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勇者は転職して魔王になりました  作者: nauji
第一章 王都改革編
52/364

51 元勇者の魔王で代表、現れし者 【修正】

スキル名は【】、使用した能力や魔法は≪≫で記載しております。


22/07/25 全体を若干修正

 未だ目が(くら)んでいるのか、周囲に出鱈目な攻撃を仕掛けるダークドラゴン。


 外壁のそばに居るため、何発かは外壁へと直撃してしまう。


 衝撃に揺れる外壁の上を駆け出す。


 狙い澄ましたかのように、再び尾撃がこちらへと迫って来た。


 タイミングを合わせる。



光剣セイバー



 光の中級魔法。


 尾撃に合わせて、同じ方向へと移動し、光剣を尻尾へ突き刺す。


 光剣で固定し、尻尾に乗る。


 そのまま尻尾に連れられて、胴体へと迫る。


 よりも先に、尻尾の動きが横から縦へと切り替わった。


 尻尾ごと外壁へと叩きつけられそうになる。


 咄嗟に光剣を解除し、尻尾を蹴りつけて距離を取り、外壁上に再び着地した。



混沌ノ海(ケイオスタイド)



 壁の外側。


 平野だったはずのそこには、海があった。


 黒に近い紫色の粘度の高そうな水が、視界一面に現出したのだ。


 ──これは、闇魔法か!


 ドラゴンは魔法すら操る。


 知ってはいたが、王都を背にしている今、厄介この上ない魔法だった。


 全てを浸蝕し分解してしまう、汚泥のような黒い水。


 触れるだけでも危険。


 防ぐだけでは不十分だ。


 周りへの被害を防ぐためにも、全て除去する他ない。



光炎プロミネンス



 光の上級魔法。


 黒い海を眩く照らし出す、太陽の模造品。


 圧倒的な熱量で以て、全て蒸発させる!


 瞬く間に蒸発していく不浄の海。



『小癪ナ真似ヲッ!』



 ようやく視力が回復したのか、目を見開きえる。



天光シャイニング



 光の上級魔法。


 すかさず、その両目に再度照射する。



無明ノ闇(ダークネス)



 ドラゴンの手前に闇が現出する。


 光が闇に飲み込まれる。


 ──また、闇魔法か。


 同じ手は食わぬとばかりに、防がれてしまった。



『姑息ナ勇者メ! サッサト、ソノ首ヲ差シ出セ!』


「ブレスといい、魔法といい、対人にしてはいささかやり過ぎでしょう。仮に、俺を倒せたとして、大人しく住処へと帰る保証がおありで?」


『人間ナゾ、幾ラ死ノウガ構ワヌ。諸共二消エ失セロ!』



 未だかつてない程の、強烈な危機感。


 相手の口に、視認できる程の濃密な魔力が集積されていく様が見て取れる。


 ──魔法とブレスの混合技!?


 かつて対峙したドラゴンの王すらも使用してこなかった。


 威力の程が予測し切れない!



光壁ウォール



 光の中級魔法。


 光の壁を展開する。



鏡界ミラーワールド



 光の上級魔法。


 鏡の膜で光の壁を覆う。


 即席の対物理対魔法の障壁だ。


 ──クッ、魔法を連発し過ぎか!?


 頭痛と倦怠感が襲い来る。


 MPの喪失感を覚えながらも、来たる攻撃に備えて魔力を注ぎ込む。






絡ミ合ウ咆哮(カドゥケウス・ロア)



 螺旋状に捻じれ迫り来る、魔法とブレス。


 障壁に激突する。


 勢いは止まらず、身体が後ろ側へと押された。


 ──押し込まれる!?


 全力で展開する障壁が、軋みをあげている。


 だけでなく、術者の俺が後ろへと押しやられる。


 凄まじい圧力。


 眼前の外壁は、螺旋に触れた箇所が跡形も無く消え去っていた。


 障壁には、早々に(ひび)が入り始めてもいる。


 ひびは次第に周囲へと波及する。


 ──攻撃が止まらない!


 その間にも、身体は後ろ側へと押しやられ続けている。


 もう外壁の端だ。


 後がない。


 最早、障壁全体にひびが入り、今にも砕け散りそうだ。


 ──もう数秒と持たない!


 王都の住人の避難は?


 これが王都に直撃するとどうなる?


 分からない。


 何の保証もない。


 であれば、一秒でも、一瞬でも長く、この場で防ぐ他無い。


 外壁端の壁に身体を押し付けられながら、障壁の維持に全力を傾ける。


 パキッ。


 嫌な音が耳に届いた。


 パキッ、パキッ。


 音は止まない。


 パキッパキッパキッ。


 連続する。


 パキパキパキパキパキパキパキパキ。


 ──障壁が、もう、持たない!?


 障壁が砕けていく音。


 その様を視界に収めつつ、しかし、打つ手が無い。


 パリーン!


 一際甲高い音が響いた。


 瞬間、障壁が全て破砕してしまう。


 全身が螺旋状の力の奔流に晒される。






 この身を最後の盾とすべく、衝撃に備える。


 が、眼前に迫る螺旋は、鼻先を掠めるように上方へと逸れた。



「!?」



 ──何故だ!?


 何も打つ手は無かった。


 あのまま直撃すれば、ひとたまりもなかっただろう。


 なのに何故?


 素早く視線を相手に戻す。


 ドラゴンは上方を向いている。


 否、あごを下から蹴り上げられていた。



「!?」



 再びの困惑。


 ──ドラゴンに蹴り!?


 何処にそんな馬鹿みたいな猛者が居たのか。


 よく目を凝らす。


 その猛者には見覚えがあった。


 武闘家だ。


 王都地下で戦った相手。


 最近では兵士の監視の元、奉仕活動に従事していたはず。


 手足を拘束する枷は見当たらない。


 すると、ドラゴンが螺旋を放つのを止めた。



『オノレ、余計ナ邪魔ヲ! 潰シテヤル!』



 前足で武闘家へと掴みかかる。


 対する武闘家は、宙で回転することで滞空時間を伸ばす。


 接触のタイミングにズレが生じる。


 そのズレを利用して、迫る前足を足場に跳躍した。


 ドラゴンの頭すらも跳び越す。


 そして落下した。


 繰り出されるのはかかと落とし。


 ドラゴンの額に命中する。



『グガァアアアァァァッ!?』



 身悶えるドラゴンを余所に、武闘家はその反動を利用して、地面へと落下していった。






 恐るべきは、身体能力か。


 それとも、その胆力か。


 盲目とは思えない動きだった。


 この場に居合わせた経緯は分からないが、どうやら共闘してくれる様子だ。


 無事、地面に降り立った武闘家を、外壁上から見下ろす。


 その姿がぼやける。


 急激に魔力を消費した反動か、倦怠感がある。


 守ってばかりいては駄目だ。


 どうにか追い返すなりしないと。


 改めて平野を見下ろす。


 ──いけるか?


 流石に高過ぎる気がする。


 だが、ここからではできることも限られてしまう。


 男は度胸!


 意を決して飛び降りる。



光鎧メイル



 光の中級魔法。


 防御力を上げ、無理矢理に着地してみせる。


 着地の音に反応したのか、武闘家がこちらに振り返る。



「やはり、戦っていらしたのは勇者殿か。どうにか間に合ったらしい」


「どうしてここに?」


「あれだけ騒いでいれば、例え寝入っていても異変に気が付くかと。それに、耳は他人よりも良いのでね」


「枷はどうしたんですか?」


「邪魔だったので外したさ。あんな物の所為で命を落としたくはない」


「そ、そうですか」



 鉄製の檻を破壊してみせたのだから、同じ鉄製の枷を外すぐらい訳無いのか。


 そもそもが拘束できてないようだ。


 ひとえに、武闘家自身が逃げずに従っていただけなのだろう。



『人間風情ガ。二度モ足蹴二スルナド……許サヌ、決シテ許サヌゾ!』



 見るからに怒り心頭といった様子のドラゴン。


 その怒気を感じたのか、武闘家もドラゴンへと向き直る。



『纏メテ灰ト化セ!』



光縛ロック



 光の初級魔法。


 再びブレスを放とうとするドラゴンを待たず、拘束する。


 が、僅かも持たず、無理矢理に魔法を解除された。



『無駄ダ、人間!』



 生じた僅かの隙で、既に武闘家がドラゴンの腹へと接近を果たしていた。



「破っ!!」



 裂帛れっぱくの気合と共に放たれた掌底。


 ドラゴンの鱗が波打った。



『グガァッ!?』



 表面に対しての打撃ではなく、内部へ浸透する衝撃。


 今まで体感したことの無いであろう痛み。


 その隙を突く。



光剣セイバー



 光の中級魔法。


 最大出力。


 長大な両手剣をドラゴンの巨体に見舞う。



『ガァアアアァァァッ!?』



 たまらず仰け反るドラゴン。


 それを逃さず、武闘家が追撃を。


 さらに俺が斬撃を。


 交互に攻撃を放つ。


 連続する。


 止まらない。


 このまま押し切る!


 個体としての能力は頭抜けているが、悲しいかな戦闘経験に乏し過ぎる。


 だが、それでも俺一人相手なら、ドラゴンが勝ち得ていたかもしれない。


 早々に光体を使用しなかったのが不味かった。


 MPを消費し過ぎて、今からでは大した時間、維持できまい。


 互いの誤算は武闘家だ。


 彼の存在が、勝敗の天秤を一方へと傾けてみせた。


 互いに示し合わさずとも、即興の連携を可能とする。


 本当に、相当な猛者らしい。


 今は頼もしい限りだ。


 最早、ドラゴンに成すすべなどない。


 一方的な展開。


 それは、いきなり終わりを告げた。






 いつの間にか、夜が訪れていた。


 だが、やけに暗い。


 手元以外、見通せぬ程の闇。


 さっきまで、ドラゴンの姿はハッキリと確認できていた。


 だというのに、何故、今はそれが叶わないのか。



「──まったく。あれ程、先走るなと言っただろう。勝手な真似をするから、手痛い反撃を受けていると知れ」



 何処からか、人間の声が響いてきた。


 声を契機としたのか、闇が晴れていく。



「お久しぶりですね、勇者殿。いや、魔王殿、とお呼びすべきか」



 その声には聞き覚えがあった。


 久しく聞かなくなっていた。


 何故ならば、行方知れずとなっていたのだから。



「さて、では仕切り直しと参りましょう」



 声は頭上から降ってきていた。


 眼前に巨大な白骨。


 ドラゴンに相当する程の、巨大な骨の塊。


 その上に、声の主は居た。


 周囲には、いつの間に現れたのか、数百は居ると思われる魔物の群れで埋め尽くされていた。



「ようやくこの日を迎えることができました」



 どこか感慨深げな声。


 王族特有の金髪をなびかせ、なおも告げる。



「今、この時を持って宣言する! この城も、都も、国も……世界は、この私の物となるのだ!」



 王子がそう声高に言い放った。






第一章、終盤です。


サブタイは武闘家と王子のダブルミーニングとなっております。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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お読みいただき有難うございます!

『勇者に挑むは無職の少年』 本作の続編も完結!

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