表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者は転職して魔王になりました  作者: nauji
第二章 妖精秘境編 前編
71/364

55 元勇者の魔王で代表、失敗した後には 【修正】

▼10秒で分かる、これまでのあらすじ

 第一章を読んでください!


第二章、開幕です。


23/03/20 全体を加筆修正

 あの日。


 王子による王都襲撃があってから、何日経過しただろうか。


 どうにも記憶が定かではない。


 神級魔法を使用した後遺症か、皆を連れ去られた事へのショックか、それとも、王都の住人達からの視線故か。


 避難した兵士か、王城に居た誰かなのかは分からないが、俺と王子の会話を聞いていた者が居たらしく、二人共が魔王となっていた事が、王都に広く吹聴されてしまった。


 何となく、言いそびれていたまま、事此処に至ってしまった。


 いや、言い訳か。


 "勇者"として認知され、期待されておきながらも、その実、"魔王"へと転職していたのだ。


 そして"魔王"が魔物を擁護しようとしていた。


 住人達からは、そんな無言の圧力を感じる。


 頭の中がグチャグチャだ。


 連日、仲間達が今後の対策を議論してくれている。


 遠い。


 どこか遠い光景に思える。


 現実感が希薄だ。


 意思が、活力が湧いてこない。


 ひたすらに、他人事のように眺めている。


 このままではいけない。


 心の何処かで、頭の何処かで、そう警鐘が鳴っている。


 その音さえもが遠く、鈍い。


 すべき事は沢山ある。


 王子の捜索、魔物の解放、魔物保全機関の運営、王都の住民達への説明など。


 いずれかだけでも、着手しなければならない。


 ならないのだが。


 頭の中がグルグルする。


 上手く考えられない。


 昔は違った筈だ。


 いつもは違った筈だ。


 何故、今は上手く出来ないのか。


 焦燥感がある。


 どんどん比重を増している。


 だというのに、対処方法がまるで浮かばない。






 話し掛けられている。


 僧侶さんに、魔法使いに、戦士に。


 だが、上手く返事も出来ない。


 そもそも、話の内容が頭に入ってこない。


 ただの音の羅列としてしか、感じられない。


 最近では、話し掛けられる回数も、減った気がする。


 不甲斐ない。


 期待に応えられない自分。


 上手くこなせない自分。


 何かする事で、また失敗するかもしれない。


 何か答える事で、また失望させてしまうかもしれない。



「──誰だって失敗ぐらいします」



 ふと、そんな言葉が耳から頭へと響いてきた。



「どれだけ準備を万端整えようが、どれだけ努力を積み重ねようが、失敗する時はあります」



 音の羅列。


 それ以上の意味は無い。



「賢くなっても、強くなっても、上手くいく可能性は向上しますが、絶対ではありません。在り得ません」



 言葉は続けられる。


 しかし、悲しい程に、理解には及ばない。



「失敗しないに越した事はありません。失敗は必要な経験とは言い切れません。時に、取り返しのつかない失敗が、在り得るのですから」



 失敗。


 その言葉が重く響く。



「ですが、誰も動かなければ、失敗を恐れて何もしなければ、助からない命があります」



 命。


 大事なモノだ。



「かつての私がそうであったように、今も何処かで、助けを求めている存在が居るかもしれません」



 助けられない。


 助けられなかったのだ。



「私は助けられました。他ならぬ貴方に」



 助けた?


 誰が、誰を?



「あの時、あの場所で。希望は無く、助けを求める声さえも、上げる事は出来ませんでした。上げられたのは悲鳴のみ」



 気が付けば、いや、気付かぬ内に、紡がれる言葉に耳を傾けていた。



「ですが、駆け付けてくれた者が居ました。闇を照らす光。魔を払う光。誰もがその光を見つめていました」



 光。



「貴方です、勇者様。貴方が光だったのです。お陰様で、今こうして、お傍ではべる事が叶っております」



 俺が光?



「どうか、どうかお助け願えませんでしょうか。今一度、立ち上がって頂く訳には参りませんでしょうか」



 ────。



「魔物は今でも怖いです。夜、夢に見て悲鳴を上げ、飛び起きてしまう程に。でも、それでも、全ての魔物がそうではありません。全てが恐れるべき相手では無い事を、私は知る事が出来ました」



 魔物は怖い。


 恐れるべき相手ではない。



「皆を助けてあげて下さい。望まぬ命令に従っている皆を。どうか、助けてあげて下さい」



 皆を助ける。


 どうやって?


 出来た事と言えば、人間を守った事だ。


 魔物は助けられなかった。


 勇者だった頃なら、神級魔法で助ける事も叶っただろうが、今の俺は魔王に成ってしまったのだ。


 精々、魔法を二度使用するのが限界だろう。


 支配の解除。


 いや、魔王と成った王子を倒す。


 チャンスは二回。


 だが、相手が皆を盾にしたなら。


 神級魔法は強力だ。


 手加減など出来よう筈も無い。


 選択を誤れば、自らの手で、皆の命を奪うかもしれない。


 助けたいのに。


 魔物を倒したくはないのに。


 何故、上手くいかないんだ。



「お一人ではありません」


「え?」



 思考の合間に掛けられた言葉に、口から声が漏れる。



「勇者様のお仲間方がいらっしゃいます。微力ながら、私も。他にも協力して下さる方々は、必ずいらっしゃる筈です」



 振り向いた先には、執務机の席の隣に佇む、秘書さんの真剣な顔があった。



「勇者様が皆を助けて下さるように、皆が勇者様を助けます。決して、お一人に背負わせるような真似は致しません」



 眼鏡の奥から、視線が真っ直ぐこちらを射抜いてくる。



「お一人では出来なくとも、皆でなら出来るかもしれません」



 目を逸らせない。



「それでも、失敗する事が恐ろしいですか?」



 恐ろしい?


 失敗が?



「失敗を、恐れている?」



 思わず、口をついて出る言葉。


 恐怖を、アイツを克服したのではなかったのか?



「──成程、そういう訳。随分と生意気な話よね」



 この声は、魔法使いか。


 声の方、執務机の正面にあるテーブルを囲むように配置された、ソファーへと顔を向ける。



「思い返してみれば、失敗らしい失敗って、して来なかったかしらね。つまり、初めての挫折ってやつ? ハッ、ご立派な経歴だこと」


「あ~ぁ、完全に台無しだな、これ。折角、秘書さんが良い話を語ってくれてたってのによ」


「すみません。聞き入っていたもので、制止が間に合いませんでした」


「いや、僧侶が謝らなくても良いだろ。悪いのは完全にコイツだしな」


「ちょっと、十分じゅうぶんに黙っててやったでしょうが! もう良いでしょ!?」


「まぁ、なんだ。オマエもあんま、考え過ぎるなってこった」


「ワタシ達もおりますし、ね」


「あ~やだやだ。仲良し小好しとか、ホント気持ち悪い」


「オマエ、本当に残念なヤツだよな」


「五月蠅いわね! アタシは天才なの! 残念なのはアンタの頭の方でしょ!」


「はいはい、二人共、その辺で止めて下さいね」


「「はい」」


「あ、でも、立ち直ったのかどうかは知らないけど、アンタ、しばらく居なくて良いからね」


「おいコラ、何言い出して──」


「──王都から出て行ってくんない?」



 魔法使いの言葉が、室内を凍り付かせる。


 訳の分からない展開に、頭はやはり追い付けなかった。






ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただき有難うございます!

『勇者に挑むは無職の少年』 本作の続編も完結!

気に入ってくれた方は『ブックマーク』『評価』『感想』をいただけると嬉しいです

小説家になろう 勝手にランキング

ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ