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ダークエルフと暮らす異世界間違い転生  作者: 三沢 七生


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25.実験

いくら解体場とはいえ、2人がいい雰囲気だったのをぶち壊したのは流石に悪かったかなとベルヴィアは思い、ばつが悪そうに告げた。


「邪魔しちゃってあれなんだけど、晩御飯まで時間あるなら色々召喚するの手伝って欲しいんだけど…。」

「いや、はは、ごめんごめん。検証?やろうやろう。俺も、どのレベルの認識までだったら召喚出来るのか知りたいし、召喚に頼りすぎて世界の魔力が安定した後に急に召喚出来なくなって不便になるとかあると困るから、何がどれだけ魔力を取り込むのか知っておきたい。想定以上に魔力を使うなら、変な気を使ってしまうかもしれないし。」


イツキが誤魔化すようにスラスラ言葉を並べたが、実際本当に感じている懸念事項でもあった。

あまり召喚による便利な生活に慣れ過ぎて、結果いざ召喚が出来なくなった時に不便な生活になるのだけは極力避けたかった。


「そうね。だからと言って遠慮して召喚しなくなって、魔力過多が全然解決しなくなるのも困るでしょうし。でもね…。」

「ん?ティアちゃん、でも、何?」


ララミーティアがもじもじしてしまう。

イツキもベルヴィアも言葉を待ってじっと見つめる。


やがてララミーティアは怖ず怖ずと口を開いた。


「せめて晩御飯くらいは私作りたいかなって。それはいいかしら…。」

「まぁ、ティアちゃんも女の子ねぇ。ほらイツキ、感謝しなさいよ。あなたに食べて貰いたいのよ!」


ベルヴィアが肘でイツキを「このっこのっ!」とつつく。

イツキは頬をポリポリかきながらも素直な気持ちを言った。


「ティアが面倒だったら悪いなと思って言わなかったけど、俺もティアの料理が食べたいかなぁって、実は。」

「本当?召喚した食べ物がとても美味しかったでしょ。イツキの故郷の食べ物だし、絶対そっちの方がいいんだろうなって思って…。」

「そんな事を気にしてたのか…。ティアが心をこめて作ってくれた物の方が美味しいに決まってるでしょ。例えどんな美味しい物でも最後にホッとするのは家庭料理だよ。」


予想外の答えが出てきてララミーティアは目を見開く。

そんなイツキの答えに頷きながらベルヴィアも「うんうん」と頷く。


「確かにそうねー。疲れて帰ってきてから食べたいのって家庭の味だもんね、あれ不思議よね。『あぁこれこれ』って思うの。」

「へぇ、神様たちも同じなんだなぁ。家庭の味、か。もう味わう事なんて無いんだろうなと思ってたよ。でもいいのかベルヴィア?魔力を消費するのとは結び付かないけど…。」

「別にそこまでストイックに減らそうとする必要はないわ。急激ではなくて緩やかに減らせば大丈夫よ。」


ララミーティアは嬉しくなって堅くなっていた表情を破顔させた。


「私、頑張って美味しいもの作るわ!」

「今度はさ、俺も手伝わせてよ。これでも料理はそこそこ出来ると思ってるから、邪魔にはならないと思うよ?」

「いいの?嬉しい!今度一緒に作りましょうね。」


2人で並んで料理を作る姿を想像し、期待に胸を躍らせるララミーティア。

それを見てイツキもころころと表情を変えるララミーティアをとても愛おしく感じるのだった。


「私はやった事ないからパスで…。試食の方ならバッチリよ!」

「ふふ、じゃあ摘まみ食い係りはベルヴィアかしら。」

「悪意ある改変しない!試食よ試食!」


もー!と頬を膨らませて怒るベルヴィアだった。



検証するにあたって、ララミーティアの小屋のテラスで検証を行うことにした。

ベルヴィアが真面目モードになって今回の検証内容をイツキに告げる。


「まずは小さくて複雑ではない、そうね…。何か一粒単位でお菓子を召喚して欲しいのだけれど、最初はパッケージに入ってる状態。次に中身だけという形でお願い。だから1つのパッケージの中にいっぱい入っているものよりは、小さいパッケージに中身は一つみたいな物を召喚してちょうだい。」


イツキは「わかった」と一言いうと、しばらく目をつぶってから「召喚、飴玉!」と詠唱し、小分けのパッケージに入ったみかん味の飴玉を一つ召喚した。


「よし、ちゃんと中身もあるね。じゃあ次行くよ?」


飴玉の袋を指先でカサカサと確かめてから、再度目を閉じる。


「召喚、飴玉!」


今度は手のひらに裸の状態でオレンジ色の飴玉が出て来た。

ベルヴィアは手元のウィンドウ画面を操作しながら観測を続けている。

ララミーティアはイツキのそばでその様子をじっと眺めている。


「うん、大丈夫よ。念の為同じ条件で違うお菓子を出してちょうだい。」


イツキは「わかった」と一言告げると、しばらく考えるような仕草をし、対象が決まったのか、顔をふと上げる。


「召喚、チョコレート!」


今度は手のひらに小分けパッケージの透明なビニールに包まれた小さいチョコレートが出て来た。


「続けていくよ。召喚、チョコレート!」


ビニールに包まれたチョコレートの隣に、裸の状態のチョコレートが現れる。

「どんなお菓子なの?」と興味津々で手元を覗き込むララミーティアの口に裸のチョコレートを摘まんで口元へ運ぶ。

ララミーティアはカッと目を見開いた後に顔をほころばせて「甘くて美味しいわ」とチョコレートを味わう。

ベルヴィアは引き続き手元のウィンドウ画面と睨めっこをしている。


「うん、大丈夫。じゃあどんどん行きましょう。」


その後もベルヴィアの指示通りに次々と大きめの袋菓子や箱菓子などを召喚していった。


出した物はさすがにその場では食べきれないので全てイツキのアイテムボックスへと仕舞っていった。

裸の状態で出す物に関してはララミーティアが布の袋を用意し、イツキから手渡たされたものを自身のアイテムボックスへと収納した。


「じゃあ次はキッチン周りの物でも出してちょうだい。パッケージとかは気にしないでどんどん出していって良いわ。」


ベルヴィアが視線を手元のウィンドウ画面に向けたまま次の指示を出す。

イツキは良い機会だとばかりに欲しかったフライパンや鍋や食器類を次から次へと召喚していった。

召喚したものについては全てララミーティアが自身のアイテムボックスへと収納し、イツキの補助に徹していた。


「ふー、とりあえずキッチン周りはこんなもんかなと思うけど、もう大丈夫?」


イツキがふーっと息を吐いてベルヴィアに問いかける。

ベルヴィアは手元のウィンドウ画面を操作に視線を向けたまま「うーん」と唸る。


「詳細は天界に一旦戻ってから検証するけれど、魔力の消費量はまあまあってところかな。」

「召喚する度にイツキに魔力が吸い寄せられているのは見えたけれど、そんなに劇的にこの辺の状況が変わったとは言えないわね。」


ララミーティアが周囲をぐるりと見渡しながらベルヴィアに告げる。

ベルヴィアはララミーティアへと視線を向けた。


「さすが魔力操作に長けた種族ねー、その通りなの。ちょっと想定より魔力消費量が少なくはあるけれど、想定範囲内ではあるわ。」

「へぇ、確かに俺の魔力量も見れてたもんね。ティアは凄いなぁ。」


急に2人から誉められて照れ臭そうに耳をピコピコさせるララミーティア。

そんな仕草にベルヴィアがバッとララミーティアへ抱きつく。


「あーもうティアちゃん可愛いわぁ!耳ピコピコしてて可愛い~!」

「ちょ、ちょっと…!わぁぁ…。」


ベルヴィアから耳を触られてくすぐったそうに悶えるララミーティア。

そんな姿を見てイツキが賺さずベルヴィアを引き剥がしにかかる。


「ほらほら!おしまいおしまい!」

「もー。心が狭いわねイツキは。」


ベルヴィアがわざとらしく口をとがらせてブーッと文句を言う。


「あっ、ちょっとまだ召喚したいものがあるんだけれど大丈夫?」

「ん?いいわよ。」

「ありがと。ちょっと難しいかもしれないから、無理なら無理でいいからね。」


そういうとイツキは先程よりも深く考え込むような仕草をした。


「召喚、ワンピース!」


これまでは召喚に大して特に何もアクションを起こしていなかったベルヴィアだったが、空を仰いでしばらく唸った。


「これは…、うー。……、よし!行くわよ!」


そういうとイツキの手元に真っ白な布が出現した。

ララミーティアが不思議そうな表情で、イツキが召喚した布をじっとみる。


「布?テーブルクロス?シーツかしら。」

「はい、これはティアちゃんの。イツキー、再現が大変だったよこれ!」


イツキの手から白い布を引ったくってララミーティアに手渡すベルヴィア。

ララミーティアはきょとんとした表情で手元の布を見ている。


「いやー、実際に手に取ったり買ったりしたわけじゃないからな、すまんすまん。検証だと思ってさ、悪かったよ。」


イツキがベルヴィアに申し訳無さそうに謝罪をする。ララミーティアは相変わらず頭上にクエスチョンマークが浮かんだままだった。



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