第4回「あなたに捧げるための花」
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第4回「あなたに捧げるための花」結果発表
1位 霧谷さん 4票
数日前、殺人事件が起きた。
現場には、死体には相応しくない鮮やかなオレンジ色の百合が大量に散らされていた。
その花言葉は憎悪らしい。
メディアやネットでは憎悪から来る殺人ではないかという憶測が流れ続けていた。
別に、俺はそんな意図じゃなかったんだけど。
2位 ROUSHIさん 3票
調合用の触媒採取ために、とある森に入ったときの話だ、私はそこで生き倒れているドリアードの少女を拾った。
30年以上の人生の中で、そのようなことは生まれてはじめてであり、知的好奇心が刺激された私は、その日は本業を放り投げることにした。
そのまま、たっぷりと30分は観察しただろうか、倒れているドリアードの少女はみるみる衰弱していき、仲間が助けに来る様子もなかった。
知的好奇心+ほんの僅かな良心︰法令遵守の精神
を天秤にかけた結果、私はそのドリアードを家に持ち帰って保護することにした。
木の精霊のような超常生物を、生息範囲から引き離す行為は望ましくないというのは理解していたが、彼女は生き倒れていて、その体にはツルの様な傷があり、そして、彼女の蕾がまだ開花していなかったことが、私に嫌な直感を与えたからだ。
3位 バグさん 2票
どんな暴君も家族を愛する。
それすら出来ない者を、人はケダモノと呼ぶ。
「しかし、それをして為政者の功績とはならない。ピーピング・トムが白いカーネーションを差し出しても、その愛を信じたりはしないだろう?」
人の愛が可視化されたならば、それは怪物に等しい……と、彼は言った。
同率3位 時猫一二三さん 2票
心を糧に神秘を咲かす、祝花と呼ばれる花がある。
猛る想いは薔薇の炎。傷をも癒やす艶桜。終わりに満ちた彼岸花。
世界に確かにあるその花は、多感な時期の少女に宿り、心枯れるまで力を与えるのだと言う。
彼女たちの名は、鉢の巫女。
そしてぼくらは、偽りの想いを注ぎ花を咲かせる、契の庭師だ。
同率3位 髭虎さん 2票
『先月、放火の疑いで書類送検されていた天本孝明容疑者が一昨日、証拠不十分で釈放されました』
淡々としたキャスターの声、脳裏に甦る焼け焦げたカーネーションの匂いに、俺はふと煙草の口を噛み潰す。
「……【火種】」
前世では落ちこぼれだった。
あぁ、けれど魔術のないこの世界なら——きっと復讐くらいできるはずだ。
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