SS-4 魔法使いの興味は尽きない 【修正】
22/08/02 魔法使いの心情描写を修正
やっぱり王都のは違うわね。
皿に確保したお菓子の山を消費してゆく。
魔法協会では、そもそもありつける機会が希少だし。
基本は自分で作るか、行商から仕入れるかのどちらか。
そして、アタシの料理の腕はからっきし。
薬物の調合ならマシなんだけど。
折角王都くんだりまで来たのだから、堪能しなくては損だ。
いやいや、これは自分へのご褒美。
あれだけの量の研究を終わらせた自分への。
アイツもアイツだ。
手紙を寄越すなら、せめて期限を書いて然るべきだ。
いつ来ればいいか分からないのでは、困るのは当然というもの。
お蔭で、着手していた研究を一通り終わらせる羽目になった。
何せ、いつ戻れるかも不明なのだ。
すべきことは終わらせる。
アタシは凡人とは違う、天才なのだから。
アイツは普通とは違う。
最初会った時は気が付かなかったが、共に旅を続けるうちに気が付いた。
まず、感情の一部が欠落している。
負の感情。
悪人相手でも、魔物相手でも、負の感情を表に出すことは終ぞ無かった。
恐怖、憎悪、怒り、妬み、侮り。
どれも露わにしたことが無い。
次に、光魔法。
アタシが四属性──地水火風を使えるのに対し、アイツは光属性のみが使えた。
正直、パッとしない属性だ。
支援というか、便利魔法程度の認識だった。
だが、アイツはただの光を目晦ましに用いてみせた。
戦い慣れてるというよりかは、戦いへの適性が高い、
また、魔力量により、魔法の効果が増減するというのも、大分苦労はしていたが習得してみせた。
結構知られてはいない、言わば裏技だ。
誰にでもできるわけではない。
魔法協会の者たちですら、習得は稀だった。
全ては"勇者"という謎の職業が起因しているのだろう。
やたらと高い耐性持ち。
光魔法しか使えない前衛職。
上級までしか無い魔法。
アイツは超級とかいう、まさしく超越した魔法を使ってみせた。
だけでなく、神級なんていうモノまで使った。
規格外にも程がある。
常識の埒外。
魔王に対する抗体的な存在とか?
興味は尽きない。
とはいえ、利点ばかりではない。
代償。
問題点は存在した。
超級は全てのMPを。
神級は生命力を。
それぞれ消費するらしい。
超級を経由してしか発動できないらしい神級。
まるで、超級で敵わぬ相手への最終手段のよう。
超級は使いどころさえ間違えなければ、圧倒的な戦闘力で以って、戦況を一方的なものに変えてみせる。
単独での運用は難しいところだが、使用後を庇える仲間がいれば、虎の子と言えるだろう。
一方、神級はてんで駄目。
戦力としては、圧倒的どころの話ではない。
まさに次元が違う。
人間とか魔物とか、相手に成り得ない。
その気になれば、存在そのものを消し去れる。
人の手に余る力。
さらには、使用した時間に応じた生命力の消滅。
そう、消滅だ。
二度と戻りはしない。
使えば使う程、残りの寿命が減っていく。
たちの悪いことに、時間経過で勝手に力が増すらしい。
その分、生命力の減りも多くなる。
最強にして最悪。
詳しく研究しようにも、使用すればする程に、寿命は減るのだ。
流石のアタシも、そこまで強いることはできなかった。
訳分からずの力。
そして、"勇者"という職業。
もっとも、今はもう勇者ではなく、魔王らしいけど。
さりとて、魔王も実に興味深い。
成ろうと思って成れる職業ではない。
皆に歓迎される職業ではないが。
今分かっているだけでも、魔物との会話、闇魔法、支配、転移、アンデッド化、といった力を有しているらしい。
是非とも、じっくり、たっぷり、研究したい。
しかも、二人も存在していると言うではないか。
一人、研究材料にしても問題ないだろう。
きっと、多分。
もう、王子は王様的に用済みっぽいし、アタシが身柄を引き取っても構うまい。
いやー、王都に来て良かったわ、ホント。
お菓子も美味しいし、ね。
あんまり時間掛けたくはないのよね。
時間が経過するだけ、相手は強くなるわけだし。
さっさと居場所を突き止めて、先制攻撃で仕留めたい。
いや、仕留めたら研究材料にできないのか。
研究材料の質で言えば、王子なんかよりも、アイツの方が断然上なんだけど。
元勇者で魔王。
そそるわ。
絶対、ヤバいに違いないわ。
アイツはレベルを上げるつもりは無さそうだけど。
闇魔法の超級以上があるのか、とかも興味あるし。
アタシが支配を使えれば、手っ取り早かったんだけど。
そうよ!
アタシが聖職者と勇者と魔王に転職できれば、間違いなく最強よね!
全属性魔法を会得した、超天才!
ヤッバ。
脳汁がヤバいわ。
魔王の転職条件の一部は、何となく察しは付いている。
前魔王の死だ。
王子の転職タイミングから考えて、まず間違いあるまい。
恐らく、今、二人の魔王が存在している理由は、力が分割されているのだろう。
理由は不明だが。
だから、魔王を倒し続ければ、いずれチャンスは訪れるかもしれない。
問題は勇者だ。
こちらに関しては、天職でしか確認できていない。
と言うか、アイツ以外、成ったことすらない職業なのだ。
転職で成れるのかも、現状では不明だ。
羨ましい。
非常に妬ましい。
アタシを差し置いて特別だなんて。
特別なのは、アタシだけでいいのに。
天職の差?
自分の力にならないのなら、勇者も魔王も邪魔なだけ。
そう、どちらも居なくなればいい。
そうすれば、アイツが馬鹿な真似を仕出かすことも無いのだ。
勇者でも魔王でも無くなりさえすれば。
これ以上、苦しまなくて済む。
王子を殺すのを躊躇った感じだったし。
魔物が連れ去られて気落ちするとか。
本当にもう、昔とは別人なのね。
皿は空になっていた。
勿論、全て摂取したのだ。
呆れたような視線を、隣から感じる。
「──何よ、悪い? 好きに食べていいんでしょ?」
「限度があると思いますよ?」
「別にいいでしょ? 頭脳労働にはカロリーと糖分が必要不可欠なんだから」
「つまり、何か考えていただけるんですか?」
「さぁね。傾向はまだ情報不足。対策って言っても、王都には碌な戦力が無いし」
「ワタシたち以外には、ですね」
「そうね、兵士とかも弱過ぎだしね。アタシたち以外のSランクの冒険者って、他に居ないのかしらね?」
「王都でSランクの依頼は無いでしょうしね。それこそ、今回みたいなことでも無い限りは。勇者様と同じく、転職している方もいらっしゃるかもしれませんし」
「つまり、辺境なら居る可能性はあるわけよね」
「でも、王都に戦力を集中させ過ぎれば、他の場所が手薄になりますよ? 辺境地域から侵攻されたら、危険じゃないですか?」
「全部の面倒なんて見られないわよ」
「優しくないですね」
「優しさ? 役に立つの、それ?」
「あら、優しさって言葉は知ってたんですね」
「まぁね。もっとも、意味は知っていても、価値は知らないけどね」
「はぁ~っ。ワタシの教育不足なんでしょうか」
「ちょっと、子供扱いは止めてくれる!?」
「昔は、あんなに甘えてくれたのに」
「過去を捏造しないでよ! 昔も今も、アタシはアタシよ!」
「そうですねぇー。ほんっとーに、意固地ですよね」
「揺るぎない信念、と言って頂戴」
「ワタシの力不足を痛感するばかりです」
「ちょ、ちょっと。本当に落ち込まないでよ!?」
「冗談です。本当は優しいんですもんねー」
「アンタねぇ……」
「……早く元気になるといいですね」
「フン。別にアイツがあのままだろうと、魔王も魔物もアタシだけで蹴散らしてやれるわよ」
「まぁ! 勇者様の代わりに自らが戦う。愛ですねぇ」
「ち・が・う・わ・よ! 頭湧いてるんじゃないの!?」
「照れる魔法使いちゃんも、可愛いですねぇ」
「人の話聞いてる!?」
食堂に二人。
馬鹿話を態と続ける。
懐かしい遣り取りだった。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。




