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勇者は転職して魔王になりました  作者: nauji
第二章 妖精秘境編 中編
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106 元勇者の魔王、反響と影響

 夜を告げに来たドリュアスとアルラウネに声を掛けられるまで、コロポックルたちと遊んでいた。


 お蔭で、コロポックルたちの機嫌は上々だ。


 いや、少しやり過ぎたかもしれない。



「「「「「ポーーー!!!」」」」」



 光糸のネットに緑の球体が群がっている。


 そして、ブラックドッグも姿が見えなくなる程に、コロポックルたちに群がられていた。


 余程に娯楽に飢えていたのだろうか。


 興奮冷めやらぬ様子だ。



「――これは一体、何の騒ぎじゃ!?」


「アンタ、何したわけ!?」



 速攻で、二体に問い詰められてた。



「飛び跳ねるのが、ことほかお気に召したようでして、気が付けば今のようなテンションになってしまいました」


「やり過ぎ」


「――じゃな。これは大人しくさせるのも一苦労じゃろうて」



 喜ばれて責められるとは、何たる皮肉か。



「――オヌシは母へと魔力供給を頼む。この場は妾がどうにかしておくゆえな」


「あの、ひとつ物は相談なんですが……」



 光糸のネットを見せ、遊具について提案してみる。


 創る事自体は難しくもないようだ。


 ただ、場所は移すと言われた。


 広場の周囲に部屋を設け、色々な遊具を創ってみようとなった。


 ひとまず、その場をドリュアスたちに任せ、緑の山から救出したブラックドッグを伴い、大樹の元へと向かった。






 木に見下ろされながら、通路を進む。


 やがて、一面緑に覆われた空間へと辿り着く。


 一際目を引くのは、奥に構える大樹。


 心なしか、大きさを増しているようにも感じる。


 魔力を吸収した影響が出ているのだろうか?


 威容を視界に収めながら、大樹の元へと進み出る。


 近づいてみると、より鮮明に姿を確認できた。


 やはり、影響が表れているようだ。


 樹皮がひび割れているのだ。


 隙間から覗くのは、新たな樹皮。


 急激に成長している。


 そういえば、山や集落への影響はどうなのだろうか?


 この大樹により、妖精の住処や山の異常がもたらされているならば、魔力を増したことで、なんらかの影響が出ていないとも限らない。


 ドリュアスへの確認もさることながら、自分の目で確認してみた方がよいかもしれない。


 そう考えると、これ以上の魔力供給は、どうにも躊躇ためらわれてくる。


 果たして、自分の行いは正しいのだろうか。


 誰かの不利益となってはいないだろうか。


 答える声はあろうはずもない。


 最良か最善か。


 思い込みは禁物だ。


 客観的に、多角的に、見極める必要がある。


 妖精の協力による移動手段の確保。


 魅力的な力ではある。


 王子の捜索において、必ずや役立つはずだ。


 だが、仲間たちと相談をしたわけではない。


 俺の独断だ。


 そして、魔力を増した大樹による、周囲への影響が不明ときている。


 本当に大丈夫なのだろうか。


 考え始めると、不安の割合が増してくる。



「――どうじゃ、もう済んだかの?」



 不意に背後から声が掛けられる。


 振り向かずとも、声の主は判然としている。


 ドリュアスだ。


 色々と考え込むより、いっそ聞いてしまった方がよいかもしれない。


 振り向きざまに、問いかける。



「大樹に魔力供給を続けた場合、周囲への影響はどれほどあるのでしょうか?」


「――何じゃ、藪から棒に。周囲への影響じゃと? ふむぅ、まず思い浮かぶのは、植物の成長かのう。妖精の発生は、妾が抑制しておるから、妖精が大量発生するという事は有り得んぞ」


「他にはありませんか? 特に、集落への影響などは?」


「――どうじゃろうかのう。確かに、気にかけてはおらんかったな。どれ、少し覗いてみるか?」


「是非お願いします」


「――相分かった。……ほれ、どうじゃ」



 俺とドリュアスの中間地点の空間に、映像が浮かび上がる。


 暗い。


 そういえば、外界は夜だったか。



「――俯瞰視点過ぎたかの。夜では見えんな。もそっと近づけてみようかの」


「はい」



 視点が集落の上空から、徐々に下降を始める。


 なだらかな斜面に、明かりが漏れる家々が散見される。


 ――ん?


 何か違和感が……何だろうか。


 気のせいだろうか、妙に家の背丈が低いような……?


 視点が家屋の屋根を通過する。



「「「――」」」



 俺とドリュアスとアルラウネ。


 一人と二体は、しばしの間、その光景を見つめながら沈黙した。


 集落に変化はあった。


 雑草だ。


 明らかに増えてるわ伸びてるわ。


 日中であれば、家々から明かりが漏れることもないため、廃集落かと疑ったかもしれない有様だった。



「影響、出てますね」


「出てるわね。間違いなく」


「――う、うむ、その様じゃな。その辺りについても、後で調整しておくとしよう。いやはや、気が付くのがもう少し遅ければ、集落は草に埋もれておったじゃろうな。カカカッ」


「笑い事ではありませんよ、まったく」


「――相済まぬ。以後、周辺への影響についても、都度つど確認しておくとしよう」


「お願いします」


「ワタシは別に、人間への影響がどうなってようが、一向に構わないけどね。むしろ、人が寄り付かない方が望ましいぐらいだし」


「――これ、不要に波風を立てるでないわ。安心せい、明朝には元通りじゃ」


「ありがとうございます」



 中空の映像が消える。


 俺は大樹へと向き直り、ひび割れた樹皮へと手を当てる。


 手の平からは、大樹の鼓動が伝わってくるような気がする。


 魔物や妖精ならともかく、植物が鼓動を刻むはずもない。


 錯覚だ。


 感じるのは温かさだ。


 生きているのだと、そう感じる。


 目を閉じ、魔力を注ぎ込む。


 やはり、大樹が脈打つような錯覚がある。


 半分の魔力を注ぎ終え、目を開きながら手を離す。


 妖精の母たる大樹。


 先程の光景しかり、確かに力を増してきているらしい。






 木々の壁に手を触れる。


 この状態で念じればいいんだったか。


 壁に隙間が出来る。


 次第に広がりを見せ、やがて昼間までいた部屋が姿を現した。



「一応、ドリュアスはちゃんと対応したみたいね。これで出入りは自由にできるわよね。でも、だからって、勝手に出歩かないでよね?」


「分かっています」


「明日は自分で起きてよね。もう起こしになんて来ないから」


「お手数をお掛けしました」



 とは言え、今朝も起きてはいたのだが。


 単に出られなかっただけだ。


 もっとも、起こしに来てくれなければ、ずっと室内に閉じ込められたままだったのは間違いない。


 礼を述べるべきなのは確かだ。



「じゃあね。……お休み」


「お休みなさい」



 プイっと視線を逸らして、足早に去って行くアルラウネ。


 ブラックドッグを伴って、室内へと入る。


 今度は出入口付近の木の壁に触れる。


 次第に隙間が閉じていく。


 やがて通路は見えなくなった。


 光源が失われた室内は、真っ暗闇だ。


 目が慣れるまでは、何も見えない。


 不便というか、極端というか。


 寝るにはとてもよい環境なのは確かだ。


 暗いし、静かだし。


 布団代わりの葉も、在り得ないほどに柔らかい。


 しばらくジッとして過ごし、目が暗闇に慣れてきた頃に、葉の布団へと向かう。


 柔らかな葉に包まれると、いつも通りにブラックドッグが上に乗って来る。


 今の今まで、襲撃はなかった。


 今晩はどうだろうか。


 目を閉じて浮かぶ光景は、草木に覆われた実家の姿だった。


 ははは、洒落になってない。


 危うく埋もれてしまうような成長具合だった。


 大樹であれなのだ。


 大気や水、大地に魔力が過剰供給された場合、何が起こるのだろうか。


 今後の課題として、覚えておくべきだろう。


 だが、まずは睡眠を。


 一日でも早く、王子の捜索を開始するために。


 今は休むとしよう。






ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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お読みいただき有難うございます!

『勇者に挑むは無職の少年』 本作の続編も完結!

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