SS番外 出会いの物語④
狩りは停滞気味。
最近は専ら、魔法使いへのクエスト指南ばかりだ。
戦士だけでやればいいものを、何故か僕が指導する役を任された。
「薬草で回復って、生で食べるの?」
「食べないよ。すり潰して怪我した場所に当てる。乾燥させたのは、飲み薬として売られてたかな」
「何で事前にすり潰しておかないわけ?」
「何でだっけ……確か鮮度がどうとか言われた気がする」
「ふーん。何で成分を抽出して使わないのかしら」
「ちゅうしゅつ?」
「ハァッ。きっとこれ、最初に使って以来、進歩してないわね」
そもそもこれ、クエストに関係ないんじゃ。
「あ、薬草は取り過ぎないで」
「何でよ? 沢山取っておけばいいじゃない」
「いやだから、鮮度が──」
「そうだったわね。乱獲を防ぐ目的でもあるのかしら」
何で薬草採取なんかで、こんなに時間掛かるんだろ。
よくもまあ、次から次へと疑問が湧いてくるなぁ。
「で、あの変な頭は何処行ったのよ?」
「さぁ? 野暮用とか言ってたけど」
「胡散臭いわね」
「別に、胡散臭くはないけど」
「ま、今はいいわ。他の採取クエストも済ませるわよ」
「せめて、道中の魔物は自分で倒してくれない?」
「MPが切れたら魔法が使えないのよ? 雑魚相手に使ってらんないわよ」
冒険者とは一体……。
いつまで面倒見なきゃいけないんだろう。
「んじゃ、今日も任せたぜ」
そう言って、戦士が大通りを北へと歩み去って行く。
「怪しい。絶対怪しいわよ、あのアホ毛」
「あほげ?」
「今日で何日目よ。いっつも付いて来ないじゃない」
「そろそろ討伐系にしない?」
「いいえ。今日はクエストは無しよ」
「え?」
「後を付けるわよ」
戦士を追い駆けて行く魔法使い。
王都内だし、ほっといても大丈夫そうか。
……はぁ~っ。
勝手にさせるほうが、より面倒事になりそうだな。
仕方なく、付いて行くことにした。
「流石に、目的地は冒険者ギルドじゃないみたいね」
人でごった返す、中央広場。
目立つ頭が左折して行った。
あっちは西か。
森にでも行くんだろうか。
「ボーっとしない。見つかるでしょ」
どうなんだろ。
もう僕たちが付けてることぐらい、気が付いてそうだけど。
接近し過ぎる魔法使いを制しつつ、付いて行く。
と、大通りの途中で姿を見失った。
「あれ? 居なくなったわよ」
視覚に注意を割く。
薄っすら門が見えるけど、それまでの間には居ない。
一瞬で門を通り抜けた可能性も無くはないけど。
「どこかの店に入ったんじゃない?」
東西の大通りは、日用品やら食料品やらのお店が並んでいる。
「もう、何でアンタまで見失ってんのよ!」
ああ、ほっとけば良かったか。
ポコポコ殴りつけてくる魔法使いを無視して、気配を探ってみる。
うーん。
流石に戦闘中でもないと、気配は分かんないな。
戦士程の強さじゃないにしろ、冒険者も多いし。
「こうなったら、片っ端から店の中を探すわよ。アンタは左、アタシは右。いいわね?」
「分かったよ」
逆らうだけ時間の無駄。
気の済むまで好きにさせておこう。
「ちょっと、此処って何の店?」
「さぁ? でも、店じゃないと思うけど」
周辺とは明らかに造りが違う建物。
民家よりは広い。
庭付きの民家?
いや、宿屋のほうが近いのかな。
「中に入って探って来てよ」
「此処って多分、お店じゃないよ。入るのは流石に」
「アタシの勘が、怪しいって言ってるわ」
「えぇ……」
門の前で躊躇していると、中から声が聞こえてきた。
「ですから、何度お誘いいただいても困ります。お引き取りください」
「かえれ!」
「でてけ!」
「もう、くんな!」
「こら、そんな言葉遣いをしてはいけません。彼女もこう申しておりますし、どうかお引き取りください」
「んじゃあ、また来ます」
あ、戦士の声だ。
「ほら、やっぱり中に居たじゃない!」
魔法使いにも聞こえたらしい。
なら、さっさと逃走するに限る。
魔法使いを脇に抱えて、大通りを挟んだ路地へと駆け出す。
「なぁ!? ちょ、何してんのよ、この馬鹿!」
「戦士に見つかったら面倒でしょ」
ギャーギャーうるさいので、仕方なくそのまま路地裏を駆け抜ける。
戦士はあんな場所で、何してたんだろ。
他には、女の人と子供の声がしていたけど。
……まさか、戦士の家族とか?
「アンタ、コソコソと何やってるわけ?」
「あ? んだよ、いきなり」
ド直球。
昨日の今日で、もう問い詰めることにしたらしい。
「連日、どっか行ってるわよね?」
「んなもん、オレの勝手だろうが」
「あの場所、孤児院らしいじゃない」
「……何で知ってる? さては付けてたな?」
昨日の場所って、孤児院だったのか。
だから子供の声が複数あったのか。
「で? 何してわけ?」
「ったく、仕方ねぇなぁ……聖職者を勧誘してたんだよ」
「教会の関係者だったね」
「回復役が居るのと居ないのとじゃ、危険度が段違いだからな」
「また人を増やすんですか?」
「またって何よ!」
「嫌か?」
「……どんな人かによります」
「どういう意味よ!? アタシに何か文句でもあるわけ!?」
こんなのなら嫌だし。
「まだ誘ってる最中なんだがなぁ……まぁ、一度会ってみるか?」
「聖都から遠出するつもりなら、聖職者は必要だと思うわよ」
「役立たずは要らない」
「アンタねぇ……!」
「ったく、いっつも同じことやってるよな、オマエら。飽きないもんかね」
戦士に連れられ、昨日見たばかりの孤児院へとやって来た。
「いいか? くれぐれも失礼のないようにな」
「なら、その髪型を直しなさいよ」
あ、それは僕も思った。
「うっせぇぞ!」
「何ですか、騒がしい……あら、またアナタですか」
「あ、ど、どうも。何度も済みません」
「また彼女に御用ですか? もう何度もお断りしているはずですが」
「見定めに来たわ! どれがそうなの?」
「オマエは……ったく、人の話を聞いてなかったのかよ」
「あら、今日はお子さんとご一緒でしたか。ならば、門前で追い返すわけにも参りませんわね。どうぞ、お入りください」
「済みません、お邪魔します」
「ほら、アンタも来なさいよ」
魔法使いに手を引かれ、門の中へと入って行く。
横に長い庭の先に建物があった。
庭から複数の視線が注がれる。
「……魔物の被害者ってわけね」
視線の主は子供だった。
そっか、親が魔物にってことか。
「あ、院長様。お客様ですか?」
「ええ。ワタシにではなくアナタに、ですけれどね。まずはお茶をお出しして頂戴」
「分かりました。えぇっと……あ、アナタは」
「ど、どうも」
青い長髪の綺麗な女の人だ。
「ふーん、これがそうなのね」
「オマエなぁ、いい加減、口の利き方に気を付けろっての」
「あら、アナタのお子さんですか?」
「いやいや、まさか。PTの仲間です」
「PTって、こんな幼い子供を戦わせているんですか!? 親御さんは何とも仰らないのですか!?」
「あー、いやぁ、そのぉ」
「子供とか大人とか関係ない。魔物は区別も容赦もしない」
「そんな……こんな子供が……」
「安全な場所から勝手なことを言うな。戦士は沢山、魔物を倒してる。その分、魔物の被害者は減ったはず」
「へっ、珍しく庇ってくれてんのか? だがな、女性に向かって威嚇すんのはいただけねぇな」
「いてっ!?」
おでこを指で弾かれた。
くそっ、力入れ過ぎだろ。
「教会からは、アンタが優秀だって聞いてる。少し前向きに考えちゃくれねぇだろうか。頼む、このとおりだ」
戦士が女に向かって頭を下げる。
「むさいオッサンだったら即却下だったけど、これなら問題ないわ」
「オマエはいい加減黙ってろ」
「いたっ!?」
今度は魔法使いが頭を小突かれた。
「あの、子供への暴力行為は……まさか、日常的に行われているんじゃないでしょうね?」
「いやいやいや、そんなことはないですはい」
「……ワタシも聖職者の端くれ。より多くに人を助けたいと思ってやみません。アナタは仲間を集めて、何をなさるおつもりなのですか?」
「オレは冒険者だ。当然、冒険するに決まってる」
「それでは、このお話は無かったことに」
「あ、あれ? 今のじゃ駄目なのかよ」
「魔物を倒す。沢山倒せば、孤児も減る」
「アンタたち、馬鹿じゃない? それは対処であって解決になってないわ」
「じゃあ、どうしろって言うのさ」
「簡単なことじゃない。魔王を倒すのよ」
「いや、全然簡単じゃねぇんだがな」
「”まおう”ってのは、沢山居るの?」
「は? アンタ、何言ってんの?」
「だって、魔物より”まおう”を倒すんでしょ?」
「さてはアンタ、魔王が何か分かってないわね?」
「ふふ、うふふふふ。あ、ご、御免なさい。でも、ふふふ、思っていたよりも楽しいお仲間みたいですね」
「あらあら、話が弾んでるようですわね。あら? まだお茶もお出ししてないじゃないですか」
「あ! す、済みません。今ご用意いたしますぅ~」
結局、この後何回も訪れては問答を繰り返した。
そうしてPTは揃う。
戦士、魔法使い、僧侶さん。
懐かしい過去の記憶。
出会いのおはなし。
ここまでお読みいただき、有難うございますm(__)m




