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勇者は転職して魔王になりました  作者: nauji
第一章 王都改革編
51/364

50 元勇者の魔王で代表、復讐するは我にあり 【修正】

スキル名は【】、使用した能力や魔法は≪≫で記載しております。


22/07/24 全体を若干修正

 着慣れぬ正装と、やり慣れない挨拶回り。


 体力よりも精神的に疲弊してくる。


 事前に秘書さんから、礼儀作法と定型文の挨拶を教授してもらっていなければ、もっと手こずったことだろう。


 何とか、名士の方々への挨拶を終え、残すは王様との謁見のみとなった。


 昼に出発したのに、もう夕方が迫っている。


 秘書さんに注意されたように、謁見に遅れるわけにはいかない。


 急ぎ、王城へと向かう。






 橙色に染まる王城。


 威容を視界に収めつつ、息を整えて城門の兵士に用件を告げる。


 兵士の案内に続き、城門を潜り、王城の扉が開かれ中に。


 赤い絨毯の上を歩き、そのまま正面階段を上がって行く。


 正装しているからだろうか。


 かつてないほどに緊張している気がする。


 何を話せばいいのか、秘書さんとの事前の打ち合わせを脳内で反芻はんすうする。


 大きな両開きの扉。


 金色の鎧を着込んだ近衛兵が、待機を言い渡してくる。


 まだ中に謁見中の人が居るらしい。


 どうやら、遅刻せずに済んだようだ。


 これで秘書さんからお叱りを受けることも無くなった。


 ひとまずは安心だ。


 待合室へと案内されそうになるが、丁重にお断りしておく。


 無人の室内では、かえって緊張してしまう。


 ここのほうが、他に人も居て緊張が薄れる。


 今のうちに、強張った身体や表情をほぐしておかないと。


 しばらくして、扉が開かれた。


 入れ違うようにして、謁見の間へと足を踏み入れる。


 まだ若干の緊張を感じるが、最初よりはマシだろう。


 玉座のある段差の前、そこにひざまずこうとする。






 音が先だっただろうか。


 あるいは、衝撃が先だったのだろうか。


 地鳴りのような異音と振動。


 謁見の間には、王様以外にも近衛騎士団団長や宰相など、家臣団が控えていた。


 皆、一様に突然の事態に戸惑っている。


 いや、団長だけは、いち早く王様の警護に付いていた。


 微かに届く音に、既視感を覚える。


 地震ではない。


 これは咆哮だ。


 団長と視線を交わす。


 相手が頷くのを確認し、急ぎ謁見の間から駆け出す。


 目指すは、より音の大きくなるほう。


 王城の四隅に備え付けられている尖塔へ。


 慌てる兵士たちを余所に、目当ての階段を駆け上がる。


 辿り着いた先は、外壁よりも高い尖塔の頭頂部分。


 北側の外壁の更に外。


 予想どおりの、しかし、予想とは異なる相手が居た。






『勇者ァーーーッ! 出テ来ォーーーイ!』



 頭の中に響く声。


 耳には異音の源たるえ声。



『王ノ仇ィ! 赦サヌ、赦サヌゾォーーー!』



 今までの魔物たちよりも、流暢に聞こえる声。


 放っているのは、外壁を越す巨大な魔物。


 ドラゴンだった。


 全長は10メートル程だろうか。


 五色の黒。


 ダークドラゴン。


 沈み始めた日の陰よりもなお暗い。


 体表は黒曜石のようなツヤのある黒色。


 無数の棘を生やし、見るからに攻撃的な印象を与えてくる。


 かつて魔王討伐の際、道中で戦ったドラゴンたちの王。


 しかしおかしい。


 あの時、成体は1体だけだった。


 見逃したのは幼生体のみ。


 ならば、目の前の存在は幼生体のはずが、明らかに成体の姿。


 ドラゴンがこれほどの急成長を遂げるなど、聞き覚えが無い。


 いつだかの危惧した異変が、こうして具現化してしまったのか。






 視界に俺を捉えたのか、両の眼が見開かれる。


 怒気と殺気が一気に噴出した。



『勇者ァアアアアアァァァーーーッ!!!』



 同時に放たれる咆哮。


 脳内には大音量の叫びが響く。


 おかしい。


 どう考えても、成長が早過ぎる。


 かつて遭遇した時から考えても、数年で親程まで成長するわけがない。


 ドラゴンの寿命は途方もなく長いらしい。


 詳しく調べられた人間が未だ存在しないため、正確な寿命は知られていない。


 だが、歴史書どころか、口伝や民話など、遥か昔の祖先の時代から、連綿と語り継がれていた。


 この世界における、最強の魔物。


 そう言って差し支えないだろう。


 強さ故なのか、個体数が他の種に比べて、圧倒的に少ない。


 1体毎の戦闘力が凄まじいため、各冒険者ギルドにて、全てのドラゴンは可能な限り、監視対象となっているほどだ。


 だから、個体数は常に把握されている。


 近年、その数を1体減らした。


 そう、俺と仲間たちが倒したからだ。


 そして、冒険者ならば、誰もが知っている教訓がある。



 ”ドラゴンの子供には手を出すな”



 子供に手を出した愚か者は、その親の、己が身をかえりみない逆襲に見舞われる。


 かつて、ドラゴンの逆鱗に触れ、滅ぼされた町すらもあったと聞く。


 教訓に倣い、俺たちも子供には手を出さなかった。


 知られている限りでは、幼生体が成体へと成長するのに要する時間は、人の一生程も必要とのことだ。


 それが今、眼前の事実により否定されていた。


 数年で成体へと急成長を遂げたドラゴン。


 未知の脅威が、確かに存在していた。






 助走をつけ、全力で跳ぶ。


 目指すは外壁上部。


 高低差を利用し、一気に移動を試みる。


 わざわざ地上に降りて回り込んで来るような余裕は無い。


 常時、外壁北側を守備している兵士たちは、突然の襲撃に際し、恐慌状態へと陥っていた。


 彼らにとってみれば、青天の霹靂へきれきに他あるまい。


 誰にとっても想定外の事態。


 無理もない。


 兵士たちを避け、着地する。



「避難してください! 貴方がたで敵う相手ではありません! さぁ早く!」



 兵士たちに向け、一喝する。


 恐怖による硬直が解け、弾かれたように、その場から駆け出す兵士たち。


 不幸中の幸いだった。


 もし、王都の北側以外に現れていたら、到着までに時間を要し、被害が出ていてもおかしくはなかった。


 彼我の距離は10メートル程か。


 巨躯からすれば一瞬で埋められる距離。



「復讐するためだけに、態々お出向きになったわけですか」



 掛けた言葉に、反応があった。



『──何故ダ!? 何故、オ前ノ言葉ガ理解デキルノダ!?』



 頭に響く声からも、相手の動揺が伝わって来るかのようだ。



「それだけではありませんよ。アナタの言葉も俺に伝わっています」


『馬鹿ナ! 在リ得ヌ! 人間如キガ、我ラノ言葉ヲ操ルナド、不可能ダ!』


「確かに、アナタがたの言葉を使えるようになったわけではありません。スキルによる効果です」


『訳ノ分カラヌ妄言ヲ! フザケルナヨ、人間!』



 一際大きく咆哮が放たれる。


 仰け反りそうになる身体を、どうにか持ち直す。



「アナタの復讐心を否定するつもりはありません。その権利は正しくアナタにあります」


『ナラバ潔ク、ソノ粗末ナ首ヲ、我ニ差シ出セ、勇者ァ!!』


「戦うことに否やはありません。ですが、場所を移しましょう。ここでは他へ被害が出てしまいます」


『人間如キガ、幾ラ巻キ添エニナッタトコロデ、知ッタコトカァ!』


「アナタの親ならば、そうは言わなかったでしょう」


『!? キサマァ! 我ヲ前ニシテ、良クモくちニデキタナ!』



 頭に声が響き終わるよりも速く、巨大なあぎとが迫る。



光剣セイバー



 光の中級魔法。


 最大出力!


 現れる光剣。


 片手剣程だった長さが、見る間に身の丈以上ある両手用大剣にまで巨大化する。


 迫るあぎとに対し、正面から光剣を斬り付ける。



『──グガァッ!?』



 金属よりもなお硬いドラゴンの鱗。


 それを見事、斬り裂いてみせる光剣。


 たまらず、巨躯をよじるドラゴン。



「アナタの親ですら敵わなかった相手に、まだ幼いアナタが敵うわけもないでしょう? いずれ必ず、因縁には決着を。それまで──」


『──調子ニ乗ルナヨ、人間風情ガ!』



 口端から漏れ出る炎。


 ──ブレスが来る!


 背後には王城があり、王都がある。


 五色の赤ほどの火力はないはずだが、人が浴びれば炭化してしまうだろう。


 全て防ぐしかない。


 光剣を解除し、次の魔法を放つ。



光壁ウォール



 光の中級魔法。


 魔力を込めてゆく。


 北側の外壁、その二倍程もある光の壁を外側へと出現させる。


 間を置かずに開始される、ブレスによる灼熱の洗礼。


 炎は光壁で防げるが、有する熱までもは遮断できていない。


 外壁が熱に侵される。


 灰色の壁が色を赤く変じていく。


 かなり頑丈な石材でしつらえられた外壁といえど、晒されるあまりの熱量を前に、溶かされそうになっている。


 石が溶け出す程の熱量。


 当然、俺も無事では済まない。


 身体が燃え出さないのが不思議なぐらいだ。


 息など吸えない。


 一瞬で肺がやられてしまう。


 苦しい。


 酸素が欲しい。



天光シャイニング



 光の上級魔法。


 最大級の光量による洗礼。


 相手の両目に向け、放つ。



『グギャァアアアァァァッ!』



 堪らず両目を瞑り、同時にブレスが止む。


 俺の全身からは、煙が立ちのぼっている。


 危うく丸焼きどころか、炭化するところだった。


 いや、灰すら残らなかっただろうか。


 ようやく吸うことのできた酸素を堪能しつつ、相手の様子を窺う。


 両目を庇い、反転した勢いそのままに、巨大に過ぎる尾撃が直近に迫っていた。



光鎧メイル



 光の中級魔法。


 反射的に発動し、衝撃に備える。


 すぐさま外壁上を尾撃が薙ぎ払った。


 横合いから凄まじい衝撃が加えられる。


 向上した防御力により、ダメージは無い。


 だが、質量による衝撃だけは殺しきれず、横へと吹き飛ばされてしまう。


 かつて、仲間たちと共に倒したドラゴンの王。


 今回は単独で、しかもステータスが軒並み下がった状態で対処するわけか。


 もうすぐ日が完全に沈む。


 どうやら、長い夜になりそうだ。






第一章、終盤です。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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お読みいただき有難うございます!

『勇者に挑むは無職の少年』 本作の続編も完結!

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