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勇者は転職して魔王になりました  作者: nauji
第一章 王都改革編
11/364

10 元勇者の魔王、採取クエスト遂行 【修正】

スキル名は【】、使用した能力や魔法は≪≫で記載しております。


22/05/27 全体を若干修正

 冒険者ギルドを出て、足を向けるのは南側。


 一路、王都の外を目指す。


 空を見上げれば、日はまだ中天に差し掛かってはいない。


 手早く済ませられれば、お昼時には間に合いそうである。


 王都周辺の地形を頭に思い浮かべつつも、耳ではその音を捉えていた。


 付いてくる足音が三人分。


 考えるまでも無く、先程の三人組だろう。


 冒険者ギルド内では受付嬢の活躍もあり事なきを得たが、ひとたび外に出てしまえば、そこはギルドの管轄外だ。


 彼らが我慢する理由もなくなる。


 とはいえ、流石の彼らもこの王都内で事を起こすつもりはないようだ。


 剣呑な視線こそ感じるが、仕掛けて来る気配は感じない。


 今はただ、大人しく後ろを付いて来ているだけ。


 仕掛けてくるとすれば、王都を出た辺りになるだろう。


 本当に懲りない連中である。


 もういっそのこと、三バカとでも命名してしまおうか。






 程なくして、視界が開けた。


 王都を囲む外壁がようやく消える。


 正門を抜け、外へ出たのだ。


 やはり、ここまでは仕掛けては来なかった。


 さて、いつ仕掛けてくるつもりなのやら。


 などと、僅かも待つ必要は無くなった。


 ヒュン。


 背後から、殺気と同時に風切り音が迫る。


 すぐさま、半身になり横へと飛び退く。


 間髪入れずに、元居た場所を矢が通り過ぎてゆく。


 素早く視線を射手に向ければ、ボウガンを手にしていた。


 正気か?


 これは脅しにしては過激に過ぎる。


 避けてなければ重症を負っていたことだろう。


 つまりは、容赦するつもりは、向こうにはないということ。


 しかし、存外に短気な三バカだ。


 本当に王都を出てすぐに襲い掛かって来るとは。


 普通はもう少し離れるまで待つだろうに。


 そうでないと――。



「おい! そこの冒険者共、動くな! 今、人に向けてボウガンを放ったよな? 我らが警備する目の前で、随分な度胸だなぁ!」



 こうして、門に駐屯している兵士に見咎められることになる。



「っ!? い、いや、これは手が滑っただけで。べ、別に狙ってやったわけじゃ……」


「現行犯だぞ、問答は無用だ。いいからさっさと来い!」


「ちょ、ちょっと待ってくれよ!? 誤解だ!」


「馬鹿か貴様は。何処をどうやったら誤解のしようがあるんだ? 抵抗するなら容赦しないぞ?」


「くそぉ、覚えてやがれ!」


「騒ぐな! 大人しくしろ!」



 やること成すこと散々な連中だったな。


 僅かな報酬と経験値を逆恨みし、凶行に走るとは。


 特に兵士に見咎められることも無く、そのまま解放された。


 まぁ、実際に何もしてないしな、俺。


 さて、邪魔者も居なくなったことだし、これで安心して採取に専念できる。






 王都から伸びる街道を外れる。


 薬草の群生地は王都から左程離れていない場所にある。


 既にここからでも遠目に見ることができる距離だ。


 見渡した限りでは他に冒険者の姿はない。


 こんなお使いクエストを受ける冒険者は、余り居ないのかもしれない。


 周囲よりも草丈のあるその場所に、無事辿り着いた。


 これだけ草の高さがあれば、スライムたちを放してやっても周囲からは視認される恐れは無さそうだ。


 とはいえ、先程襲われたばかり。


 魔物目当てに、何をしてくるか分かったものではない。


 一応、念の為に周囲の警戒を怠らずにしておくとしよう。


 バッグを地面に下ろし、開いてやる。



「さぁ、もう出ても大丈夫ですよ。できればここで食事を済ませてください。但し、草むらからは出ないようにしてくださいね」


『オソト!』


『ヒサビサ、ウレシイ!?』


『クサ、ボウボウ?』



 ポヨンポヨン。


 スライムたちは嬉しそうに上下に揺れながら、散り散りになっていく。


 その様を見送りつつ、クエストをこなしてしまうことにする。


 薬草は…………と、あった、これだな。


 手早く必要な分を摘み取り、懐に仕舞う。


 バッグの中に入れると、スライムたちが食べてしまいかねないし。


 しかし薬草とは、随分と懐かしい。


 それこそ駆け出しの頃は良くお世話になったものだが、仲間に僧侶さんが加わったことで、回復は専ら魔法頼りとなってしまったから、それ以来になるだろうか。


 いつも思うのだが、何故に草のまま摂取させるんだろうか。


 すり潰すなり、乾燥させて粉末にするなり、液体に溶かすなり、摂取しやすい形態にして貰いたいんだが。


 カバンに草のまま入れておくと、他の荷物で潰れたり、千切れたりして、不便だった覚えがある。


 一応、薬草だけを纏めて小さい袋詰めにしてはおくのだが、他の荷物と一緒くたにするとどうしても駄目だった。


 瓶詰にもできるとはいえ、それだと重いし嵩張(かさば)る。


 必然的に別途腰に下げておくか、懐に仕舞うようになるわけだ。


 さて、後は毒消し草だけなのだが、周辺には薬草しか生えていない。


 確か昔はここで薬草と一緒に採取できたはずだった。


 葉の形状は異なるし、色味も異なっている。


 如何に久々のこととはいえ、見落としているわけでは無いはず。


 まさかとは思うが、毒消し草だけ需要過多で品薄とかではないだろうな。


 念の為、依頼書の写しを確認してみる。


 ――が、特に報酬額も薬草と変わらないし、毒消し草が品薄により高騰しているわけではないようだ。


 一応、薬草の報酬だけでも食事代には足りる。


 だが、毎回薬草採取をするというのも、それはそれで面倒だ。


 かといって、予め薬草を多めに採取してしまえば、鮮度が低下し、報酬が下がる恐れがあるし、何より、他の冒険者に迷惑が掛かる。


 そんな真似は、冒険者としても、元勇者としてもすべきではない。


 近場の山にならば生えているかもしれないが、ここからは少し距離がある。


 今は一刻も早く食事を取りたい。


 ……まぁ、毒消し草は今回は諦めよう。


 さてと、スライムたちは食事を終えた頃合いかな?



「おーい、そろそろ王都に戻りたいんですが、食事は済みましたか?」


『ハッパ、タベタ!』


『ヒサビサ、ウマウマ!?』



 声を聞きつけ戻ってきたのは、何故か二体だけだった。



「……おや? もう一体はどうしました?」


『ミテナイ、シラナイ!』


『イナイ、マイゴ!?』


「……取り敢えず、君たちはバッグに戻ってください。もう一体はこれから探してみましょう」


『ワカッタ、オネガイ!』


『ソウサク、オマカセ!?』



 手早くスライム二体をバッグに入れてやり、残る一体の捜索に移る。


 ひとまずは、草むらから出て、周囲を一周してみる。


 ――が、周辺にそれらしい姿は見当たらない。


 一応、他に冒険者が来ていなかったか、足跡なども確認してみたが、それも見当たらなかった。


 ……草むらから外に出たわけではなさそうだ。


 だが、草むらもそう規模が大きいわけでは無い。


 声の届く範囲内に居ないというのはおかしい。


 念の為、草むらの中を捜索してみる。


 精々が膝丈程の草だ、一瞥できる限りでは見当たらない。


 ……やはりおかしい。


 草むらの中にも外にも居ないなんて。


 いや、まさか草むらの中で寝ているとか、か?


 身を屈めて草むらの中を捜索してみる。


 すると、草によって隠されていた地面に穴が空いていた。


 それも人一人ぐらい入れそうな大きさだ。


 …………。


 これは、落ちたな?


 中を覗き込んでみるが、浅くはないのか、底は見えない。


 入ることはできそうだが、果たして出て来られるだろうか。


 そう不安になりつつも、しかし、このまま見捨てていくわけにもいくまい。


 覚悟を決めてその穴に身を投じる。






 数秒落下し、地面へと着地した。


 流石に周囲は真っ暗だ。



(ライト)



 光魔法で自身の周囲を照らしてみる。


 落ちて来た穴を見やれば、ほぼ直上にあった。


 とすれば、あの穴から落ちたなら、この周辺に居るはずだ。


 だが、明かりが照らす範囲内には見当たらない。



「おーい! どこに居るんですかー? この声が聞こえたら返事をしてくださーい!」



 ……………………。


 しばらく反応を待ってみるが、返事はなかった。


 この周辺には居ない?


 落ちてから何処かに行ってしまったのだろうか?


 当時の状況を想像してみる。


 突然地面に空いていた穴に落下する。


 落ちた先は真っ暗闇の場所。


 慌てて動き回ってしまい……といった顛末だろうか。


 一応、天井に穴が空いているので、この場所を見失うことは無いとは思うが、念の為に、そこらへんにあった石を積み上げて目印にしておく。


 ここは縦穴ではなく、どこかの洞窟らしい。


 しかも厄介なことに、未発見の洞窟らしかった。


 発見済みの洞窟ならば、等間隔に松明が設置されていたり、壁にロープを這わせて、出入口まで迷わないような措置が施されている。


 この洞窟にはその形跡が一切ない。


 こんな事態を想定していなかったため、ロープなどの道具類の持ち合わせも無い。


 ……下りるのは早まった判断だっただろうか。


 またも不安に襲われるが、時間が経過する方が取り返しのつかない事態にもなりかねない。


 これでも元Sクラスの冒険者。


 未発見の洞窟探索如きで遅れは取らない、はずだ。


 もう下りてしまったわけだし、後悔したところで意味はない。


 今は迅速に行動するとしよう。






ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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お読みいただき有難うございます!

『勇者に挑むは無職の少年』 本作の続編も完結!

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