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勇者は転職して魔王になりました  作者: nauji
第一章 王都改革編
40/364

39 元勇者の魔王、Bランク昇級試験③ 【修正】

スキル名は【】、使用した能力や魔法は≪≫で記載しております。


22/07/05 ダンジョン内の説明を修正、全体を若干修正

 王都を出立して三日目の朝。


 朝食を済ませ、今日こそ目的地のダンジョンへの到着を目指す。


 いや、むしろ攻略もこなしてみせる。


 しばらく進んでみたものの、昨日のように地中からの襲撃は無かった。


 やはりロックワームの巣は無事通り過ぎたようだ。


 恐るべきは、あの異常な数だろう。


 もしかしたら、動植物や他の魔物は、ロックワームたちにより捕食されてしまったのかもしれない。


 あの周辺に於ける頂点捕食者となっているのか。


 いずれは討伐依頼が出されてしまう懸念もある。


 だが、アレらがもし王都まで巣を移動させてくることがあれば、途轍(とてつ)もない脅威となってしまう。


 地中から突然現れ、捕食しようとする魔物の群れ。


 一般人では抗うこともできず、犠牲になってしまうだろう。


 その可能性を憂慮していながらも、退治するという選択肢を選べずにいる。


 まだ自分が襲われただけに過ぎない。


 この目で他の人間を襲っているところを目撃したわけではないのだ、と。


 それを言い訳として、魔物を倒すことから逃げている。


 都合の悪い事実から、目を逸らしている。


 そんな気さえしてしまう。


 考え方が変わったからなのか、それとも魔王としての特性なのだろうか。


 だが、魔王は魔物たちに人間を襲うよう仕向け、犠牲をいた。


 間違っても魔物の生存を願っての所業ではあるまい。


 俺はそんな魔王になってはいないはずだ。


 そんなことを考えている内に、視界の先に見覚えのある建物が見えてきた。






 日が中天に至るには、まだ幾分距離がある。


 昼前に到着できたのは上々と言えよう。


 眼前には、周囲の岩場とは明らかに異質な建造物が、その姿を晒していた。


 当時の記憶では、ダンジョン内の敵は、最奥のゴーレム1体しか居おらず、代わりとばかりに道中にはトラップが無数に存在していた。


 ブギーマンに対し、トラップの効果があるのかは不明だが、あえて危険を犯す必要はあるまい。


 この場にブギーマンを残し、単独でダンジョン内へと足を踏み入れる。


 内部の壁には松明が備え付けられていない。


 それに構わず足を踏み出す。


 内部は緑の淡い光に満たされていた。


 どういう仕組みかは知らないが、ダンジョンは規模に関わらず、こうして独自の光源を有している。


 床に壁に天井にと、大人の掌よりも二回り程大きな正方形が、組み合わさったような構造。


 正方形同士の溝の部分が、淡い光を発している。


 これも以前来た時と変わってはいない。


 不思議には思うが、別段驚きもせず先へと進む。


 肩を寄せ合って2人通れるかどうかといった幅の通路が奥へと続いている。


 しかし、次に遭遇したモノには驚きを隠せなかった。


 敵だ。


 本来居るはずの無い敵が居た。


 以前は確かに、このダンジョン内に最奥のゴーレム以外の敵は居なかった。


 にも拘わらず、今、明らかに蜘蛛に似た拳大の何かが、通路の光源を隠すように埋め尽くしていた。


 蜘蛛型の魔物にスパイダーというのがいる。


 が、コイツは明らかに違う。


 何故なら、体組成が石なのだ。


 そう、まるでゴーレムと同じように。


 さらには、頭部と思しき場所には口が無く、大きな単眼があるのみ。


 見て明らかな程に、通常の生物ではない。


 ゴーレム同様、人間が作り出したモノだと見当を付ける。


 以前来た時には居なかったが、新たに設置されたらしい。


 俺の驚愕を余所に、通路を埋め尽くしている蜘蛛モドキがこちらを囲むように移動を開始した。


 床や壁や天井まで埋め尽くし、どんどんと光源を覆い隠してしまう。


 瞬く間に、足元以外は全て蜘蛛モドキに覆われてしまった。


 下手にこの光景が見えていたら、さぞ気持ちの悪い光景だったろう。


 蜘蛛を怖いとは思わないが、通路を埋め尽くす数がいれば、流石に気持ちが悪くなりもする。


 Cランク冒険者相手に、これだけの数の敵を用意してみせるとは。


 どういう意図の試験なのかは不明だが、態々攻撃を食らってやる意味もない。


 相手が魔物であれば躊躇(ちゅうちょ)したが、人工物であるならば容赦する必要はない。



光剣セイバー



 光の中級魔法。


 二回、連続して発動する。


 暗闇の中、光の剣が両の手に出現し、周囲を明るく照らしてみせる。


 相手が反応を見せる暇を与えず、一息で周囲に斬撃を見舞う。


 蜘蛛モドキの群れに空白が生じる。


 一呼吸毎に空白は増大してゆく。


 斬る、斬る、斬る、斬る、斬る。


 やはりCランク用の敵だったからか、碌な抵抗も見せず斬り伏せられていく。


 あくまでも、対多数を想定した仮想敵として作られたのだろうか。


 周囲の蜘蛛モドキは粗方斬り伏せてみせたが、眼前の通路は未だ暗闇に閉ざされている。


 つまりは、蜘蛛モドキがそこら中に張り付いているわけだ。


 1体1体が弱いにしても、いくら何でも数が多過ぎる。


 見通せぬほど暗闇が続いていると言うことは、最悪、このまま奥までびっしりと居るのかもしれない。


 何となくだが、ゴーレムが自動修復できるように、この蜘蛛モドキは自動増殖のようなことができるのではなかろうか。


 魔王が倒されたことで、冒険者がランクアップを行わなくなり、訪れる者の居なくなったこのダンジョン内で、増殖し続けていたのだとしたら……。


 久方ぶりに訪れた侵入者を大歓迎してくれるらしい。


 何とも迷惑な話だった。






 成程、これは中々に厄介な代物かもしれない。


 上下左右を埋め尽くす蜘蛛モドキ。


 時に躱し、時に敵を盾に、時に斬り伏せながら突破していく。


 とはいえ、これ程の数を相手にしなければならないと知っていれば、安物でも剣の1つも買ってきたものを。


 光剣などの武装系魔法は、発動時にのみ魔力を消費する。


 出来得る限り発動したままでいる方が、負担は少なく済む。


 最奥に居るゴーレムと戦うためにも、道中で消耗し過ぎるのは避けたい。


 他の魔法は使わず、次々と襲いくる蜘蛛モドキたちを斬り捨ててゆく。


 せめてもの救いは、トラップの類いが無いことか。


 以前は大部屋に向かうまでの間に、幾つも設置されていたはず。


 その代わりが、この蜘蛛モドキなのだろうか。


 但し、この先も無いとは限らない。


 警戒は怠らずに。


 蜘蛛モドキにばかり気を取られぬよう、気を付ける。


 敵を斬り裂くついでに、周囲を窺っておく。


 そのまま強行突破をし続けていると、広い空間に出た。


 まだ最奥に到着するには早い。


 だが、記憶にある限りでは、最奥以外に広い空間など無かったはず。


 周囲は蜘蛛モドキで覆われていて、光源となっているのは、手元の光剣のみ。


 光剣が照らし出すよりも奥、広い空間の中央に何かが居た。


 暗闇に青い光が灯る。



「――ユウシャ、ケンチ」



 すると、妙な片言の声が聞こえてきた。


 たちまち、青い光が赤い光へと変じる。


 それを契機としたのか、周囲を覆っていた蜘蛛モドキが一斉にどこかへと居なくなった。


 暗闇が晴れ、光が戻った空間の中央、そこには巨大な蜘蛛モドキが居た。


 先程まで斬り伏せていた蜘蛛モドキは拳大だったが、眼前のは馬を3頭並べた程の大きさもあった。


 これが蜘蛛モドキを増産し続けていたのだろうか?


 ともすれば大きな岩かと誤認しそうな姿。


 しかし、その身からは八本の足が生えており、今なお赤く輝く単眼がこちらを凝視している。


 どうやら、ゴーレムに先んじて、前哨戦を行えというわけらしい。






 所詮はCランク冒険者用の敵。


 相手に何かをさせる間を与えず、一瞬で距離を詰め、光剣の斬撃を見舞う。


 が、斬り裂くことができず、むしろ弾かれてしまった。


 ――おいおい、どれだけ頑丈なんだ!?


 光剣は魔力量により、形状、攻撃力、そして切れ味を増す。


 今のは岩ぐらい軽く斬り裂いてみせる程の威力があった。


 それを岩の見た目をして弾いてみせるとは。


 左手の光剣を解除し、残る右手1本に魔力を集中させる。


 今度は金属すら斬り裂ける威力まで引き上げる。


 大上段に構え、正面から真っ直ぐに斬り裂いた。


 手応えは……無い!?


 先程のように弾かれたのではなく、手応えそのものが無い。


 だが、眼前の相手は左右にその身を分断されている。


 いや、斬り裂いたのではなく、直前に自ら分裂してみせたのか!?


 空振ったらしい俺を目掛け、左右に分かれた巨大蜘蛛モドキが、器用にもそのまま前進してきた。


 俺を挟み込むように位置取りをした次の瞬間、左右から覗く断面から無数の円錐状の棘が突き出してくる。


 咄嗟(とっさ)にその場で腹這いになって回避する。


 間一髪のところで、頭上を棘が通過していく。


 今の攻撃、間違いなく殺す気だった。


 これはあくまで試験の一環のはず。


 実戦である以上、事故死は避けられない場合もあるが、故意に必殺を狙ってくるなどあり得ない。


 何かがおかしい。


 試験と(あなど)っていた感は否めない。


 一層、気を引き締める必要があるようだ。


 追撃を食らう前に、その場から素早く脱する。


 分裂が可能とはいえ、動力部は存在するはず。


 どれだけ細分化できるか知らないが、全体を消滅させるか、細切れにしてしまえば倒せるだろう。


 視線の先では、巨大蜘蛛モドキが再び一体化していた。


 八本の足を目一杯に広げ、床に突き刺す。


 赤い単眼が、その輝きを増してゆく。


 強烈な悪寒。


 その場から全力で横に飛び退く。


 直後、先程まで居た場所目掛け、赤い光線が放たれた。


 光線に晒された床や壁が見る間に溶けていく。


 おいおいおいおい!?


 威力がおかしいだろ!?


 直撃せず、至近距離で回避したとしても、身体が蒸発してしまいそうだ。


 そのまま光線が止むかと思いきや、頭部が胴体の上側に移動し、光線を放ちながら回転し始めた。


 全方位対応の固定砲台ですか!?


 最早、この空間に安全な場所は無くなっていた。






ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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お読みいただき有難うございます!

『勇者に挑むは無職の少年』 本作の続編も完結!

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