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閑話.冒険者たち

冒険者の話を書きたかったので差し込みました。

ちなみにシティエルフの寿命はせいぜい三百歳くらいです。

ミーティア集落にはミールの町へ来たついでにと旅人や冒険者パーティーがふらりと立ち寄ることがある。


ミールの町でミーティア集落の話を聞いて「ついでに見てみるか」と思い立つのは大抵が亜人だったり、若しくは身内や仲間に亜人が居る者だ。

今の所結界に阻まれて一悶着という事態は起きて居らず、大抵はミールの町で聞いたとおりのミーティア集落の種族関係なく仲良く平和に過ごしている様子や、こぢんまりした集落の様子を見て満足し、その日のうちにミールの町へ帰ってしまうのが殆どだ。


最近ではミーティア街道が整備されてミーティア集落にも数軒の店が出来たのでついでに買い物をするものや、食堂兼飲み屋に行く訪問者の数も増えて滞在時間も伸びていた。




イツキとララミーティアがミーティア集落をブラブラしていると、所謂冒険者のような身なりをした四人組の男女を囲むようにして集落の子ども達が群がっているのが見えた。

冒険者のような四人組は種族がてんでバラバラで、ミールの町で噂を聞いてよく見物しにくる類の冒険者パーティーであることが分かる。

恐らく群がっている子ども達は冒険者による冒険者譚を聞いているのだろうというようなどこかワクワクした様子で居る。

子ども達の中にはハウラとボルダーも居るようだ。


何か面白い話が聞けるかと思ってイツキとララミーティアがフラフラと近づいて行くと、それに気がついた子ども達が声を上げる。


「イツキ様!ティア様!」


子ども達の声でイツキとララミーティアに注目が集まる。

冒険者パーティーは4人とも若く、恐らく人族の男とシティエルフの男、単眼族の女と狼のような見た目で女性らしい格好をしている女で構成されていた。

イツキを見た瞬間にシティエルフの男と単眼族の女が恐怖で顔をひきつらせる。

挨拶がてらララミーティアが賺さずフォローを入れた。


「ごめんなさい。脅かすつもりは無いから安心して。この私の夫で人族のイツキ・モグサよ。私はダークエルフ族のララミーティア・モグサ・リャムロシカ。ティアでいいわ。」

「本当にすいません。イツキです。冒険者の方と接する機会が全然ないので、自分達も話を聞いてみたいなーと。」


イツキは片手を頭に乗せてペコペコと頭を下げる。


「おいおい、不躾に警戒してなんなんだよ、失礼だぞ。俺にゃ何に怯えてるのかさっぱりだぞ。」


人族の男が呆れた顔でシティエルフの男と単眼族の女の子を非難する。

狼人族の女も同調する。


「そうだぞ。説明しとくれよ!」

「し、失礼しました。あの、魔力視する癖がありまして、それでその…イツキさん?の魔力の量が…、アーティカもそうだろう?」


シティエルフの男からアーティカと呼ばれた単眼族の女が額の汗を拭いながら怖ず怖ずと喋り出す。


「え、ええ…。今ユスリィの言ったとおりです。あの、失礼を承知で聞きますが…イツキさんは人族なんですか…?単体の生命がここまで魔力を持てるものなのでしょうか?」


アーティカの質問にララミーティアがクスクス笑いながら答える。


「ふふ、正真正銘の人族よ。超長命種の私でも初めてイツキを見たときは死ぬと思ったの。安心して、敵意を向けない限りは噛みついたりしないわ。」

「あー、ははは。自分では魔力視でどんな風に見えてるのかよく分かんないけど、人畜無害なんでご安心を。ははは…。」


子ども達は今のやりとりを見て冒険者パーティーに興奮しながら口を開く。


「イツキ様はとっても強いんだよ!僕達を悪いエルデバルト帝国から守ってくれたの!ティア様もいつも守ってくれるよ!」

「そうかそうか、凄いんだな!ちびっ子達、貴重な情報感謝するぜ!イツキさん、ティアさん、失礼した。俺達はあちこちを放浪しているパーティーなんだ。見ての通り多種族パーティーだから、ここの噂を聞きつけてどんなもんか見にきたって訳さ。」


人族の男は「よろしくな」と言ってイツキとララミーティアと順番に握手をする。


「俺達みんなスーゼランド王国っていうマーリングとランブルクに挟まれたちょっとマイナーな小国出身なんだ。エスメ山脈っていう山々にある集落の幼なじみで組んでさ、俺は人族のダウワース。ダウって呼んでくれ。そんでシティエルフのユスリィ。で、単眼族のアーティカ。最後に狼人族のスライヤ。」


ダウワースに紹介された面々は順番に頭を下げる。


「ねえねえ!お話聞かせて聞かせて!」


ボルダーが待ちきれないといった風にジタバタしながら言うと、子ども達みんなにもどかしさが伝染したようで「お話お話」と連呼が始まって冒険者パーティーは思わず笑ってしまう。


「私達も是非聞きたいわ。賑やかで楽しそうですもの。」

「そうだね。是非お願いします!」


イツキとララミーティアが子ども達を誘導し、冒険者パーティーの前にアイテムボックスから出したレジャーシートを取り出してお行儀良く座らせる。


その様子を見てダウワースがニコニコしながら話を始めた。


「さっきも子ども達には言ったけどまず種族。冒険者ってのは危険がいっぱいだ。そこで種族によって得意な事があるから、みんなで得意を活かして支え合う。まずは狼人族のスライヤな。スライヤは耳が良いし鼻が良く利く。これは他の種族にゃ真似できねえ。しかも兎に角早ええんだ。だからスライヤは斥候に向いてる。斥候、わかるか?」


子ども達が首を横に振る。スライヤが微笑みながら口を開いた。


「斥候ってのはね、こっそり相手の様子を伺ったりする事さ。あたしは足音を消したりするのも得意。こればかりは誰にも負けない。だから斥候なのさ。犬人族の坊やもこっそり歩くのが得意じゃないかい?」


スライヤはワクワクした様子のボルダーにそう聞くとボルダーは弾けるようにして返事をする。


「うん!僕こっそり歩くの得意!」

「そうだろ。次にシティエルフのユスリィ。ユスリィは遠い祖先に森エルフが居たみたいで魔法が得意なんだ。人族の俺だって詠唱魔法くらい使えるけどよ、ユスリィは『高速詠唱』っていって、本当何喋ってんのかわかんねえくらい早口でペラペラペラペラって詠唱してよ、魔法をドカドカ打てる。しかも特別な事なんてしてねえハズのにやたら手先が器用なんだよ。だから弓を使わせても超一流だし短剣を持たせて相手の懐に飛び込んだらつええんだ。」


ダウワースの紹介にユスリィは少し照れ臭そうにはにかむ。


「ダウからそう言われると何だか照れ臭いですね。シティエルフという種族はずっと昔のおじいさんおばあさんの中に森エルフが居ると、私みたいにたまにシティエルフとして産まれる事があるんです。だから私の両親は2人とも人族です。面白いでしょう?」

「うん!凄いんだねー。」

「ふしぎ、はうらのまま、はうらと同じヤギじん族だよ?」


子ども達の意見にニコニコしながら何度も頷く冒険者パーティー。

ダウワースが更に続ける。


「単眼族のアーティカ。アーティカは滅茶苦茶格好いいんだこれが!こんなのんびりした見た目してるのによ、このくりくりし目から『マギ・ブリスカ』って名前の技で、光の矢みてーなのがすげー早さでバババババッて飛んでくんだよ。単眼族の中でもバリバリの強さなんだ。駆け出しの頃なんてみんなよ、ことある毎に『助けてーアーティカー!』だったよな!」

「ははは、そうそう。駆け出しのころみんなまだ弱くて、まるでアーティカとその付き人達だったんですよ。」


ユスリィは笑いながらアーティカの肩をポンポンと叩く。


「そうだな。アーティカの『マギ・ブリスカ』には本当助けられたなぁ。コボルトの群れと遭遇した時なんて今考えると笑えたな!」

「笑えないです!三人とも私の後ろに隠れて「あっち!」とか「こっち!」とか、私まるで武器みたいにクルクル回されました!」


子ども達がワクワクしながらも声を上げて笑う。

イツキとララミーティアも中の良さそうな冒険者パーティーの姿に思わず微笑んでしまう。


「最後に人族の俺ダウワース。俺はそうだなぁ…。」

「ダウワースの言ダウは何をやらせても飲み込みが早いし、何より人が集まってくるんです。」


ユスリィの言葉にスライヤが笑いながら同調する。


「そうそう。立ち寄った町でさ、ちょっと目を離したら町の人と仲良くお喋りしてるから「知り合いかい?」ってこっちが聞くと「いや?初めて会った人だぜ」って事がよくあるね。」

「ふふ、人懐っこいって言うのか人たらしって言うんですかね。それにダウの明るさや前向きさが、どんな時でも何とかなるかなって思えるんです。」


アーティカの言葉に少し照れ臭そうにするダウワース。


「ねえねえ!冒険のお話聞かせて!」

「聞きたい聞きたーい!」

「おはなし、ききたい!」


ダウワースが自身の両膝をパシンと叩く。


「よしっ、そうだな!じゃあまずは海、みんな海は見たことあるか?」


ダウワースの言葉に子ども達は首を横に振る。


「俺達が駆け出しの頃、故郷スーゼランズの国境を越えてよ、暫く大マーリング王国のサンズバルト街道を旅したんだ。ポツポツある町で悪戦苦闘しながらちっちゃい仕事をコツコツこなしてさ、金はないけどそれなりに戦えるようになった頃だ。小高い丘を超えたら目の前は一面水だ!俺達海なんて初めて見たからよ「ありゃなんだ!」「う、海じゃないか?」なんて舞い上がっちまってさ、四人で丘を駆け下りた。」

「今でも覚えてるなぁ。ゆったり左に曲がる緩やかな下り坂、みんな目を輝かせて力の限り駆け降りたんです。あのキラキラした瞬間が永遠に感じました。」


アーティカが微笑みながら遠い目をする。


「でもスライヤが勢い余って海の中にダイブして大変でしたね。乾いたらあちこち塩だらけになっちゃって、私とダウの水魔法で綺麗にして、アーティカが風魔法で乾かして。」

「ユスリィだって海の中でキラーフィッシュにアチコチ噛みつかれて1人で大騒ぎしただろ!あたしだけ失敗しましたって感じを出すんじゃないよ!」


四人の掛け合いに子ども達がクスクス笑う。


「あの時浜辺で焼いて食ったキラーフィッシュ、あれ旨かったなぁ。星も空が広いからよ、こぼれ落ちてきそうなくらい夜空一面に瞬いていてよ、丸まるの月が海にユラユラ映ってんだ。」

「そのままウエストライン海岸を南下して大マーリング王国の王都を目指しました。私達大陸を旅してるんだって感じで楽しかったなぁ。」


ダウワースとアーティカがそう言うとユスリィがクスクス笑い出した。


「海と砂ばかりで飽きたって数日で街道に戻りましたけどね。靴に砂が入るだの足が無駄に疲れるだの、暫く魚は食べませんでした。」

「毎日キラーフィッシュばかり食ってたら飽きちまうからな!魚はパンチが足りないよ、やっぱりあたしは肉だね。」


スライヤが肉を噛み千切るジェスチャーをしてみせる。

ダウワースがうんうんと頷く。


「魚も肉もいいけどよ、ウエストライン海岸沿いはもう南下も北上もしたくねえよな。」

「そうねー。」


ダウワースの言葉にアーティカがそう答えるとパーティー一同がうんうんとしみじみ頷く。

ララミーティアが賺さず質問する。


「あらどうして?素敵な思い出がいっぱいあるじゃない。」

「いんや。何より通行税がかかって仕方ねえんだ。ほら、あの辺は小さい国がワラワラあるだろ?いくら冒険者組合の組合証を出していくらか減税されたところで通る度に通行税通行税…。わざとそういう所に街道作ってんじゃねえかと疑いたくなるくらいえげつねえ。」


ダウワースが苦々しい顔をしてそういうと、ユスリィが笑いながら口を開く。


「ははは、途中からうんざりして山の中を歩いて節約しましたね。もう山の中は魔物がうじゃうじゃで、あれで大分強くなりましたよね。」

「何があるか分かんねえから魔法は節約だなんてダウが言うからあたしとダウがフル稼働だよ!ダウも自分の事なのに魔法と違ってちょっと休みゃまた戦えるだろってさ!」


スライヤの言葉にアーティカは笑う。


「それまで私に頼りっぱなしだったから良い機会だったじゃない!」

「はは、良い機会だったぜ。もう二度と同じことはやりたくないけどよ、今となっては良い思い出じゃねえか。」





ダウ達四人の冒険譚は面白おかしいエピソードばかりで、子ども達は夢中になって話を聞いていた。

様々な種族が力を合わせそれぞれにしっかり見せ場があり、理不尽な話や悲しい話が殆ど出てこないので、聞いていて全く飽きなかった。

イツキとララミーティアも自分達の知らない冒険者パーティーの話す様々な場所の様子に興味津々で、途中からみんなにお菓子やジュースを配ってワイワイ楽しみながら話は続いた。


「まぁよ。大陸中あちこち回ったけど、ここが一番いい町だな。」


一通り話が終わり、ダウワースが辺りを見回してそう告げる。

すると残りのメンバーも同じ様に首を縦に振る。


「そうだね。あたし達の故郷はこんな広かなかったけどさ、雰囲気が一番似てるよ。ホッとするっていうかね。」

「こんな堂々と騒いでも何もされませんしね。」

「そうね。ローブで顔を隠す必要もない良いところですね。」


最後のユスリィやアーティカの言葉にイツキはつい思ったことを尋ねる。


「やっぱり亜人だと肩身が狭かったりするんですか?」


イツキの質問にアーティカが切ない笑顔で答える。


「当然そうなりますね。私達のパーティーはダウが居てくれたから、そんな雰囲気になっても相手と打ち解けたり見逃して貰えたりしました。だからダウ無しでは絶対に成立しなかったパーティーなんです。」

「そうだね。ダウは嫌な絡まれ方をしても「わりぃわりぃ!田舎者だから勘弁してくれ!それにしても良い雰囲気の町だよな!へぇ随分良さそうな町だなぁってんでつい立ち寄ってみたんだ、一杯奢るから俺たちに色々教えてくれよ。俺たちド田舎から来たんだよ、へへ!良かったら酒場行こうぜ!」ってね。」


スライヤがダウワースの真似をしながらそういうとユスリィが笑いながら同意する。


「ダウの人たらし、アーティカの格好いい種族固有の魔法、スライヤの華麗なアクション、私の弓を使った的当ての芸、あの手この手でどうにか旅が続けられています。」

「最初冷たく当たってきた人族も、町を出るときには「また来いよ!」って手を振ってくれたりしますもんね。」




話も一通り終わり、そろそろ夕方という事で子ども達は冒険者パーティーに別れを告げて各々の家へと帰って行く。


「あー、何か俺よう、故郷が恋しくなってきたな…。」

「スーゼランドのエスメ山脈…、もう十五年は帰ってませんね。」


ダウワースとユスリィがしみじみとしながらそう言うと、スライヤとアーティカも遠い目をする。


「子ども達は家に帰ると温かい家で家族が待っているんだろうね。晩御飯を作るお母さんの背中に今日あった事を色々話して、温かい料理を家族で食べる。夕食の後もあれこれ話をしたりちょっと遊んだり。」


アーティカが切なそうに微笑みながらそう言うと、スライヤも俯きながらぽつりと呟く。


「そのうちうつらうつらしちゃってさ、促されるまま寝床に入って、段々瞼が重くなるんだ。父さんと母さんに見守られながらな。」


イツキとララミーティアもその様子をぼんやりと思い浮かべて微笑む。


「それなら一旦故郷に帰ってみたらいいじゃない。みんなの家族が待ってるんじゃないの?」

「そうだね。スーゼランド方面に向かいつつね。」


2人の言葉にダウワースは切ない笑顔を浮かべる。


「俺たちの故郷はもうねえんだなこれが。家族も里のみんなも今頃お空の上かどこかの町で奴隷って訳だ。」

「えっ…、そんな…。ごめんなさい、無神経な事を言っちゃって。」


底抜けに明るいパーティーの口からそんなエピソードが出てくるとは夢にも思わず、イツキとララミーティアは驚いてしまう。

しかし駆け出しの頃はからっきし弱くて、ひたすら単眼族のアーティカに頼りきりだったというエピソードは確かにイツキもララミーティアも引っかかってはいた。


「いえいえ、こちらもそんな事を悟らせない程陽気なエピソードのオンパレードでしたから。」

「そうだぜ、過ぎた話さ。俺たち四人仲良しでよ、その日も四人で冒険ごっこをしてた。いつもより随分遠くまで行っちまってよ、帰ったら俺たちを心配している大人達にブン殴られちまうぞ、何て言い訳しようか?なんて呑気に相談しながら里に戻ったんだよ。」


ダウワースの言葉に続いてスライヤが口を開く。


「最初に異変に気付いたのはあたしさ。漂ってくる匂いは鉄みたいな変な匂い、飯時だってのに音も全くしない。みんな何か変だよって。」

「スライヤが鉄の匂いがするだとか、これから晩御飯の時間なのにまるで真夜中みたいに静かだとか言うので、私達は慎重に里の様子を見ました。里の中では老人たちや男達が血まみれで倒れていました。襲われたんです。大規模な盗賊か奴隷狩りに。」


ユスリィは俯きながら静かにそう語った。

アーティカはじっと押し黙ったままだ。


「俺達は子供ながらたった四人で偶然生き延びちまったんだ。とりあえず何があったかもよくわかんねえ里にはもういられねえと思って、呆然とするこいつらに喝を入れてよ、里中から金目の物とか本物の武器と防具、とにかく使えそうな物を片っ端から集めた。運がいいことにあの頃からユスリィとアーティカは中級のウィンドウ魔法が使えたから、使えそうな物は全部持って、死んでそのままにされてた里のみんなを埋めてそのまま里を出た。真っ暗な夜だったな。」

「あの頃まともに戦えるのは私だけだったから、必死でみんなを守った。先祖帰りしたって言われてた単眼族の力に心から感謝したなぁ。」


アーティカが目元を拭いながら努めて明るく喋る。


「あたし、帰りたくなっちまったよ…。みんなが待つ里にさ。こんなに雰囲気が似てるなんてさ…、帰りたいよ。」


スライヤが堰を切ったように嗚咽を漏らし始める。

アーティカがスライヤの背中をさすりながらも同じく涙を流し始める。


「そうだね。私も会いたいな、パパとママ…。」

「故郷…、ですか。」

「何だか雰囲気が似ててよ…。しみったれた空気になっちまうから普段は誰も言わねえようにしてたけれど…、これは無理だわ。」


ララミーティアが嗚咽を漏らし始めた四人に向かって口を開く。


「それならここを故郷にすればいいわ。新しい住人はいつだって大歓迎よ?」

「故郷に似てるならこのミーティア集落はオススメだね。魔物とかは居なくて物足りないかもしれないけど、冒険者について教えたりしてもいいし、畑仕事とか山仕事とか、兎に角やることはいくらでも何でもあるしね。」


ララミーティアとイツキの発言に一緒言葉を失う冒険者パーティー。


「いや、でもよ…。そんな急に住人になれるもんなのか?」


ダウワースが困惑しながらそう言うとララミーティアはウインクを一つ送った。


「ここでは行き場のない亜人達や元奴隷達をいつでも保護しているの。今すぐにでもここの住人になれるわ。さっきの子ども達もきっと喜んで駆けずり回るわよ。」

「冒険者稼業は別にミールの町に行けばいつだって出来るしいいんじゃないですか?良ければ今すぐ代表の所に案内しましょうか?」




その後すぐにシモンの所へ行き、その場でミーティア集落の住人となった冒険者パーティーの四人。

住むところも余っていた石の家をとりあえずあてがい、翌朝には集落の住人達へ早速新たな仲間として紹介されることとなった。


四人とも希望者への訓練や、魔境の森での採取、ミールの町の冒険者組合へ行って依頼をこなしてきたりして過ごしていた。

ダウワースの人たらしのお陰がすぐさまミーティア集落に馴染んでしまった冒険者たち四人は新たな故郷を見つけ、長い放浪の旅に終わりを告げたのだった。



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