SS番外 スライムのお留守番④
これにて、スライムのお留守番は完結となります。
フカフカの目覚めを迎える。
眼鏡の人間の腕の中から抜け出す。
すると、遅れて眼鏡の人間がモゾモゾと動き始めた。
上体を起こした眼鏡の人間が、一点を見据えている。
視線の先は窓だ。
つられるように、ベッドの上から窓を見る。
窓には水滴が無数に付いている。
ヌレヌレ。
雨が降ってるらしい。
昨日見た黒い雲の所為だろうか。
お昼の散歩に、お山へ行けなかった。
雨の所為だ。
ザンネン。
大人しく、お部屋でお昼。
果物を食べる。
ウマウマ。
いつも果物食べられるとか、ここは楽園?
眼鏡の人間に感謝。
『アリガト!』
『セワニナル!?』
『マタオネガイ?』
今日はワンコが妙に大人しい。
いつもみたく、ボク達をボール代わりにしたりせず、床に伏せたまま動かない。
勝手に遊ばれるのも癪だけど、構われないと、それはそれで少し寂しい。
暇だからポヨンポヨンしちゃう。
傍に眼鏡の人間が寄って来た。
どうやら遊んでくれるらしい。
ウレシイ。
眼鏡の人間に対し、一斉に飛び掛かる。
見た目に反して、眼鏡の人間は素早く手を動かし、三体共を受け止めて見せる。
スゴイ!
色々試してみる。
縦に積み重なって跳ねる。
上から攻める。
プニ。
軽くキャッチされた。
クヤシイ。
今度は周囲を跳ね回る。
我、背後から強襲せり!
ふわっと横側から手でキャッチされる。
背後も死角無し!?
とんでもない人間だ!
スゴイスゴイ!
ボク達が手玉に取られるとはね。
やるじゃないか、眼鏡の人間。
ちょっと手加減してください。
時間を忘れて、眼鏡の人間と戯れる。
いつの間にか、窓の外が暗さを増している。
もう夜かも。
不意に、寝そべって居たワンコが起き上がった。
しきりに耳を動かしている。
眼鏡の人間も、遊ぶ手を止めて、ワンコを見つめている。
すると、ワンコがある一点を向き硬直した。
室内に言い知れぬ緊張が走る。
ゴクリ。
ワンコが一鳴きした。
尻尾をブンブンと、激しく振り始めた。
どうしたワンコ。
続いて、眼鏡の人間が立ち上がる。
どうした眼鏡の人間。
眼鏡の人間が身支度を整え始める。
なになに、みんなどうしたの?
今度はワンコに服を着せ始める。
いつもの服とは少し違う。
頭もスッポリ覆い隠している。
ボク達もいつものバッグに入れられる。
もう夜なのにお出かけするの?
『オデカケ!』
『サンポ!?』
『ノジュク?』
ボク達の疑問を余所に、着々と外出の準備が整えられていく。
何のイベントが始まるのかな。
ワクワク、ドキドキ。
雨粒がバッグ越しに伝わって来る。
本当に、外へお出かけしたみたい。
何処に行くんだろ?
いつもとは違い、すぐに揺れは止まった。
もう着いたの?
何処だろ?
しばらく経っても、動きが無い。
待てども待てども、何も起きない。
どゆこと?
不意に、声が聞こえた。
「――ただいま帰りました」
この声!?
魔王様の声だ!
帰って来た!?
一気に興奮状態になる。
『『『マオウサマ』』』
「おや? スライム達も一緒に来ていたんですか? 良い子で居ましたか?」
『モチロン!』
『モンダイ、ナシ!?』
『オヤド、ハイボク?』
「受付嬢さんに迷惑を掛けたりしませんでしたか?」
『リンゴ、モラッタ!』
『ウマウマ!?』
『ツギモ、オネガイ?』
「もしかして、果物ばっかり食べてたんですか?」
『『『…………』』』
「好物ばかり食べてると、他の物が食べられなくなるばかりか、好物にも飽きてしまいますよ」
アワワ。
魔王様に注意を受けてしまった。
ションボリ。
「では、どうしましょうか。もう一晩、預かって貰いますか?」
『マオウサマ、イッショ!』
『オヤド、カエル!?』
『ハナレナイ?』
「分かりました。宿に戻りましょうか。受付嬢さん、色々とご迷惑をお掛けしたと思いますが、有難うございました」
やったね!
魔王様と一緒に帰れる!
ワーイ!
バッグの中で跳ね回る。
やっぱり、魔王様と一緒がよい。
沢山お話したいな。
自分で書いていて何ですが、スライムの魔王様好き度が半端ない。
【次回予告】
しばらく妖精の住処での話が続きます。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。




