始まり4
丘の上に立つ古びた民家の一軒家の庭先にそれはあった。
その一軒家、元は農家であった趣を随所に残しながら住みやすく改修を何度も行われているのが見て取れる。
屋根の上に設置させた太陽パネル、今からすれば非効率なものであり新しく取り付けるものなど発展途上国ぐらいだろう、そんな太陽パネルが古き昔の趣の屋根いっぱいに設置されている、その反面外壁には最新の光触媒での自動修復機能のある最新ではないが最先端の外壁で補修されているのも見て取れる。
その一つ一つがこの家が歩んだ歴史であり、今の家主が時代に合わせて改修・修理をしてき証拠であり、家を大切にしてきた証ともいえる。
そんな歴史ある丘の上の一軒家の庭にそれはその家が、建築される前からそこに存在していた、いつからそこにいたのかは本人もわからない気づいた時にはそこで家を見下ろしていた。
前の家主も、その前の家主もただ見ていた、見ていることしかできなかった。
今は見上げるほどとなった大木となった1本のならの木その姿は並び立つ一軒家よりも巨大となっていた。
巨大になるほどの月日を生き、大切にされてきた。
「今・・何か??」
老人は何気なく見上げた先に何かが見えた気がした。
それを不思議に思い今一度ならの木見上げ目凝らす、そこには季節的に落葉してはいるが大きな幹に巨大な枝を張り巡らせたいつもの巨木が見て取れた。
「見間違い??」
最近歳のせいでめっきり視力が落ちたと感じてはいるが、老人の人生とともにあった古木、緯度となく見上げた、春も夏もと四季を楽しませてくれた。また妻が逝って落ち込んだ時もいつもと変かわらず古き友人のようにそこにあった巨木、多少の視力の低下で違和感を覚えることはないと自信があったのだからこその何ともいえない違和感・・
「何かがいた?」
「猫かな?」
さきほど一瞬見上げた先に今まで見たことのない違和感と確かな影が目の端に留まったのだ。
猫にしてはこんな夜更け木に登るとは・・・老人がさらに思考を深めようとしたとき家のからいつもの声に現実にひきもどされる。
「か~~~!」
キつのころからか住みつき、家の軒先をわが物とした年老いた真っ黒な鳥が早く帰って来いと催促の声をかける。
「気のせいか・・」
気にはなるが我が家の同居人が心配している声に背中を押されながら再度家への歩みを開始する。
「あいつは、晩飯が欲しいだけだろけどな」
まだ鳴き続ける声を聴きながら思わず苦笑いが漏れる。
今度こそ振り返ることなく家路付く老人の背中を見つめる者がいることに気づくことなく夜はさらにふけていく・・・
出会いはまだ訪れない・・・