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勇者は転職して魔王になりました  作者: nauji
断章 過去編
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SS番外 出会いの物語②

 Bランクの狩場は、確かに手強さが増している。


 安物の剣は、初日で折れた。


 まさか、一度も役に立たないとは。


 買って損した。


 けどまぁ、光の中級魔法が通用するから問題ない。


 軽いし壊れない。


 そろそろ、狩場を変えてもいい頃かもしれない。


 確か、北にある湖の警護とかあったはず。


 西の森も東の岩場も飽きたし、行ってみようかな。






「本日はご利用いただきありがとうございます。またのお越しをお待ちしております」



 討伐クエストの報酬を受け取り、宿に戻る。



「おい待て、ガキ。オマエ、ソロか?」



 夕食は何だろうか。


 お腹減ってるし、お肉がいいな。



「待てっつってんだろうが」



 急に肩を掴まれた。


 反射的に身体が動く。


 腰の短剣を抜き、背後へ突き刺す。



「っと、いきなり抜くとか、思った以上に危ねぇガキだな」


「っ!?」



 身体がこれ以上動かない!?


 肩に加えて、背後に伸ばした腕も掴まれてる?


 どうやってるのか分からないけど、その二箇所でこっちの動きを封じてるらしい。


 コイツ、かなり強いな。



「離せよ。いきなり触ってくんな、気持ち悪い。変質者かよ」


「ギルド内じゃ、喧嘩も御法度だぜ? ソレは仕舞っとけ」


「冒険者様? 何か揉め事でしょうか? 冒険者ギルドの規則では──」


「いやいや、何でもねぇよ。なぁ?」



 何がしたいんだコイツ?



「コイツ、変質者です! いきなり触ってきました!」


「詳しくお話を伺ったほうがよろしいようですね。こちらにどうぞ」


「んなぁ!? テメっ、ふざけんな!」


「早く離れてください。誰か、応援を──」



 機転が功を奏したらしい。


 変質者はギルドの職員によって拘束された。


 騒動に紛れてさっさと帰る。






「見付けたぞ。昨日はよくもめやがったな」



 この声……昨日の変質者か。


 見るからに前衛職だな。


 体格的に向こうが上。


 そう言えば、昨日は上の階から下りて来てなかったか?


 ならコイツ、Aランク以上ってことか。



「ギルド前で待ち伏せとか、本物の変質者だったわけか」


「ちげぇよ! 人聞きが悪過ぎんだろ!」


「子供に付きまとう知らない大人なんて、どう見たって変質者だろ」



 中央広場での遣り取り。


 周囲の人々がざわめきだす。



「ったく、可愛げのねぇガキだな。嫌な目付きをしてやがるしよぉ」


「昨日のお礼参りってこと? 教会送りにでもしようっての?」


「ガキをいじめるなんて真似するかよ。ちっと面貸せや」


「嫌だね。知らない人に付いてくのは、よっぽどの馬鹿だよ」


「──冒険者ギルドの前で何をなさっておいででしょうか」



 ふぅ、やっと出て来てくれたか。


 これで片付きそうかな。



「げっ!? いや、別に何もやましいことは……」


「お礼参りとか言って、待ち伏せされました」


「なっ!? いやいや、ちげぇよ!?」


「冒険者の素行不良は当ギルドの管理責任を問われかねません。ご同行くださいますね?」


「またこれかよ!」



 変質者が連行されるのを横目に、クエストを受けに行く。






 うわ、また出たし。


 王都北部にある、巨大な湖。


 王都の水源になっているらしく、魔物から守るっていうクエストを受けたんだけど。


 何でか、変質者が待ち構えていた。



「此処でなら、余計な邪魔は入らねぇ」



 この湖には、兵士や冒険者も多く居る。


 また騒ぎになれば、捕まるのはコイツだろう。



「何を考えてるか見え見えだぜ? だかよ、此処は他人に構ってるほど、余裕のある場所じゃねぇぞ」



 空を覆う黒い雲。


 いや、雲に見えたソレは、どんどんと高度を下げて来る。


 アレ、全部が魔物なのか。



「心配すんな。邪魔なんざしねぇ。ガキがどの程度のもんか、見定めてやるよ」



 この変態に構ってる暇はない。


 パッと見た感じ、昆虫型の魔物っぽい。


 動物型と違って、逃げたりはしない。


 厄介な相手だ。


 空を魔法が飛び交う。


 後衛職が居たようだ。


 他の連中は慣れてるのか、後衛職を守るように固まって行く。


 そっちに加われば安全なんだろう。


 けど、大人になんか頼りたくない。


 エーテルは2本。


 武装系の魔法なら、発動時にしかMPを消費しないし、十分足りる。


 やってやる!






 クソッ。


 光剣じゃ駄目だ。


 すぐに間合いを離される。


 長さが足りてない。


 変な液を飛ばしてきたり、棘を撃ってきたり。


 どんどん接近すらしてこなくなった。


 戦い辛い。



「おいおい、どうした? 動きを止めたら狙い撃ちされるぜ?」



 あの変質者。


 視線はこっち向いてるし、軽口を叩いてる癖に。


 デカいハンマーで近づく魔物を一掃してる。


 魔法を使わず、物理攻撃だけであの強さ。


 剣よりも、ああいうやり方のが倒し易いのか。


 なら……。



 ≪光壁ウォール



 光の中級魔法。


 展開先は地上ではなく空。


 魔物を上から圧し潰す!






「随分とまぁ力技だなぁ。ま、生き残ってみせただけマシか」


「ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ」



 地面に仰向けに倒れ込む。


 武装系と違って、連続で使用すると消耗が激しい。


 エーテルを飲む余裕さえなかった。


 もっと数が多かったら……。



「しっかし危ういな。その場凌ぎが過ぎるぜ。長生きできる戦い方じゃねぇ」



 うるさい。


 どっか行け。



「生き残る戦い方ってのを心掛けねぇとな。オマエはそれが全然できちゃいねぇんだよ」



 いつまでも鬱陶しいな。


 何で付きまとうんだよ。



「何だってんな無茶してんのか知らねぇが、そのまま何処ぞでくたばって満足か?」


「ハァッ、ハァッ、うるっさい」


「オレが鍛えてやるよ。いや、死なずにオレに付いて来れたら、オマエは強くなってるだろうさ」


「独りで、ハァッ、ハァッ、強くなって、ハァッ、ハァッ、やる」


「ハッ、抜かしやがる。だがな、魔物の襲撃は日に一度きりじゃねぇんだぜ? オマエ、今日を生き延びられるか?」



 もう相手にするな。


 少しでも身体を休めないと。


 一体一体は大した強さじゃない。


 問題は、あの数だ。


 どうしたって、こっちが消耗をいられる。


 光壁はイイ感じだった。


 必要なのは効率化とか最適化だ。


 やってやる、やってやるさ。






「ったく、強情なヤツだな。他人を頼れば楽できただろうによぉ」



 3回目の襲撃で力尽きた。


 今辛うじて生きてるのは、この変質者が守ったからに他ならない。



「無様過ぎて見てらんねぇぜ。いいか? オレの視界内じゃ死なせねぇ」



 もう、微かな呼吸ぐらいしかできやしない。


 大人に守られるなんて。



「此処で一泊したら、朝には王都に帰るぞ」



 そんな言葉を最後に、意識が途絶えた。






ここまでお読みいただき、有難うございますm(__)m

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お読みいただき有難うございます!

『勇者に挑むは無職の少年』 本作の続編も完結!

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