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ダークエルフと暮らす異世界間違い転生  作者: 三沢 七生


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閑話.朝焼けにて

だいぶ先のある早く起きた朝に2人が朝焼けを鑑賞するお話です。

暑い夏がそろそろ終わりを告げ、秋の足音が森のあちこちから聞こえ始め、朝の空気がひやりと肌を撫で気持ちがいいある早朝のこと。


イツキとララミーティアは珍しく日が昇る前にどちらとも無く目が覚めてしまい、何故か目が冴えて再び眠ることが出来なくなった2人は手早く服を着替え、外に出て朝焼けでも楽しもうと言うことで外へ出る事にした。


辺りはまだ薄暗く、外に出た2人はぐーっと伸びをして凛とした朝の空気を胸一杯に吸い込む。


広場に長年使っているいつものレジャーシートを敷いて、イツキは手っ取り早く、マグカップに入った暖かいコーンスープやパン屋の総菜パンを召喚する。


ララミーティアは光魔法で光源を出し、辺りを昼間のように明るく照らす。


「今更だけど、こういう時本当に便利だね。召喚に魔法、パッと用意出来ちゃうもんな。」

「ふふ、本当に今更ね。イツキが居た世界で同じ事をしようとしたらどんな感じになるの?」


ララミーティアがイツキに寄り添いながら質問をする。イツキは腕を組んで考え込む。


「うーむ、まずは…レジャーシートと、光源としてランタンを用意して鞄にいれる。」

「ランタン?あー、確かにそうね。イツキの居た世界では油で火をつけるヤツではないのよね。」


イツキは「その通り」と言って組んでいた腕を解いてララミーティアの手を握る。

ララミーティアも手を握り返す。


「コーンスープを飲むために持ち運び出来る小型のガスコンロと小さい鍋、水も持ってこなきゃダメだな。食器もか。鞄がデカくなるな。」

「ガスってあれ?ふふ、前にイツキが、ふふ、『ガスってのは、おならもガスなんだけど』って言ってた?ふふふ。思い出したら笑いが止まらなくなってきたわ、ふふふ。あーダメダメ!ふふふ。」


イツキは以前魔法でガスによる火を再現したときの説明として、身近なガスを紹介しようとして苦し紛れに出てきた物が『おなら』だった。

その時ララミーティアは「イツキが居た世界ではおならをあつめて燃やすのか」と酷く驚いたことがあって、未だにガスの話になるとツボに入ってしまうのだった。


「懐かしいネタだね、はは。そうそう、そのガス。本当は焚き火でもいいんだけど、ちょっと面倒くさいかな。ガスはその点、ガスさえ充填されていればパッと火がつけられて凄く便利なんだ。それでコーンスープの粉と、あとパンはそうだなぁ、前日にパン屋ででも買ってくる。食べる前と後で手や口を拭くための使い捨ての拭く奴。それを捨てる使い捨てのごみ袋。考えただけで大変だね、早朝に思いついてパッとやることじゃないかな。」


イツキは数えていた指が片手では足りなくなり、ララミーティアを見つめて肩をすくめてみせる。


「私達は魔法や召喚が使えることに感謝しなきゃダメね。」


ララミーティアが笑いながらイツキに寄りかかる。イツキも笑いながらララミーティアの肩を抱き、そのままギュッと抱き寄せる。


「ねえ、私達出逢ってからもう独りで暮らしていた頃よりも長く一緒に居るでしょ?」

「ん?そうだね。長いようで短い。短いようで長い。もうそんなに経つんだもんなぁ。」


ララミーティアは微笑みを浮かべたままそっと目を閉じる。


「私もイツキも見た目が何にも変わらないからちっとも実感がないけれど、人から怖がられて命を狙われて生きていたあの頃を最近全然思い出さないの。人生の時間が逆転したからなのかしら。」

「そうだなー、確かになぁ。ティアと出会う前のあの時間って果たして一体何だったんだろうって気すらするかな。」


東の空の向こう側が鮮やかなグラデーションを描いて段々と紫色になっていく。


「ねえ、覚えてる?2人が初めて一つになった日のこと。」


ララミーティアは朝焼けのように顔を赤くして耳をピコピコさせながら上目遣いで長い睫毛を伏せがちにしてイツキに尋ねる。

イツキは心臓が跳ねたようにドキンと高鳴り、思わずララミーティアのピコピコしている片耳を唇で捕まえる。ララミーティアは思わず色っぽい声をあげてしまう。


「勿論覚えている。とーっても大切な思い出だよ。あの時も色っぽいティアにさ、今みたいに心臓をこうガッと鷲掴みにされたんだ。」

「ふふ、バカ。」


やがて空は燃えるようなオレンジ色に変わり、辺りの全てが束の間オレンジ色で支配される。


「朝ベルヴィアが騒ぎ出して大変だったわ。足がガクガクになった私を横抱きにして2人で大声を出してはしゃぎ回った。あの時、私の世界は何もかもがキラキラ輝いて見えたわ。まるで背中に羽が生えたみたいで、楽しそうに笑っているイツキが私を見てるの。あれ以上の幸せはないとあの時は思ったけれど、全然そんな事は無かったわ。」


ララミーティアがイツキの唇を奪う。

暫くして唇を離すとララミーティアは優しい表情で微笑む。


「ありがとうね、イツキ。私今でもあなたに恋をしているわ。恋をして愛し合って、いつだって側で私を包み込んでくれる。」

「その言葉、そのまま返すよ。俺もずっとティアに恋をしてる。どこまでも深く深く、ずっと深く愛してる。」


2人はそのまま暫く互いの唇を貪り合った。

漸く顔を離すとララミーティアはクスクス笑いながら口を開く。


「それにしても会った翌日に一つになるのは早すぎかもしれないわね。」

「はは、確かに!でもあの頃は一日のうちにあれやこれや何でもかんでも色々やってたもんね。過程で色々あった気がするけど、あれ翌日なんだもんなぁ。」

「そんな気がしないけどね。順番に思い出してみると間違い無く翌日よ。」

「当日にさ、一緒の寝床で寝たのに何もしなかったのは偉くない?」


イツキはえっへんと言わんばかりに胸を張るが、ララミーティアがイツキの脇をくすぐってイツキの姿勢を崩す。


「何もしなかった?私キスされたわ!」

「えー?あれは合意の上じゃないのー?」


イツキが眉を八の字にしてララミーティアに抗議をする。

ララミーティアはクスクス笑ってイツキの頬に不意打ちでキスをする。


「ふふ、合意よ合意。私もよく我慢出来たなと思うわ。」

「はは、俺も今だったら我慢出来る自信ない。」


2人がお喋りを続けているうちに森の暗闇は朝日によって駆逐され、辺りの朝露が光を受けキラキラと輝いている。


「こうしてまたいつも通りに朝がくる。このままの生活が何よりも素晴らしいと思うよ。当たり前に過ぎていく生活だけど、当たり前じゃなかったんだ。」

「そうね、当たり前じゃなかった当たり前。」


登っていく朝日に向かって並んで寄り添いながら座っている2人。


「おはよう、ティア。今日も一日よろしく。」

「ふふ、おはよう、イツキ。今日も一日よろしくね。」


当たり前じゃなかった当たり前の朝がやってきた。


今日も2人にとって特別じゃない特別な毎日が始まる。

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