SS番外 スライムのお留守番① 【修正】
第一章、36話付近、Bランク昇級試験の際の、スライム視点のお話となります。
ボリュームは少なめで、複数話構成となります。
以前と同じく、読み易さ重視でカタカナ表記は会話時のみとなっております。
23/03/27 文章を若干修正
魔王様と遠くへお出掛け。
とっても楽しみ。
そんな予想に反して、お留守番を頼まれてしまった。
しかも1日じゃなくて、何日も帰れないって。
連れて行ってくれるよう、何度もお願いしたけどダメだった。
ショック!
思わずゲルゲルしてしまう。
同じくお留守番を言い渡されたワンコも、どこかしょんぽりな様子。
だと言うのに、あの霧っぽい魔物は付いて行くらしい。
再びのショック!
魔王様不在の数日間。
お宿の部屋で、どう過ごせば良いのだろうか。
と、どうやらお留守番する場所は、お宿ではないらしい。
別のヒトに預かってもらうとのこと。
魔王様以外のヒトと一緒だなんて。
不安でいっぱいだよぅ。
そうして引き合わされた相手は、最近よく見かけるようになった、眼鏡のヒトだった。
魔王様とは違って、フカフカのヒト。
お山にも一緒に行ったことがある。
このヒトなら大丈夫そうかな。
お話しはできないけど。
絵を選んで意思を伝えるように、魔王様から言われている。
いっぱい魔王様と練習して、食事と散歩の2つは覚えられた。
けどやっぱり、魔王様が居ないのは寂しいよぅ。
早く迎えにきてくれるよう、いっぱいお願いしておいた。
お出掛けの前日。
夕方から、眼鏡のヒトに預けられることになった。
当然の如く、ワンコも一緒に。
食事はお昼に済ませたから、後はお風呂と寝るだけ。
お風呂は、お宿に比べると狭くて小っちゃい。
ちょっと残念。
お風呂は大きいほうが楽しい。
ワンコが大きいままだったら、ギュウギュウになっちゃう。
遅れて、眼鏡のヒトが入って来る。
あれ?
身体に布を巻き付けている。
お風呂って、裸で入るんじゃなかったっけ?
魔王様はいっつも裸で入ってた。
『ハダカ、チガウ!』
『ヌグ、オワスレ!?』
『チャクイスイエイ?』
眼鏡のヒトから、反応らしい反応は返ってこない。
そっか、魔王様とは違って、お話しできないんだったっけ。
仕方が無いなぁ。
脱がせてあげようと、布を引っ張ってみる。
だけどすぐに、押さえ付けられてしまった。
どうして?
眼鏡のヒトが口をパクパクさせている。
何か喋ってるらしい。
でも悲しいかな、何を言っているのかは分からない。
布を手で押さえ、首を左右に振っている。
内容は理解できないけど、布を引っ張ったことに対する抗議のようだ。
よくは分からないが、魔王様からは迷惑を掛けないようにと、言い付けられている。
困らせるのは本意ではない。
魔王様以外のヒトには、服を着たままお風呂に入るという、変わった習慣があるのかもしれない。
もしかしたら、お洗濯も一緒に済ませるつもりなのかも。
個性は尊重するべきだろう。
眼鏡のヒトから離れ、大人しくお風呂に入ることにする。
石鹸の泡がたくさん浮いてる。
あんな風に、フヨフヨ浮いてみたいなぁ。
思わずプルンプルンしてしまう。
ワンコ共々、眼鏡のヒトに洗われる。
気持ちが良い。
お風呂の大きさこそ不満だが、存外悪くないかも。
これで魔王様と一緒なら完璧だったのに。
モコモコした布で水気を拭われ、お風呂を出る。
お部屋の大きさは、お宿と変わらないかも。
でも、物はこっちのほうが多い。
魔王様は、あんまり物を持ってない。
お金もあんまりない。
可哀想。
ベッドの上へと跳び乗る。
感触を確かめるために、数回弾んでみせる。
『スバラ!』
『ビバ!?』
『マーベラス?』
すっごく柔らかい!
お宿のベッドは、もっと硬かった。
こっちのほうが断然好ましい。
眼鏡のヒトに促されるまま、布団の中に入る。
珍しいことに、ワンコはベッドに上がって来ない。
いつもは魔王様の上に寝そべっていたのに。
まぁいいか。
狭いよりかは余程良い。
柔らかい布団と柔らかいヒトに包まれながら、いつしか眠っていた。
翌朝。
魔王様がお出掛けする日。
早朝から起き出した眼鏡のヒトに、ベッドから連れ出された。
バッグの中で揺られることしばらく。
どれぐらい時間が経ったのか、外から魔王様の声が聞こえてきた。
どうやら、眼鏡のヒトとお話ししているみたい。
魔王様のお見送りに出向くとは、眼鏡のヒトは、中々に心得ている。
「分かりました。では、行ってきます」
すると、魔王様のそんな声が聞こえた。
もう出発するようだ。
たまらず、声を掛ける。
『マオウサマ、イッテラッシャイ!』
『マオウサマ、ゴシュツジン!?』
『マオウサマ、ヨニゲ?』
「アナタたちも来ていたんですか? くれぐれも受付嬢さんに迷惑をお掛けしてはいけませんよ? 良いですね?」
『ショウチ!』
『ウケタマワリ!?』
『メイビー?』
「──理解していると信じておきます。それでは、行ってきます」
魔王様から、挨拶の言葉を掛けてもらえた。
嬉しい。
嬉しいけど、離れ離れは寂しいよぅ。
思わずプルプルしてしまう。
連れて来てくれた眼鏡のヒトに感謝!
一緒に行けないのは残念だけど、ワンコが面倒事を起こさないよう、しっかり見張っていなければ。
さて、今日は果実が食べられると嬉しいなぁ。
【次回予告】
大変長らくお待たせいたしました。
主人公の故郷へと到着致します。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。




