閑話.愛しいあなた
遙か未来のある昼下がりに2人が語り合っているシリーズです。短めです。
イチャラブが書きたくて無理やり差し込んでいます。
ねえ、愛しいあなた。
覚えてる?2人で初めて迎えた朝のこと。
本当はこっそり早起きしてずっとあなたの寝顔を見ていた事、気がついていたかしら。
私を愛してくれる真剣な表情のあなたが、まるであどけない少年のようにすうすう寝てる。
柔らい黒い髪、あなたの温もりを感じたくて起こさないように優しく何度も撫でた。
今あなたはどんな夢を見ているの?その夢に私はいるかしら。
あなたの夢が知りたくてあなたの前髪をそっと掻き分けておでこに唇をゆっくり落とした。
これから始まるあなたとの新しい生活を思い浮かべると、何もかもが鮮やかに輝いて見えた。
目を覚ましたあなたの黒い瞳が私を見つけた時、あなたは嬉しそうな顔をしたわ。
私、あなたが愛しくて仕方がなくて、夢中で唇を何度も重ね合わせた。
目の前にいるあなたを確かめるように、この愛を確かめるように、何度も。何度も。
ねえ、愛しいあなた。
あなたは私の夜明けだった。
ねえ、愛しいあなた。
ーーーーーーーーーー
「…ん…、いけね。すっかり寝ちゃったな…。」
「ふふ、目が覚めた?愛しの王子様。」
私の膝枕で昼寝をしていたイツキの黒い瞳が私の顔を捉える。
私を見つけると、イツキは嬉しそうな表情になる。
私はたまらなく愛しくなって黒い髪をそっと撫でる。
「いやぁ、ごめんね。動くに動けなくて退屈だったんじゃないの?足痺れてない?」
「イツキの寝顔を見てたら、初めて2人で迎えた朝のことを思い出していたの。だからちっとも退屈じゃなかったわ。足も平気。」
イツキがむくりと上半身を起こし「ふぁーっ!」と大きく伸びをしてから、私の顔を捕まえてそっと唇を重ねる。
私は一度ですぐに離れそうになるイツキの顔を押さえ込む。
私は満足し押さえ込んでいた手をパッと離してから悪戯っぽい微笑みを送る。イツキは乱暴に私の頬にキスをして悪戯っぽく微笑み返してきた。
「懐かしいね。今でもよく憶えてるよ。何度も何度も夢中でキスをした。」
「私、本当はね、あの時イツキより先に起きてイツキの寝顔を堪能してたの。愛しくておでこにキスもしたわ。だから思い出してたの。知ってた?」
イツキは大袈裟に驚いたような表情を浮かべる。
「いやぁ、それは全っ然知らなかった!あー、見てみたかったなぁ…。」
イツキが私の頭を優しく撫でる。暖かい手、私が大好きな手。私はそっと目を閉じる。
「朝起きてティアが居て、愛しそうに俺を見つめていてさ、もう幸せで幸せで仕方がなかったな。こんな素晴らしい日々がこれからずっと続いて行くのかって思うと、愛しくて溜まらなかったな。」
「私も、これから先ずっとこんな素敵な毎日を過ごせるんだって思うと何もかもが鮮やかに見えたわ。」
口元を緩ませながら遠くを見つめていたイツキをえいっと押し倒して唇を奪う。
しばらくしてイツキの横に寝っ転がって、思っていた事を口にする。
「私、イツキと出逢うまでは『何でダークエルフなんて変な種族として産まれてきたんだろう』って何度も何度も思っていたけどね、もしイツキみたいに命が繰り返すのだったら、またこの姿で産まれたい。イツキが何よりも愛してくれたこの姿で。」
「そうして貰えると助かるな。漏れなく俺が喜ぶよ。」
イツキが隣で寝転んだまま手の甲で私の頬を撫でてくれる。
「その時はまた私を見つけ出してくれる?迎えに来たよって。」
まだ全然死ぬわけでもないのに、じんわりと視界がぼやけてくる。
私は怖い。
死が2人を分かつまで随分時間がある筈なのに。
また独りになるのが怖い。
「はは、当たり前だろ?だから安心して待っててよ。」
イツキが私を抱き寄せて、背中をさすってくれる。
私はこんな事でいちいち泣いてしまう自分が恥ずかしくなってイツキの胸に顔を埋める。
「もう怖くない、よしよし、もう大丈夫だよ。俺が絶対に見つけ出して見せる。ティアを独りになんて絶対しない。デーメ・テーヌ様でもテュケーナ様でもしつこいくらい天啓で直談判しまくる。だから心配いらないよ。泣かないで、俺の大好きなティア。」
いつだって私をこうして優しく包み込んでくれる。
私はイツキの腕をぎゅっと掴む。
ふと見上げると、いつもの優しい表情のイツキがそこには居た。
「ねえ、愛しいイツキ。私を強く抱きしめて。」
何も言わずに私を強く抱きしめてくれる。
大好きな心臓の音が聞こえる。
私はそっと目を閉じる。
深く目を閉じても思い浮かぶのはあなたの優しい笑顔。
「ずっと離さないで。お願い、私より先に死なないで。愛してるわ。」
「ああ。当たり前だよ。ずっと愛してる。」
ねえ、愛しいあなた。
あなたには伝わっている?
私のこの抱えきれない程のあなたへの愛が。
どうか私の愛を、その暖かい心の中にいつまでも留めておいて。
あなたの愛さえあれば、私他に何もいらない。
あなたの大きな深い愛で、日だまりのように暖かい愛で、いつまでもいつまでも溺れていたい。
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