51 元勇者の魔王で代表、現れし者 【修正】
スキル名は【】、使用した能力や魔法は≪≫で記載しております。
22/07/25 全体を若干修正
未だ目が眩んでいるのか、周囲に出鱈目な攻撃を仕掛けるダークドラゴン。
外壁のそばに居るため、何発かは外壁へと直撃してしまう。
衝撃に揺れる外壁の上を駆け出す。
狙い澄ましたかのように、再び尾撃がこちらへと迫って来た。
タイミングを合わせる。
≪光剣≫
光の中級魔法。
尾撃に合わせて、同じ方向へと移動し、光剣を尻尾へ突き刺す。
光剣で固定し、尻尾に乗る。
そのまま尻尾に連れられて、胴体へと迫る。
よりも先に、尻尾の動きが横から縦へと切り替わった。
尻尾ごと外壁へと叩きつけられそうになる。
咄嗟に光剣を解除し、尻尾を蹴りつけて距離を取り、外壁上に再び着地した。
≪混沌ノ海≫
壁の外側。
平野だったはずのそこには、海があった。
黒に近い紫色の粘度の高そうな水が、視界一面に現出したのだ。
──これは、闇魔法か!
ドラゴンは魔法すら操る。
知ってはいたが、王都を背にしている今、厄介この上ない魔法だった。
全てを浸蝕し分解してしまう、汚泥のような黒い水。
触れるだけでも危険。
防ぐだけでは不十分だ。
周りへの被害を防ぐためにも、全て除去する他ない。
≪光炎≫
光の上級魔法。
黒い海を眩く照らし出す、太陽の模造品。
圧倒的な熱量で以て、全て蒸発させる!
瞬く間に蒸発していく不浄の海。
『小癪ナ真似ヲッ!』
ようやく視力が回復したのか、目を見開き吼える。
≪天光≫
光の上級魔法。
すかさず、その両目に再度照射する。
≪無明ノ闇≫
ドラゴンの手前に闇が現出する。
光が闇に飲み込まれる。
──また、闇魔法か。
同じ手は食わぬとばかりに、防がれてしまった。
『姑息ナ勇者メ! サッサト、ソノ首ヲ差シ出セ!』
「ブレスといい、魔法といい、対人にしては些かやり過ぎでしょう。仮に、俺を倒せたとして、大人しく住処へと帰る保証がおありで?」
『人間ナゾ、幾ラ死ノウガ構ワヌ。諸共二消エ失セロ!』
未だかつてない程の、強烈な危機感。
相手の口に、視認できる程の濃密な魔力が集積されていく様が見て取れる。
──魔法とブレスの混合技!?
かつて対峙したドラゴンの王すらも使用してこなかった。
威力の程が予測し切れない!
≪光壁≫
光の中級魔法。
光の壁を展開する。
≪鏡界≫
光の上級魔法。
鏡の膜で光の壁を覆う。
即席の対物理対魔法の障壁だ。
──クッ、魔法を連発し過ぎか!?
頭痛と倦怠感が襲い来る。
MPの喪失感を覚えながらも、来たる攻撃に備えて魔力を注ぎ込む。
≪絡ミ合ウ咆哮≫
螺旋状に捻じれ迫り来る、魔法とブレス。
障壁に激突する。
勢いは止まらず、身体が後ろ側へと押された。
──押し込まれる!?
全力で展開する障壁が、軋みをあげている。
だけでなく、術者の俺が後ろへと押しやられる。
凄まじい圧力。
眼前の外壁は、螺旋に触れた箇所が跡形も無く消え去っていた。
障壁には、早々に罅が入り始めてもいる。
罅は次第に周囲へと波及する。
──攻撃が止まらない!
その間にも、身体は後ろ側へと押しやられ続けている。
もう外壁の端だ。
後がない。
最早、障壁全体に罅が入り、今にも砕け散りそうだ。
──もう数秒と持たない!
王都の住人の避難は?
これが王都に直撃するとどうなる?
分からない。
何の保証もない。
であれば、一秒でも、一瞬でも長く、この場で防ぐ他無い。
外壁端の壁に身体を押し付けられながら、障壁の維持に全力を傾ける。
パキッ。
嫌な音が耳に届いた。
パキッ、パキッ。
音は止まない。
パキッパキッパキッ。
連続する。
パキパキパキパキパキパキパキパキ。
──障壁が、もう、持たない!?
障壁が砕けていく音。
その様を視界に収めつつ、しかし、打つ手が無い。
パリーン!
一際甲高い音が響いた。
瞬間、障壁が全て破砕してしまう。
全身が螺旋状の力の奔流に晒される。
この身を最後の盾とすべく、衝撃に備える。
が、眼前に迫る螺旋は、鼻先を掠めるように上方へと逸れた。
「!?」
──何故だ!?
何も打つ手は無かった。
あのまま直撃すれば、ひとたまりもなかっただろう。
なのに何故?
素早く視線を相手に戻す。
ドラゴンは上方を向いている。
否、顎を下から蹴り上げられていた。
「!?」
再びの困惑。
──ドラゴンに蹴り!?
何処にそんな馬鹿みたいな猛者が居たのか。
よく目を凝らす。
その猛者には見覚えがあった。
武闘家だ。
王都地下で戦った相手。
最近では兵士の監視の元、奉仕活動に従事していたはず。
手足を拘束する枷は見当たらない。
すると、ドラゴンが螺旋を放つのを止めた。
『オノレ、余計ナ邪魔ヲ! 潰シテヤル!』
前足で武闘家へと掴みかかる。
対する武闘家は、宙で回転することで滞空時間を伸ばす。
接触のタイミングにズレが生じる。
そのズレを利用して、迫る前足を足場に跳躍した。
ドラゴンの頭すらも跳び越す。
そして落下した。
繰り出されるのは踵落とし。
ドラゴンの額に命中する。
『グガァアアアァァァッ!?』
身悶えるドラゴンを余所に、武闘家はその反動を利用して、地面へと落下していった。
恐るべきは、身体能力か。
それとも、その胆力か。
盲目とは思えない動きだった。
この場に居合わせた経緯は分からないが、どうやら共闘してくれる様子だ。
無事、地面に降り立った武闘家を、外壁上から見下ろす。
その姿がぼやける。
急激に魔力を消費した反動か、倦怠感がある。
守ってばかりいては駄目だ。
どうにか追い返すなりしないと。
改めて平野を見下ろす。
──いけるか?
流石に高過ぎる気がする。
だが、ここからではできることも限られてしまう。
男は度胸!
意を決して飛び降りる。
≪光鎧≫
光の中級魔法。
防御力を上げ、無理矢理に着地してみせる。
着地の音に反応したのか、武闘家がこちらに振り返る。
「やはり、戦っていらしたのは勇者殿か。どうにか間に合ったらしい」
「どうしてここに?」
「あれだけ騒いでいれば、例え寝入っていても異変に気が付くかと。それに、耳は他人よりも良いのでね」
「枷はどうしたんですか?」
「邪魔だったので外したさ。あんな物の所為で命を落としたくはない」
「そ、そうですか」
鉄製の檻を破壊してみせたのだから、同じ鉄製の枷を外すぐらい訳無いのか。
そもそもが拘束できてないようだ。
ひとえに、武闘家自身が逃げずに従っていただけなのだろう。
『人間風情ガ。二度モ足蹴二スルナド……許サヌ、決シテ許サヌゾ!』
見るからに怒り心頭といった様子のドラゴン。
その怒気を感じたのか、武闘家もドラゴンへと向き直る。
『纏メテ灰ト化セ!』
≪光縛≫
光の初級魔法。
再びブレスを放とうとするドラゴンを待たず、拘束する。
が、僅かも持たず、無理矢理に魔法を解除された。
『無駄ダ、人間!』
生じた僅かの隙で、既に武闘家がドラゴンの腹へと接近を果たしていた。
「破っ!!」
裂帛の気合と共に放たれた掌底。
ドラゴンの鱗が波打った。
『グガァッ!?』
表面に対しての打撃ではなく、内部へ浸透する衝撃。
今まで体感したことの無いであろう痛み。
その隙を突く。
≪光剣≫
光の中級魔法。
最大出力。
長大な両手剣をドラゴンの巨体に見舞う。
『ガァアアアァァァッ!?』
たまらず仰け反るドラゴン。
それを逃さず、武闘家が追撃を。
さらに俺が斬撃を。
交互に攻撃を放つ。
連続する。
止まらない。
このまま押し切る!
個体としての能力は頭抜けているが、悲しいかな戦闘経験に乏し過ぎる。
だが、それでも俺一人相手なら、ドラゴンが勝ち得ていたかもしれない。
早々に光体を使用しなかったのが不味かった。
MPを消費し過ぎて、今からでは大した時間、維持できまい。
互いの誤算は武闘家だ。
彼の存在が、勝敗の天秤を一方へと傾けてみせた。
互いに示し合わさずとも、即興の連携を可能とする。
本当に、相当な猛者らしい。
今は頼もしい限りだ。
最早、ドラゴンに成す術などない。
一方的な展開。
それは、いきなり終わりを告げた。
いつの間にか、夜が訪れていた。
だが、やけに暗い。
手元以外、見通せぬ程の闇。
さっきまで、ドラゴンの姿はハッキリと確認できていた。
だというのに、何故、今はそれが叶わないのか。
「──まったく。あれ程、先走るなと言っただろう。勝手な真似をするから、手痛い反撃を受けていると知れ」
何処からか、人間の声が響いてきた。
声を契機としたのか、闇が晴れていく。
「お久しぶりですね、勇者殿。いや、魔王殿、とお呼びすべきか」
その声には聞き覚えがあった。
久しく聞かなくなっていた。
何故ならば、行方知れずとなっていたのだから。
「さて、では仕切り直しと参りましょう」
声は頭上から降ってきていた。
眼前に巨大な白骨。
ドラゴンに相当する程の、巨大な骨の塊。
その上に、声の主は居た。
周囲には、いつの間に現れたのか、数百は居ると思われる魔物の群れで埋め尽くされていた。
「ようやくこの日を迎えることができました」
どこか感慨深げな声。
王族特有の金髪を靡かせ、なおも告げる。
「今、この時を持って宣言する! この城も、都も、国も……世界は、この私の物となるのだ!」
王子がそう声高に言い放った。
第一章、終盤です。
サブタイは武闘家と王子のダブルミーニングとなっております。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。




