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勇者は転職して魔王になりました  作者: nauji
第二章 妖精秘境編 中編
126/364

105 元勇者の魔王、遊びましょう

スキル名は【】、使用した能力や魔法は≪≫で記載しております。

 く、苦しい。


 果実を5つ食べただけなのだが。


 まさか、これほど腹が膨れるとは思わなかった。



「やっぱり、言わんこっちゃない」


「――何じゃ、食い過ぎか? ここでは色々と勝手が違うからの。おそらく10日以上は滞在することになるじゃろうから、早う慣れるんじゃな」


「は、はい。善処、します」


「――その様子では、話すのも難しかろう。しばし食休みをするがよい」


「そ、そうさせて、頂きます」



 椅子の背に体重を預け、脱力する。


 もし今、襲撃に見舞われたらかなり不味い。


 ちょっと動けそうにない。



「コロォ~?」



 不意に地面から声が聞こえた。



「――ん? 何じゃ? どうした、オマエだけか? はぐれたのかの?」



 ドリュアスの視線を追うと、コロポックルが一体だけ居た。


 っと、不味い。


 あんまり下を向くと、出る。


 上へ向き直り、消化に努める。


 そうしている間にも、ドリュアスがコロポックルと会話を続けている。



「コロ?」


「――何、心配いらん。只の食い過ぎじゃ」


「ポ」


「――そうじゃ。しばらく経てば、動けるようになるじゃろうて。それよりも、もう怪我の具合はよいのか? 妾の不徳じゃ、堪忍してたもれ」


「ポ! ポー」


「――そうか、ありがとうな。其方そなたは良い子じゃな」


「ポー」


「――分かった。じゃが、後でな。ほれ、皆の所へ戻っておれ」


「ポ」



 視線だけを向けていると、コロポックルが飛び跳ねながら視界の端へと消える。


 先程の遣り取りを聞いていた限り、どうやら会話が成立していたらしい。


 もしかしたら、俺の意思疎通と似たような感じなのかもしれない。



「相変わらず不思議な会話よね。はたから見てても、サッパリ意味不明だわ。何て言ってたの?」


「――人間と遊びたがっておったわ。オヌシ、余程に気に入られたと見えるな。済まぬが、後で相手をしてやってたもれ」


「構いませんよ。只、残念ながら、何を言っているのかまでは分かりませんが」


「――慣れるしかあるまいて」


「アドバイスが雑ね」



 アルラウネが呆れた声を返す。


 表情をうかがえば、視線もジト目となっていた。



「――ならば、其方そなたがアドバイスをしてやるのじゃな。先達せんだつじゃろう?」


「また勝手な事を……それに、アタシは好かれてないから、参考にはならないわ」


「――どちらかと言えば、其方そなたの方が避けておるように見えるがの」


「うっさい!」



 腕を組んでそっぽを向いてしまう。


 アルラウネは、コロポックルが苦手なのだろうか?



「――まぁ、ブラックドッグが懐いておるようじゃし、問題はなかろうて」


「でも、それって支配とかってやつの影響じゃないの?」



 横目で胡乱気うろんげな眼差しを向けながら口を挟む。



「――生憎じゃが、異なる系統故に、意思を汲み取ることは叶わんが、無理矢理に従っている訳でないのは、見て取れる」



 ドリュアスの言葉に引っかかりを覚え、質問を口にする。



「言葉が通じないのですか?」


「――妾の場合じゃと、植物系統の妖精とならば意思疎通が可能じゃ。じゃが他の系統とは、言葉が喋れん限り、意思を汲み取ることは叶わん」



 言葉の壁。


 と言うよりかは、意思疎通の壁、とでも称するべきなのだろうか。


 共存を図るためには、避けては通れない問題だ。


 ある種、支配ならば、無理矢理に可能にはできるのだろう。


 ただし、期間限定の。


 魔王が倒された時、支配は解除される。


 魔物の狂暴化が解けたのが良い証拠だろう。


 つまり、俺が居なくなれば、また元通りというわけだ。


 意味がないとまでは言わないが、あまりに無責任が過ぎるだろう。


 これはまたとない機会だ。


 何せ、人間と魔物と妖精。


 他種族で会話が成立している、極めて稀な状況なのだ。


 最優先すべきは王子の発見と討伐だが、このえにしは大事にしたい。


 いや、大事にするべきだ。



「うぷっ」



 いかんいかん。


 考えるだけでも、込み上げて来る。


 今はジッとしていよう。






 直上から差し込む陽光に、目を細める。


 相変わらずの昼間の陽気。


 正確な時間はまったく把握できない。


 ようやく動ける程度には消化ができたが、外界では何時だろうか。


 木々に挟まれた通路を進む。


 後にはブラックドッグが続く。


 向かう先は広間だ。


 目的は当然、コロポックルと遊ぶため。


 敵の襲撃は途絶えている。


 だからと言って、油断はできない。


 先程までのように、身動きが取れない事態は避けたい。


 何事も、過ぎたるはなおおよばざるが如し。


 程々にしておくべきだ。


 広間を前に足を止める。


 眼前には無数の緑の群れ。


 サイズが小さくなったことで、より数が増えたような錯覚を起こす。



「コロ?」



 一体がこちらに気が付いた。


 連鎖反応でもするかの如く、他の個体も一斉にこちらを向く。


 ナニコレコワイ。



「「「「「ポーー!」」」」」



 唱和が起こる。


 次々に飛び跳ねている。


 喜んで貰えているようだ。


 しかし、この数を相手に、余力を残すことは叶うのだろうか。


 不安が尽きない。



「ポ」



 一体が足元から見上げてくる。


 期待に満ちた目だ。


 応えてあげたい。


 全力を尽くさないよう、頑張ろう。


 決意も新たに、広間へと足を踏み入れる。


 緑の群れが寄って来る。


 あっという間に、扇状に囲まれた。






 さて、どうしたものか。


 会話は通じない。


 ドリュアスは魔力の調整とやらで、手が離せないらしい。


 アルラウネは、明らかに面倒がって拒否していた。


 俺がどうにかするしかない。


 不意に、黒い影が前方へ動いた。


 ブラックドッグだ。


 緑の群れに頭から突っ込んだ。



「え?」



 思わず口から疑問が漏れる。


 次々に宙へと打ち上げられるコロポックルたち。



「コロォ~~!?」


「ポーー!」



 コロポックル達から、様々な声が上がる。


 緑の海を黒い影が泳ぐ。


 水しぶきの代わりとでも言うかの如く、緑の球体が宙を舞う。


 何だこれは。


 スライム達に対してもそうだったが、ブラックドッグは宙に跳ね飛ばすのが好きらしい。


 緑の雨が降る。


 ボトボトと落下するコロポックルたち。


 突然の事態に硬直していた体が、ようやく反応する。


 遅れて駆け寄り受け止める。


 状態を確認してみるが、その表情は楽しげだ。



「ポ!」



 流石に加減をしていたのか、怪我をした個体も居ないようだ。


 これで遊んでいる事になるのだろうか。


 はなはだ疑問ではあるが、少なくとも嫌がっている様子はない。


 そばにいるコロポックルたちは、期待の眼差しを向けてきている。


 俺も真似してやれば良いのだろうか。


 試しに、両手に一体ずつ乗せ、宙へと飛ばしてやる。



「「ポーーー!」」



 聞こえて来るのは楽しげな声。


 重力に引かれ、落ちてきたところをキャッチしてやる。



「「ポ!」」



 やはり、その表情は楽しげだ。


 周囲のコロポックル達が跳ね回る。


 要するに、高く飛び跳ねるのが楽しいって事なのだろう。


 しかし、コロポックルの数は軽く百体以上はいる。


 両手を使っても、中々に大変だ。


 ここは一計を案じることにする。


 一度に大量の個体を相手にできる手段。


 そして、落下時に怪我をさせない措置。


 イメージするのは、弾性のある網といったところか。



光糸ストリング



 光の中級魔法。


 余り魔力を消費し過ぎないよう、注意する。


 糸を太くし、弾性を持たせる。


 更に、交差させ網状に仕上げてゆく。


 網目はコロポックルが落ちない程度に調整する。


 出来上がるのは、即席のネットだ。


 広間の両端へ渡し、ネットを張る。


 そこにコロポックルたちを次々と乗せてやる。


 何が起こるのか分かっていない様子で、大人しくされるがままとなっている。


 十分乗せ終わったところで、ネットを上下に揺らしてやる。


 すると、ネット上でコロポックルたちが跳ね回った。



「「「「「ポーーー!!!」」」」」



 コロポックル達は軽い為、自重による反動でネットを揺らすのは難しい。


 つまりは、俺が揺らし続ける必要があるわけだが、ネットを揺らし続けるぐらいは、それほど苦にはならない。


 一体一体を相手するよりかは、余程に効率的と言えるだろう。


 もっとも、ネットを用意する為に魔力を消費するので、次回以降は、ドリュアスに頼んで、つるでネットを再現して貰った方がよいだろう。


 ネットで飛び跳ねる個体と、ブラックドッグに跳ね飛ばされる個体。


 広間では、楽しげな声が響き渡っていた。







22/03/23 誤字修正


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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お読みいただき有難うございます!

『勇者に挑むは無職の少年』 本作の続編も完結!

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