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勇者は転職して魔王になりました  作者: nauji
第一章 王都改革編
35/364

34 元勇者の魔王、恐怖を馳走 【修正】

スキル名は【】、使用した能力や魔法は≪≫で記載しております。


22/06/28 クエスト関連の規定を修正と、全体を若干修正

 木陰で雨宿りをしながら、ブラックドッグにエーテルを与えてやる。


 スライムたちは、先程購入した果実を三等分にして与えてやったところ、今現在もご機嫌な様子でブギーマンにじゃれついている。


 といっても、本来は霧状らしいその体目掛けて跳びはねているだけだが。


 俺からの視点では、アイツ――俺の父親に跳び掛かっているように見えて、何とも複雑な光景でもある。


 今の内に、ブギーマンの処遇について考えてしまうことにしよう。


 未だ組織の建物は建設中のため、そこで保護することは叶わない。


 身の安全を考慮すれば、人間から、特に兵士や冒険者からは遠ざける方が良いと思われる。


 だが一方で、生存のためには、人間のそばに居て恐怖を糧とする他ないわけだ。


 そういえば、セントレアは自衛のために恐怖を具現化していると言っていたが、実際は恐怖を糧とするために恐怖を具現化していたことになる。


 やはりその魔物自身に聞かなければ、実際の生態は分からないものなんだな。


 ――と、思考が若干逸れたが、できるだけ一般人のそばが望ましいのか。


 さっき聞いた話によれば、昨日目撃した時みたいに、完全に姿を消すことができるらしい。


 だから普段は完全に姿を消しておき、必要なときだけ姿を現して恐怖を得る、という形式が良さそうだ。


 とはいえ、王都内を自由に徘徊させるというのも問題だろう。


 噂が広まれば、兵士か冒険者に倒される可能性もあり得る。


 山・洞窟・森なら身を隠すにはうってつけだし、恐怖を(あお)るにも効果的ではあるが、必然的に相手は冒険者が多くなるだろうし、リスクが高い。


 そうなると、残る候補は宿屋の部屋で(かくま)うか、王城で匿って貰うかの二択になってしまうだろうか。


 問題は王城だ。


 兵士たちの恐怖を具現化した場合、相当の混乱が予想される。


 恐らくは見る人によってその姿形は変わってしまうのだろうし、侵入者かブギーマンかの判別もままならないだろう。


 結果、残る選択肢は宿屋の部屋だけとなる。


 まぁ、仕方がないか。


 ブギーマンに恐怖を与えてやるには……どうしようか。


 室内では姿を現して貰って、俺の恐怖の克服がてら、俺から恐怖を摂取して貰えば良いだろうか?


 ……そうだな、いつまでもアイツに恐怖を抱いているというのも(しゃく)な話だ。


 この機会に克服してやろう。


 しかし、恐怖の具現化ねぇ……。


 何か、それを利用した(もよお)しみたいなものとかできそうだよな。






 ブギーマンにじゃれつくのに満足したのか、スライムたちが戻ってきた。



『タンノウ、シタ!』


『ホドヨイ、ヒロウ!?』


『クイハナイ?』


「……楽しかったんです、よね?」


『ソウイナシ!』


『ゼヒモナシ!?』


『ニベモナシ?』


「……二体のそれは違うと思いますけどね」



 雨に濡れているかと思い、表面を拭こうとしたのだが、既に雨粒は付着していなかった。


 吸収したのかな?


 ってことは、風呂場でも同じことしてるんじゃないのか?



「――もしかして、お風呂の水、吸収したりしてませんよね?」


『『『…………』』』


「正直に答えてください」


『シ、シテナイ!』


『オボエガ、ナイ!?』


『カラダ、ポカポカ?』


「…………」



 怪しい……怪し過ぎる……。


 今日は見逃さぬよう、注視しておくとしよう。


 一緒に戻ってきていたブギーマンに、先程出した結論を伝えてみる。



「――というわけなんですが、どうしますか? 勿論、強制はしません」


『ヒトノ、ソバ、イタイ』


「えぇっと、それは了承してくれるってことでしょうかね?」


『アナタニ、ツイテク』


「分かりました。ひとまずは、組織の建物が出来上がるまでの間、一緒に暮らしましょう」


『ヨロシク、タノム』


「いえいえ、こちらこそよろしくお願いしますね」



 こうしてまた一体、同居者が増えることになった。






 食事は終えたことだし、後は採取クエストを済ませてしまえば、当初の予定は完遂となる。


 皆と連れ立って薬草と毒消し草を探しながら雨の森の中を歩く。


 山とは勝手が違うのか、それとも雨の所為か。


 中々それらしい植物は見付からない。


 というか、毎日こうして薬草類を採取し続けたら、いずれ枯渇しそうなもの。


 Cランク冒険者が激減したとはいえ、全員が日々採取クエストをこなしていけば、そうなる日も遠くないように思えてくる。


 偶には王都の住人からのお手伝いの依頼などもこなした方が良いのかもな。


 ただ、そうなると皆の食事を取る場所に困るわけか。


 ……彼方を立てれば此方が立たぬ、か。


 一応、CランクでもPTを組めば、Bランクの依頼を受けられる。


 当然ながら、無条件とはいかない。


 PTの職業や、ステータス合計などで、危険度も変わってくる。


 討伐系ならば、特にリスクが高い。


 かつては魔物の数が多かったこともあり、1ランク上の討伐系に挑む者たちは極めて稀だった。


 具体的には、俺たちぐらいなものだったろう。


 と、そこまで考えて気が付いた。


 今のステータスなら、Aランクには上がれるのだった。


 Bランクはステータスの内、いずれかが250以上、Aランクは500以上、Sランクは750以上が最低限必要になる。


 加えて、昇級試験をクリアすることで、晴れてランクアップが叶う。


 ちなみに、ステータスはギルド証にも表示されているため、数値の偽装などできない。


 仮にできたところで、自らの背負うリスクを高めるだけだが。


 いい加減、Cランクで居続けるのは、他の冒険者たちに迷惑かもしれない。


 懸念材料としては、低ランクの依頼は受けられなくなる点。


 Sランクの依頼が皆無だったことを鑑みるに、Aランクの依頼もそう多くはあるまい。


 上げるならBランクぐらいが望ましい。


 折を見て、ランクアップしておくべきだろうか。


 ちょっと、真剣に考えてみよう。


 そんなことを考えつつ、視線は目標の薬草類を探し続けていた。


 生い茂る木々の葉により、落ち葉は大量にあるが、肝心の薬草類がさっぱり見当たらない。


 ただ、Bランクの採取クエスト用だったはずの、キノコ類は散見された。


 ランクアップしたら、ここに足繁く通うことになるかもな。


 一応、商店で売れば金にはなるだろうが、冒険者ギルドの報酬よりかは安くなってしまう。


 キノコ類が採取されてないのは、金策として鉱石採取の方が好まれるのも要因としてはあるのだろう。


 Cランクではまだ、キノコ類の判別法を教わってはいないはずだし。


 いずれ収穫するときのため、今は残しておくとしよう。


 悪天候の所為で分かり辛いが、恐らく小一時間以上は探しているはず。


 にも拘わらず見付からない。


 思い切って場所を移した方が良いかもしれない。


 今から山に行くのは時間が掛かり過ぎるが、昨日の洞窟ぐらいなら、まだ急げば日が沈みきるぐらいには王都に戻れるかも。


 そう思った矢先、複数の足音を捉えた。






 そういえば、討伐依頼はまだ出たままのはず。


 この場所にも新たに冒険者が現れてもおかしくはなかった。


 スライムたちをバッグに回収し、ブラックドッグは霧状に、ブギーマンには姿を消して貰う。


 3人……いや、4人かな?


 同じ方向からだ。


 1人が斥候として突出して、本隊は後ろの3人という構成のPTらしい。


 もしかしたら魔法が使える後衛職が居るかもしれない。


 いつもの視覚攻撃は通用しないかもな。


 どうしたものか。


 そうこう思案している最中、更なる足音を捉えた。


 俺たちが来た方向から……2人か。


 さっき昏倒させた2人が目覚めた可能性がある。


 痕跡を消しながら進んできたわけではなかったので、後を付けられたとしてもおかしくはない。


 これで合計6人か。


 できれば一網打尽と行きたいところではあるが……少し試してみるか。


 手近な丈夫そうな木を見繕い、よじ登って行く。


 ある程度周囲が俯瞰(ふかん)できて、且つ、下からは見え辛い位置取りを心掛ける。


 そのまま様子を(うかが)っていると、斥候が接近する2人を捉えたようだった。


 斥候が何か合図を出したのか、後続の3人が停止する。


 できれば全員がもう少しこちらに接近して欲しいところ。


 俺を追って来たと思しき2人が、この木のそばまで接近してくる。


 ……待っていても、残り4人はこれ以上接近してこないかもな。


 待つのを諦め、行動を開始する。


 威力よりも揺れと音を意識して、身を預けている木を殴りつける。


 周囲に響く衝撃音。


 音源を確認しようと、一斉に6人が顔を上げるのが見て取れた。


 すかさず魔法を発動する。



光牢(プリズン)



 光の中級魔法。


 範囲内のモノを一定時間拘束する。


 6人全員がこちらを仰ぎ見たまま硬直しているのを確認し、維持したまま更に魔法を発動させる。



恐怖(フィアー)



 闇の初級魔法。


 精神に作用し、恐怖を与える。


 それを最大出力で発動する。


 6人全員が遠目からでも分かる程に顔色を変えた。


 では、最後の一撃を見舞うとしよう。



「――ブギーマン、出番ですよ」


『ワカッタ』



 6人の視線が集まる先に、ブギーマンがその姿を現した。


 魔法により増加された恐怖の対象。


 その効果は予想以上だった。


 一人残らず、その場で気絶してしまったのだ。


 ……ちょっと、やり過ぎたかもしれない。



『マンプク』



 ブギーマンのその言葉が、せめてもの救いだった。






ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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お読みいただき有難うございます!

『勇者に挑むは無職の少年』 本作の続編も完結!

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