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ダークエルフと暮らす異世界間違い転生  作者: 三沢 七生


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閑話.幸せの花束

イツキが召喚でワンピースを召喚して暫く経った頃の話です。

ララミーティア視点で話が進みます。

イツキと一緒に森の中で採集して回っていたある日のこと。


私はいつも通り食べられる物や薬に出来る物だけでなく、触れてはいけない物や毒を持っている物なんかも教えていた。


イツキは終始楽しそうに私の話を聞いて、しきりに「ティアは凄いなぁ」と私を誉めてくれた。


「アリーから教わっただけよ。私が発見したわけではないわ。」


私がそうやって謙遜すると、イツキは優しい笑顔を浮かべながら、


「それを全部自分の確かな知識として昇華させたのは紛れもなくティアだよ。ティアは頑張り屋さんだよ。凄いと思うな。」


と言って私の頭を愛しそうに撫でてくれた。


愛しい人から褒めて貰ってなでて貰えるのは凄く嬉しい。

その度に私の胸は高鳴って、蕩けてしまうような幸福感に満たされた。


真剣に私の話を聞いて頷いているイツキ。

私を凄いと褒めてくれるイツキ。

私の全てはイツキで満たされている。


もっと撫でて欲しくなる私はしっかりした所をちゃんと見せつつも、やたらイツキに触れてしまう。

その度にイツキはいつも私へ向けてくる優しい笑顔を浮かべて「甘えん坊だなぁ」と言って私の意図を見透かし、頭を優しく撫でてくれる。


この魔境の森の魔物は独自の魔物のような個体こそ居ないけれど、どれも他の地域のモノより強いし知能が少し高い気がする。

今気配を感じているのは空から、恐らくロックバードだ。

ロックバードは翼を広げていない状態でも数メートルはくだらない魔物だ。

その肉はプリプリしていてとても美味しいのだけれど、如何せん空に居られると中々倒すのは骨が折れる。

ロックバードは風魔法が得意で矢を吹き飛ばすだけでなく、油断していると刃のような風で小間切れにされてめでたく彼らの餌だ。

どうしても魔力に頼った戦い方になってしまうので、独りだった時はよっぽど食べたい時や襲われた時以外は見かけても相手にしなかった。


そんなロックバードがイツキと森を歩いている時、唐突に目の前に降り立った。


「ロックバードね。気をつけて。産卵期終盤の時期で、雛や雌の番が食べる餌を探していて気が立っている事が多いわ。」


私が刺激しないよう小声でイツキに向けて呟きながら弓をゆっくりと構える。


「デカいなぁ…。こんなのが本当に空を飛ぶのか…。鶏肉パーティーをやったら何人で食べれるんだろう?ところでこいつ、食べれる?」


呑気なイツキの感想に私は思わず噴き出してしまう。


そんな一瞬の隙をついたのか、ロックバードは目をカッと見開いて嘴を大きく開く。


(マズい…!)


私が風魔法で相殺しようと考えたその瞬間、ロックバードは酷く怯えた様子で遥か上空へ逃げてしまった。


「あっ!鶏肉!待てこら!」


イツキが何故か光魔法を使って何かしていたが、ロックバードはヒラヒラとかわしながら遠くへと消えてしまった。


「なんだ、デカいくせに随分臆病な鳥なんだなぁ。見掛け倒しってやつか…。」

「ふふ、ロックバードは普通はかなり好戦的よ。どうしたのかしら?あんな風に慌てて逃げるのなんて初めて見たわ…。」


余程鶏肉が食べたかったのか、子供のようにしょんぼりしているイツキ。

私はそんなイツキが可愛らしく思えて思わず笑ってしまう。


「そう言えばロックバードが逃げたときになんで光魔法なんて使ってたの?」

「あー、太陽光線で穴を空けようかなって思ってさ。」


日の光でどうして穴が空くのか私にはさっぱり分からなかったけれど、イツキが見てみた方が早いなと言って目の前の岩に向かってさっきの光魔法を使って見せた。


「いくよー?光あれ~!」


岩に光の線がいくつも集中する。

やがて岩には小さい穴がいくつも出来ていて私は驚いてしまう。


「凄い!なんで光魔法がこんな力を出せるの?」

「お日様ってさ、凄い遠くにあって、そこからここまで光を届けるだけじゃなく暖かさとかも届けるでしょ?本来はポカポカしてて明るいなって程度の力じゃないんだよ。」


イツキが説明するに、日の光は途方もない遠くに光と暖かさを届けられる程強烈な熱を持っているらしい。

それを再現して極々近接に集中させる事で凄い力が再現できるんじゃないかなと思ったと言っていた。




その後魔熊にも遭遇したが、人を見かけるなり全力で襲いかかってくるはずの魔熊が全力で逃げ出したりもした。


「多分だけど、知能が高い魔物にはイツキから感じる魔力が強大過ぎるから、本能的に逃げ出してしまうのかもしれないわ。」

「ええ…、それじゃあ狩りになんないなぁ。」


イツキが困ったように後頭部をポリポリとかく。

私はクスクス笑いながらフォローする。


「別に肉は召喚すればいいし、魔物が狩れなくても普通の動物とか弱い魔物は狩れるわ。ロックバードとか魔熊みたいに賢い魔物は多分逃げちゃうわ。」

「まぁ、魔物からモテるよりはマシかな!俺は居るだけで魔物除けになるんだね、俺が傍にいればティアも少しは快適に暮らせるかもね。」


イツキは前向きで呑気だ。

私はそんなイツキが傍にいると気持ちがとても軽くなった。




広場に帰ってきてイツキの小屋に入ると、ベルヴィアがソファーでいびきをかきながらグウグウと昼寝していた。


ベルヴィアは起きたらきっと腹が減ったとうるさいので、先日イツキが召喚で出してくれた白いワンピースと呼んでいた服に着替えた私はご飯の支度を始める。


イツキは本日の戦利品を整理すると言ってイツキの小屋の外で、小屋に背を向ける形でアイテムボックスから色々と出して並べ始めた。




しばらくするとイツキが小屋の中に入ってきて、私に向かってニコニコして歩み寄ってきた。


「どうしたの?何か良いものでも混ざってた?」

「ふふーん、ほら、これ。」


イツキが綺麗な灰色の花や紫色の花を何本か束ねた物を手に持っていた。


「あら、それは綺麗な花だけど、特に何の効果もないただの花よ?」

「いや、鑑定結果には出てこない凄い効果がある。ちょっと持ってごらん。」


そう言うとイツキはニコニコしながら私に白い紙で包まれた花束を渡してくる。


私も知らないような効果があったのかしら。


不思議に思って手に持ったまま色々な角度から見てみるけれど、やっぱり何の効果もない、何の素材にもならない花だった。


「やっぱりこれはただの綺麗な花よ?」


私は不思議に思って顔を上げてイツキを見ると、イツキはニコニコしながらいつぞやに召喚した姿見鏡を部屋の隅から目の前までゴロゴロと押して持ってきた。


「この花さ、ティアの髪の色と瞳の色にそっくりなんだよ。灰色の花なんて俺の居た世界では見たことがなかったから不思議な花だなぁって目に留まってさ。いやぁ、やっぱり思った通り凄く似合うなぁ。ティアに似合うと思ってコッソリとちょくちょく摘んでアイテムボックスに仕舞って集めてたんだ。」


イツキはそう言うと、今度は真っ赤な大きな花を髪飾りのように私の耳元にさす。


「ほら、花の妖精の完成だ。その花にはララミーティア姫様の美しさを引き立てる効果があるんだぜ、なんつって、はは…。」


段々と照れ臭くなったのか、イツキは頬をポリポリかいてはにかんで笑っていた。


鏡の前の私は綺麗な花束を手に持ち、耳元に真っ赤な花を刺した普通の女の子だった。


イツキは私の後ろから両肩に手を置いて、鏡越しにニコニコしながら私の顔をのぞき込んでいる。

召喚で出したと思われる真っ白な綺麗な紙の裏側に何気なく目をやると、何か文字が書いてある事に気がついた。


(…ティアへ。いつも幸せをいっぱいくれてありがとう。幸せそうなティアの笑顔が何より大好きです。これからも沢山の思い出を2人で作っていこう。ティアが目を閉じたときに一番に浮かぶ存在であり続けたい。愛しいティア、これからもずっとずっと永遠よりも長くよろしくね。言葉では言い表せないくらい愛してます…)


私は気を抜いたら声を出して泣いてしまいそうだった。


イツキはいつだって私を、ついこの間まで独りぼっちで魔物だ化け物だと言われていたこの私を一番に考えてくれる。


私のために森の中で見かける度にコッソリコツコツと集めていたんだ。


私が喜ぶ顔を思い浮かべながら集めていたのかしら。


この花の一本一本にはイツキの想いが込められているんだわ。


抱えきれない程の愛を貰って、私は涙ぐむほどの幸福感で頭から足のつま先まで溶けてしまいそうな気分だった。


イツキが私の前に回り込んで、少しだけ不安そうに尋ねてくる。


「えーと、喜んで貰えたかな…?」

「とても、…嬉しい…。とても…。」


声を出したらやっぱり声よりも涙が出てきた。

幸せで、幸せで、嬉しくて涙が止まらない。

頬を次から次へ転がり落ちる涙に、咽が詰まったかのように声が出なくなる。

私は流れる涙もそのままに何度も何度も頷いた。

そんな私をイツキはいつものような優しい笑顔を浮かべながら抱きしめて背中をさすってくれた。

私のこの嬉しい気持ちがうまく伝えられない切なさに胸が突き上げられ、イツキの事で息も出来ないほど胸がいっぱいになった。


「そんなに喜んで貰えたのが嬉しくて、こっちまで泣けてきたよ。ティア、ティアが喜ぶならいつでも花くらい摘んでくるよ。俺の愛しいティア。」

「うう、私…!私…!嬉しくて…!」


伝えなくちゃ、ありがとうって。嬉しいって。大好きって。

伝えなくちゃ。


涙でぐちゃぐちゃになっている顔で一生懸命笑ってみせる。


「大丈夫、ちゃんと伝わってるよ。ティア、愛してるよ。」


イツキも泣いていて、私達は泣きながらクスクスと笑い合った。

どちらからともなく唇を重ねようとしたとき、2人そろってしゃくりあげてしまって、そのまま暫く声を上げて笑い合った。

笑い声で目を覚ましたベルヴィアが「仲間外れにしないでよ」と何故泣き笑いしているのか理由を頻りに聞きたがったが、笑ってしまってうまく説明出来なかった。


私、こんなに幸せでいいのかしら。

私はもっと溺れたい。

ずっと深く深く、あなたしか見えなくなる程深く。


あなたの大きくて深い愛に溺れたい。




イツキが後から召喚してくれたガラスの綺麗な花瓶に花をさして、ソファーの前にあるテーブルの真ん中に飾った。


紙は丁寧に畳んでアイテムボックスの中に仕舞った。

飾られた花を見ていると自然と笑顔が溢れた。




私の大切な思い出。



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