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勇者は転職して魔王になりました  作者: nauji
第一章 王都改革編
53/364

52 元勇者の魔王で代表、元凶 【修正】

スキル名は【】、使用した能力や魔法は≪≫で記載しております。


22/07/26 王子の台詞を加筆修正、全体を若干修正

 周囲を見渡せるようにはなったが、やはり暗い。


 日は沈み、夜になってはいたようだ。


 光源は空の月と星。


 後は背後の王都からの明かり。


 そうして照らし出されているのは、王都を背にした俺と武闘家に対し、半円状にして囲む、数百に届く魔物の群れ。


 直前まで相対していたはずのダークドラゴンに代わり、巨大な白骨が姿を晒していた。


 何故か、ドラゴンはその後方へと場所を移している。



『邪魔ヲスルナ! 勇者ハ我ガ──』


「──何度も同じことを言わせないでくれませんかね? 独断専行はここまでにしてもらいますよ」



 ドラゴンの声は頭の中にしか響かない。


 にも拘わらず、王子はそれに返答してみせた。


 魔物と会話をしているのだ。



「やれやれ、少しは親を見習ったらどうですか? アナタと違ってとても従順だと言うのに」


『何ノ世迷言ダ、人間。我ガ王ヘノ侮辱ハ、捨テ置ケヌゾ』


「おや? まさか、自分の親だと理解できていないのですか? 随分と親不孝な子供ですね」


『先程カラ、何ヲ言ッテ──』


「ほら、此処に居るではありませんか。私が乗っているコレですよ、コレ」


『──ッ!? マサカ、王ノ亡骸ヲ辱メタノカ!? キサマァーーー!!!』



 激高したドラゴンが、背後から王子に襲い掛かる。



「いつまでも煩わしい子供ですね、まったく。”大人しくしていろ”」


『グゥッ!?』



 ドラゴンにはもう目もくれず、こちらへと向き直る王子。


 先程の遣り取りから察するに、その身を預けている存在は、俺が倒したドラゴンの王の亡骸らしい。


 つまりは、スカルドラゴン。


 アンデッドだった。


 だが、アンデッドを作り出せる存在は──。



「お待たせしてしまいましたか? 何分、躾けの行き届いていない子供で、手間ばかりかけさせられて、大変でしてね」


「王子、アナタは一体何者なんですか?」


「お分かりになりませんか?」



 沈黙を返す。



「魔王ですよ、魔王。それ以外にあり得ないでしょう? こうして魔物を従えているんですから」



 そう、その可能性しかない。


 魔物を従えていることも、そして、アンデットを作り出せていることも。


 だが、俺にはアンデッドを作り出すスキルなど、持ち合わせていない。


 もしかしたら、魔法なのかもしれないが、少なくとも闇魔法の初級には無い。



「全ては貴方のお蔭です。貴方が魔王を倒してくれたからこそ、こうして魔王に成ることができました」


「……どういうことですか?」


「私は、天職のみしかありませんでした。転職先は何も無かったのです」



 そうして、王子は語り始めた。


 状況を理解するためにも、情報は必要か。


 周囲の魔物たちにも動きは見られない。


 これだけの数に支配を適応しているということなのか。



「転職場は私が管理・運営しておりました。そこで石板に何度も触れる機会がありましたが、常に何も表示されはしなかった」



 失意を滲ませながら話し続ける。


 おおよそ、王子から他に転職なぞ望まないと思うが。



「ですが、貴方たちにより魔王が倒された後、今まで無かった変化が訪れた。石板に文字が表示されたのですよ。表示されたのは二文字、”魔王”とね」


「そんな馬鹿な……だって俺が──」


「──私も驚きましたよ。まさか、私の”後”に、魔王に転職する者が現れようとは、ね」


「それでは、魔王が何人も居ると言うのですか?」


「可笑しなことを仰る。現にこうして二人の魔王が同時に存在しているではありませんか」



 口調が心底愉快そうなモノに変わる。



「魔王とは実に素晴らしい! この魔力! 魔物を支配する力! 貴方には、どれだけ礼を申しあげても足りないぐらいです。魔王を倒してくださり、本当にありがとうございました」


「目的は何ですか? これほどの魔物を従えて」


「先程申し上げたとおりですとも。世界を、と」


「かつての魔王に成り代わるつもりですか」


「さてね。生憎とその魔王との面識はありませんから。目的が同じかどうかなど、分かりかねますね」


「魔物の狂暴化は解け、ようやく魔物の保護に乗り出したというのに。また魔物を操り、世を乱すつもりだと?」


「乱すわけではありません。ただ、あるべき姿へと正すだけです」


「あるべき姿?」


「そう、私によって支配される世界! それこそが、世界のあるべき真の姿!」


「随分と、妄想が過ぎるようですが」


「力が伴わなければ、妄想と言われても仕方がないでしょうね。ですが、見合うだけの力を有した今、叶えられる未来になったのですよ」



 陶然としたような表情を浮かべる王子。



「一体、何が起こっている? やかましいのと一緒に、気配が随分と増えたようだが」



 困惑を言葉にしたのは、武闘家だった。


 盲目の彼は、状況の変化を認識し切れないようだ。



「魔物の群れが現れました。目測で数百規模です。そして、群れを操っているのは、この国の王子のようです」


「……それが全て事実だと?」


「えぇ、残念ながら」


「先程、魔王とか言っていたようだが?」



 答えを返すよりも先に、余所から声が掛けられた。



「──私も、そこの元勇者殿も、現在は魔王というわけですよ。それで、貴方はどなたでしょうか? 新しいお仲間ですか?」


「別に何でもない。ただの冒険者だ」


「それはまた、何とも運の無い人ですね。こんな死地に居合わせるだなんて」


「お前が王子と言うのは本当なのか? 何故自分の国を攻める? いずれはお前が治めるのではないのか?」


端役はやくが随分と喋りますね。何、簡単なことですよ。目論みが外れて、魔王城が跡形も無くなっていたのでね。代わりの住処として城を貰いに来たんですよ」


「魔物で侵攻せずとも手に入ったのではないのか、と問うているのだが?」


「……不愉快な人ですね。自分の物なら、どう扱おうが構わないでしょう」


「成程、王子の評判は噂以下らしいな」


「何だと? 平民風情が、王族への口の利き方がなってないようだな」


「生憎と、下種に仕えるのは、もう懲り懲りなんでね」



 武闘家の挑発に、王子は言葉ではなく行動で応えた。


 スカルドラゴンが前足を振るう。


 武闘家は盲目とは思えぬ所作で、華麗に躱してみせた。



「結局、自ら動こうとはしないわけか。成程、王族らしい振る舞いだな」



汚泥スワンプ



 今度は魔法が放たれた。


 武闘家の足元が泥状に変化する。


 泥の中へと沈み込む武闘家の足。



「汚物は埋めるに限る」



 王子が侮蔑するように言い捨てる。


 今の魔法は、闇の中級魔法のはず。


 当然、レベル1では使用できない。


 つまり、王子はレベルを上げたというわけだ。


 それも、魔王が倒された後に。


 生物を倒したのだ。


 少なくない数を。


 人か、動物か、それとも、支配した魔物を犠牲にしたのか。


 知らず、怒気が漏れる。



「おや? 助けなくてよいのですか? 魔法も使えない人間では、脱出は困難だと思いますよ?」



 Sランク冒険者のステータスをあなどり過ぎだ。


 その瞬間を見逃さぬよう、気取られぬ程度に身構える。



「一つ、お尋ねしたい。どうやってレベルを上げたんですか?」


「そんなことを今問うのですか? 人助けもせず?」


「生き物を犠牲にしたのか」


「……ふぅ、まぁ、そうですね」


「どうやって?」


「知ってどうするのですか? そういえば、妙に魔物に肩入れしてましたね」


「魔物を犠牲にしたのか?」


「王都に居た頃は、伝手つてを頼って魔物を仕入れてましたね。これで満足ですか?」



 魔物を仕入れた?


 伝手つてを頼って?


 何か……何かが妙に引っかかる。


 魔物、伝手、仕入れる。


 ──まさか、まさかまさかまさか。



「商人経由で魔物を取引していたんですか?」


「おや? 何かお心当たりでも?」


「王都地下に洞窟を造って、魔物を取引していた商人ではありませんか?」


「よくご存じで。その様子では、まだ続けてたんですね。そして露見した、と」



 王都地下のあの一件。


 それがここに、王子に繋がった。


 王子こそが魔物を買い取って……。



「──人間のする所業ですか」


「ん? 何か仰りましたか?」


「それが、人間のする所業なのかと問うているのです!」


「人間”だから”魔物を倒すのでしょう? 何かおかしいですか?」


「アナタも魔王なら、魔物の言葉が理解できるのでしょう!?」


「それが何か?」


「言葉が分かるのに、どうして!」


「同じ生き物では無いから、いや、自分じゃないからですかね? 他の生き物のことが、それ程大切なのですか?」


「失われずに済む命のはずです!」


「まるで説得力がありませんね。貴方こそが、一番多く魔物をその手にかけてきたでしょうに」


「平和を願っていればこそ──」


「──お題目を掲げていれば良い、と? 経緯が違えども結果は同じ。貴方に非難されるいわれはありません」



 絶句する。


 さらに王子が声を発しようとして、邪魔が入る。



「破っ!」



 半身が泥に沈んだ武闘家。


 両手を泥につき、気合と共に掌底を放つ。


 反動を利用し、下半身を泥から引き抜いてみせた。



「何っ!?」



 意識が逸れていた武闘家の突然の行動に、一瞬気を取られる王子。


 その瞬間を見逃さない。



光体アウゴエイデス



 光の超級魔法。


 ──が、発動する前に、横合いから衝撃が加えられた。


 横へと吹き飛ばされる。


 地面に転がりながら、攻撃の主を確認しようと視線を向ける。



「な、何で、アナタが!?」



 視線の先、そこにはセントレアの姿があった。






第一章、終盤です。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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お読みいただき有難うございます!

『勇者に挑むは無職の少年』 本作の続編も完結!

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