第6回「煌めく海の照らす場所」
______________________________
第6回「煌めく海の照らす場所」結果発表
1位 霧谷さん 5票
ある海好きの少女が当院に入院した。
消灯後ですら窓から外を眺めているので、ある日星空が好きなのか、と聞いてみた。
「夜の海みたいだから、好き」
窓越しに煌めく海が照らす中、少女はそう言った。
2位 髭虎さん 4票
波の音が夜の堤防に響いている。
泳ぐ髪、静かな風に瞳を細めて……ふと、磯の香りが鼻の奥を刺激する。
あぁ、ここは何一つ変わらない……変わらないなぁ。
思い出に小さくため息を吐いて、眠るように目を閉じた。
それは私の最初の冒険、滅びた村での初恋の物語。
3位 バグさん 3票
「神の実在を疑うのに、奇跡は信じるのか?」
熱心な宗教家の彼には親友の不信心がよほど許せないらしく、もう何度目かも分からない返答を、今回もまた繰り返した。
「神を馬鹿にするつもりじゃないんだって」
どうだか、と彼は不満気に鼻を鳴らした。
「夜に海が光るだなんて、神の御業でなければ悪魔の所業だ」
同率3位 小鳥遊賢斗 3票
深い深い海の底、深海には宇宙よりも分からないことが数多く残されているという。
「深海生物の90%以上は、体のどこかしらが光ると言われています」
傷心旅行に来た先の水族館で、無機質に流れる自動音声を聞く。
同じ境遇の二人が運命的な出会いをするまで、あと数分。
あの時モノクロだった僕の世界は、瞬く間に色を取り戻した。
同率3位 六月のjulyさん 3票
青春は海と夏をこよなく愛する、と離島の祖母は言った。
塗装の禿げた錆びついたポストに投函された差出人不明の便箋を大切そうに海辺を持って行く。差出人は不明だが、いつもノートを貸してくれる「彼」の文字だと直ぐに理解した。
地上を照射し続ける太陽光も、夏の雲のコントラストの強さも、絞り出した勇気すらも、海は「すべて」を見つめるミチシルベであり語り部。
この差出人がこれからやってきて――今日この浜辺でほんの少し、小波の音色を頼りに勇気を出す。
______________________________