73 元勇者の魔王、資材調達
▼10秒で分かる、前回までのあらすじ
王都の外では、アンデッドの脅威に晒されつつあった
とある町にて、王都から派遣されて来た兵士達に遭遇
町の防衛の為にも、兵士達に提案を持ち掛けようとしています
それでは、本編の続きをどうぞ。
スキル名は【】、使用した能力や魔法は≪≫で記載しております。
兵士達が到着してから、早くも一日が経過していた。
冒険者達は、既に荷馬車と共に出立済みだ。
道中で助けた荷馬車も一緒だ。
兵士達と馬、それに町の住民達の協力もあり、町周辺の防衛については、一応形になりつつあった。
目標は、土壁は1メートル程の高さ、堀は2メートル程の幅と深さだ。
現在は町の半分側が完成間近、もう半分側にそろそろ着手する段階に来ていた。
意外に難航しているのは、物見櫓の方だ。
町の周囲は平野であり、木が余り生えていないのだ。
その為、近場での木材の調達が困難となっていた。
今更言っても詮無いことではあるが、道中にあった宿場を焼き払ってしまったのは、勿体なかったのかもしれない。
もっとも、曰く付きの材料を良しとしたかは、また別問題ではあるのだが。
片側をほぼ造り終えた事で、皆も作業に慣れては来ている様子。
敵の襲撃がある前に、日中に木材の調達を果たしておくべきだ。
夜間では、敵に気付くのがどうしても遅れがちだ。
アンデッドは既に息絶えた存在。
故に気配を感じ得ない。
俺でさえ、視覚か聴覚、あるいは振動を感知する事で、ようやく反応出来る。
他の者達では、知覚できる距離は、より短くなる事だろう。
木を伐採した後の運搬も考えるなら、馬で行くべきだ。
町の住宅は、最高で二階建てまで。
物見櫓の高さは、それよりも高い三階建て程度となる、10メートル前後が望ましいか。
本来であれば、町の四つ角に欲しいところではあるが、木材の在庫も無い。
最低でも町の左右に欲しいのだが、流石に門外漢の俺では、必要十分な木材の量なんて見当が付かない。
よって精通している人物を伴い、調達に向かうべきだろう。
昨晩は幸いにも、襲撃には見舞われなかった。
アンデッドの元となる死骸とて、無尽蔵ではあるまい。
とりわけ、原形を留めているようなものは、そう多くは無いと信じたい。
山林とかならまだしも、こんな平野では、そうそう死骸を放置はしない筈だ。
近々《きんきん》で襲撃に見舞われる事は無いと思いたい。
であれば、木材調達に足を延ばすのは、出来れば早々に行うべきだ。
早速、人員調達を図る。
なるべくなら、何度も往復せず、一度で済ませてしまいたい。
結果、馬四頭からなる調達部隊を結成する事になった。
行くのは俺と御者、後は木こりと大工だ。
ブラックドッグを連れて行くか、護衛として町に残すか迷ったが、そばに居ない状態だと、想定外の事態に対処しきれない。
よって、連れて行く事にした。
霧状になって貰い、ローブの下に纏う。
空では日が昇り始めた頃合いだ。
流石に日が沈むまでには、帰って来れるだろう。
三名には荷馬車を、俺の馬にだけは荷車を付けずに出発する。
機動性重視で、俺の馬には荷を引かせるのは避けた。
俺の主な役目は護衛だ。
後は伐採か。
町に程近い場所に生えた木は、いずれも細く短い。
建材とするには心許ない。
木こりの案内の元、いつも建材を調達するらしい林へと向かう。
街道を外れ、平野を駆ける。
町の防衛は、未だ十分とは言い難い。
今襲撃に見舞われれば、甚大な被害に遭う事になるだろう。
最悪の場合は全滅か。
一応、支配を施した兵士が町には居る。
虫の知らせではないが、危急の折には俺に伝わる。
俺が戻るまで凌げるかが問題だが、櫓が無ければ片手落ちだ。
いずれは調達しに向かう必要が出てくる。
今は余計な事は考えず、調達を手早く済ませる事に専念しよう。
馬を走らせること一時間余り。
目的地の林が見えてきた。
大工の言う通り、建材にするには申し分ない大きさの木々が生えている。
早速、適当な木を見繕って、伐採を始めたいところ。
だが、それは叶いそうにない。
林の中には、ハウンドの姿が複数視認出来た。
気配は感じない。
恐らくはアンデッドなのだろう。
まさかとは思うが、こちらの行動を先読みして、予め配していたとしたら脅威だ。
それこそ、町では今まさに襲撃が行われていてもおかしくない。
しかしながら、町の兵士からは、そういった思念は送られて来てはいない。
であれば、偶然の接敵か。
ならばむしろ好都合というものだ。
いずれは町に襲撃を掛けてきたかもしれないのだ。
前もって排除出来るのであれば、町の防備の為の時間稼ぎにもなる。
元より見逃すつもりも無い。
同行している皆に待機するよう声を掛け、馬を一人に預けて、徒歩で林へと向かう。
林に近づいた俺に気が付いたのか、アンデッド化したハウンドが、林の中から次々と飛び出して来る。
2体、5体、10体。
全部で10体か。
いずれも腐敗が進んでいる、ハウンドゾンビだった。
光糸で一網打尽にも出来るが、兵士達への調練の為にも、槍捌きを少しでも思い出しておいた方が良いだろう。
随分と久々だが、後方には守るべき人間も居る。
気を抜いていて、被害が出ては目も当てられない。
気合を入れ直し、ハウンドに対峙する。
≪光槍≫
光の中級魔法。
刃渡り30センチ、全長3メートル程の光の槍を構える。
槍の末端を持ち、薙ぎ払う。
普通の槍とは違い、重さなど無いに等しい。
長物にあるまじき速度で以って、一閃は放たれた。
最初に飛び出して来ていた、二体の前足を刈り取る。
僅かの間も置かず、振り抜いた腕を逆方向へと振るった。
そうして起こるのは、再びの一閃。
今度は後ろ足を刈り取って見せた。
トドメは後回しに、次に備える。
次に迫るのは三体。
端の一体を狙い、光槍を投擲する。
見事頭部に命中し、そのまま地面へと縫い付ける。
≪光槍≫
再び光の槍を手に、残る二体に対し、あえて接近するように駆け出す。
互いに後一歩という距離まで迫ったところで、思い切り踏み留まる。
こちらの速度が失われた事で、接敵距離にズレが生じる。
二体は眼前で跳び上がり、空に噛みつくような姿勢を晒している。
無防備となった体に対し、槍を横一閃する。
二体の足が胴より離れる。
またもトドメは刺さず、残る相手を見据える。
残り5体。
囲み込むようには迫り来ず、縦二列でこちらへと駆けて来る。
一撃での対処は難しいか。
しかし、光剣と同じく光槍もまた、魔力量により大きさや鋭さを増す事が出来る。
そして形状すらも変化させる事が可能だ。
今まで用いていた切断を目的とした形状から、細長い円錐状の突撃槍へと変化させる。
大きさは今までの倍。
長さ6メートルにも達した光の突撃槍。
迫り来る一列を、正面から串刺しにしてみせる。
巨大な突撃槍の一撃を、頭部から胴体に向けて受けたハウンドゾンビの体は、その殆どが吹き飛んでしまった。
今ので2体倒せた。
残りは3体。
同類の末路を見やり恐れをなしたのか、それとも元々そのつもりだったのか、俺の脇を通り過ぎ、後ろに控える人間の元へと駆け抜けてゆく。
流石に四足歩行に対しては分が悪い。
今から追いかけても、追い付く事は難しい。
やはり勘が鈍っているらしい。
御者達に迫ったハウンドゾンビ達に向かい、魔法を放つ。
≪光牢≫
光の中級魔法。
ハウンドゾンビ達の動きが止まる。
剣に比べて、槍は咄嗟に動いたりし辛いな。
どうしても槍捌きに意識が持っていかれがちで、足元が疎かになってしまっている。
兵士への調練の際には、その辺りも注意しておかねば。
拘束したものも含め、先程足を切断したものにもトドメを刺しながら、皆と合流を果たした。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。




