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158.定例会4 前編

『それでは下半期の定例会を開催しまぁす。司会進行は私テュケーナが勤めさせていただきまぁす。』


イマイチ締まらないテュケーナのだらしない声で定例会が始まる。

デーメ・テーヌの深いため息までが毎回のお馴染みの流れだ。


『はいはい、じゃあ魔力消費量からお願いね。』

『はぁい。』


テュケーナがいつも通りの代わり映えしない資料を展開する。


『そっちにも行きましたかぁ?』

「ええ、私もベルヴィアちゃんもちゃんと見れてるわ。」

「見れています。」


ウィンドウ画面の中のテュケーナからそう聞かれて聖フィルデスはニコニコしながら答える。

ベルヴィアはまるで借りてきた猫のように大人しい。


テュケーナは一度咳払いをしてから報告を始める。


『えー、魔力消費量はいつも通りの計画通りでぇ、無事安定して推移してまぁす。どの加護も満遍なく使用してくれているのでぇ、計画値通りに世界全体の魔力量は推移していまぁす。元の水準に戻る時期についてもぉ、いつも通り変化なしって感じですねぇ。』

『平たく言えばいつと通りという事ね。はいはい。ありがとね。』

『あーん、平たく言わないでくださいよぉ。もっと私の報告に興味を持ってくださいっ。はいはいじゃないですよぉ。ありがとうもぜーんぜん心が籠もってない…!』


テュケーナがデーメ・テーヌにぴったりとくっつくが、デーメ・テーヌは面倒くさそうにテュケーナをシッシッと手であしらう。


『はいはい。どうせ私なんか単純だからゴロニャーンってしておけばチョロいとでも思ってるんでしょ?はいはい。結構ですそういうの。うち、テュケーナは間に合ってますから。テュケーナお断りなんで。』

『あーんデーメ・テーヌ様、意地悪ー!そんなにへそを曲げないで下さいよぉ!』

『はいはい。意地悪意地悪。そんな事より!お腹の中の赤ちゃん、順調そうね!』


デーメ・テーヌがテュケーナを無視してウィンドウ画面の中から嬉しそうに祝福をする。


「ありがとう。お陰様で順調よ。安定期に入ったってサーラも言ってたわ。それにしてもこんな風にしてみんなで集まって話し合っていたのね。」

「以前会議の邪魔しちゃった事もありますもんね、そういや。」


ララミーティアとイツキは目を合わせると同意しあうようにお互い頷く。

2人も是非参加して欲しいとベルヴィアから招待を受けてイツキとララミーティアは天界との定例会に参加していた。


サーラは「たまには里に顔を出してきます」と言って聖フィルデスとバトンタッチして自身の里へ帰っていた。


『いつも2人についてもああしようこうしようと色々議論してたの。でも堂々と2人を話し合いに参加させられるならこんな楽な事はないわ。ねぇテュケーナ?』

『うんうん!ですねぇ!』


デーメ・テーヌがウキウキしながらそう言うとテュケーナもこくこくと頷く。


『ところで先手を打って2人にはくれぐれも注意して欲しい事があります。』


デーメ・テーヌはそう言うといくつかの映像を映し出す。

今度はいつぞやとは違ってまともなサイズのウィンドウ画面だ。


映像はジャクリーンがほんのり赤いオーラを纏わせながら戦っている姿。

ウーゴや亜人解放戦線の面々が金色に輝きながら戦う姿。

ララハイディとリュカリウスがとんでもない魔力を垂れ流しながら身体強化を施している姿だ。


「えーと、これは…?」

「それでは私が初めから説明しますね。」


イツキの問に聖フィルデスが答える。


「ティアちゃん。いつからか急にステータスが成長するようになりましたよね。」

「そうね。結構前かしら。まぁ天界で何か思惑があるのかしらってイツキと話をして特に気に留めていなかったわ。」

「うんうん、話した話した。まぁデメリットも無いし悪いようにはならなそうだなーと。」


ララミーティアとイツキは目を合わせて頷きあう。

とりあえず天界の手のひらで踊っておくかと言って特段気に留めなかった件だ。

ララミーティアはその後も順調に強くなり続けている。


「あれはあの頃、当時の条件下で色々と検証をした結果、この世界が文字通り崩壊する恐れが排除出来なかったのです。そこで私達は相談に相談を重ねた上でベルヴィアちゃんに上からの許可をとってきて貰って行った規制解除でした。」

「私を強くしないと世界が崩壊?…何だか随分とまた突拍子のない話ね…。」


聖フィルデスの言葉にララミーティアは首を傾げる。

チラッとイツキを見るもイツキも肩をすくめてみせる。


『以前ベルヴィアちゃんが喋ってた時のログを再生した方が早いわね。テュケーナ!あれを。』


デーメ・テーヌが手をパンパンと叩くとテュケーナが思わず噴き出す。


『あはは!何ですかぁそれ!何の真似ですかぁ?ふふ、パンパンって!ふふっ…!デーメ・テーヌ様かっくいいー!ひゅー!』

『い、いいから早くしなさいよっ!!このっ!』

『照れるならやらなきゃいいのにぃー!』


イツキたちの前で格好いい姿を見せたかったデーメ・テーヌはテュケーナによりその企みを悉く潰され、顔を茹で蛸のように真っ赤にしながらテュケーナの腕をグーでガンガン殴りつける。


「はは…。」

「本当に仲良しね…。」


イツキとララミーティアは苦笑いを浮かべる。


『そうなのぉ、とっても仲良しなのよぉ!デーメ・テーヌ様のそういう見栄っ張りなところ、本当に可愛いですねぇ。ほら、準備出来ましたよぉ。後はそこを押してくださいねぇ。分かりますか?そこですよぉ?一回ですよぉ、押すの。』

『なっ!?そ、それくらい分かるわ!いちいちうるさいわね!』


テュケーナの心配をよそにデーメ・テーヌがそう言うと、イツキたちの目の前に巨大なスクリーンが浮かび上がり、真剣な表情のベルヴィアが映り込む。

想像以上に大画面で本邸のリビングにいた一同はぎょっとしてたじろぐ。


「ちょ!ちょっと!な、何で私の映像だけこんな巨大なんですか!!」


ベルヴィアはガタッと椅子から立ち上がって大慌てだ。


『あら、間違えちゃったかしら…。』

『一回って言ったのにぃ。』

『ま、まぁいいじゃない!ほらほら!』


デーメ・テーヌがアタフタしながらベルヴィアやテュケーナを宥める。

そうこうしているうちにスクリーンのベルヴィアが喋り出す。




………『城塞の守護者』の消失により発生する事象は、魔境の森を長きにわたり覆っていた干渉不可能な結界の突然の消失。それにより周辺各国から月夜の聖女を囲い込みたい亜人の勢力や人族国家の人族至上主義者達による泥沼の月夜の聖女争奪戦が始まります。結界がなくなって侵入者の把握が出来なくなった魔境の森には、たちまち周辺各国の様々な勢力が進出し、パワーバランスが崩壊した魔境の森で月夜の聖女を一番安全な本邸に匿ったまま、イツキと将来確実に規模が大きくなるミーティア集落対周辺各国との大規模な泥沼の戦争が始まります。………シミュレートの条件指定を変えても、必ずミーティア集落は壊滅。四方八方から絶え間なくやってくる大量の有象無象によりやがて本邸は陥落します。その際に月夜の聖女の奪い合いが発生、月夜の聖女が命を落とす可能性が非常に高いです。月夜の聖女が死ぬとイツキによる魔力暴走で世界が終わるという結果ばかりが出て来ます。………




「何てこった…、ベルヴィアが真面目だ…!ま、まるで出来る人みたいじゃないか…。」

「本当ね…、ベルヴィアでもこんな真剣になる事があるのね…。あっ、これ妹さんじゃないの?」

「めっちゃ失礼なんですけどっ!!私、こう見えてもかなり成績優秀なんですけどっ!!今驚愕すべきはそこじゃないんですけどっ!!」


話の内容よりも真剣なベルヴィアに驚くイツキとララミーティア。

尊敬されるかと思っていたベルヴィアは頬をぷっくり膨らませながらイツキにつかみかかる。

聖フィルデスはその様子をニコニコ見守る。


『まぁ、ベルヴィアちゃんが映像の中で話していた通りだったの。これはタイミング的にはミーティア集落と接触したばかりの頃かしら。もうこの画面は不要ね…。』


デーメ・テーヌはそう言いながら手元をターンッと鮮やかに叩くようにして格好を付ける。




『城塞の守護者』の消失により発生する事象は…!!!




「うるさい!!うるさい!!!止めてください!!!!」

「耳がおかしくなりそうよーっ!!早く止めてーっ!!!」


突如大音量でベルヴィアの声が響きわたる。

イツキたちは耳を塞いで絶叫する。


「もうっ!!!デーメ・テーヌは少しは物の扱いというものを覚えなさい!!」


珍しく怒り心頭な聖フィルデスが顔をしかめながら手元のウィンドウ画面でベルヴィアの映像を消したようだ。


「私の映像を音声兵器にしないで下さい…!」


ベルヴィアは自分の映像が大きなスクリーンで流れただけでも恥ずかしい上、大音量で自分の声を聞く羽目になったので同じく怒り心頭だ。


『ご、ごめんなさい…。聖フィルデス、続けてちょうだい。』

『ふふっ、ぷっ!!ふふっ…。』


顔を真っ赤にしたデーメ・テーヌと、それを笑うテュケーナ。

ウィンドウ画面は無視して聖フィルデスが再び話し出す。


「お二人に授けた加護は魔力を多めに消費する物ばかりです。いつか世界の魔力が安定してしまえば不要になります。尤も使い方さえ気をつければその限りではありませんが。あの頃の状況を考えてみて下さい。あの頃の条件のまま推移していたら…と。」


聖フィルデスにそう言われて目を合わせながらそれぞれ考えてみる2人。


「あの当時の条件、今居るほとんどの人が居ないミーティア集落か…。」

「魔力が安定しましたと言って全部の加護を回収されたら、昼夜を問わずに四方八方からやってくる有象無象からミーティア集落を守るのは到底無理ね。」

「だからティアちゃんをそもそも強くしてしまえばいいのではと聖フィルデス様が提案して、私がティアちゃんの規制解除を申請したの。何の相談もなく勝手にごめんね。」


ベルヴィアはララミーティアの手に手を乗せて申し訳無さそうに言うが、ララミーティアはほほえみを浮かべながら首を横に振る。


「いいのよ。ありがとうね。凄く嬉しかったわ。」

「ティアが命を落とす…か。」


イツキがポツリと呟くと、テュケーナが口を開いた。


『いつだったかイツキちゃんが死んじゃうかもってティアちゃんがミーティア集落で取り乱したアレ、逆の立場になってたらあの時で世界が滅んでいたかもですよぉ。』

「ティアちゃんの規制解除の背景はそんな具合で、注意して欲しいお願い事はここからです。」


聖フィルデスはジャクリーンやウーゴにララハイディなどが映っている映像を手元に引き寄せた。


面白かったという方はブックマークや☆を頂けますと幸いです。

今日の18時に本編とあまり関係ない閑話を挿入しました。

よろしければ是非見て下さい。

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