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副業は、平和を守るお仕事です?

以前書いた話のリメイクです。

学生時代に書いていたこの子たちが、自分ではやっぱり好きなので、誰かに楽しんでもらえたらいいなと思って再チャレンジしてます。

よかったら感想をお願いします。

気がつくとやたら真っ白い場所にいて、目の前に真っ白いじーさんの顔があった。




 ...えー。




 何だろうこれ。どこだろうここ。

意味がわからず固まっている俺に、おもむろにそのじーさんは語りかけた。



「諸君に力を与えよう。その力で、諸君の世界を守って欲しい。」



「いや、その前に誰やねんアンタ。」



諸君、と呼ばれたことに疑問を感じると同時に、右隣から声が上がった。

驚いてそちらを見ると、肩。

少し視線を上げると、自分と同い年くらいの少年の横顔があった。

よく日焼けした肌につり目のすっきりした顔立ち。

160センチの俺より10~15センチほど背が高く、運動部っぽい体つきをしている。

...見たことのない男だ。少なくとも同じ中学じゃないはず。



「わ。」

「いてっーーは? 痛い...?」

「あ、ごめ...」


つり目男の存在に驚いて身動ぎしたら、左側にもいた誰かにぶつかってとっさに謝る。

見れば、今度は右側と対照的な白い肌の美少年。...美少年? うん、女子かと疑う中性的な顔立ちだが、声は声変わり途中の男子っぽい。

こちらは、若干俺より小柄かな。しかしなげぇ睫毛だな。

そして、こちらも知らない顔である。


「痛い? なんでだ? 夢では痛みを感じないのは嘘なのか...?」

色白美少年は俺の謝罪に答えず何やらぶつぶつ言いながら自分の口元を押さえて眉根を寄せている。


夢?

「ーーあ、ほんとだ、ちゃんと痛い。」

お約束に自分のほっぺをつねりあげてみれば、確かに感じる痛み。

そんな俺に倣って、つり目男もほっぺをつまむ。

「ほんまやなぁ。再確認用にお前のもつねったろか?」

「いい。てかお前も誰だよ? ーーいや、じゃなくて、ほっといてくれ...」

つり目が伸ばした手を避けた色白は、今度は頭を押さえてため息をつく。


「ほんなら話を戻してーーアンタ、誰やねん?」

問うつり目に、白髪白髭のじーさんは、真面目な顔をして答えた。





「うむ、ワシは... 神じゃ。」






 返ってきた答えは、実にろくでもなかった。





「あ、うち宗教関係間に合ってるんで、結構です。」

色白がやたら早く切りにかかる。


「つーか神って。」

胡散臭げにじーさんの頭から爪先まで眺める。

洋風の顔立ちに白い髪、白いゆったりしたローブのような物を身にまとってとにかく白い。確かにマンガとかに出てくる安直な神様のようなーー


「あ。あれか、トラックに轢かれて異世界転生系の」

つり目がポンと手を打って言う。

「え。俺轢かれてないよ? え、ちょっと待って、何? 俺死んだの?」

ぞっとして自分の体を見下ろす。

透けてたりとか、血が出てたりとかはしない。

足は裸足で、長ジャージにロンTという寝巻き姿。

ん? 寝巻き?

やっぱりこれは夢なのか?


そんな俺の考えを読んだように、じーさんは言う。


「夢ではないし、死んでもおらんよ。寝ている諸君の精神体に呼び掛けておるので実体でもないが。」

「ほな夢みたいなもんやん? なんで痛いんやろ?」

「それはちょっと...なんじゃろなぁ? 本来の夢よりは実体とのリンクが強いというか...まぁ、知らんが。寝ながら実体の方も頬をつねっとるんじゃないか?」

「おいおい、神様のわりにてきとーだな?」


「やめとけお前ら。怪しい宗教は関わると危ないぞ。」


 またほっぺをつねってみているつり目と、ジト目でじーさんに言う俺に、色白が小声で助言する。


 そのやり取りをちょっと悲しげに見つめたじーさん、おもむろに後ろを向いて


「なんか思ってたのと反応違うんじゃが。君がこの格好して神って名乗れば信じるって提案したんだろう。え? じゃあサンタクロースで? テイストは似てる? いや、似てるかどうかよりこの件についての説得力が... 」



「聞こえてるよー。サンタクロースは季節外れだよー。てか、誰と話してんの?」


「あ、インカムみたいの見えたで。」


「... 。む? もう本当のことを話せ? じゃあなんのためにこんな演出を... あっ、おい、もしもーし! もしもーし!」




 気まずい沈黙。




 じーさんの後ろ頭を眺める俺とつり目。


 なりゆきは気になってるようだけど視線はそらしたままの色白。


 じーさんはちらり、とこちらを見遣ってーー




 コホンと咳払いをひとつして、こちらに向き直った。



「諸君に力を与えよう。その力で、諸君の世界を守って欲しい。」



話が最初に戻った。



「... 一応、詳しく話してもよいかの?」


 呆れるこちらの空気を感じたらしく、控えめな態度で聞いてくる。


 どうしよう?と隣を見上げると、同じような表情のつり目。


「とりあえず、聞いてみようか。」


 言って、色白の方も見てみるとビミョーそうな表情をしながらも頷く。


 今この場で、それ以外選択肢がなさそうだと諦めているのは同じのようだ。




 俺たち三人の視線を受けて、じーさんは嬉しそうに口を開いた。




「諸君が所属している世界は、地球という星で人類が文明を築いている、という認識だと思う。


 しかし、実は世界というのは別の次元にもいくつも存在し、時々相互に接触することがある。諸君の世界で伝説や物語として伝わっている異世界の話のいくつかは、かつて誰かが垣間見た事実がもとになっているものもあるのじゃ。


 だが、諸君の世界では、異世界の存在を認識できていない。それゆえに、他の世界からの干渉へ抵抗するすべを持っていない。


 他の異世界を認識している世界の間では、互いに不干渉の条約が結ばれているが、そもそも異世界を認識していない諸君の世界では、条約締結自体不可能な話だからじゃ。


 表向き、各世界の均衡を保つために、条約未加盟の世界へも不干渉が原則なのだが、己の利益のためにそれを守らない者がどうしても出てくる。


 といっても、異世界同士を結ぶゲートの発生は人工的に起こすのは難しく、偶発的に繋がった機に乗じての犯行になるので、そう多くはないのだが...


 それでも、野放しにするべきではない。


 が、互いに不干渉ゆえに、他の世界の住人が条約未加盟の世界に何かしたとしても、被害世界がそれを認識していなければ違反を取り締まることもまた、できないのが現状じゃった。


 そこでーー」




 じーさんは、ビシッと俺たちを指差した。




「その未加盟世界に協力者を作り、自分の世界は自分で守ってもらおうという計画が立ち上がったのじゃ!」




 うわぁ、どや顔。




「はい、質問。」


「どうぞ、葵くん。」


 名前を言い当てられたことにちょっとドキリとしながら、俺は挙げた右手をそのままに尋ねた。




「なんで俺たちなの?」




「うむ。

異世界の人間の犯罪を取り締まるに当たって、諸君の世界の常識で収まる身体能力では荷が重いだろうというのが我々の見解だった。


 しかし、諸君の人種は潜在的には多彩な能力を持っていることも調査でわかった。諸君の言葉で言うと超能力のようなものだ。


 我々の働きかけで、この能力を開花させることも可能だが、問題は能力を受け入れる素地だった。


 成人してしまうと能力の伸び率が悪いだけでなく、自分の潜在能力も、そもそもこの話自体も受け入れてくれず、下手をすると精神に異常をきたす。


 とはいえ、あまり幼くても判断力等に不安が出る。検討を重ねた結果、十代半ばくらいが妥当ではないかということになりーー」


「俺も受け入れてないけどな、その話... 」

 色白がぼそりと言ったが、じーさんはスルー。


「諸君の世界では中二という世代が一番異世界と世界平和に理解が深いという情報をもとに、日本中の中二のなかから潜在能力、人格、健康面を考慮し、諸君三人が適任であると選ばせてもらった次第じゃ。」


「なんかその中二の認識は間違ってるー!」



 思わず突っ込んだ俺、頭を押さえてため息をつく色白、そして、ぶぶっと吹き出すつり目。



「おもろいやないか。つまり俺らには秘められた潜在能力が!」


「本物の中二病かおい。」

 色白が呆れる。




 しかし、超能力っぽいものを自分が使えるという話は、確かに俺もちょっと気になる。




「な、どんな能力なん?」




「うむ! ではまず若林勇くん。君の能力は物理干渉じゃ。」


「物理干渉... ?」


 勇と呼ばれたつり目は怪訝な顔。


「自分のエネルギーを、物理エネルギーに変換、放出したり、物体に力を加えたり、自分の運動能力の助長に使うことができる。わかりやすく言えば、衝撃波で攻撃したり、いわゆる念動力で物を動かしたりすることができる、戦闘向きの能力じゃ。」


「おおー、そう聞くとファンタジー色が出てくるわー。」


「じゃあ俺は?」


「志野原葵くんは、勇くんと同じく物理干渉と、もうひとつ生体干渉。生体干渉は、例えば傷を治したりできる、治癒能力などじゃな。」


「回復魔法は地味に大切だな。で、こいつは?」


 自分からは訊く気がなさそうな色白を指して俺が言う。


「神山翔くんは空間干渉。座標を認識して、空間転移をすることができる。また、空間を歪めることによって攻撃をそらしたり、分散させて弱めたりすることもできるだろう。防御向きじゃな。」


「空間転移て、瞬間移動とかそういうん? めっちゃ便利やん。えーなー。」


と、言うつり目改め勇が、いつの間にか何故か半透明だった。ついでに、何か電子音がする。え、何? 幽霊?




「何っ? もう起きる時間か! 早起きすぎやせんか?」


 慌てるじーさん。




「あー、俺朝は走りこまなあかんから。」


「くー! まだ説明を終えておらんのに! 仕方ない、また明晩続きをしよう。ちなみにこのことは他言無用だぞーー」


 じーさんが喋り終える前に、勇は「ほな」と口を動かして、しかし声ごと、消えてしまった。








 そしてそれと同時に、ふわりと視界が揺れて、俺はその真っ白な世界から離脱した。



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