表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者は転職して魔王になりました  作者: nauji
第二章 妖精秘境編 中編
109/364

90 元勇者の魔王、場の主

スキル名は【】、使用した能力や魔法は≪≫で記載しております。

 未だ鋭い視線を向けてくるアルラウネ。


 光縛を解けば、たちまちのうちに襲って来そうな様子である。


 大人しい種族と言う情報が、疑わしく思える程だ。


 やはりこの状態のままに、会話を進める他無いようだ。


 知りたい事は幾つかある。


 一つ目は、畑地帯から続く、何らかの結界のような力の詳細について。


 二つ目は、この山での不可思議な現象について。


 三つ目は、先程口にしていた、集落との決まり事について。


 四つ目は、アルラウネが妖精の住処に居る理由について。


 五つ目は、アルラウネが王子の支配の影響下にない理由について。


 取り合えずはこんなところだろうか。


 最初の二つは、魔物であるアルラウネは知り得ない情報かもしれないが。


 尋ねないよりかは、尋ねてみた方が余程に建設的だろう。


 素直に質問に答えてくれると良いのだが。






「では、幾つか質問させて下さい」


「嫌よ。答える義理なんて無いわ」



 出だし数秒で交渉決裂した。


 本当に、魔法使いとのやり取りに酷似している。


 魔法使いの場合、僧侶さんの執り成しか、お菓子で大抵は解決出来ていた。


 アルラウネの場合はどうしたものか。


 かたわらのブラックドッグが、不機嫌そうにうなり声を上げている。


 アルラウネの敵意もまた、未だ健在らしい。



「これ以上、傷つけるつもりはありません。聞きたい事を聞いたら、解放します」


「それってつまり、尋問ってヤツじゃないかしら? 生意気な人間ね」


「手段を選ぶつもりがなければ、今頃は、貴女に支配を使用していますよ。そうしない事が、こちらの誠意だと捉えて欲しいですね」


「その支配っていうのも、アナタが勝手に言ってるだけじゃない。本当に魔王かすらも怪しいわ」


「先程、人間と妖精が一緒にいるのが珍しいと仰ってましたよね? まさしくそれです。ブラックドッグは支配の影響下にあります。敵意あるもの以外には攻撃しないよう、指示を与えてあります」


「――っ!? 魔王が妖精を支配してるって言うつもり!? 何なのよアナタ!」


「貴女は随分と、人間に対して非友好的ですよね? 解放した後も人間を襲うようであれば、相応の対処をせざるを得ませんが?」


「今度は脅迫って訳? ハッ、やれるものならやってみなさいな! ワタシは人間の言う事を聞くつもりは、これっぽっちも無いわ!」



 どうやら強く押し過ぎたか。


 意固地にさせてしまったかもしれない。


 どうにも、感情を優先させる手合いは苦手だ。


 長らく感情を抑制されていた故だろうか。


 いまいち理解が及ばない。



「――はぁ、分かりました。では、拘束を解いたら、話をして貰えますか?」


「だから嫌だって言ってるでしょ! 何をされようが、従う気はないわ!」



 埒が明きそうにないな。


 折角、人語を介する相手と出会えたのだが。


 これでは何を言っても無駄っぽいな。



「――分かりました。残念ですが、当初の、コロポックルを住処に戻すという目的は果たせました。俺達はこれで退散します」


「ちょっと! 拘束を解いて行きなさいよ!」


「十分離れたら、解除しますよ。そうでなければ、また攻撃を仕掛けてくるのでしょう?」


「勿論よ!」


「ではそのように」



 背後の父さんに目配せをし、相手を見据えながら後退りをし始める。


 まだ何か仕掛けて来ないとも限らない。


 ジリジリと下がり続ける。


 ――何かおかしい。


 途端に違和感を覚える。


 確か、この妖精の住処へと足を踏み入れてから、数歩も進んではいない筈。


 にもかかわらず、一向に外へと出る気配が無い。


 意を決して振り返ってみる。


 ――あれ?


 いつの間にか、父さんの姿が無い!?


 父さんは妖精の住処から、外へと出られたのか?


 ブラックドッグは、未だかたわらに付いて来ている。


 分断された?


 一体誰に?


 視線をアルラウネに向け直す。


 未だにジッとこちらを睨んでいるだけだ。


 何かをしたような形跡は見受けられない。


 いや、そもそも魔物が妖精の住処に干渉できるのかも不明だ。


 どちらかと言えば、妖精が何かをした可能性の方が高いのか。


 周囲のコロポックルに視線を移す。


 相変わらず、両脇に控えて、様子をうかがっているだけに見える。


 何か別の力が働いている?


 そもそもが、妖精の許可無しに、住処へと入る事は叶わなかった筈。


 であれば、この住処の主による意思か?






 不意にどこからか、声が響いて来る。



「――妾の友への狼藉ろうぜき、終いにして貰うぞ」



 女性の声だ。


 声と同時に光縛が強制的に解除された。


 アルラウネが解放される。


 どう見ても、機嫌はよろしくない。



「この人間風情がぁ! 無事に帰れると思うなよ!」


「――待て、友よ。其方そなたでは敵うまいよ」


「何よ!? 邪魔しな――」


「――無論、無事に帰すつもりもない。安心せい」



 何やら、不穏当な会話が成されている。


 だが、肝心の会話の相手の姿が見当たらない。


 この場にはおらず、声だけ届けているのか。


 あるいは、この場に既に居て、姿を隠しているのか。


 いずれにしろ、声の主こそが、この妖精の住処の主に相違あるまい。



「どなたかは存じ上げませんが、こちらに敵対の意思はありません。対話をこそ望みます」


「――下賤げせんな人間風情が。妾と対話などとは、抜かしおる。身の程をわきまえよ」



 随分と上から目線な物言いだ。


 俺の知っているピクシーは、こんなに流暢りゅうちょうには喋れないし、悪戯好きではあったが、高慢でもなかった。


 姿無き声の主は、少なくともピクシーでは無さそうだ。



「この妖精の住処の主かと推察致しますが、どうしても対話は叶いませんか?」


「――くどい。こうして人間と会話を重ねている事自体が不快極まりない」


「随分と人間を嫌っておられるようですね。集落の人間が不敬を働いたとは、到底思えませんが」


「――黙れ、人間。此度の沙汰さた、オヌシだけでなく、他の者達にも責を問わねばなるまいて」


「集落の人間に何かするつもりですか? それはオススメしませんよ」


「――ハッ、抜かしおる。手出しすれば、如何様にすると申すつもりじゃ?」


「本気で怒ります」


「――カカカッ。これは愉快! 人間にしては随分と面白い物言いよな」


「そういえば、先程は言いそびれましたが、今でこそ魔王ですが、少し前までは別の職業でした」


「――何じゃ? 突然何の話を――」


「前職は勇者。かつて魔王を倒した者です」


「――ハッ、オヌシが勇者だと? そも魔王というのも疑わしいわ。そううそぶいてみせたところで、露程も脅威には感じぬわ」


「脅し目的では使いたくありません。集落への手出しは取り止めて頂きたい」


「――妾を脅すと申すか。余程に己が力に自信があると見受けられる。良いぞ? 妾が許可してやろう。是非とも披露して見せよ。――もっとも、出来るものならば、な?」



 警告はした。


 それでもなお、取り止めぬと言うのであれば、致し方ない。


 全力でもって分からせるまでだ。



光体アウゴエイデス



 光の超級魔法。


 全身が眩い光に包まれ、地上に偽りの太陽の如き光源が顕現する。


 ――筈だった。


 しかし、どういう訳か、魔法が発動しない。


 こちらの動揺を察したのか、哄笑こうしょうが響き渡る。



「――カカカカカ。無駄じゃ無駄じゃ。この場の主は妾。誰も彼もが妾の許可無しに、力は振るえぬ。何をしようとしたのかは分からぬが、残念じゃったな?」



 許可すると言っておきながら、その実、制限下にあった訳か。


 魔法が使えないとなると、途端に不利だ。


 未だ姿の見えぬ、この場の主とやらに、どう対処したものか。






22/03/06 誤字修正


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただき有難うございます!

『勇者に挑むは無職の少年』 本作の続編も完結!

気に入ってくれた方は『ブックマーク』『評価』『感想』をいただけると嬉しいです

小説家になろう 勝手にランキング

ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ