第8回「あの夏に置いてきたままの宝物 今でもずっと残ってる」
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第8回「あの夏に置いてきたままの宝物 今でもずっと残ってる」結果発表
1位 霧谷さん 6票
俺は確かに去年、八月三十二日を見た。
三十一日、ギリギリに夏休みの課題を終え、寝て、起きると俺は家族のいない家を後に、どこかへ出かけようとしていた。
カレンダーは確かに八月三十二日で、どこかの神社に一目散に向かって、少女と話しているという、夢とは思えない記憶が心にずっと残っていた。
「久しぶり、また会ったね」
今年も、俺と少女だけの八月三十二日を迎えた。
2位 くまくま17分さん 3票
『想い』が『呪い』に変わるのは、果たしてどんなタイミングだろうか?
魔法も幻想もないこの世界でそれはきっと、コップを肘に引っ掛けるよりも些細な事なんだろう。
想いが呪いに変わる前に、胸に秘めた思い出が腐って澱となる前に、気持ちを整理し過去を清算しよう。
子供の頃、苦もなく駆け巡ったじいさんの裏山を辛苦の苦行に感じながら登り、目的地で会ったのは叶わなかった初恋。
水飴よりも甘美な痛痒の中に、コーヒーよりも渋い苦みが胸に滲んだ。
同率2位 六月のjulyさん 3票
「雨のち晴れ」を体現するような梅雨明け、夕立の雨上がりがきたる。
オレンジ色一色が放射状に広がって、夏の匂いを知らせる水平線の鮮やかさが心にじわりと広がりをつけた。
夏が来る度に、この空白の「最適解」を探しては手放し、十年が経つ。
鳴り響く鈴の音色に掴み処の無い痛みが揺れ、今でも感じる大切な友の面影。
サイダーの空き瓶から覗けばいつでも蘇る、変わらない夏の思い出に――せめてもの微笑みと発泡酒で乾杯を。
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