始まり3
夕焼けが西の空を茜色に染めながら山に沈んでいくのを庭のベンチに座り名が一人の中肉中背の少しがっしりとした肌黒な男が小さな庭から見つめていた。
「あれから20年か?」
ベンチの男の口からで呟きがひと言漏れる。
男がいるのはごく一般的な田舎の住宅の庭先である。
もともとは田舎な為庭の大きさはたっぷりありあったのだが今では庭の半分は男の手慰みの趣味と実益を兼ねて始めた家庭菜園の拡張に次ぐ拡張の為に立派な畑になっており、また残された庭も我が家のシンボルツリーとして植えられていた大きなならの木が隆盛を誇っているため、実質的な庭としては猫の額ほどしか残っておらず現在今男が座っているならの木のそばのベンチの周りがかろうじて庭と認識できる程度となっている。そんなベンチに腰掛けながら自慢の畑もすでに農作も持つは収穫されつくしており取り残しがぽっぽっ見えるかぎりとなっておる。
「白菜もあとわずかかな?」
今年も収穫は満足いくものであったことを思い出しながら大きくなった畑の事を振りかある。
そもそも、もともとは手慰みではじめた家庭菜園をやりだしたのが20年ほど前、失敗も最初は多かったが、年をかさねるにつれ慣れていき初めて数年後には毎年収穫は常に期待を上回るほどに収穫できていた。しかし当然一人では食べきれる量ではないので最初は近所にお裾分けとして配っていたが。これには大きな問題が1つあった何分住んでいるところが田舎のため近所迄近くでも3キロメートル以上は離れており持っていくのも一苦労、しかも男自身も年の為遠出は年々n難しくなっていたのもあり、折角作っても食べきれないということがお往々に発生してきた。そこで何とか消化7出来ないかと何気なく畑の脇で無人販売を行った。しかも値段はどうせ食べきれないものだからと大安売りで付けたところ以外に盛況となって今ではちょっとした有名店、わざわざ遠方から買いに来るほどになっている。
それに気をよくしてどんどん拡大した家庭菜園が今の畑になったのは仕方がないと男自身では納得している。
「来年は縮小するかな」
男は自身の腕を見つめながらそんな少し後ろ向きな、計画を思案する。
見つめた日焼けした肌黒の腕は日々の農作業で鍛えられているが近くでよく見ると腕全体には深い皺がきざわれており肌も生気に乏しいのが一目でわかる。
それは顔同様でああり深い皺、頭髪もよく見ると白白と遠目では壮年に見えた男もよく観察すれば立派な老人である事がわかる。
「もう年だしな・・・・」
「・・・・・」
老人のつぶやきに応えるものは周りには誰もいないが誰かに語り掛けるようにつぶやくには老人の口癖となっていた。老人自身返事があるとは思っていないそれでもこの癖は治ることはなく男自身も別に直す気もない。
「世話しきれないな・・
「・・・・・」」
最近は大きくなりすぎた畑を一人で面倒見るのもだんだんとしのせいで厳しくなってきているも現状から少し縮小したほうがいいいのではと思っていたのだがなかなか決断がつかずにいたのでついつい口に出てしまう・・・・・
こんな時はいつも相談に乗っていろいろ言いあって結論がでただがと、ついついもういない妻の事えお思い出してします。
「本当に年かな・・」
20年も前に他界した妻の事を思い出して頼るようでは、よほど重症だとお思わず苦笑いがでてしまう。
「か~~~!」
考えに耽っていた老人に背後から書き声が聞こえてくる。
老人はうす暗くなった当たりを見回しで自分がずいぶんと長く考え事をしていたことに気づかされる。
「ありがとうよ!」
時間を教えてくれた声に礼を返しながら老人は最小に見つめていた夕暮れの山々に目を向ける。
やはりずいぶん時間がたったようで夕焼けは山の向こうに今にも沈んでしまいそうな状況であり、代わりに夜のとばりが東から迫ってきていた。
老人の周りも薄暗さから真っ暗へと刻々と闇が深くなっていくのが感じられた。
「今日も終わりだな」
迫りくる闇夜に背を押されながら老人は家に戻るためにベンチから立ち上がりながら大きく背伸びをして呟く。
「それに似ても今日はいつも以上に暗いな」
日々生活している庭がいつもより暗いことに不思議に思いながら何気なく頭上を見上げる。
「ああ、そうか」
老人は見上げた空に月がないのに気づき納得する。
「今日は新月か」
もともと外灯などない田舎であり夜月がない新月はほとんど光源がなく普段よりいっそう暗く感じるのは長年の生活から理解していたので納得してうなずく。
「ということは、今日は雲もなかったしあれが見れるかな?」
老人は家に戻ろうと立ち上がったベンチに再度腰を下ろしながらすぐそばのならの木を見上げる。