麦茶を啜りながらほっほっほと笑う。
「聖フィルデスちゃん、お先にどうぞ。私はテッシンくんとキキョウちゃんとのんびり過ごします。そんな訳でよろしく頼むね。2人とも。」
「ええ、何卒よろしくお願い致します。そのうち里に戻ったら農業でもと思っておりますので、是非ご教示頂ければと。なぁキキョウ。」
「そうねえあなた。楽しみだわあ。」
すっかり打ち解けた3人は再び自分達の会話に戻っていった。
聖フィルデスでララミーティアの隣に座ってにっこりと微笑みかける。
「ティアちゃん、これからよろしくお願いしますね。」
「聖フィルデス様、改めてよろしくお願いします。…世界を救いたい訳ではない私が歴代の聖女たちの意志を果たして本当に継げるものなのか、心配です…。」
ララミーティアは自分の手元をぼんやり見つめたまま切ない笑顔を浮かべる。
「歴代の聖女たちだって、みんながみんな世界を救うと思っていた訳ではありません。ある者は自分の故郷の為、またある者は自由を奪われ聖女しか選択肢が用意されていないから、またある者は愛する人が死なない為だけに、それぞれ想うことは当然バラバラです。」
聖フィルデスはララミーティアの手にそっと手を重ねて微笑みかける。
「何よりティアちゃんは人族ではないですし、元が人族より圧倒的に強いから無理なく習得出来ると思いますよ。」
「やはり種族によって変わるものなのでしょうか?」
ララミーティアの質問にニコニコしたまま聖フィルデスが答える。
「私は人族しか加護を与えられませんでしたけれど、人族は脆いから周囲の魔力を大量に使えても、それを扱える様にするために魔力を身体強化に大幅に回すようにしていたのです。だから効率がとても悪かった。その点今回ティアちゃんは心配いらないから効率よく聖女の力を使えるように調整しています。だからきっとすぐに使えるようになると思いますよ。」
聖フィルデスがララミーティアにウインクを送る。
「それにね、ティアちゃんのように激しい恋をして、愛する者を守る覚悟のある聖女は強いですよ。」
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