SS-3 戦士は今日もアフロ 【修正】
22/08/01 全体を若干修正
ったく、調子が狂う。
まるで別人じゃねぇか。
昔は、年上のオレよりも、落ち着いてやがった。
何事にも動じず。
何者にも臆さず。
だが、今はどうだ。
魔物が数体いなくなっただけで、あの落ち込みようだ。
異常だ。
いや、むしろ今までが、昔こそが、異常だったのか?
最初に会ったのは、いつ頃か。
確か、Bランク昇級試験を単独で突破してみせたって、ガキの話を聞いたんだったか。
冒険者ギルドで見かけた、どうにもいけ好かねぇガキ。
誰も信用してねぇと言わんばかりの、目が嫌いだったな。
あまりにも癇に障ったんで、連れ回してやることにした。
嫌がらせだったのか。
ほっとけなかったのか。
ある程度のことは、既にできていた。
そして、できなかったことも、すぐにできるようにしてみせた。
優秀なガキだった。
それもまた、気に入らなかった。
少しずつ話をした。
何でも、天職が"勇者"とかいう、訳の分からねぇ職業。
確かに、一度も聞いたことがねぇ職業だった。
何ができるんだか、字面からじゃ見当もつきゃしねぇ。
大した役にも立たねぇ、光魔法が使えるらしかった。
ドジを踏んだ。
ダンジョンのトラップ。
爆発が生じた。
間一髪のところで、ガキを背に庇ってやった。
あのガキ。
礼を言うでもなく、オレを見るなり笑いやがった。
何が可笑しいのか問い詰めると、爆発によって、オレの髪がアフロになってたらしい。
クソガキが。
格好いいオレは、どんな髪型だろうが、格好いいに決まってる。
あんまりにも腹が立ったので、以降は意地でもアフロを直さなかった。
そういや、あの時、初めて笑顔を見た気がする。
別に、アイツのために、アフロにし続けているわけじゃねぇ。
まぁでも、いつもの仏頂面よりかは、幾らかマシだった。
何なんだ。
いきなり宿屋の部屋に押し入って来やがって。
コイツもガキだった。
魔法使い。
短い、橙色のクセ毛。
ちんまい身体。
本人曰く、Bランク昇級試験のゴーレム製作者らしいが。
いわゆる天才ってヤツだ。
いけ好かねぇ。
ゴーレムを単独で、しかも年下の子供に倒されたのが余程腹に据えかねたらしく、自ら打って出たらしい。
性格にかなりの難有りのようだ。
厄介なことに、帰るでもなく付き纏いやがる。
仲間が増えた。
僧侶だ。
薄い水色の、長い髪。
女性らしい身体つき。
回復は大事だ。
女はもっと大事だ。
最近では、怪我をすることも増えていた。
やはり、魔物が強くなっているようだ。
本当に魔王とやらの影響なのかもしれなかった。
しかしまぁ、随分と口煩い僧侶だった。
まるで姉か母親みたいに振舞いやがって。
むかつくことに、ガキはオレより、僧侶に懐いてた。
ガキに女はまだ早いっつうのによぉ。
ともあれ、ようやく王都を拠点として行動しなくて済む。
いよいよ、遠征に赴くことにした。
結局、四人でPTを組み、旅をすることになった。
長い旅だ。
数年、いや、十年程旅したのか。
もうガキとは呼ばなくなっていた。
だが、"勇者"とも呼ばなかった。
アイツはアイツだ。
"勇者"なんて、訳の分からない者なんかじゃない。
気が付けば、皆、Sランク冒険者。
間違いなく、一番強いPTだ。
魔物も強くなっていったが、何とか誰も欠く事無く、旅を続けることができた。
そして、魔王城へと辿り着いた時、"アレ"を使いやがった。
人間業じゃない。
何か別の、超常の存在だ。
初めて、"勇者"ってのが怖くなった。
辛くも魔王を倒してみせたものの、アイツも無事では済まなかった。
怪我ってよりかは、"アレ"の代償ってやつなのか。
直視するのが躊躇われる有様だった。
生きているのが不思議ってぐらいだ。
結局、一人で全部背負い込みやがって。
極めつけは、この間の戦闘か。
数年ぶりの再会。
虫の知らせか、示し合わせたように、皆が集まった。
王都は魔法で攻撃されてる上に、魔物にまで襲撃されてやがる始末。
アイツはまた、一人で戦っていやがるし。
もう"勇者"とやらではなくなったはずだってのに。
いつからだ。
いつから、アイツはオレの背で守られなくなった。
いつから、アイツはオレを背に庇うようになってた。
並び立つ者は居ないってわけか?
誰の助けも必要ないってのか?
馬鹿言え。
危うく、やられそうになってたじゃねぇか。
誰もオマエの助けになってやれてねぇじゃねぇか。
いや、そういえば、もう一人何か居たな。
一応は、協力してたのか?
まぁ、敵に捕まってるようじゃ、足手まとい以外の何者でもないか。
オレたちなら、数百の魔物の相手ぐらい、残らず倒してみせたはずだ。
当然、そのつもりだった。
なのに、アイツはそうはしなかった。
魔物を助けようとしてやがった。
理解できねぇ。
魔物を助けて何になる?
魔物が礼でも言うってのか?
……そういや、魔物の言葉が分かるとか、手紙に書いてあったか?
難儀なもんだ。
またぞろ勝手に、重てぇ荷物を背負ったってわけか。
挙句、"アレ"まで使いやがって。
アイツは、後どれくらい生きられる?
アイツは、後どれくらい自分を犠牲にするんだ?
馬鹿野郎が!
大馬鹿野郎!
何で、何で、オレはアイツを守ってやれてねぇんだ!
いつから守られる存在になった?
いつまで守られたままでいるつもりなんだ?
身体を張るのは、オレの役目のはずだ。
もう使わせねぇ。
その可能性を、オレが排除してやる。
例え、アイツが守ろうとしたモノを、見捨てることになったとしても。
アイツを助けてやれなきゃ、意味がねぇ。
邪魔になるようなら、魔物を排除するまでだ。
庭の奥。
石碑が建てられていた。
──魔物の墓?
マジか。
ここまでやるかよ。
この建物といい、この石碑といい。
本気で魔物を助ける腹積もりらしい。
オレたちとは、見えてるものが違うのか?
アイツの目には、魔物はどう映ってるってんだ?
人間を守って、魔物も守って。
何なんだアイツは。
楽に生きりゃ、いいじゃねぇか。
これじゃあ、好き勝手に生きてきた、オレが馬鹿みたいじゃねぇか。
建物に視線を向ける。
アイツはまだ、あそこに居る。
まだ、な。
いずれ、どっかに行っちまうんだろう。
例の魔物共を助けるつもりか。
また無茶をして、"アレ"を使うってか。
学習しねぇな。
後のことなんざ、まるで考えてねぇ。
どうせまた、動けなくなるのがオチだ。
勝手されないよう、目を離さないほうがいい。
ったく、放っておくと碌なことがねぇぜ。
戦士は主人公を勇者とは呼びません。
アフロを直しもしません。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。




