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勇者は転職して魔王になりました  作者: nauji
第二章 妖精秘境編 前編
83/364

67 元勇者の魔王、遠い夜明け

▼10秒で分かる、前回までのあらすじ

 王都を仲間達に任せ、主人公は帰郷することに

 町ではアンデッドの噂が流れるも遭遇には至らず

 しかし、次の町で化け物騒ぎに遭遇、何と巨大なアンデッドが迫っていた

 魔力の過剰供給により巨大化したブラックドッグと共に退治したものの、

 住民達から恐れられ、町から追い出されてしまった


それでは、本編の続きをどうぞ。


スキル名は【】、使用した能力や魔法は≪≫で記載しております。

 急遽、昼も随分と過ぎた頃に出発する事になってしまい、次の町に辿り着けぬままに、空は色を変え始めていた。


 日が傾げていく。


 生憎と宿場は見えない。


 辺りが暗くなれば、宿場の明かりを見つける事も叶うかもしれないが、そうでなければ、今晩は野営するしか無いようだ。


 野盗に魔物。


 ここのところ、連続して遭遇している。


 王都から離れて数日。


 危険は増しているようだ。


 野盗はともかくとして、問題は魔物だ。


 アンデッド。


 今日、遭遇した個体は、ただのアンデッドではなかった。


 幾つもの個体が集合した、特殊な個体。


 完全に骨と化していたからこそ可能だったのか、大きさはドラゴン程もあった。


 あの個体こそが、以前の町で目撃されていた個体だったのだろうか。


 そうであれば、危険が一つ減った事になる。


 そうでなければ、危険は増加しているとも言える。


 王子が各地でアンデッド化を進めているという、証左でもある訳なのだから。


 だが、不幸中の幸いと言える出来事もあった。


 ブラックドッグだ。


 まさか、魔力を過剰摂取する事で、巨大化してみせるとは思いもしなかった。


 普段の最大サイズは2メートルなのに対し、倍する4メートル程もの巨体。


 妖精全部がそういう体質なのかは不明だが、心強い味方が増えた事は喜ばしい。


 とはいえ、望まぬ戦闘に駆り出すような真似はしたくない。


 戦わせる為に連れている訳ではない。


 出会いは偶然で、支配により、意思すらも捻じ曲げてしまっている。


 共にある事を強制しているに等しい。


 勿論、保護を目的としてのものだが、これ以上、何かを無理強むりじいしたくはない。


 いずれは、他の同類を見つけてやり、在るべき場所へと返してやれれば良いのだが。


 今はその手掛かりすらも無い。


 人を襲う妖精。


 支配の力無しには、人間との共存は難しいのかもしれない。






 残念ながら、宿場を見つけられずに、夜を迎えてしまった。


 元々、毎回町に辿り着ける筈も無い。


 野営の準備自体は、馬車にも用意がある。


 とはいえ、食事も風呂もトイレも寝床も、宿屋とは比べるべくも無い。


 野外であれば、危険も増す。


 街道の脇、未だ田畑が見えぬ平野にて、野営の準備を行う。


 食事は久方ぶりの携帯食料。


 最近では、Bランク昇級試験の時以来になるか。


 感慨は覚えないが。


 素早く食事を終え、食後のひと時をのんびりと過ごす。


 周囲からは、虫の声と風の音しかしない。


 無音ではないが、静かな夜。


 寝入るには、まだ時間が掛かりそうだ。






 おもむろに立ち上がる。


 遠く、暗がりから何かが迫って来ている。


 複数。


 気配は、無い。


 先ずは相手を確認する。



閃光フラッシュ



 光の初級魔法。


 相手に向け、放つ。


 野営の固形燃料による焚火たきびよりも、強烈な光。


 暗闇が一瞬晴れる。


 相手の姿が浮かび上がる。


 種類は様々。


 だが、総称するなら、アンデッドだった。


 馬、犬、そして人。


 既に肉は無く、骨のみの動く骸。


 今回は合体してはおらず、数で攻め寄せて来ている。


 進行方向からして、目標は俺達のようだ。


 街道を挟んだ反対側からも、影が近づいて来る。


 連中は、こちらを包囲してみせるつもりらしい。


 アンデッドは命令に従うのみ。


 本能で行動など出来はしない。


 では、俺を襲うよう命令されているのか。


 あるいは、人間を襲うように命令されているのか。


 王子の目的は、未だ不明瞭だ。


 無論、連中の準備が整うのを、待ってやる道理はない。



光糸ストリング



 光の中級魔法。


 光剣のように、物理的な干渉が可能な光の糸。


 主な用途としては、ダンジョン内で迷わぬように、入口から伸ばしておいたり、複数を束ねて、紐代わりにする、道具代わりの意味合いが強い魔法。


 今回は、束ねるのではなく、網状にして自分達の周囲へと展開する。


 半球状のザルを逆さに、ふたの様に自分達をおおった様な状態だ。


 魔力を強め、糸を細く、網目を細かくしてゆく。


 アンデッドの集団が、網に十分近づいたところで、網を外側へと拡大させる。


 同時に、光の糸を素早く前後に振動させてやる。


 直後に起こるのは、光の網による細断だ。


 相手に抵抗する間も与えず、一瞬で全ての個体を粉々にしてみせる。


 道具も魔法も、要は使い方だ。


 便利になるも、凶器になるも、使い方次第。


 準備に時間を要するものの、光糸による網の威力は絶大だった。


 動きが遅く、数が多い場合には有効だろう。


 いや、むしろ、アンデッド相手なら、結構使い勝手が良いかもしれない。


 光魔法に攻撃系は殆どない。


 数少ない攻撃系の光炎も、火力は随一だが、広範囲に影響を与え過ぎる。


 先だってのスカルボアでの一件が、良い例だろう。


 常に巻き添えを警戒しなければならない。


 もしくは、壁で覆うなどしてから光炎を使用すれば、効果的だろうか。


 敵を逃がさず、炎を漏らさず。


 手数は多いに越した事は無い。


 アンデッドの襲撃がまたあるようなら、試してみるのも良いかもしれない。






 招かれざる客を一掃し終え、寝る支度を整える。


 本格的に寝るのは馬車の中でも出来るので、ひとまずは、御者ぎょしゃに寝て貰う。


 俺は半覚醒状態で周囲の警戒をしつつ、体を休める。


 魔力の回復は、一日経てば良いというものでもない。


 体をある程度休めなければ、回復は見込めない。


 熟睡するより回復量は少ないだろうが、休まないよりかはマシだ。


 長い夜を、一人過ごす。


 先のアンデッドによる襲撃の所為か、虫の声が止んでいる。


 耳に届くのは、風の音のみ。


 焚火は固形燃料の為、枝の爆ぜる音などはしない。


 揺らめく炎に照らされながら、寝入ってしまわないように意識を保つ。


 王都は既に遠く、故郷はなおも遠い。


 かつて、仲間と旅をしていた頃。


 誰よりも早く寝るのは、魔法使いだった。


 見張り番など、したためしがない。


 僧侶さんも担当はしていたものの、ほぼ、俺と戦士の役割だった。


 交代で仮眠を取る。


 起きている番では、皆の命を預かっている立場だ。


 気など抜ける筈も無い。


 夜の闇を見つめる。


 影に、音に、気配に。


 気を張り詰める。


 度々現れる敵。


 大抵は闘気を当ててやれば退散するものの、常に例外は居る。


 なおも襲い掛かって来る敵には、容赦なく斬撃を見舞った。


 魔物も動物も人も。


 あらゆる存在がすさんでいた。


 あの頃に比べれば、今はどれ程に平和な事か。


 過去の残滓を思い出しながら、夜明けを待つ。






光糸の元ネタは鋼殻○レギオスの鋼糸です。

アレ強過ぎ問題。

非生命には容赦の無い主人公です。


23/01/14 誤字修正


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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お読みいただき有難うございます!

『勇者に挑むは無職の少年』 本作の続編も完結!

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