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勇者は転職して魔王になりました  作者: nauji
断章 過去編
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SS番外 出会いの物語③

 一ヵ月程が過ぎた。


 何が強くしてやる、だ。


 死ぬような目に何度遭ったことか。


 特に料理は酷い。


 思い出すだけで気持ち悪くなる。


 宿屋で過ごした日数よりも、野宿したほうが多い。


 ダンジョンで寝たのも始めただった。


 何て言うか、冒険慣れしてる。


 きっと、町に帰らずとも、生き延びられるんだろうな。






 久々に王都に帰って来て早々、面倒事が発生した。


 宿屋に女の子が襲撃してきたのだ。



「アンタがゴーレムを倒したって子供? 覚悟はできてるんでしょうね」


「何だぁ? いきなり部屋に入って来やがって。礼儀がなってねぇな」


「そっちは父親? 変な髪型して、全然似てないわね」



 戦士はダンジョンのトラップに引っかかって以来、ずっと髪がアフロ化したままだ。


 お蔭で、前よりも判別し易くなった。



「違います」


「ちげぇよ」


「ま、別にいいわ。で、どうなの? もうやっちゃっていい?」



 夕焼けみたいな髪色の女の子。


 随分と気が強い。


 後、勢いが凄い。



「ゴーレムって、昇級試験の?」


「それ以外にある? 馬鹿なの?」


「ったく、やたら気の強いガキだな。んで、そのゴーレムがどうしたって?」


「天才のアタシが創ったゴーレムよ! 凡人の、しかも子供が倒すとかあり得ないから!」


「つまり、魔法協会の関係者ってわけか。しかし難癖がひでぇな。ありゃ、倒されるための物だろうがよ」


「うっさい! けど、やっぱり噂なんて当てにならないわね。単独で倒したって聞いたのに、こうしてPT組んでるじゃない」


「あん? ゴーレムを倒したのはコイツがソロの頃だぜ」


「……本当かしら」


「ほれ、オマエも何とか言ってやれ」


「別に、どうでもいいです。うるさいので出てってさえくれれば」


「ムカつく! 何よその態度! 消炭にするわよ!」


「おっと、間違っても魔法は使うなよ。弁償なんざしたくもねぇ。此処で暴れるってんなら放り出すぜ」


「アタシの知ったことじゃ──」


「ったく、仕方ねぇなぁ」



 戦士が素早く気絶させた。


 この子、どうして……。



「どうした?」


「いえ、この子は何がしたかったのかなって」


「そりゃあ、オマエに復讐したかったんじゃねぇか?」


「復讐ですか?」


「言ってたとおりだってんなら、ゴーレムを倒されたことが悔しかったんだろうよ」


「そういうものですか?」


「そんなに不思議がることか? オマエも大概変なヤツだな」



 その髪型に言われたくない。


 仕方なくベッドに寝かせてしばらく。


 起きたと思ったら、足蹴りされて逃げられた。


 何故か戦士が大笑いしていた。


 相変わらず変なヤツ。






 まるでいつだかの再現みたいだ。


 行く場所行く場所、あの女の子が付いて来る。


 どこまでも。


 王都の外まで付いて来たので、流石に足を止めて声を掛けることに。



「何付いて来てんだ? 危ねぇだろうが」


「はぁ? 何のことかさっぱり分かんないだけど」


「オマエなぁ……」


「いきなり声掛けないでくれない? 人を呼ぶわよ」


「それ、まさか流行ってんのか?」


「アンタ、その髪型と一緒で、頭の中までおかしいんじゃないの?」


「うっせえ!」



 いや、絶対付いて来てるし。


 何で付いて来るんだろう。



「何がしたいの?」


「コイツ、いけしゃあしゃあと……っ! アンタを倒すために決まってんでしょ!」


「なら、付け回してるの認めたってことだよな?」


「うっ」


「そもそも倒すっつったってよぉ。オマエ、ゴーレムより強いのか? じゃねぇと勝てねぇだろ」


「天才なんだから、強いに決まってるでしょ」


「いや、決まってねぇだろ。馬鹿なことやってねぇで、さっさと家に帰れよ」


「馬鹿じゃない! 天才だって言ってんでしょ、この馬鹿!」


「あーもぅ、めんどくせぇなぁ」



 さっさと魔物を倒してレベル上げしたいんだけど。


 この子、邪魔だな。



「勝負をしたら満足しますか?」


「いいえ。アタシが勝ったら、よ」


「そうですか……じゃあ、一番強い攻撃を仕掛けてください。僕は防御するんで」


「嫌よ。勝手に決めないで」



 えぇ……。


 この子、面倒臭い。



「ゴーレムはかなり物理防御が高くしてあったのよ。なら、魔法で倒したんでしょ? つまり、アンタも魔法が得意ってことじゃない」



 へぇ、意外と考えてるんだ。


 確かに、対魔法防御で済ませようと思ってた。



「どうすりゃ満足すんのかねぇ……」


「アンタの情報を集める必要があるわ。だから、付いて行くアタシを守りなさい」


「はあぁ? んだそりゃ?」


「確実に勝つには、相手の情報が不可欠よ。そんなことも分からないの?」


「そういう意味じゃねぇよ。付いて来るのは止めねぇし、自分を守れとか言うし、どんだけ自分勝手なんだよ」


「天才は人類にとっての宝。守るのは義務よ」


「オレにはもう、理解できねぇわ。どうするよ?」


「放っておけばいいんじゃ」


「それじゃ、死んじまうだろ。自分よりも弱い者は守れ。冒険者としてやっていくっつうなら、忘れんな」


「そんな決まりがあるんですか?」


「無い! オレのルールだ!」



 ま、なら、戦士が勝手に守るんだろう。



「さっさと狩場に行きましょう。時間が勿体ないです」


「ったく、分かってんのか分かってんぇのか……。おい、付いて来るなら、オレから離れるなよ」


「命令しないで──」


「聞け。冗談じゃ済まねぇ。オレらは戦いに行くんだからな」


「わ、分かったわよ」



 戦士がお守りする分、こっちの負担が増えるな。


 弱いモノを守る……。


 何かの比喩だろうか?


 じゃないと、僕らが魔物を倒すのも、おかしいってことになる。






 一週間ぐらいが経ったのかな。


 未だに付きまとってる。


 何でいっつも偉そうなんだろう。


 足手まといの癖して、口だけは達者なんだよな。


 後、確かに頭はいいらしい。



「何であんな無駄な動きしてるわけ? 意味分かんない」


「今度は何が気に食わねぇんだよ」


「態々広い場所に出ないで、狭い場所に誘い込みなさいよ」


「そりゃあ、まぁ、なんだ。武器を振り回し易いようにだなぁ」


「つまらない言い訳ね。明らかに相手に有利じゃない」


「ぐぬぬ……」


「アンタもよ! 関係ないって顔してんじゃないわよ!」


「……何が?」


「アンタが無暗に突っ込むから、この馬鹿が追っかけてあんな目に遭ったんじゃない!」


「そうなの?」


「そうよ!」



 ……そうだったのか。


 別に戦士は何も言わなかったのに。


 もしかして、いつも言わずに黙ってたのかな?



「なぁ、そろそろ冒険者にならねぇか?」


「嫌よ。何でアタシが」


「どうせ付いて来るんなら、いっそのことPT組んじまうほうがいいだろ」


「理由になってないわよ」


「冒険者ギルドの規則は面倒でよぉ。Aランクのクエストなら、Bのヤツが

 PTに居ても受けられる。だが、Cが居りゃ受けられねぇ」


「ふーん、それで?」


「今後も付いて来るってんなら、冒険者になって、せめてBランクに上がれ」


「アタシに自分のゴーレムを倒せってこと?」


「あ? あー、まぁ、そうなるのか」


「……今のままじゃ、邪魔ってわけ」


「そうじゃ──」


「そうですね」


「って、おい!」


「口だけで何もしないなら、居なくていい」


「っ!?」


「オマエはもっと言葉を選べ! お、おい、コイツの言葉はあんま真に受けんなよ」


「アタシが必要ないですって!? 見てなさい! すぐにアンタなんかより強くなってみせるわよ!」


「……オマエらの遣り取りはよぉ、見ててハラハラすんだよなぁ」



 翌日、女の子はすぐに、冒険者登録を済ませた。






ここまでお読みいただき、有難うございますm(__)m

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お読みいただき有難うございます!

『勇者に挑むは無職の少年』 本作の続編も完結!

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