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勇者は転職して魔王になりました  作者: nauji
第一章 王都改革編
43/364

42 元勇者の魔王、Bランク昇級試験⑥ 【修正】

スキル名は【】、使用した能力や魔法は≪≫で記載しております。


22/07/12 全体を若干修正

 二度の連続して発生した爆発。


 加えられる凄まじい衝撃に、ありったけの魔力を光壁へと注ぎ込み、耐える。


 同時に発生した閃光と音によって一時的に低下した五感が再起を果たす頃、ようやく衝撃も収まった。


 魔法を解除し、改めて室内を見渡す。


 が、まず暗い。


 光源となっていた床・壁・天井が、破壊されてしまったようだ。



ライト



 光の初級魔法。


 充満する粉塵を払いのけてやる。


 床は爆発で剥がれ、地面が剥き出しになっていた。


 壁や天井は、飛び散った破片が無数に刺さっており、形も歪んでいる。


 この威力……本気過ぎるだろ……。


 とても仲間だった者が取り得る所業とは思えないが、脳裏には魔法使いの今にも舌打ちしそうな悔しそうな顔がありありと思い浮かぶ。


 ここまでやるのが彼女らしい、か。


 流石にもう敵は用意されていないと思いたい。


 周囲を警戒してみるが、特に新手が現れる気配は無い。


 というか、だ。


 試験を突破した証が必要になるわけだが、肝心のゴーレムが跡形も無い。


 本来であれば、倒したゴーレムから入手できるはずの証。


 当然、落ちていたりもしない。


 爆発で消失したのか、元々持っていなかったのかは定かではないが、これで証を入手できなければ、骨折り損のくたびれ儲けだ。


 念の為に室内を隈なく調べてみるが、最早瓦礫しかない。


 一気に疲労感が増した気分だ。


 仕方なく、部屋の奥へと向かう。


 何とか爆発の衝撃に耐えた扉の先、脱出用の淡い光を放つ転移魔法陣があった。



「──ユウシャ、ケンチ」



 三度目となる片言の声が聞こえた。


 咄嗟に身構える。


 すると、見る間に転移魔法陣の光が小さくなっていく。


 やがて光は完全に消えてしまった。


 無言で転移魔法陣を見つめる。


 特に反応は無い。


 意を決して転移魔法陣に乗ってみる。


 特に反応は無い。


 ──これが最後の仕掛けですかね、えぇ!?


 だとすれば、地味ではあるが実に効果的な嫌がらせだった。


 と、頭に何かが当たった。


 手で掴み取り、その正体を確かめる。


 かつて見た覚えのある、試験の証だった。


 一応は、この部屋に到達した場合の保険を用意してあったらしい。


 それでも、転移魔法陣での脱出はさせないわけですか。


 相変わらず反応を返さない転移魔法陣から離れ、気が重くなりながら、大人しく来た道を戻ることにした。






 不幸中の幸いか、帰り道で蜘蛛モドキに襲われることもなく、出入口まで戻ってこれた。


 待って居たブギーマンと合流し、近場で遅めの昼食を取ることにする。



「そういえば、体調はどうですか? 恐怖は十分得られてますか?」



 王都を出てから三日目。


 そろそろ俺一人分の恐怖では足りなくなっているかもしれない。


 そう思いブギーマンに声を掛けてみた。



『マダ、ダイジョウブ。マダ、モツ』



 つまりは、足りてはいないわけですね。


 王都にはなるべく早めに戻るとして、ブギーマンの扱いをどうしたものか。


 受付嬢さんの一件もあり、不用意に他人に恐怖を与えるのも考えものになってしまった。


 そもそも、不意に恐怖体験させること自体が考えものではあるが。


 相手の了承を得たうえで、恐怖を得られるのが望ましい。


 もしくは、度胸試しのような催しにでもできれば良さそうだが、恒常的に人が訪れてくれるかが懸念材料ではある。


 何とも悩ましい。


 他の魔物とは違い、生存のためには人間の近くに居なければならないというのが難点だ。


 人のそばで恐怖を与え続け、しかし危害は与えず、また与えられることもない環境作り。


 ちょっと、俺一人には難問過ぎる。


 申し訳ないが、受付嬢さんとも相談させてもらうとしよう。


 勿論のことながら、ブギーマンには姿を消して貰った上で。


 それにしても、あれ程敵を倒したにも拘わらず、レベルが上がらないというのも残念な話だ。


 レベル──というか、経験値は生物を倒した場合にのみ得られる。


 先程のような人工物、非生命体相手では、いくら倒そうとも経験値が得られることはない。


 もしそれが可能であれば、ゴーレム相手にレベル上げし続けられることになってしまう。


 何故、そのような仕組みとなっているのかは、誰にも分からない。


 そうあることが常識だった。


 考えている間に食事を終え、一息つくことができた。


 さて、王都に帰るまでが試験ですかね。


 できるだけロックワームを迂回するルートを探りつつ、王都へ帰るとしよう。






 眼前の地面には、無数の穴が開いている。


 昨日のロックワームが群生していた場所に戻ってきていた。


 どこまでが生息域なのかは不明。


 試しに、ここから南側に逸れて通過してみよう。


 ひとまず、先程見えた穴が視認できない距離まで南側に移動してから、西側へと通過を試みる。


 すぐさま足元から振動が伝わってきた。


 地面から飛び出してくる前に、背後へと跳び退く。


 そのまま更に南側へと駆け出した。


 先程移動した二倍の距離を取り、再度通過を試みる。


 またしても、足元から振動が伝わってきた。


 背後へと跳び退く。


 そんなことを数度繰り返したが、いずれもロックワームの襲撃に遭った。


 周辺の岩場を襲撃に遭わずに通過するには、橋でも架けるしか方法がないのかもしれない。


 南側に移動するのは諦め、バッグからエーテルを1本取り出し飲み干す。


 昨日と同じく、強行突破するしかないようだ。


 ブギーマンに姿を消してもらい、脇に抱える。


 アイツの姿のまま、この状態は勘弁だしな。


 腹を括り、全速力で駆け出した。






 空の端に茜色が僅かに残る中、どうにかロックワーム地帯を突破した。


 流石に多少は退治した方が良いと思えてくる量だった。


 いくら何でも異常と思える量が、あの岩場には生息していた。


 あの場に踏み入った何者をも、食らい尽くすと言わんばかりの危険地帯に成り果てている。


 BランクのPTにでも安全な道の確保を依頼した方が良いぐらいだ。


 とてもではないが、Cランクの冒険者が来ていい場所ではない。


 音に敏感なワーム種の弱点は、同じく音だ。


 ゆえに、地中に大きな音を響かせてやれば、一時的にだが襲撃を防ぐことが可能となる。


 手持ちの金属武器を地面に突き刺し、それを思いっきり殴りつけるだとか。


 他には魔法を使うという手もあるだろう。


 そういった知識無く踏み入ってしまえば、たちまち餌食となってしまう。


 そばにある岩に歩み寄る。



光剣セイバー



 光の中級魔法。


 岩に向かって光剣を振るい、細い長方形状に斬り裂く。


 斬り取った岩を持って、足元の岩場に突き立ててやる。


 表面に文字を彫っておく。



 ”この先、ロックワームの群生地。足元注意!”



 せめてもの目印に、こうしておくとしよう。


 なるべく目立つように、周囲の岩を光剣で片しておく。


 どれほどの予防効果があるかは分からないが、何もしないよりはマシだろう。


 そこから少し離れた場所に移動し、野営の準備に取り掛かる。


 石組みの中央に携帯燃料を置き、着火する。


 揺らめく炎をぼんやりと見つめながら、残りの道程について思案する。


 行きは1日掛かりだったロックワーム地帯を、半日程で通過することができた。


 この先、何事も無ければ、早ければ明日の夕方頃、遅くとも夜には王都に到着できるだろう。


 預けてきたスライムやブラックドッグは、受付嬢さんに迷惑を掛けてはいないだろうか。


 予め最低限の絵によるコミュニケーションを覚えさせてはみたものの、万全というわけではない。


 スライムたちは実質脅威には成り得ないだろうが、ブラックドッグは違う。


 有している牙も爪も、人を害するに十分だ。


 支配の影響により、危害や敵意を向けられた場合を除き、人間を襲わないようにはしてあるつもりだ。


 彼女は元冒険者であり、無知な一般人とは違う。


 今の俺には、彼女を信じる他にできることなど無い。


 何事も無く、皆無事で居てくれれば良い。


 明日を含めて四日間。


 それだけ無事に過ごしてくれれば良いのだ。


 食事と風呂と睡眠。


 それだけで良いのだ。


 …………風呂、だと?


 まさか、一緒にお風呂に入っておられるのでしょうか!?


 何ともうらやま──もとい、粗相が無いと良いのですが、えぇ、本当に。


 直前までの心配は、頭から吹き飛んでいた。


 今はただ、要らぬ妄想をせぬよう、無心を心掛ける。






 明くる日、朝日ではなく雨が出迎えた。


 事前に用意してあったコートを羽織り、ふと隣を見やる。


 そこに居るのは、アイツ──父さんの姿をしたブギーマンだ。


 恐怖を具現化しているだけとはいえ、1人は雨具を着込み、もう1人は雨曝あまざらし。


 流石に良い気分ではない。


 申し訳ないが、ブギーマンには姿を消して付いて来てもらうことにする。


 雨に打たれながら王都への帰路につく。


 天候が変わるだけで、最早見慣れた感のある岩場も、少しだけ(おもむき)深い。


 雨で滑りやすくなった岩場に注意しながら、歩みを進める。


 昼時を見計らい、程よい岩場で雨宿りしつつ、昼食と小休憩を済ませた。


 午後もひたすら歩き続ける。


 道中、無心を心掛ける。


 ともすれば頭を()ぎりそうになる、風呂場の光景。


 物理的に頭を振ることで、雑念を振り払う。


 うらやましいわけでは断じて無い。


 ただ、風呂に入って雨で冷えた体を温めたいだけ。


 追い(すが)る雑念に(さいな)まれながら、いつしか眼前の風景が岩場から平野へと切り替わっていた。


 風呂までは、後もう少し。


 違った、王都までは、後もう少しだ。






 小川を越え、遠目に王都の外壁が見えてきた。


 日が沈んだのか、辺りは雨の所為も相まって、暗い。


 王都の明かりが、より一層際立って見える。


 明かりに吸い寄せられる羽虫の如く、王都へと近づいてゆく。


 すると、東門の前に人影が見えた。


 もしやと思い目を凝らす。


 予想違わず、銀髪眼鏡の受付嬢さんだった。


 ──まったく、律儀な人である。


 いつ帰るかも分からない人間を、出迎えようと待って居るなんて。


 流石に連日その場で待って居たわけでは無いだろう。


 それでも帰ってくるであろう日を予想して、今こうして待って居てくれている。


 何とも面映(おもは)ゆい。


 そして大変に申し訳ない。


 風呂のこととか、要らぬ想像をして本当に申し訳ないです。


 動揺を顔に出さないように気を付けながら、お互いの顔が見える距離まで接近した。



「──ただいま帰りました」



 そうして、懐かしい挨拶をしたのだった。






▼次回予告

王都でのんびり?する予定。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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お読みいただき有難うございます!

『勇者に挑むは無職の少年』 本作の続編も完結!

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