30.静かな夜
後半に少々情熱的な表現が入ります。
ララミーティアの小屋の掃除が終わり、汗を流そうという事になり、3人はイツキの小屋の風呂に交代で入ることにした。
風呂上がりのアイスも堪能し、そろそろ寝るという時間になった頃。
ベルヴィアは先程飲んでたときに召喚した情報を整理してまとめておきたいといい、快適に過ごせるイツキの小屋に泊まる事になった。
イツキとララミーティアは日替わりで寝る場所を変えようと言っていた事もあり、真面目な顔をしてソファーに座りウィンドウ画面を操作し始めたベルヴィアをそっとしておき、ララミーティアの小屋に行くことにした。
ララミーティアの小屋へと戻ると先程までの騒ぎが嘘のようにしんと静まり返っている気がした。2人はテーブルに向かい合う形で座る。
「さぁ、お茶でも入れるわね。」
「お、ありがとう。」
ララミーティアがテーブルで昨日も煎れてくれたハーブティーの茶葉やポットなどの一式を手際良くアイテムボックスから取り出しテキパキと用意していく。
やがて鼻孔をくすぐるハーブの良い香りが小屋の中に漂う。
出来上がったハーブティーは落ち着くような優しい香りがして、イツキは思わず深呼吸をする。
「はぁ、落ち着く匂いだね…。あー、ホッとするなぁ。」
「そうね、寝る前に飲むと落ち着くの。」
ふとこのハーブティーは買っているものなのか、自分で作っている物なのか、どうでもいい事が気になったイツキはララミーティアに質問する。
「そういえば、このハーブティーは買ってるの?」
「これは自分で作ってアイテムボックスにとっておいてるの。」
「へぇ、そうなの?一個人がこんなに美味しい物を作れるのか、いやぁ凄いなぁ。本当にティアは凄いよ!元居た世界だったらなかなかの良い値段はしそうだよ。」
突然誉められたララミーティアは照れ隠しのように製法について説明を始める。
ピコピコしている耳が可愛らしいと感じるイツキ。
「春から夏にかけて3日から5日くらい外で干すの。夜は家の中に入れるけどね。そうするだけでこれが出来るのよ。その時期以外に欲しいときは乾燥させないでハーブを手のひらで叩いて潰してから飲むこともあるし、火魔法でポカポカ温めて乾燥させて作ることもあるわ。けれど春頃のお日様で作る物がやっぱり一番好きね。」
「へぇ、今度狩りの時にハーブとかも教えて欲しいな。」
「ふふ、任せてちょうだい。」
イツキはピコピコと動く耳に触れてみたい衝動に我慢が出来ず、ついには突然身を乗り出してふとララミーティアの耳を触ってみる。
あまりに突然だったのでララミーティアは嫌がるかと一瞬思ったが、嫌そうな反応ではなく、驚いてすぐに照れたような表情になる。
「ふふふ、くすぐったい。どうしたの?急に。」
「ティアが照れるときに動く耳が可愛くて愛おしくてつい…。」
すると耳はまたピコピコ動き出した。
イツキは更に身を乗り出し、思わずララミーティアの耳にそのまま優しく唇を落とす。
するとララミーティアから今度は色っぽい吐息が漏れ出てしまい、慌てて謝罪するイツキ。
「ご、ごめん。ちょっと調子に乗りすぎた…。」
「こっちこそ変な声出してごめんなさい。でも、全然悪い気はしなかったかな…。」
ララミーティアが俯きながら照れ隠しのようにモゴモゴ喋る。
お互い目が合うとどちらからともなく吹き出して笑いあう。
「なんかすぐにベルヴィアが来て本当に賑やかになったから、こんな風に2人でゆっくり過ごすと落ち着くね。」
「そうね。落ち着く。でも胸は高鳴ったまま。変ね。」
イツキがふーっと一息付いてから椅子に腰を下ろし、言葉を続ける。
「賑やかなのも良いけどさ、こういう2人きりで落ち着ける時間がちゃんとあるからこそなんだろうね。」
「落ち着ける時間。確かにその通りかもしれないわ。」
ララミーティアが微笑みながら自身の手元を何となく眺める。
伏せがちな睫毛がとても色っぽく、時折アメジストのように輝く瞳が見え隠れする。
ララミーティアが自分が座っている椅子を軽く持ち上げてイツキの隣にぴったりとくっつけて座る。
「…そのうちベンチでも作ろうかしら。並んで座りたいわ。」
「それもいいね。でも俺家具作ったことないから役に立たないかも。」
イツキが頬をポリポリとかく。
ララミーティアはクスクス笑いながらイツキの肩に頭を乗せた。
「お互いに全部が全部役に立とうなんて思う必要はないと思うわ。それに時間は沢山あるんだから、家具づくりが楽しかったら趣味として色々作ってみればいいの。」
「確かに、趣味を見つけるのもいいかもしれないね。」
イツキもララミーティアの頭に頬を乗せる。
「ここに来て、明日が来るのが楽しみなんだ。明日は何をしようって、考えるとわくわくする。」
「凄くわかるわ。明日は何をしようか考えていると胸が高鳴るの。」
ララミーティアはイツキを見て微笑みながら自身の胸に手を当てる。
イツキもフッと一つ笑ってから口を開く。
「元居た世界…地球に居た頃は考えられなかったな。ご飯を食べるのも、眠ることも、時間の無駄遣いだとすら思ったこともある。そんな生活じゃ明日が楽しみな訳がないな…。」
「私もこの時間になると小屋の中でじっとしているの。する必要もないのに鏃の手入れをしたり、整理されたアイテムボックスの中身の整理をしたり、いっぱいあるのに自分しか食べないご飯の作り置きを作ったり。そこには何の感情もないの。世界に一人ぼっちの気分。」
ララミーティアがそっと目を閉じてイツキのぬくもりを感じる。
イツキは肩に乗ったララミーティアの頭に顔を埋めてララミーティアの匂いを感じる。
「世界に一人ぼっち、か。何かわかるな、それ。何かしていないと居られない。みたいな。」
「そう。そんな感じ。」
イツキの肩に頭を乗せたまま切ない笑顔を浮かべるララミーティア。
しばらくしてララミーティアが再び口を開く。
「たまにね、夜一人で居るときに何もしていないと、ふと考える事があったの。もしも私が普通のエルフでも人族でも良いけどね、普通の種族だったとしてね。とにかく私の家族が暮らしている家があって、私はそんな家族の子供のうちの一人で、昼間は畑のお手伝いや家の事のお手伝いなんかをやって、夜になると明かりが灯って、家族がワイワイ喋りながら楽しそうにご飯を食べるの。ご飯をこぼしたり、兄弟が勝手にご飯のおかずを食べたりして、怒られたり笑われたり。家の前には花でも植えてぱっと咲き誇ってるわ。家の周囲の柵には子供の玩具がぶら下げてあったり。地面には子どもが枝や石で書いたような落書きがあるわ。子供たちは疲れてみんなぐっすり寝ちゃって、母親と父親は子供たちを起こさないよう小声でお喋りしながら何か町で売る物をせっせと作ったりして。私はそんな母親と父親の背中を寝ぼけ眼でぼんやり見ていて、母親が「あら起きちゃったの?早く寝なさい」って私を寝かしつけて…。きっとね、そういうのを『生きてる』って言うんだろうなって。どうして私には何も無かったんだろうって思うと、消えてしまいたくなったわ。」
「その夢は叶うさ。保証する。俺が叶えてみせる。いや、2人で叶えるんだ。」
イツキが微笑みながら優しく告げる。
「叶うかしら。」
「約束する。絶対叶う。叶えてみせるさ。ある時ティアがさ『はぁー、私たまには一人でのんびりしたいわぁ。あの人たまには子供連れてどっか出かけてくれないかしらぁ。』ってうんざりしたように言わせるくらい、物凄い勢いで叶える。」
「ふふ、イツキったら。でも私とイツキの家庭。私、今ね、幸せで溢れていて、ちっとも悲しくない。素敵な夜よ。もうあんな寂しい思いをする夜は来ないのね。」
「俺も幸せだよ。俺もティアも寂しい夜なんてもう来ない。2人でくっついて寄り添いながら過ごすんだ。寝床に入って目を閉じるときも、夢の中ではぐれないように手をつなぐんだ。」
2人はしばらくそのままの姿勢でじっと、お互いの温もりを感じていた。
「この温もりがあれば、きっと2人は寝ても醒めてもずっと一緒だよ。」
「うん。これからはこんな風にずっと居られるのね。幸せ過ぎて怖いわ。」
「はは、怖いね。」
ララミーティアはイツキの手を取り、ぎゅっと握り締める。
そして何度も愛おしそうにイツキの手に唇を何度も落とす。
「怖いから離さないで。私、あなたのものよ。大好きなイツキ。もう独りになりたくない…。寂しい想いなんて慣れていたはずなのに、ずっと…、ずっと!ずっと…側にいて欲しい…。」
「…ああ。ティアは俺のものだ。同時に俺もティアのものだよ。心配しないで、ティアしか見えないし、ティアの事で溢れてる。こっちこそ離れたくないよ。離したくないな…。」
イツキはそのまま肩を強く抱き寄せる。
ララミーティアはイツキの胸に手をあてて、瞳を宝石のように妖艶に輝かせ、じっとイツキに視線を絡める。
その視線はどこか物欲しそうな切なげな視線で、イツキは肩を抱き寄せるだけでは満足出来なくなる程、身体の奥底からグラグラと熱い物がこみ上げてくるのがわかった。
「あんまり煽らないで欲しいな。そんな顔されちゃうと、もう我慢出来なさそうだよ…、はは。」
「…ん?」
ララミーティアがふとイツキの顔を見ると、先程森の中で見せたような何かをぐっと我慢しているような表情をしていた。
(私を求めているんだ…、そんな顔をして、凄く求められてる…)
イツキの見せる真剣な表情に、ララミーティアは本能的な強い胸のざわめきを覚える。
心の中にぼうっと灯された火がジワジワと心の中を浸食して行くのを感じた。
ジワジワと湧き出す甘い衝動が抑えきれなくなり、ララミーティア求めるままに強くイツキの唇にキスをすると、眩暈がするほどに甘美な味がした気がして思わずクラクラしてしまう。
欲望の炎はますます身を焦がしていく。しかし、もっと激しく身を焦がしたいとすら願う。
イツキの手をふりほどきララミーティアが徐に立ち上がると、着ている服に手をかけた。
「私もね、想いが爆発しそう。…もっと、…煽ってもいい?イツキの全部が、もっと欲しくて欲しくてたまらない。イツキに、激しく求められたい。求めて欲しくてたまらない…。お願い…。」
ララミーティアのその神秘的な身体は小さく震えていた。イツキはララミーティアの身体を優しく抱きしめた。
ララミーティアが震える身体を抑えて、精一杯自分を求めているという事実が身体の奥底から到底我慢できない程の激しい欲望を呼び起こし、イツキの理性をあっという間に決壊させる。
「ティア…。」
愛おしいイツキのぬくもり、愛おしいイツキの言葉、愛おしいイツキの欲望、その全てがララミーティアを包み込む。
幸福で満たされたララミーティアは涙を浮かべながらも愛しいイツキに必死でしがみついた。
互いに相手がこんなにも自分を求めてくれるのかと、何度も何度も確かめるように。
互いの身体を強く求め合い、2人は溶け合って一つになってしまう程に。
一度ついてしまった愛欲の炎は収まることなく2人を益々燃え上がらせ続けた。
やがて空が青から赤へ染まり行く頃、2人はきつく抱き合ったまま眠りについた。
R15で許される範囲ってこんな物かな?と頭を悩ませながら削って削って、こんな形になりました。
最後の最後まで書き換えを繰り返した結果、何だか凄くアッサリした気がします。
面白かったという方はブックマークや☆を頂けますと幸いです。





